偽書魔法少女しゅな☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLAMAGI SYUNA MGICA 作:ジャックノルテ
SIDE 朱奈
「朱奈。起きなさい。朝よ」
暁美さんに肩を軽くゆすられてわたしは目を覚ました。
「うー・・・ん。あっ。暁美さん。おはようございます」
リビング目覚めた、わたしは慌てて起き上がるとベッドにしていたソファーに掛布団を丁寧に折り畳んだ。この掛布団やソファーは暁美さんから借りている物なのでわたしは毎朝、丁寧に畳んでいた。
そんなわたしを横目で見ながらパジャマ姿の暁美さんは寝癖の付いた髪に魔力を集中させた指を絡ませバサァとなびかせると暁美さんの髪の寝癖が一瞬で取れた。魔力を応用した一瞬の早業だった。
掛布団を畳み終えたわたしは暁美さんの早業を見ていて寝癖の付いたわたしの髪を手に載せて見た。
(今日こそは・・・。わたしも上手くやってみせる!)
決意を固めたわたしが指先に魔力を集中させると髪に絡ませてなびかせた。
「えい!きゃっ!?」
わたしの髪は暁美さんの様に寝癖が取れる事無く返って寝癖がさらに絡まり酷い事になっていた。
「うぅ・・・」
「朱奈。無理をせずに洗面台でブラシを使って寝癖を取りなさい。あなたは魔力の扱いが余り上手く無いんだから」
暁美さんは余り表情を変えずにしょげ返るわたしに告げたが少しだけ口元に笑みが浮かんでいたのがわたしにも分かった。余り表情を変えない暁美さんだけど不意に笑みを見せる事があった。一つ屋根の下で暮らしているわたしだから分かる事かも知れなかった。
ちょっぴり悔しさを感じながらもわたしは暁美さんに言われた通り洗面台に向かいそこでブラシを使って寝癖を取った。
十分位掛けて寝癖を取り、お湯で顔を洗ってリビングに戻るとテーブルの上に暁美さんが既に朝食を2人分、用意していた。
コップに入った野菜ジュースとお皿に入れられた牛乳に浸されたコーンフレークだけのシンプルないつも通りの朝食だ。
わたしと暁美さんは黙々と会話をせずに食事を取っていた。
暁美さんは食事時にもテレビを点けたりする事は無かった。
初めて暁美さんと黙ったまま食事をした時は少し怖くておどおどしていたわたしだったけれども今は会話の無い食事もある程度は平気だった。
それにそもそも量の少ない食事だから5分ほどで食べ終わってしまった。
食事が終わると洗面台で暁美さんは歯を磨き、わたしも暁美さんの後に洗面台で歯を磨いていた。
「さて・・・。朱奈。わたしは午前中、出かけるから買い物とクリーニングの受け取りを頼んだわ。財布と買う物リストと引換券はここに置いて置くわ」
リビングに戻ったわたしに私服に着替えた暁美さんが伝えて来た。
テーブルの上には財布とメモ、クリーニングの引換券、アパートの合鍵が置かれていた。
視線を戻すとわたしは改めて私服姿の暁美さんを見た。珍しい暁美さんの私服は黒いブラウスと白いフリルの多用されたスカートと言う普段の暁美さんが着ない様な年相応と言える?物だった。
「わかりました。わたし、ちゃんと買い物とクリーニングを受け取ります!」
「頼むわ。朱奈。お昼には戻るから午後はまた魔法のトレーニングをやるわ」
そう言って暁美さんは直ぐに出て行ってしまった。
休日になると暁美さんは何処かに1人で出かける事が多かった。
暁美さんが何をしているかわたしには解らなかったけれど、元々暁美さんは秘密の多い、いわゆるミステリアスな一面を持っているので居候をさせて貰っている、わたしはなるべく詮索をしない様にしていました。
わたしはテーブルの上にあるメモを見てみた。
メモには暁美さんが必要としている銅線やはんだ、電池の数が記され、他には野菜ジュースが無くなったからスーパーで2パック買って来る様にと書かれていた。
わたしは壁の時計を見てみた。まだ時間は八時を回ったばかりだった。
まず私は暁美さんから借りたパジャマを脱いで暁美さんから借りた白いワンピースに着替えた。少しだけ大きいけど問題の無いサイズだった。
銅線等はホームセンターで買うとして、野菜ジュースは近場のスーパーで問題は無かったが2つの店舗は10時に開店するのでまだまだ時間があった。
下着とタオル、パジャマを洗濯機に入れて洗濯を始めるとわたしはまずクリーニング店に向かう事にした。
確かクリーニング店は9時から営業を開始する筈だった。
この辺りを少し散歩してからでも十分に間に合うだろう。
朝焼けに包まれた見滝原市の様子は爽やかだった。
行き交う人々の顔には様々な表情が浮かび街の様子を活気付けているとわたしは感じていた。
30分ほど周囲を散策したわたしは気分良くクリーニング店に入った。
先客は誰もいないので直ぐにクリーニングに出していた暁美さんの制服を受け取る事が出来た。
「偉いわね。お姉さんの代わりに取りに来たね」
店員のおばさんはわたしを暁美さんの妹だと思っているみたいだった。
「えっと。そうなんです。あけ。じゃなくてお姉さんに頼まれて・・・」
わたしはぎこちなく返事を返す事が出来なくて少し恥ずかしかった。
記憶の無いわたしは年齢をはっきりとは解らないけれど一応は12歳だと感じていた。
暁美さんとわたしは1歳しか年が違わない筈だが一緒に買い物に出たりするとお店の店員さんの対応から見るとわたしは12歳よりも下の年齢に見られる事が多かった。
(どうしてわたしは幼く見られちゃうのかなあ・・・)
帰り道。暁美さんの制服を持ちそう思いながらわたしは一旦、暁美さんのアパートに戻ってビニール袋の封から制服を取り出しクローゼットにしまった。
今、クローゼットには3着、同じ制服が並んでいる。
見滝原中学の制服はとてもかわいいデザインでわたしも一度位は着て見たかった。
けど余り表情の変える事の無い暁美さんにそんな事を頼む勇気はわたしには無かった。
けど暁美さんは今、留守にしている・・・。
とても悪い事なのかも知れないけれどわたしは・・・。どうしても着て見たかったの。
制服を1着、手に取るとわたしは洗面台に向かった。
洗面台には大きな鏡がある為、わたしの姿を直ぐに見る事が出来た。
恐る恐るわたしは着ていた白いワンピースを脱ぐと暁美さんの制服に袖を通して見た。
少し大きいけど問題無いサイズだった。
ブラウスに袖を通してスカート履いて胸元にリボンを結び付け上着を着て見る。
10分程、掛かってわたしは暁美さんの制服を着る事が出来た。
「やっぱり少し大きいよね・・・」
わたしの期待に反して鏡に写ったのは明らかにサイズの合わない制服を着ているわたしだった。まず上着の袖の丈がまったくあっておらず手が出てこなかった。
スカートも暁美さんは膝より少し上に履けていたが、わたしが履くと膝まで届いてしまっていた。
何ともちぐはぐな姿である。
「はあ・・・。ちゃんとサイズを合わせないから駄目なのかな・・・」
ちょっとだけ悲しい気持ちになったわたしは制服を脱いで元の白いワンピースを着ると制服をハンガーに掛けてクローゼットにしまった。
洗濯をしていたタオルや下着等を乾燥機に入れて乾燥機をセットするとわたしは残りの買い物を済ませる為にアパートを出た。
暁美さんからは後、銅線やはんだ、電池と野菜ジュースを2パック買って来る様に頼まれていた。
財布とアパートの合鍵と暁美さんから渡されたメモを持ってわたしはアパートを出た。
今朝、クリーニング店に行った時の様な高揚感は無かった。
正直、今のわたしは少し気持ちが沈んでいた。
暁美さんに黙って制服を着てしまった事が原因だが、鏡に写ったわたしの姿に少しショックを受けていた。
年齢が1つしか違わない筈なのに暁美さんとわたしでは体のサイズが違っており、暁美さんの制服を着たわたしの姿は子供が無理して大人の服を着ている様にしか見えなかったからだ。
「やっぱりわたしって子供っぽいのかなあ・・・」
そんな事を呟きながらわたしは暁美さんのアパートから程近いホームセンターに向かった。
入り口で買い物かごを取るとメモに書かれた銅線とはんだ、電池を暁美さんに指定されたメーカーの物を必要な数だけを次々と入れて行く。
既に何度か暁美さんに頼まれていた事なので迷う事無く集める事が出来た。
直ぐにレジに持って行き店員さんに買い物かごを渡した。
店員のおじさんはレジに商品を通しながらわたしの顔を見ると怪訝な表情を見せた。
「お譲ちゃん。この間も同じ物をたくさん買っていったけど何に使ってるんだい?」
「えっと・・・」
店員のおじさんに質問されてわたしは言葉に詰まってしまった。
ここで電池や銅線等は暁美さんがパイプ爆弾を作る為に使っている物だ。
けれどそんな事を店員に話せないと言う事もわたしにも分かっていた。
どう説明しようか悩んだわたしは咄嗟に返事を返していた。
「お姉ちゃんが工作好きで買い物に行く時間も惜しい位、工作をしてるの!だからわたしが代わりに買い物をしてるの!」
少し声を高く出してしまい回るにいた他のお客さんや店員の注目を浴びて、わたしは恥ずかしくて自分でも分かる位、顔を赤面させていた。
でもわたしの話を聞いた店員のおじさんは納得した様子を見せた。
「そうなんだ。お譲ちゃんは優しいんだね」
店員のおじさんはそう言って値段を告げて来た。
わたしは少しぎこちない手でお金を払ってお釣りを受け取ると直ぐにホームセンターを出た。嘘を付いて罪悪感を覚えたし、少し高い声を出して恥ずかしい思いをわたしは感じていた。
ホームセンターを出て併設されているスーパーに入ったわたしは野菜ジュースを2パック買うと直ぐにスーパーを出た。スーパーにいるとプリンやゼリー等のスイーツが嫌でも目に入って食べたいと言う衝動を感じてしまうからだった。
暁美さんは毎日、朝は野菜ジュースと牛乳に浸したコーンフレークを食べていた。
お昼は学校に行く前にコンビニで購入している様だった。
ちなみにわたしのお昼もコンビニで暁美さんから渡された予算の範囲内で好きな物を買って食べている。
夜は暁美さんと手近な弁当屋さんで2人分のお弁当を買って済ませていた。
時々、暁美さんは甘い物を買ってわたしにも分けてくれる時もあるけれど・・・。
今日はたぶん、暁美さんはお昼には戻って来るからお弁当でも買って済ませるのだと思う。だからスイーツを食べる機会は無いのだろう。でも時には我慢も必要だと思ってわたしは我慢する事にした。
けれどやっぱりスイーツを食べたいなあとわたしは思ってしまっていた。
「朱奈さん」
不意にわたしを呼ぶ声がしてわたしが振り返るとエコバックを持った私服姿の志筑仁美さんがわたしの背後に立っていた。
シンプルなデザインの白いワンピースに緑色のカーディガンを羽織った志筑さんからは清楚な雰囲気を感じる事が出来て少し羨ましかった。
「あっ志筑さん。こっこんにちは」
わたしは自分でもぎこちないと思いながらも志筑さんに挨拶をした。
「こんにちは。朱奈さんは買い物ですか?暁美さんはご一緒では無いのですか?」
「暁美さんは出かけたの。でもお昼には帰って来るって」
挨拶を返した志筑さんの姿を見てわたしは改めて志筑さんは綺麗だなあと思った。
清楚で綺麗な志筑さんの事がわたしは少し羨ましかった。
良くかわいいと言われるわたしとは正反対だ。
「そうなのですか。朱奈さんは買い物を終えたのですか?」
スーパーの入り口から出て歩きながら志筑さんは問い掛けて来た。
わたしより背の高い志筑さんを見上げながらわたしは返事を返した。
「はい。頼まれた買い物は終えたからこれからアパートに帰る所なの」
「じゃあ少しお話しませんか?私(わたくし)、暁美さんとは学校でも話したりするのですけど朱奈さんとは余りお話をしていませんから少し、お話を致しませんか?」
志筑さんにそう言われてわたしは少しだけ迷った。けど暁美さんに頼まれた買い物は終えて時間は10時を少し過ぎたばかりなので志筑さんとお話をしても良いだろうと思った。
「はい。わたしも志筑さんとお話したい」
「それじゃあ、近くの公園でお話致しましょう」
志筑さんに促されてわたしは志筑さんと近くの公園に向かった。
この公園には親子連れがまばらにいる位で人は余りいなかった。
大きな木の真下に設置されたベンチにわたしと志筑さんは腰掛けた。
ベンチの真上には枝が伸びて日陰を作っていた為、外でお話をするにはちょうど良い雰囲気だった。
「前から気になっていたのですけれど、朱奈さんは何歳なのですか?」
まずは志筑さんから話を切り出して来た。
そう言えばわたしは自分の年を話した事は無かった。
「えーと・・・。わたし12歳だよ」
わたしは素直に自分の年を答えた。けど記憶を失っているから本当に12歳なのか判らなかったけれど・・・。
「まあ。朱奈さんは12歳だったのですか!?私(わたくし)、9歳位だと思っていましたわ」
志筑さんは驚きを隠さなかったがそれを聞いて私はへこんでいた。
やっぱりわたしって小さく見られるのかな・・・。
「あっ。別に悪い意味ではありませんわ。ただその・・・。朱奈さんは小柄だからどうしても12歳よりは下に見えてしまうのですから・・・」
さすがに志筑さんも言いよどんでいるみたいだった。
わたしと志筑さんの間に沈黙が降りてしまう。
ふとわたしは清楚な雰囲気を持つ志筑さんにオシャレと言うか服を上手く着るコツは無いかと聞いてみる事にした。
「ねえ志筑さん。志筑さんは制服も上手く着ているから、服を着こなすコツを知っているの?」
「服を上手く着こなすコツですか?そう言われても私(わたくし)は自分の身の丈にあった物を着る様に心がけているだけなのですが・・・。朱奈さんは何か着こなしで悩みでもあるのですか?」
志筑さんの答えは明確だけどわたしの悩みまで見抜かれてしまいました。
ここで本当の事を伝えるかどうかわたしは悩んだけど、志筑さんなら話しても大丈夫な様な気がしていた。
「あの・・・。暁美さんには内緒にして欲しいんだけど・・・」
そう言ってわたしは志筑さんの反応を見てみる事にしました。
暁美さんに内緒に出来ないと言われたらどうしようかと思いながら。
「内緒ごとですか?良いですわ。暁美さんには内緒にしてあげますわ。それに」
そう言って笑みを浮かべた志筑さんは右手の人差し指を唇の前で立てると言葉を続けました。
「人は誰でも隠し事を持っている物ですから。私(わたくし)だって暁美さんや朱奈さんに隠している事があるのですよ」
志筑さんの笑顔を見てわたしは話した。
クリーニング店から引き取った暁美さんの制服を見て前々から見滝原中学の女子制服を着て見たかったわたしは暁美さんが出掛けているので着てみたのだが散々な結果となってしまった事を・・・。
大人の服を子供が無理をして着ている様にしか見えなかった事をわたしは少し俯きながらも包み隠さずに志筑さんに伝えた。
志筑さんは相槌を打ちながらわたしの話を聞き、わたしの話を聞き終えると話し始めた。
「そうなのですか。朱奈さんも私(わたくし)や暁美さんが着ている制服を着て見たかったのですか。確かに暁美さんの制服では朱奈さんには大き過ぎるかも知れません。見滝原中学の制服はある程度余裕のある作りになっていますけど本人以外には体格の似ている人人で無いと着回しがし辛いと言うデメリットがあるのですから」
志筑さんの説明は簡潔でわたしは何も言う事が出来なかった。
自分がいかに浅はかだったのかをわたしは思い知る事になってしまった。
「でも制服に幾ら余裕があると言っても成長期等で急激に背が伸びたりするとやはり買い換えなければならない時もあるのですけど・・・。そうですわ!朱奈さん。これから私(わたくし)の家に来ませんか?」
急に志筑さんにそう言われてわたしは直ぐに返事を出来なかった。
「朱奈さんのささやかな願いを私(わたくし)が叶えて差し上げますわ。さあ、行きましょう!」
「えっ。志筑さん。何をするの?」
「それは行って見てからのお楽しみですわ。さあ朱奈さん。行きましょう!」
そう言って志筑さんはわたしの手を握って立ち上がると歩き始めた。
わたしも志筑さんの歩調に合わせて着いて行く。
志筑さんの勢いに押されたわたしは歩いている間、何か話す事が出来ませんでした。
数十分程、歩いて志筑さんの住んでいる高台にある住宅街に辿り着きました。
迷う事無く志筑さんは車庫のある大きな家の1つに向かい取り出した鍵で玄関を開きました。そう言えばわたしは志筑さんの自宅を始めて見た。
「今日は家の者もおりませんので朱奈さんも緊張する事はありませんよ」
志筑さんは笑顔でそう言ってくれたけどわたしは暁美さんのアパート以外で、誰かの家に入るのは初めてだったのですこし緊張していた。
志筑さんに手を引かれてわたしは志筑さんの部屋に入った。
「朱奈さん。ちょっと待っていて下さい。確かこの辺りに」
志筑さんはそう言って洋風のタンスの引き出しを開いていた。
わたしは呆気にとられてその様子を見ていた。
「あっ。ありましたわ。これなら朱奈さんにもピッタリな筈ですわ」
そう言って志筑さんが取り出したのは少し使い古した跡のある見滝原中学の女子制服だった。
けれど志筑さんとわたしではやはり体格が違い過ぎる。
「でも志筑さんのじゃわたし・・・」
「大丈夫ですよ!この制服は今の私(わたくし)の体より小さな物ですから」
ちょっとむくれたわたしを見て志筑さんは慌てて説明を始めた。
「実は私(わたくし)、一年前と比べると背も5センチも伸びて体が成長期たったのです。だから今年の初めに制服を新調しましたの。この制服は成長期前の身体に合わせたサイズですから朱奈さんにもピッタリだと思いますわ」
志筑さんの丁寧な説明を聞いてわたしは自分でも分かるほど笑みが浮かんだのが分かった。
「ありがとう。志筑さん。わたし早速、着てみるね」
「礼には及びません。私(わたくし)が手伝って差し上げますわ」
「ひゃ!?」
そう言って満面の笑みを浮かべた志筑さんはわたしの背後に回ると手早く着ていた白いワンピースを脱がせてしまった。
それからわたしは志筑さんに促されるままにブラウスに袖を通してスカートを履かされ上着に袖を通すと、最後に胸のリボンを志筑さんが丁寧に結んでくれた。
「これで良いですわ。とってもお似合いですわ」
わたしの背後に立っている志筑さんはわたしの肩に両手を置きながらそう言ってくれた。
志筑さんの部屋にある大きな姿見には見滝原中学の制服を着用したわたしの姿が写っていた。暁美さんの制服を見に付けた時の様に無理をして着ている感は無くちゃんと身体にある程度、馴染ませて着用していた。
「はあ。志筑さん。本当にありがとう!」
わたしは自分で作れる最高の笑顔を志筑さんに向けていた。
「良いのですわ。朱奈さんの笑顔が見られて、私(わたくし)も嬉しいですわ」
返事を返しながら志筑さんもわたしに笑顔を向けていた。
その時、わたしは志筑さんの背後にある壁掛けの時計が目に入った。
もう11時半を回っていた。
「あっ!?わたし、そろそろ帰らないと!暁美さんが帰って来るから!」
そう言ってわたしは制服を慌てて脱ごうとしたが、志筑さんはわたしの両肩に優しく手を乗せて来た。
「朱奈さん。慌てる事はありませんわ。私(わたくし)が脱ぐのをお手伝いします。それと暁美さんがお昼に帰って来るのであれば、お伝えして欲しい事があるのです」
志筑さんはわたしの真正面に顔を寄せて来た。物凄く近い距離だ。ほんの20cm程しか離れていない。物凄くドキドキする。こう言う場面で思い浮かぶのは恋人同士がキスをするシーンだけれどわたしと志筑さんは女の子だし、そもそも女の子同士でそんな事が起こると思えなかった。
志筑さんとキスをする訳では無いけれどこのまま唇が重なり合ってしまう様な想像をわたしは抱いてしまっていた。
(そうなったらわたしどうしたら良いの!?)
そんな事を考えたがそんな事はは起こり得ない筈なのにである。
「しっ志筑さん。あっ暁美さんに伝えて欲しい事って?」
絶対にわたしは顔を真っ赤にしている。それだけは確信出来た。目の前には真剣な表情をした志筑さんがいるのにわたしは顔を赤面させていた。
「簡単な事ですわ。暁美さんが午後に帰って来るのなら、私(わたくし)と一緒に見滝原市をパトロールして欲しいと言う誘いです」
「確か午後は暁美さんと魔法の訓練をする予定だから暁美さんが良いと言えば大丈夫だと思うけれど・・・」
わたしは少し言いよどんでいた。暁美さんがこう言う提案を聞いて受け入れるかどうかわたしには分からなかったからだ。
「大丈夫ですわ。魔法の訓練をするのなら私(わたくし)も訓練に参加をいたしますわ。魔法の訓練を終えた後に見滝原市をパトロールするのであれば暁美さんも了承すると思いますわ」
物凄く顔の距離が近い志筑さんにそう言われるとわたしは、何故だか分からないけれど変な威圧感を感じてしまい断わると言う事が出来なくなってしまっていた。
「わっ分かりました。わたし、暁美さんに話して見ます・・・」
「ありがとうございます。じゃあ早速、着替えの方を致しましょう」
名残惜しかったけれど笑顔の志筑さんに促されるままにわたしは手早く見滝原中学の制服を脱ぎ、元の白いワンピースに着替えました。
そのまま野菜ジュースや電池等の入った買い物袋を持つとわたしは志筑さんを先頭に玄関へと向かいました。
「じゃあ朱奈さん。また後で会いましょう。待ち合わせは先程、私(わたくし)と話した公園に1時に致しましょう」
玄関まで着てくれた志筑さんはわたしにそう告げました。
「はい。わたし、暁美さんに伝えてみるね」
「では朱奈さん。また午後に会いましょう」
「はい。志筑さん。えっと。制服を貸してくれてありがとう!」
「これ位、お安い御用ですわ。ではまた後ほど」
「はい!」
玄関から見送る志筑さんに手を振りながらわたしは少し駆け足で暁美さんのアパートを目指した。