偽書魔法少女しゅな☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLAMAGI SYUNA MGICA   作:ジャックノルテ

19 / 25
第10話 何も解らないじゃあ不利やろ

 

 高速道路の上を通る跨道橋は夕方と言う時間帯も関係しているのか人は歩いてなかった。

 けどわたし達、3人にはとても好都合だった。わたしと暁美さんと志筑さんは《魔法少女》としての姿のままで跨道橋へ来たのだから目撃者はいないに越した事は無かった。

「それにしても・・・。一体、アイリスさんは何処にいるのでしょう?」

「そうね・・・。《魔女》を操れるのならば結界の中でしょうけど、そうなるとまずは入り口を探さないと行けないわね」

 志筑さんの疑問に答える暁美さんの声を聞きながらわたしは周囲を見渡していた。

「お嬢さん方。アイリス・アザレアを探してるんだろ!」

突然、少年と思しき元気の良い声がわたし達3人に向けられて来た。わたし達が声のする方に振り向くと跨道橋の手すりの上に耳の長い見覚えのあるモノが座っていた。

「キュウべえ?」

 わたしは思わずそう呟いたけれど直ぐに違和感を覚えた。白い頭に額に赤い丸模様、黒い耳と黒い体、それに首にはマフラーの様な物を伸ばしている。

「違う。違う。おいらはジュウべえ。キュウべえとは別の存在さ。まあ、兄弟みたいなモノだな」

 そう言ってジュウべえはニヤリと笑った。

(笑った!?)

 キュウべえは殆ど表情を変化させる事は無かったにも関わらずこのジュウべえは割と表情を変化させるみたいでした。わたしと同じ驚きを暁美さんと志筑さんも感じている様でした。

「まあオイラの事は置いといてお嬢さん方。暁美ほむらと志筑仁美。それに朱奈で間違い無いんだろ?だったらオイラに着いて来な。アイリスの所まで連れて来る様にとアイリスに言われているからな」

 そう言ってジュウべえは歩道の上に降り立った。

「さあお嬢さん方。付いて来な!」

 わたしは思わず暁美さんの方を見た。志筑さんも黙って暁美さんに視線を向ける。わたし達3人の中では一番、《魔法少女》としての経験がある暁美さんがリーダーでもあった。

「行きましょう」

 暁美さんがジュウべえの後に続いたのを見てわたしと志筑さんも続いた。

 やがて跨道橋のちょうど真ん中で《魔女》の結界の入り口を見つけた。

「アイリスならこの中だ。聞いとくが、覚悟は出来ているか?」

 暁美さんが迷い無く頷くのを見てわたしと志筑さんも頷いた。暁美さんは黙って右手を結界に翳すと結界の入り口を開いた。わたし達3人はジュウべえと共に結界の入り口を潜った。

入り口の先には長い下り階段があった。わたし達は黙ってジュウべえの後を追いながら階段を下りて行った。

階段を抜けた先には古代の闘技場、コロッセオと言われる円形闘技場の客席に出た。

 戸惑うわたし達3人に対してジュウべえは愉快そうな笑顔を見せてこう告げた。

「まずは小手調べだ。アイリスが用意した2体の《魔女》の相手をして貰うぜ」

ジュウべえが歯を見せてにっと笑うと同時にコロッセオの真ん中にある闘技場に2体の《魔女》が現れた。新たに見る2体の《魔女》が大人しく闘技場に立っていた。

「《趣の魔女、シズル》と《猫の魔女、ステーシー》。まずはあいつらを倒して貰うぜ」

 ジュウべえの言葉にわたしがボーガンを構え志筑さんも身構えた。けれど暁美さんが右手を上げてわたしと志筑さんを制した。

「その必要は無いわ」

 同時に暁美さんが左手の盾を回転させると同時に2体の《魔女》、《趣の魔女、シズル》と《猫の魔女、ステーシー》は前触れ無く起こった大爆発に飲み込まれて2つのグリーフシードを落として崩れ去った。

「ありゃー。随分とあっけなくやられたな。まあ良いや。着いて来な」

 ジュウべえは少し呆れ気味に言いながらも先へ進む素振りを見せたが途中で止まってこう付け加えた。

「そうそう。グリーフシードを拾うのを忘れちゃ駄目だぜ。お嬢さん方」

 ジュウべえの言葉を聞いて志筑さんは瞬時に跳躍するとグリーフシードを拾って戻って来た。

「じゃあ先へ進むぜ。ジェムの穢れを落とすなら今の内だぜ」

 ジュウべえは何故か親切にそう言った事をわたし達3人に説明していた。

 暁美さんは黙って志筑さんから《鎧の魔女》のグリーフシードを受け取るとソウルジェムの穢れを落とした。

「朱奈と志筑さんも落としておいた方が良いわ。これから先、どうなるか解った物じゃ無いわ」

 暁美さんに促されてわたしと志筑さんもソウルジェムの穢れを落とした。

「使い終わったんならオイラに渡しな。キュウべえの様に処分はしてやるよ」

 暁美さんがジュウべえに使い終わった《鎧の魔女》のグリーフシードを投げ付けるとジュウべえは器用に額の赤く丸い模様で受け止め、キュウべえの様に食べる様に処分してしまった。

「さあ3人とも。アイリスが待っているぜ」

 ジュウべえの後にわたし達3人は続いた。

 コロッセオを出るとそこには様々な建物が建っていた。洋風、和風、巨大なビル、日本家屋、インド風の宮殿、ピラミッド、中世風の城、砂漠、富士山とエベレストと枚挙するときりが無い位、無秩序な空間だった。

「アイリスはこの奥の博物館にいる」

 ジュウべえはそう告げて迷い無く建物の間を抜けて行く。暁美さんを先頭にわたし達3人は黙ってジュウべえの後を着いて行った。不思議とこの結界の中では《使い魔》がわたし達の前に現れる事が無かった。

 10分ほど歩くと広い空間の広がる階層に行き着き広場の真ん中に小さな博物館と思しき建物が見えて来た。視力を少し強化して見てみると小さな看板にAngelica Bears(アンジェリカベアーズ)と書かれていた。

 博物館の入り口にパイプ椅子と折り畳み式のテーブルが置かれてそこに紫色の髪を生やしたショートヘアーの少女で《セーラー服を着た少女》ことアイリス・アザレアが頬杖を付いて座っていた。今はセーラー服では無くボーイッシュな服装をしている。

「アイリス。3人を連れて来てやったぜ」

 ジュウべえはそう言ってアイリスに駆け寄った。

 わたし達3人はアイリスの前で足を止めていた。そんなわたし達をアイリスは値踏みする様に見つめ口を開いた。

「思ったよりは速かったやね。ご苦労さん。ジュウちゃん」

 ジュウべえに答えながらペットボトルのジュースを片手に振り向いた紫色の髪を生やした少女の顔は間違い無くわたしと一緒に未来から来た少女、アイリス・アザレアだった。

「まどかは何処?」

 暁美さんが一歩踏み出そうとした瞬間に菱形の鎖がアイリスの前に張り巡らされて壁を作ってしまった。

「まあ、待ちやしゃい。鹿目まどかなら無事や。ほい」

 アイリスが片手を上空にあげると魔方陣によって鹿目さんの姿が映し出された。何処かの部屋のベッドに横なって眠っている姿が映し出されている。

「今はまだウチに危害を加えたら待機している《魔女》が鹿目まどかを襲う魔方陣を敷いとるからウチに何かしない方が得えと思うけど?」

 それを聞いて暁美さんは押し黙った。

 志筑さんも険しい顔をして何も語らない。

 わたしはどうしたら良いのか分からなくてアイリスの方を見つめていた。

「そう。それで得えんや。じゃあまずは・・・。話したい事があるから話させて貰うで。戦うのはその後でも得えやろ。暁美ほむらさん、志筑仁美さん、朱奈。ウチの名前、アイリス・アザレアと言う名前を聞いて何か引っかかる事は無いんか?朱奈」

「え?」

 アイリスに名指しでそう言われてもわたしには全然、心当たりが無かった。暁美さんと志筑さんも怪訝な表情でわたしとアイリスを見ている。

「そうやな。難しかったかも知れないやな。じゃあウチから教えたるわ」

 そう言ってアイリスは立ち上がるとソウルジェムを右手に出現させた。そのソウルジェムは始め紫色をしていたけれど徐々に色合いを増やして行き虹色へと一瞬、変化して直ぐに戻った。

「ウチの名乗った、アイリスはギリシャ語で虹を意味する。これは私のソウルジェムに由来させたんや。まあそれは置いといて、ウチが言いたいのはアイリスがアヤメ科の植物。アザレアはツツジ科の植物だと言う事や。もう解ったやろ?」

 そこまで言われてわたしは気が付いた。アイリス・アザレアがアヤメ・ツツジとも読めると言う事に。

「アヤメとツツジ!?どうして綾女ちゃんと同じになるの!?あなたは誰なの!?」

 かつて無い違和感をわたしは相手に抱いていた。

(アイリスは綾女ちゃんと関係があるの!?)

「そうやね。一言で言うならウチは朱奈を作り出した筒地綾女の記憶を持ち合わせていると言う事やね」

「綾女ちゃんの記憶を!?」

「そうや。筒地綾女の魔法を使った実験によってウチは筒地綾女の記憶を引き継いでいる。アイリス・アザレアは朱奈に向けた暗号ゲームだったけれど朱奈が分からなかったのは残念やな。本当の名前は別にあるけれどそれはまあどうでも良い事やな」

 そう言って椅子から立ち上がるとアイリスは《魔法少女》としての姿に変身した。髪の色は紫色で黒い衣装を身に纏い右目にはソウルジェムを眼帯の様に掛けていた。最初は紫色だった髪とソウルジェムは見る見ると虹色へと色を変えて行く。

「さて。ここからが本番や。けれどその前にウチの目的を話させて貰う」

 不敵に微笑むアイリスにわたしは狂気を感じていた。暁美さんも志筑さんもわたしと同じ様に怖気を感じていたのか硬い表情を見せている。

 わたし達が肌で感じるアイリスの魔力はわたし達とは比べ物にならない大きさを持っていたのだ。

「ウチは3人の目的は察しも付くし予想も出来る。けれどそっちは何も解らないじゃあ不利やろ?だから話したる。まずは・・・」

 言いながらアイリスは右手をわたし達3人に翳した。わたし達3人は何か攻撃が来る物だと思わず身構えた。しかし何も攻撃は来なかった。けれどもわたしのソウルジェムが何かに反応して光を増していた。

「何!?」

「朱奈さんも!?」

 脇を見ると志筑さんのソウルジェムも同じ様な反応を示していた。その様子を暁美さんは驚いた様子で見つめている。

「どう?驚いたみたいやね。ウチの魔力に反応するのは当然や。朱奈。志筑さん。あなた達2人はウチが《魔法少女》としての資格を与えたんだから!」

「!!」

 そう言われてわたしはアイリスと初めて会った時に起こった事を思い出していた。確か首に色々な色をした鎖が巻き付いていたのだ。その直後にアイリスは現れた。確かにわたしは本来、《魔法少女》としての契約が結べない筈なのに契約を結べた。あの時、首に巻き付いて来た鎖の作用でわたしは契約出来る様になったの?と言う事は志筑さんにも同じ様な事が起こったのかも知れなかった。

「まあタネを明かせば簡単な話や。ウチの願いは《他人の因果律や魔法を奪う事》やから。奪った因果率や魔法はウチが取り込む事も出来るけど逆に他人へ入れ込む事だって出来るんや。この能力のお陰でウチは朱奈を利用してあの未来から脱出する事が出来たんや。おかげで多くの《魔法少女》や《魔法少女としての素質を持った少女》を殺して因果律を奪えたから感謝しなきゃいけないやね」

 愉快そうにアイリスは語っていた。だからアイリスはわたしにキュウべえと契約を結ばせたんだ。あの未来から逃げ出す為に。

「やはりあなたが朱奈と一緒に未来から来た少女だったのね。因果律を取り込む・・・。まさか!?あなたの狙いは!」

 突然、暁美さんはハッとした表情をして叫んだ。

「どうやら気がついたたみたいやね。そや。ウチの目的は破格の因果律を持つ鹿目まどかの因果律を奪う事や」

「そんな事の為にまどかさんを拉致するなんて・・・。許せませんわ」

 志筑さんは言葉の怒気を強めていた。

「おお、怖い。まあ怒るのも無理はないやね。因果律をウチに取られた相手は大抵の場合、死んでしまうやね。良くても意識不明や。志筑さんも見た筈や。見滝原病院の前で」

 そう言われて志筑さんはハッとした表情を見せた。

「まさか・・・。あなたがさやかさんをあんな目に!?」

「そうや。と言ってもウチが気まぐれに他人の因果律を志筑さんに投げ付けなかったらさやかと言う人は助からなかったやろね」

「けれどそれはあなたが、さやかさんから因果律を抜いたからでしょうに!」

 志筑さんは凄く怒った表情を見せていた。その顔はわたしが今まで見た中で一番、怖い顔だった。

「まるで般若やね。まあさやかと言う人の因果律はウチにも取り込めたけれど鹿目まどかの因果律は取り込めるかどうかはウチにも分からない。因果律にも相性があるさかい。けれど取り込める可能性がある以上、ウチはやらして貰うで」

 ニヤリと唇を歪めたアイリスはそう語った。

「あなたは一体、何になろうとしているの?因果律を奪って最強の《魔法少女》にでもなりたいの?」

 暁美さんの質問に突如としてアイリスは笑い出し始めた。

「あはははははははは。まさかそんな事を目的にしている訳が無いやろ。ウチの目的はその先や。《魔法少女》の先は一つしか無いやろ?」

 その台詞と同時にアイリスは手の平から濁ったソウルジェムを取り出した。既にかなり穢れが進行しているがそのソウルジェムの色は黄色に見えた。その上部にある飾りは見覚えのある花の形をしていた。

「まさかそのソウルジェムは!?」

「あれは!?」

 暁美さんと私は驚きの余り言葉を続けられなかった。そのソウルジェムはマミさんの物だったのだ。

「ふーん。どうやら知っているみたいやね。そう。これは巴マミのソウルジェム。そろそろ羽化する時や無いかしら?」

 そう言ってアイリスが真上にマミさんのソウルジェムを投げ付けた。と同時に先端がCを描く様に曲がった杖を左手に出すと何らかの魔力をソウルジェムへと送ったのがわたしの目にも見えた。

「さあ。ウチが操る《魔女》の誕生を喜びいさい」

 マミさんのソウルジェムは穢れを通り越してソウルジェムを突き破ってグリーフシードを生み出した。グリーフシードから魔力が放出され人型に形を変えて行く。あっという間に生前のマミさんの面影を持つ《魔女》が誕生した。鍔の広い黄色い帽子とグリーンのワンピース、リボンの様な腕を持った《魔女》だ。

「《おめかしの魔女》の誕生だな」

《魔女》の誕生を見届けたジュウべえがアイリスの足元でそう言った。

 わたしと暁美さんは新たに出現した敵に驚いていた。

 けれど脇にいた志筑さんはそうでは無かった。

「どういう事ですの?どうしてソウルジェムからグリーフシードが?まさか・・・。今まで倒した《魔女》と言うのは全て《魔法少女》だったと言うのですか?」

 志筑さんは驚愕の表情を見せていた。《魔女》の正体を知っていたわたしと暁美さんは直ぐに答える事が出来なかった。その様子を察したのかアイリスが語りかけた。

「どうやら志筑さんは知らない様やね。今ウチが見せた通りや。《魔法少女》はいずれ《魔女》となる存在。ソウルジェムの穢れがグリーフシードで落とせない程、溜まり切った時、ウチたちは《魔女》と化す。世界に対する恨み妬みから呪いを増幅させて《魔女》と化すケースもあるけれど・・・」

「そんな・・・。私(わたくし)達は《魔女》となる為に《魔法少女》となったのですか!?」

 志筑さんの叫びにアイリスは言葉を返し続けた。

「そうとも言えるやな。1つだけ付け加えるのなら《魔女》の一部は《使い魔》が人間を捕食して成長したモノや。だから全ての《魔女》が元々《魔法少女》と言う訳や無い。最も《魔女》から分裂した《使い魔》が成長して《魔女》となるのだから元は《魔法少女》の一部だったと言う事やな」

「一体、どうしてそんな!?」

 狼狽した志筑さんを見ながらアイリスの話は続いた。

「全てはこの宇宙の為やさかい。キュウべえ、本当の名前はインキュベーターと言う地球外生命体のやけど。インキュベーターが私たちに奇跡と引き換えに《魔法少女》にして最終的に《魔女》となって貰うのは訳があるんや。全てはこの宇宙の為や」

「宇宙!?」

 突如として宇宙と言う単語が出て来てわたしは驚いた。それにキュウべえが地球外から来た生命体だった!?わたしと志筑さんは話の規模の大きさに驚いていた。暁美さんだけはただ黙ってアイリスを睨み付けていた。

「インキュベーターの話によればこの宇宙のエネルギーは目減りしていく一方らしいや。だからこそ宇宙の寿命を延ばす為に私たちを《魔法少女》にする。第二次性長期やったか?その年齢の少女が持つ感情の希望と絶望の相転移がソウルジェムをグリーフシードに帰る瞬間に莫大なエネルギーが発生するらしいや。それを回収するのがインキュベーターの仕事やさかい」

 アイリスの言葉にわたしも志筑さんも押し黙っていました。余りにも唐突に壮大な話をされてわたしと志筑さんは何も言う事が出来なかった。けれどもわたしよりも志筑さんの方がショックを受けている事が確かだった。わたしは魔法少女が魔女となる事を知った上で契約をしていたけれど志筑さんはその事を知らずに契約をしていたのだから。

「まどかの因果律を奪いたいと言うのは分かったわ。あなたはそれで何がしたいの?《魔法少女》が最後には魔女になると言う事を知りながら何故、まどかの因果律を狙うの?」

 それまで黙っていた暁美さんが急にアイリスに質問をぶつけた。確かにわたしも同じ事を疑問に思っていた。《魔法少女》が《魔女》になる事を避けられないのなら何故、鹿目さんの因果律を奪おうとするのだろう?奪った所で《魔女》になってしまえば意味は無いのでは無いだろうか?

「ふふ。あははははははははははは」

 突然、アイリスは愉快そうに笑い始めた。笑いが収まるとアイリスは唇に笑みを浮かべながら言った。

「鹿目まどかの因果律を奪おうとしている理由は簡単や。ウチは見たんや。あの破壊された見滝原で鹿目まどかが地球を滅ぼす《最悪の魔女》へと変化するのを!だからこそウチは鹿目まどかの因果律を奪いたいんや。そしてウチこそが《最強、最悪の魔女》となってこの宇宙に貢献したいんや!」

 アイリスの目的にわたしは怒りを覚えていた。そんな事の為にマミさんや杏子さんや多数の《魔法少女》や少女を殺していたアイリスにわたしはアイリスに対するはっきりとした怒りの感情を胸に感じる事が出来た。

「そんな事、絶対にさせない!」

 わたしは思わずボーガンを魔法の防御壁の向こうにいるアイリスに向けてそう叫んだ。

「そうよ。私は・・・。まどかを守ってみせる」

 そう言って暁美さんもマシンガンを左手の盾から取り出しアイリスへと向けた。けれどわたしと暁美さんが臨戦態勢に入っても志筑さんは拳を構えませんでした。

「志筑さん?」

 暁美さんが声を掛けると志筑さんは顔を上げました。その顔に浮かぶ表情は絶望を表していました。

「私(わたくし)達《魔法少女》が《魔女》を生み出すのなら、戦っても意味は無いではありませんか!?それどころか私(わたくし)達もいずれ《魔女》となってしまう・・・。何の為に戦えって言うのですの!?」

「それは・・・」

 志筑さんの絶望的な叫びに暁美さんは答えあぐねていた。わたしも旨く志筑さんに何かを伝える事が出来なかった。

「何を言っているんや?志筑さん。まだアンタは《魔女》にならないんや。だとすればやる事は1つやろ。ウチと戦う。違うんかい?」

 突如としてアイリスは志筑さんに言葉をかけた。思いがけないアイリスの言葉にわたしも暁美さんも驚きを隠せなかった。

「ここでもしウチと戦わずに鹿目まどかや暁美ほむら、朱奈の3人を見捨てたらアンタはその事を後悔してしまうで。仲間を見捨てて勝手に《魔女化》なんてウチは最低と思うんや。どの道、ウチが勝利すればあなたも殺される運命なんやで。だったら可能性は低くてもウチと戦って勝利を探るのが正しい事やろ」

 アイリスが語りかけた言葉の内容にわたしと暁美さんは驚いていた。ある意味では自己否定とも取れる言葉だったからだ。けれど志筑さんはまだ気持ちを決めかねている様子だった。

「志筑さん。ウチがどうしてこんな事を説明するのかと言うとウチが負けず嫌いやからや。この間、戦った時も正直、負けたと思った。舐めてかかったから受ける筈の無い傷を受けた。ウチはその傷を受けた自分が許せないんや。だからあの時、ウチは撤退した。アンタ達3人と本気で真っ向勝負を行う為に。だからウチと戦いなさい。ウチと戦って鹿目まどかを助けた後に《魔女化》の事は考えなさい。でないとウチがあなたを殺しちゃうで」

 アイリスの説明を聞いて志筑さんは顔をしかめていました。でも一度、目を閉じて呼吸を整えると戦う為の構えをアイリスへと向けました。

「確かにアイリスさんの言う通りですわ。私(わたくし)はまどかさんを見捨てる事は出来ません。だからこそアイリスさん。あなたの誘いに乗って戦って差し上げますわ!」

 目を開き叫んだ志筑さんの瞳には迷いを感じさせない強い決意が浮かんでいた。

「暁美さん。朱奈さん。まどかさんを助ける為に・・・。戦いましょう!」

「ええ。」

「はい」

 志筑さんの言葉に暁美さんとわたしは頷いた。

「その意気や!それでこそウチも戦いがいがある!ジュウべえ!例の通りに!」

「あいよ」

 アイリスに答えたジュウべえはアンジェリカベアーズの扉を潜って奥へ走って行った。

「ジュウべえが鹿目まどかの元へ辿り着いたら魔法による防御壁は解けるわ。それが戦いの合図や。それとウチが負けたら鹿目まどかは無事に結界から出る様に魔法をかけたから安心しい」

 アイリスの言葉に誰も答えない。数十秒だったか数分だったか分からなかったが魔法による防御壁が消滅した。

「行くわよ!」

「ええ。行きましょう!」

「うん。鹿目さんを助けなきゃ!」

駆け出した暁美さんの号令の下、志筑さんとわたしは続いた。

それをアイリス・アザレアは不敵な表情で見つめていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。