イタリカ攻防戦も無事終結し、イタリカの街は復興へ向かいつつあった。ついさっき協定も締結し、自衛隊は帰還の準備をしていた。401中隊はヘリコプターで飛び去っていき、第三偵察隊はレレイたちが翼竜の鱗を売り終えるとイタリカを出発した。
イタリカの人々は第三偵察隊が見えなくなるまで、手を振り続けた。第三偵察隊の面々も手を振って返し、和やかな空気が流れていた。
それから少したったとき、前方から主に女性の騎兵集団が姿を表した。騎兵集団は先頭を走る七三式トラックに近づいて話しかけた。それに対応するのは富田二等陸曹である。片言ながら富田は話し続けるが、むしろ相手はヒートアップしていく。
先頭の七三式トラックには栗林姉弟も乗っていた。最初、咲人は面白い集団だな程度しか思ってなかったがヒートアップする縦巻きロールを見て、笑い話ではないと察した。
「姉さん、これやばくない?」
「ヤバイどころじゃない、一歩間違えたらここで戦闘だってあり得るし」
「協定結んだばかりでこれかぁ」
富田の必死の説明は相手には聞こえていないようで、効果はない。伊丹もほっとけないと思ったらしく、後方の高機動車から降りて「話せば分かる」と繰り返すが聞く耳を持たない。しまいには伊丹に剣を突きつけた。その瞬間それぞれ銃を構えようとするが、何とか耐えた。しかし、縦巻きロールはそのまま伊丹を平手打ちした。
自衛隊員たちは殺気立つが、桑原は「待てっ」と命じる。一触即発の状況の中、伊丹は「今は逃げろ、逃げろっ、行け!!」と叫ぶ。瞬時にエンジンの轟音がなり響き、土煙を上げて走り出した。
「隊長置いて来ちゃったけど・・・」
「まあ隊長なら大丈夫でしょ」
志乃の伊丹に対する扱いの雑さに苦笑いをする咲人であった。
その後、アルヌスへ帰還した第三偵察隊はすぐに報告する。協定がある以上、武力行使は控えるべきであるとの判断で第三偵察隊だけで潜入し救出することになった。
そして現在、夕刻のイタリカの城市の外、茂みの中を地に伏せ隠れ潜んでいた。
「隊長、今頃死んでるんじゃない?」
双眼鏡で街を見ながら栗林姉がぼやく。
「姉さん相変わらず厳しいなぁ」
やはり苦笑いで返す栗林弟。弟も双眼鏡を覗いて、街を眺める。
「あれでもレンジャー持ちだからな」
と富田二曹がいう。
「誰が?」
「だから伊丹二尉」
「うそ?」
「いや、本当」
「冗談?」
「マジ」
「そのマジ、ありえない~勘弁してよ~」
レンジャー徽章にあこがれを持っている志乃は、自分の気持ちが汚されたような気がした。そしてすさまじい阿鼻叫喚である。それを聞いていた咲人は「へえー。伊丹ってそんなに凄いんだぁ」と間の抜けた声を出した。
「というかあんた何それ?」
志乃は咲人を見て聞いた。
「見りゃわかるでしょ、ギリースーツ」
ギリースーツは陸上自衛隊の狙撃手及び観測手に支給されているものだ。
「別にそこまでしなくても」
「だってせっかく支給されたんだから使わないと」
「あんた馬鹿じゃないの!? これから城に潜入するのにそれじゃ目立つでしょ!?」
「行くときになったら脱ぐから大丈夫。これ使い捨てだから問題ないし」
志乃は溜め息をついて、「こいつバカだ」と呟く。
「さて、そろそろ行こうか?」
富田の声でみな腰を上げた。楽しく会話しているうちに、あたりは夕闇に包まれ丁度良い頃合いとなっていた。
志乃はやれやれと唇をとがらせる。
「また徹夜かぁ・・・・これって、お肌によくない」
と言いつつも、昨晩の立ち回りで腰のあたりがおおいに充実した感じになり、肌もいい感じに艶々になっている志乃であった。
一方、咲人はギリースーツを脱ごうとするも、どこかに引っ掛かったようでなかなか脱げずにあたふたしていた。すると志乃が近づいていくる。
「ほんとバカね」
「お願いです。助けて下さい・・・」
「わかったから、ほらじっとして」
姉の協力によって無事に脱ぐこと成功し、姉に感謝の言葉を言って一度気を引き締める。
こうして昨夜に続き、今宵の潜入救出ミッションとなったのである。
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