イタリカの警備はザルを通り越して無警戒であった。警備兵は戦闘直後で気も抜け、疲労状態。その上、面倒なお嬢様騎士団の到着。そんなこんなでいちいち人の確認が馬鹿らしくなってしまったようだ。騎士団の兵隊も知らない顔は地元の警備兵、住人程度にしか思っていない。見ず知らずの人がいても誰も気にしていない状態だ。
そんなわけでレレイ、テュカ、ロゥリィは堂々と城門をくぐり抜けることができた。テュカが精霊魔法で見張りの兵を眠らせ、外に合図を送る。それによって栗林姉弟、富田、勝本といった面々が街へ潜入する。
「以外と簡単に入れちゃったなぁ」
「調子に乗ってると、さっきみたいに失敗するから止めなさい」
「俺もあんなに脱ぐのに手間取ったのは初めてだよ」
「何であんたは変なタイミングで失敗するんだか・・・」
咲人たちは暗視装置を使って巡回兵を避けながらフォルマル伯爵邸にたどり着いた。そして、富田が窓をそっと割って中へと入っていく。
全員が中へ入りると、そこは長い廊下だった。これから捜索を始めるというタイミングで、咲人たちを挟む形で二人の人影が表れた。実際は人というよりネコ耳とウサ耳のメイドだ。
実質挟み撃ちのような状態で、咲人たちはすぐさま戦闘に備え構えた。
「イタミ様のご配下の方々ですね? イタミ様がお待ちです。こちらへどうぞ」
とウサ耳のメイドが言った。この言葉はもちろん異世界の言葉であったため、おおよその意味しか理解できなかった。しかしこちらへ敵意はないということははっきりと分かった。
そしてウサ耳メイドについて行き、扉を開けた先には伊丹がいた。そして数人のメイド。そうお気づきの方もいるだろうがネコ耳やウサ耳にずっと反応しっぱなしの隊員がいるのだ。そう倉田である。倉田は伊丹にひそひそと近づいて紹介の約束を取り付けると、そのあとは大興奮しっぱなしであった。
そうして自衛官たちはメイドたちと和やかにうち解けていった。武闘派の志乃はマミーナというメイドと気が合うようだった。
一方、咲人はメイドの人達が持ってくるお菓子を頬張っていた。
「このクッキーめっちゃ美味しい!」
美味しそうにパクパクと食べる咲人を見てメイドも嬉しそうである。
「おかわりってありますか?」
「もちろんでございます」
メイドはさらにクッキーを持ってくる。それを見て咲人はまた嬉しそうに笑った。
「ご注文のクッキーでございます」
「ありがとうございます! いやぁ、ほんと美味しい。お土産に持って帰ってもいいですか?」
「どうぞ、お持ち帰り下さい」
「ありがとうございます!!」
咲人はメイドさんが持ってきてくれた袋にクッキーを入れ始めた。一枚一枚入れていくと皿の上のクッキーに誰かの手が伸びそのまま食べられた。咲人が顔を上げるとそこにはクッキーを頬張る姉の顔があった。
「これ結構おいしいじゃん」
「でしょ! これほんとおいしいからお土産もらっちゃった」
「でもあんまり食べ過ぎると太るから、止めときな」
「俺太りにくい体質だから、大丈夫でしょ。姉さんこそあんまり食べ過ぎるとヤバイじゃない?」
「わたしだってこれくらいなら太らないわ」
「だよね。姉さんって全身筋肉だし、栄養は全部胸に・・・」
また最後まで言い終える前に、志乃の強烈な蹴りが太股に炸裂する。以前伊丹もくらったのと同じ形である。そして、志乃はクッキーを一枚口に入れてマミーナの元へ戻っていった。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ、いつものことだから大丈夫ですよ。それよりもう少しクッキーもらえますか? コダ村の子どもたちにもあげたいので」
「は、はいっ。今お持ちいたします」
クッキーを持ってきたメイドは心配そうだったが、以外にも咲人が蹴りをくらって元気そう(というより嬉しそう)だったのが何よりも驚きであった。
そしてこの時点で部屋に入ってきた縦巻きロールのボーゼスに誰も気づいていなかったのであった。
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