三つの車両がエンジンを鳴り響かせて疾駆している。車内に収用されていた女、子ども、老人は急ハンドルと加速に振り回されあちこちに体をぶつけていた。
車窓から見えるのは逃げ惑うコダ村の人々とそれに襲いかかる炎竜である。
咲人は車窓からスコープつき六四式小銃を出して、炎竜に撃ち続けていた。しかし、炎竜は全く動じなかった。軽装甲機動車の上では12.7ミリの弾丸も撃っているが効果があるようには見えない。
「くそっ、まるで効いてない」
「とにかく撃ち続けて、村の人が逃げる時間だけでも稼がないと!」
「分かってるって!」
弟の弱音に姉が鼓舞する。諦めず撃ち続けるが、炎竜の鱗は全て弾いていた。
「ブレス来るぞ!!」
伊丹からの無線が鳴る。その直後、炎竜の口から火炎放射器のごとく炎が放たれる。しかし、高速で動く車両を捕らえることは出来なかった。
「どこか弱点はないのか?」
咲人はスコープを覗いて、拡大された炎竜を見る。そして首や足の付け根など、様々な場所に打つが効果は無かった。そして伊丹からの無線が入る。
「目だ! 目を狙え!!」
その言葉を聞いて、スコープ越しに炎竜の目を見る。すると炎竜の片方の目に矢が刺さっているのが見えた。咲人はスコープを覗いたまま、引き金を引く。撃ちだされた弾は炎竜の顔に吸い込まれていく。しかし狙った目に当てることは出来なかった。
「くそっ、外した!」
目を狙い始めたことで炎竜の動きがわずかに止まる。その隙を狙い咲人は目に照準を合わせる。咲人の本職は狙撃である。そして、精密射撃なら自衛隊の中でもトップクラスの腕を持っていた。それ故彼の小銃にはスコープがついている。
咲人は息を止め、自分の世界に入っていた。あらゆる音が遠くなり聞こえるの自分鼓動だけ。この隙を逃すわけにはいかない。確実に撃ち抜くそれだけを思っていた。スコープ の中央に炎竜の目を捉えた。あとは引き金を引くだけだ、しかし・・・
「うぉあぁ!」
乗っていた七三式トラックが突如揺れたのだ。おそらく段差でも踏んだのだろう。タイミング悪く引き金を引いてしまい弾はあらぬ方向へと飛んでいった。
そして、勝本も
外れるはずだった弾道に炎竜が倒れていく。そして、炎竜の左肩に直撃した。見ると左肩がごっそりとえぐり取られている。
「うわぁ、グロいなぁ」
咲人は拡大された炎竜の左肩を見て、まじまじと言う。
そして炎竜が雄叫びをあげた。ドラゴンの咆哮をうけて自衛官たちの引き金が止まる。怪獣映画で散々見て来た光景だが、実際に現実としてその光景に直面すると恐怖にかられてしまうものだ。
そして攻撃にわずかな間が出てしまう。その隙に炎竜は飛び立ち、自衛官達は見送ることしか出来なかった。
その後、太陽はすっかり落ちてしまいあたりは暗くなっている。炎竜との戦闘後、炎竜によって亡くなった人の葬儀をしていた。今日だけで肉親を失った人は大勢いたのだ。一人一人丁寧に埋葬し、全員で手を合わせる。村の人達からもすすり泣く声が聞こえており、咲人の心に響いていた。
葬儀が終わったあと、生き残った人は先を進むらしい。親を失った子どもなどは、置いていくしかないとのこと。村長言うには、自分たちが生き残るので精一杯なんだそうだ。
先を行く村の人のキャラバンがだんだんと離れていく。第三偵察隊は全員で手を振り彼らを見送る。咲人も手を振りつつとなりの姉を見た。どうやら泣いているらしく、泣きながらも笑顔で手を振っていた。
「(泣きならがら笑うなんて起用だな)」
と思いつつ、咲人ももらい泣きをしたようで涙があふれでていた。姉弟が泣いているのを見て伊丹が呟く。
「お前らほんと仲いいよな」
「ほんとっすね」
倉田や他の隊員も姉弟の仲の良さを見せつけられていた。
今後も割りと短い文章になりそうです。
感想アドバイスがありましたら、お気軽にお聞かせ下さい。
ちょっとした解説コーナー
もともと六四式小銃にスコープを付けて狙撃銃として陸上自衛隊では運用されていたため、咲人もスコープを付けて使っています。現在の自衛隊ではM24を狙撃銃として使っているようです。
特地には旧式の装備を持ち込んでいるため、咲人はM24ではなく六四式小銃にスコープを付けて仕方なく使っているといった感じです。