栗林三姉弟のインタビューは最初は比較的真面目に進んだ。そう最初だけは。
「自衛隊に入って大変なことはありますか?」
「外出する時に色々と面倒なこととか? それくらいかな~」
「俺も同じかな」
「訓練とかは大変じゃないの?」
「慣れれば別にたいしたことないわよ。確かに大変だけど辛いのは最初だけじゃない?」
「俺は冬場、外でずっと待機したときは寒くて死ぬかと思ったかな。寒いのには慣れないというかなんというか」
すでに撮影開始から時間もたっていた。そしてインタビューが進んでいくに連れて、インタビューから栗林家の家族団欒へと変わっていく。
「今は特地での勤務だけど日本と違うところとかありますか?」
「向こうはこっちより暖かいから、過ごしやすいわよ。それ以外はあんまり変わらないと思うけど」
「咲人は?」
「あぁ、空気がきれいなところとか? あと星もキレイだったり」
特地のことは話すなと言われているが、覚えてるはずはなかった。
「特地と言えば、国会に来た三人だけど。特地の人はみんな美形なんですか?」
「みんな美形っていうのは違うと思うわ。こっちの人と一緒よ。可愛い人もいればそうじゃない人もいるし、背の高い人もいれば低い人もいるように。いろんな人がいるわけでしょ。まあ、でもエルフだったりウサ耳があったりで人離れした魅力のある人もいるけどね」
「お姉ちゃん『うさみみ』って何?」
「あーと、えっとそれは・・・」
この時点でウサ耳やネコ耳などの人種がいることは公表されていない。なのでこんなところで言うのはよろしくないのだ。そして志乃は言った後でそれに気付いた。
そして、肝心の菜々美はウサ耳の意味が分からずせっかくの大ニュースを逃していた。故に志乃はうまくごまかそうとしていた。
「ウサ耳っていうのはウサギの耳のことだよ」
しかしアホな弟の一言で叶わなかった。志乃は隣に座っていた咲人の頭をひっぱたいた。
「痛っ、ちょっと何するの志乃姉」
「あぁ、もう本当にバカね。頭にきた。それとその『志乃姉』っていうの恥ずかしいから止めて」
「いきなりキレないでよ志乃
「何で怒ってるのかは分からないけど、お姉ちゃん叩くのは可哀想だと思う」
「そうだそうだー、そんなんだから彼氏の一人も出来ないんじゃない?」
この一言を聞いて、志乃も反撃する。
「『彼女いない歴=年齢』のあんたに言われたくないわよ。あんたこそさっさと彼女作りなさい」
「ぐぬぬ・・・」
「そうよ咲人、流石にお姉ちゃんも心配です」
「菜々美姉まで」
もはやただの姉弟喧嘩になってしまっているが、こそれでもカメラは回り続けている。
「俺だって本気だせば彼女くらい、好みの人に出会えてないだけだし」
いじけたような顔で返す咲人。
「ほんとそればっかりね、いつになったらその好みの人に出会えるのよ!? もう何年もその調子じゃない」
「志乃姉だって、人のこと言えないでしょ。彼氏候補を道場で叩きのめしてるせいで彼氏できてないじゃないか!?」
「ぐぬぬ・・・。昔は『お姉ちゃん、お姉ちゃん』とか言って後ろ着いてきて可愛かったのに、どうしてこんなに生意気に」
珍しく咲人の反撃が成功した。事実、お突き合いのせいで彼氏がいない。
「そういえば咲人の好みのタイプってどんな人なの?」
「えっ、あぁえーとそれは・・・」
菜々美の質問に咲人は不意討ちをくらった。流石にテレビの前でシスコンを晒すのに躊躇いがある。というか単に恥ずかしいだけだが。
「別にいいでしょ。そんなこと」
「そんなことじゃない。結構大事なんだから!」
「何で大事なのさ、菜々美姉には関係ないでしょ」
「関係あります! お姉ちゃんほんとに心配してたんだから。咲人は顔は悪くないし、黙ってればモテると思うの」
「一言余計だよ。菜々美姉」
その後何度も追求をくらい続け、冷静さを失った咲人が口を滑らせた。そして、そのまま撮影も終わりを告げた。
そして、例の放送日がやって来た。咲人は同室の隊員たちとテレビの前で夕方のニュース番組を見ていた。アナウンサーが番組を進行していき、ついに菜々美の出番となった。
「次は『今日の特集』のコーナーです」
メインのアナウンサーからカメラが移り、菜々美が写し出される。その顔つきからかなり緊張していることが伺える。
「は、はい! 今回私は特地で勤務している自衛官の姉と弟に取材して来ました」
そして画面が切り替わり、以前の撮影の映像が流れはじめた。まず始めに咲人の映像からだ。ちょっとした個人インタビューの後、狙撃の映像が流れた。編集のおかげもあって、すごくカッコ良く見えるのだ。同室の隊員も「おぉ」と声を出していた。
今度は長女の映像となる。こちらも最初までは咲人と同様に映像が流れたが、訓練の映像ではまるで違うものだった。小柄の女性が男を投げ飛ばす映像はアクション映画さながらである。これには皆、投げ飛ばされた隊員に同情していた。映像の派手さでは長女の圧勝となった。
そして問題の栗林家の家族団欒が始まった。正直なところ、どこまで映像として使われたのかを知らないので咲人は内心ひやひやしているのだ。
最初の真面目な部分はもちろん使われていて、ここまでならなんの問題もなかった。ここで終われと切に願う咲人だったが、現実は非常だった。その先のウサ耳の流れで始まり、『俺は志乃姉みたいな人が好きなんだ!』というとこまでしっかり使われていた。同室の連中からはなんとも言えない目線をくらい、恥ずかしさがぶり返し、顔を真っ赤にしていた。
テレビ放送の後、『彼女いない歴=年齢』から勝手に派生して『童貞シスコンスナイパー』という不名誉なあだ名を付けられ、第三偵察隊を始めとする特地の隊員にいじられることとなったのだった。
今回、更新が遅くなり本当にすいませんでした。これからも不定期が続くと思うのでご理解頂けたら幸いです。
かなりオリジナリティで突っ走ったお話になりましたが、どうでしょうか?少しでも楽しんで頂けたならば、私も嬉しいです。
次回は咲人のシスコンになった理由について書いていきたいと思ってます。
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