偽書魔法少女しゅな☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLAMAGI SYUNA MGICA   作:ジャックノルテ

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幕間7 秘密を知っていたのですか

 SIDE 暁美ほむら

 翌日・・・。暁美ほむらは学校から帰ると机の上で黙々とパイプ爆弾を作る作業をしながら脇に視線を向けた。脇では椅子を背もたれにして朱奈が毛布を頭から被って押し黙った様子を見せていた。

 アイリス・アザレアによって自分が《魔法少女》の奇跡によって作り出された存在だと知った朱奈のショックは大きい様だった。

 自分には家族がいない。記憶を失ったのでは無く記憶その物が存在しない。この世に真の意味で一人ぼっちの存在だったと付き付けられた朱奈は部屋に戻るとずっと何事かを考え蹲っていた。

 不意にインターホンが鳴り響いてほむらは作業を中断すると玄関のドアを少しだけ開いた。そこには志筑仁美が立っていた。

「暁美さん。少しお話をしてもよろしいでしょうか?」

「良いわよ。外で話しましょう」

 そう言って2人で近くの公園にやって来た。時刻は夕方で人の数もまばらな時間帯だった。2人で手近なベンチに座る。

「志筑さん。鹿目さんの様子はどうなの?」

 さりげなくほむらは仁美に気になっていた事を問い掛けてみた。

「帰りにお見舞いに行って見たのですが、まどかさんは大丈夫でしたわ。ただ昨日は急に道で倒れた事にしたので今日、病院で精密検査に行ったと言っていました」

 志筑さんの答えを聞きながらほむらは昨日の事を思い出していた。

 昨日はあれからほむらは朱奈を家まで連れて帰り鹿目まどかの事は志筑さんに任せた。

 朝のホームルームでまどかの事は聞いていたが様子が気になったので志筑さんにお見舞いに行って貰いまどかの様子を確かめていた。

 まどかのお見舞いをした後に志筑さんと昨日の事を話し合う事にしていた。

「それで暁美さん。朱奈さんの様子は・・・?」

 志筑さんは心配そうな表情を見せていた。ほむらは朱奈が自分は一人ぼっちだと悩んでいるのかと思っているのかと思ったがこうして心配してくれる人がいるのなら朱奈は一人ぼっちでは無いと思えた。

「あの子は・・・。今、ずっと考え事をしているわ」

「そうですか・・・。暁美さんは朱奈さんの秘密を知っていたのですか?」

 志筑さんの言葉にほむらは少し驚いていた。

「どうしてそう思うの?」

「暁美さんは朱奈さんの出生の秘密を聞きながらも驚いた様子を見せませんでした。そこから推測してみただけの事です」

 そう語った志筑さんの言葉にはほむらでも感じ取れる確信があった。

(嘘を付いても無駄よね)

 ほむらはそう思うと言葉を紡いだ。

「そうよ。理由は話せないけれど私は朱奈の秘密を知っていたわ。けどれ私は本人に伝えるつもりは無かったわ」

「どうしてですか?」

「これは・・・。朱奈が自分で知ろうとしなければいけない問題よ。他人が簡単に教えて良い問題では無いわ。朱奈が自分の意思で知りたいと願うのならば教えるべきだと私は思うわ」

 ほむらの言葉に志筑さんは言葉を簡単に返す事が出来ない様子だった。

「そうかも知れませんわね・・・。暁美さんの言う通りかも知れません・・・」

 ほむらと志筑さんの間に重い沈黙が流れた。

「やあ。暁美ほむら。志筑仁美」

 不意に背後から2人に聞き慣れた声が聞こえて来た。

「キュウべえ」

「キュウべえさん」

 2人が振り返るとそこには何時の間にか現れたキュウべえが2人を見つめていた。

「2人とも僕に質問があるんじゃないかと思ってね」

 キュウべえの言葉にほむらは顔をしかめる事を抑えられなかった。けれども質問があるのは確かである。

「あのアイリス・アザレアと言う《魔法少女》の事をあなたは知っていたの?」

「アイリスの事は知っていたよ。何せ彼女は僕が契約をした覚えの無い《魔法少女》だからね」

 ほむらの反応を窺う様にキュウべえは答えたがほむらはほむらはハッとしていた。私や朱奈と同じくキュウべえが契約した事を覚えていない《魔法少女》・・・。ならばその正体は・・・。恐らく私や朱奈と同じ存在・・・。そう言えば朱奈は自分と一緒に過去へ来た少女がいたと言っていたけれどその少女とは時間を超える為の移動空間ではぐれたと言っていた。その少女こそがアイリス・アザレアでは!?当たっているかは分からないがこの推測は的中していると感じられた。

「キュウべえさん。アイリスさんは一体、何をしようとしているのですか?」

「それは僕にも分からない。アイリスは気配を完全に絶つ事が出来るからね。僕にも所在は感知出来ないし何を考えているのかも分からない。だからくれぐれも注意した方が良いと思うよ」

 志筑さんの質問にキュウべえは簡潔に答えた。感情を持たないキュウべえだったがアイリスの存在を好ましく思っていないのは確かだとほむらには感じられた。

「なら少なくとも今は私たちの味方でいてくれる訳ね?」

 ほむらは念を押す様にキュウべえにそう告げた。

「そうだね。けど僕は基本的には君たち《魔法少女》の味方だよ」

 キュウべえの返答を聞いてもほむらは信じる気にはならなかった。けれども今はあのアイリス・アザレアを倒す事が先決でもあった。

「質問は終わったわ。消えなさい」

「分かったよ。用があったらまたテレパシーで呼んでくれれば良い。またね。暁美ほむら。志筑仁美」

 そう言ってキュウべえは立ち去って行った。

「もう朱奈は戦えないかも知れないわね」

 キュウべえが去ると同時にほむらはそう呟いた。それを聞いた志筑さんは思案した表情を見せてほむらに告げた。

「そうかも知れません。私(わたくし)も自分が信じていた家族や友達が全て偽りだったとされたら朱奈さんの様なショックを受けるかも知れません・・・。けれど・・・。私(わたくし)は戦います。私(わたくし)の大切な友人に危害を加える様な人を私は放っておく事は出来ません!」

 友達に危害を加えられた事に志筑さんは本当に怒っていた。近くにいるだけで怒りを感じ取る事が出来た。

「そうね・・・。私もアイリス・アザレアを許す事は出来ないわ。もしまた現れる様なら私と志筑さんで止めましょう」

「はい!」

 志筑さんの返事を聞いてほむらは安堵を覚えていた。少なくとも志筑さんだけは戦う事を放棄しなかった。けれども朱奈はまた戦う事が出来るのかどうか・・・。それはほむらには分からなかった。

 

 

 

 

 志筑さんと別れてほむらが自宅に戻ると朱奈はほむらが出た時と同じ様に頭から毛布を被ったままだった。

「朱奈。起きているの?」

 ほむらが声をかけると僅かに毛布が動いた。どうやら起きてはいるようである。

「志筑さんがあなたの事を心配していたわ・・・。あなたはずっとそうやって塞ぎ込んでいるつもりなの?」

 ほむらの質問に朱奈は答えなかった。否。答えられなかったのかも知れなかった。

「朱奈。たとえあなたが奇跡によって生まれたのだとしてもあなたが朱奈である事は変わり無いわ。巴マミや鹿目まどか。それに佐倉杏子はたとえあなたが奇跡によって生まれた存在だと知ってもあなたを大切に思ってくれるわ」

 ほむらにはそう言い切れる確信があった。巴マミと鹿目まどかは朱奈を妹の様に可愛がっていた。奇跡で生まれたと知ってもそれは変わらないだろう。

「暁美さんはわたしが奇跡で生まれたのを知っていたの?」

 朱奈からの質問にほむらは少し驚いたが素直に答える事にした。

「ええ。あなたが奇跡で生まれた事は知っていたわ。けれどそれは言葉として聞いただけで真実とは思っていなかったわ」

「どうして教えてくれなかったの?」

 毛布を被ったまま朱奈は問い掛けを続けた。

「私にはあなたが本当に奇跡で生まれたのかと言う確証が無かったわ。それにこれはあなた自身が知ろうとでもしない限り私から口にして良い問題じゃあ無いわ」

「・・・・・」

 ほむらの答えに朱奈は沈黙していた。ほむらの言葉の正しさに反論する事が出来ない様だった。

「朱奈。あなたは鹿目まどかを助けたいと願ってその力を手に入れた筈よ。あのアイリス・アザレアは再び鹿目まどかに何らかの行動を起こす筈よ。その時、塞ぎ込んでいた事を後悔しても遅いわ。その魔法が何の為にあるのか思い出しなさい」

 そう告げてほむらは再び机に向き直るとパイプ爆弾を作り続けた。朱奈の様子は変わらない。けれども鹿目まどかを守る為にはもう一度、朱奈に戦って貰う必要があった。

(まどかを守る為なら私は朱奈や志筑さんに恨まれても構わない)

 そう思いながら暁美ほむらは黙々とパイプ爆弾を作って行った。

これから先の戦いの為に。

 

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