弟は姉と彼の地にて斯く戦えり   作:バラナリ

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イタリカ攻防戦です。正直書くのに結構苦労しました。


第七話 イタリカ攻防戦

イタリカの街は見るも無惨な姿となっていた。街のあちこちからは煙が上がり、城門は壊されている。城壁の外から見ただけで少なからず戦闘があったことはわかるほどだ。

 

三階建てビルに相当する高さの城壁の上には兵士たちが弓を構えてこちらに向けている。

 

「かなり警戒されてるなあ」

「まあ当然よね、急にこんなのが来たら誰でも警戒するもんよ」

「どうするんだろ? 鱗売りに来たのにこんなんじゃ売れないでしょ」

「まあ、隊長がどう判断するかね」

 

城壁の上からこちらに対して何か言っている。言葉が分からなくても口調からどのようなことを言っているのかは簡単に想像出来た。

 

咲人の乗る七三式トラックの中では、伊丹の指示を待っている。一度帰るにしろ、残るにしろ命令がなければ動けない。すると、先頭の高機動車からレレイ、テュカ、ロゥリィが降りてきた。そして伊丹から無線が入る。

 

「俺も行ってくるから、全員ここで待機していてくれ。何かあれば連絡する」

 

伊丹も車から降りて城壁へ近づいていく。それを咲人たちは見送るしかない。待機と言われれば待機するしかないこれは絶対だ。

 

「さすがに心配だな。一歩間違えたら殺されかねないし」

「まあ、いっそ隊長だけ帰ってこなくていいけどね」

 

と志乃は冗談っぽく返した。まさにその時、伊丹が倒れたのだ。どうやら扉を開けた際、伊丹にクリーンヒットしたらしい。

 

「「「「ええ!?」」」」

 

車内では驚きの声が上がる。しかし、その後伊丹は起き上がってこない。そのまま伊丹はレレイたちによって中へと運び込まれた。

 

 

 

 

 

 

その後、第三偵察隊は伊丹の判断によりイタリカの防衛をすることになった。そして任されたのは南門の防衛である。

 

そうと決まればすぐに戦闘の準備を始める。咲人はトラックからハードケースを取り出し、ハードケースをあけた。中には漆黒の銃身が入っており、そのまま組み立て始めた。

 

最後にスコープを取り付けて組み立てが終わった。組み立てが終わり城壁の上に行き、桑原曹長の指示を待っていた。

 

「古田! 機関銃、ここ」

「東、小銃はここ」

「咲人、狙撃銃はこっちだ」

 

桑原曹長の指示によって配置が決められていく。咲人は指示の通りに銃を置いた。そしてその傍らには六四式小銃がある。

 

咲人は双眼鏡で距離を測り、目印を決めていく。狙撃手はスポッター、言わゆる観測手と呼ばれる人と共に行動する場合が多い。今回はそのスポッターがいないので事前に距離を測っているのだ。別にスポッターは必要不可欠というわけではない。双眼鏡から目を離すと、志乃に呼び止められた。

 

「咲人、はい暗視装置」

「ありがとう、姉さん」

 

そして志乃は咲人の横にある黒の銃を見る。

 

「それにしても咲人にはこっち持ってる方が似合ってるわね」

「そりゃそうさ、こっちの方が撃ち慣れてる」

「でも最悪、近接戦になるかもだけど大丈夫なの?」

「そのために連射のきく六四式持ってるんだし」

「やっぱりボルトアクション式のライフルだと弾数撃てないから大変ね」

 

咲人が持ってきたハードケースの中身は『M24 SWS』ボルトアクション式の狙撃銃である。陸上自衛隊で現在配備されている狙撃銃だ。

 

「弾数は撃てなくても精密さが売りの銃だから、それに弾数が撃てないなら一発も外さなきゃいい」

「まったく自信があるのはけっこうだけどさ」

 

志乃は呆れ顔で言った。

 

「姉さんの背中は俺が守るから安心して」

 

キラッとこれ以上ないほどの笑顔で咲人は返す。姉はどこで弟の教育を間違えたのかと頭を痛めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は流れ日の出まであとわずかとなった真夜中。南門の防衛を担当している第三偵察隊は敵の奇襲に備えて構えていた。しかし、実際に奇襲にあったのは東門であった。

 

「な、なんでぇ? ここに攻めてくるんじゃなかったのぉ? 」

 

ロゥリィは額に汗を流して何かに耐えていた。どうやら彼女特有のものらしい。そして時間がたつにつれ度合いが増していく。

 

「ダメよぉ、駄目、ダメなの。このままじゃおかしくなっちゃう!!」

 

これを聞いて何人かの男連中はアレを想像したようで、たったとか何とか言っている。志乃がさすがに思うところがあってか「まずくないですか?」と伊丹に言った。伊丹は決心する。

 

「栗林っ!」

「はいっ」

「すまないが、ロゥリィについてやってくれ男だと色々まずそうだ。あと富田二曹と俺。あと栗林弟で東門に行く。桑原曹長あとは頼む」

 

ロゥリィはすぐさま東門へ走り出した。伊丹たちは七三式トラックに乗り込み東門へ向かう。車内で咲人はM24に取り付けてあるスコープを取り替えていた。南門はかがり火がなかったため夜間用のスコープを着けていたのだが、東門はかがり火があり、さらに日の出も近いため取り替える必要があったのだ。慣れた手つきで取り替えると。トラックも東門の近くまで着いて止まった。

 

伊丹たちは六四式小銃に銃剣を取り付け、人をかき分けながら東門へと向かっていく。一方咲人は東門の正面から伸びる大通りにある大きな家の屋上に陣取っていた。東門から直線距離で約100メートル。二脚を立てスコープを覗いた。そこには一番に突っ込んで行った姉の姿があった。そして既にロウリィが戦っている。

 

M24の弾は計40発。一発も外さなければ、それだけで40人を射抜くことができる。咲人は姉に近づく敵兵の頭を撃ち抜く。少し遅れて伊丹たちが戦闘を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が始まってからしばし、咲人はスコープ越しの姉の爽快な笑みを見て沸き上がる何かを感じていた。志乃の顔はいわゆるいっちゃった表情である、

 

「姉さんエロっ・・・・」

 

普段なかなか見れない姉の顔は咲人は一瞬だけ自分が戦場にいることを忘れさせた。すぐに頬を叩いて渇を入れる。

 

しかし、そのあとは咲人は姉の援護でそれどころではなくなっていた。志乃は近接戦で次々と敵を倒していくが、それ故に敵に狙われやすい。おかげで咲人は伊丹たちの援護を放棄して、姉の援護のみになっていた。

 

「っていうか姉さん、前出過ぎだっつうの。これだから脳筋って言われるんだ」

 

また一人、頭を撃ち抜かれる。ボルトを上に上げ手前に引く、薬莢が飛び出しボルトを戻して弾丸が装填される。咲人はここまで一発も外していない。何より自分の姉に近づく輩を咲人が見逃す訳がなかった。

 

 

 

そしてまた一人、また一人と敵を撃ち抜いていく。

 

 

 

志乃はロゥリィとのコンビネーションによって大暴れしていた。志乃の背後に敵が迫る。しかし志乃は気にも止めず目の前の敵をなぎ倒す。志乃が背後の敵を無視した理由は・・・。

 

 

 

空気を切る音。

 

 

 

その直後「バシュッ」という音。

 

 

 

背後に迫っていた敵兵の頭が撃ち抜かれた。志乃は弟の援護が来るのを分かっていたからだ。

 

「咲人、ナイス援護!!」

 

志乃はそのまま戦い続ける。実際援護する立場の咲人は心臓に悪い。自分の腕を信じてくれているは嬉しいが、危険なことに変わりはない。

 

「まったく姉さんは・・・」

 

咲人はスコープから目を離して、空を見るとすでにヘリコプターからの攻撃が始まっていた。すぐにスコープを覗き援護を開始する。伊丹たちはロゥリィと志乃を担いで撤退を始めた。咲人は「俺が姉さん担ぎたかったなあ」と呟くが、伊丹たちを追おうとした、兵士を撃ち抜き伊丹たちの安全を確保する。その直後、ヘリからのガトリング砲によって敵兵は蹴散らされた。

 

ここまで来ると残った敵兵も降伏の意思を示したため、事実上の戦いの終結となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリカ攻防戦の終結直後、

 

「まったく姉さん前出過ぎだって」

「つい前に出ちゃった。っていうかむしろ活躍したし」

「援護する方はひやひやしながらやってるんだから、俺、姉さんが死んだら俺生きてけない」

「何バカなこといってんのよ、大げさ過ぎだって」

 

咲人は真面目に言ったつもりが、冗談と受け取られた。既に日も出ていて明るくなり、二人を明るく照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りが60越えました。本当にありがとうございます!まだまだ至らない文章ですがこれからも頑張ります。

感想、アドバイスなどありましたらお気軽にお聞かせ下さい。一言でも構いません、頂ければ必ず返します。


ちょっとした解説コーナー
◆何で咲人は最初からM24を装備してなかったのか?
特地での戦闘は主に遭遇戦が予想されるため、狙撃銃よりも弾数を撃てる六四式小銃が好ましいためです。六話でも使うか分からないと咲人が言っているのはそのためです。咲人も、もしもの時のために程度しか思っていませんでした。

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