偽書魔法少女しゅな☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLAMAGI SYUNA MGICA 作:ジャックノルテ
誰か助けて・・・。
苦しいよ・・・。
誰か・・・。わたしを助けて・・・。
わたしは今、《ワルプルギスの夜》と言う魔女に囚われている。
《呪いの右目》が放出する魔力が原因でわたしは《ワルプルギスの夜》によってその体内に閉じ込められていた。呪いの反作用でわたしは生きていはいたけれど 苦しかった。ただ苦しかった。
おぞましい何かがわたしの上下左右を取り囲み深いな何かが耳障りな音を立てているの。
特に右目におぞましい何かが蠢いている。
この苦しみから解放されたい。わたしはそう願わずにはいられなかった。
そう思っていた時、突如としてふっと体が浮かび上がったと思うとわたしはワルプルギスの体内から開放されていた。
同時に今まで右目の中にあったおぞましい何かが抜け落ちたのを感じた。
硬い地面に優しく投げ出されたわたしは両目を開いて暫く呆然としていた。
「もう大丈夫だよ朱奈ちゃん」
その声にわたしが頭をあげるとそこにはピンク色の髪にかわいらしい衣装に弓を構えた《魔法少女》が立っていた。
それはわたしを可愛がってくれた鹿目まどかさんが《魔法少女》となった姿だった。
「鹿目さん!?どうして!?何がどうなっているの!?」
直感的に鹿目さんが契約した事に狼狽したわたしの質問に鹿目さんは優しい笑顔で答えた。
「朱奈ちゃんを救う為に私はキュウべえと契約をしたの。だからもう《呪いの右目》に苦しむ事は無いよ・・・。マミさんや杏子ちゃん、ほむらちゃんが守ろうとしたこの街を・・・。私が守って見せる!」
「でも!?」
わたしは暁美さんが言っていた言葉を思い出していた。
「まどかだけは契約させる訳にはいかない」
これでは暁美さんの決意が・・・。
わたしがそう思いを巡らせていると表情を引き締めた鹿目さんは左手に持った弓を上空に浮かぶ《ワルプルギスの夜》に向け右手で巨大なピンク色の光の矢を放った。
その矢が当たった瞬間、《ワルプルギスの夜》は大きな悲鳴と断末魔を残してバラバラにその体を崩しそれまで曇っていた空からは所々から晴れ間が生じて景色を変化させていた。
勝ったのだ。
鹿目さんが《ワルプルギスの夜》を倒して私とこの見滝原を救ってくれたのだ。
「鹿目さん。わたし」
「うっ・・・」
わたしがお礼を言おうとした時、鹿目さんは突然、苦しみだした。
「鹿目さん。どうしたの?鹿目さん!?」
「あああああああああああああ」
苦しみの叫びに呼応する様に突如として鹿目さんの胸にある宝石、《ソウルジェム》が黒く染まったかと思うとそこから《グリーフシード》が出現した。同時に鹿目さんの身体から浮かび上がった場所に浮かび上がった《グリーフシード》から湧き上がった黒い霧が人型を成して巨大化して行く。
更には全身から生えた黒い触手が四方八方へと広がって行く。
「どうして!?どうして《魔法少女》が《魔女》に!?」
呆然とするわたしの頬に突如として痛みが走った。
思わず頬を抑えて痛みの発した方を振り向くとそこには《魔法少女》姿の暁美さんが傷だらけで立っていました。
その表情は最早、抑えようの無いやり場の無い怒りがわたしに向けられていた。
「あなたの所為でまどかは《魔女》になってしまった!」
「わたしの所為!?嫌だよ!?どうして!?そんなの嫌だよ!?」
泣き出しながらわたしがそう言った時、暁美さんは左手の盾から拳銃を取り出してわたしの顔に付き付けた。
「あなたがいなければ・・・。まどかは・・・」
わたしは泣きながら何も言う事が出来ずただ口から嗚咽を出す事しか出来なかった。
けれど暫くすると暁美さんは急に拳銃を降ろしてわたしに背を向け歩き出した。
「まどかが救おうとしたあなたを私には殺せない・・・。それに私の戦場はもうここじゃない」
そう言って暁美さんはそのまま私の目の前で消えてしまった。見間違いではなく消えてしまったのだ。
わたしは1人になってしまった。
瓦礫だらけの廃墟の中で1人になってしまった。
しかも近くには鹿目さんが変貌した《魔女》が生まれようとしている。
孤独だった。
わたしはわたしの大嫌いな孤独に陥っていた。
「お願い・・・。誰か・・・。わたしを一人にしないで・・・」
わたしはそう言いながら泣いて涙を地面に垂らしていた。
その時、頭上で誕生しようとしている、元は鹿目さんだった《魔女》がうなり声をあげた。それを聞いたわたしは恐ろしくなってとにかく駆け出した。
道も何も解らなかったけれど、とにかく走った。
瓦礫に足を取られて転んだりしたけれど、直ぐに起き上がって走り続けた。
走っている時、わたしは目の前に誰かが倒れているのを見つけた。
それは赤い髪をした少女だった。
「あれは!?杏子さん!?」
それは暁美さんと手を組んで《ワルプルギスの夜》と戦った佐倉杏子さんだった。
杏子さんは少し怖い人だったけれどわたしを受け入れてくれた人だった。
わたしが《魔女》を引き寄せると知ってもそれを怖がらなかった。
喋り方は怖かったけれど私を肯定してくれた人だった。
「杏子さん!杏子さん!」
わたしは倒れている杏子さんの体を揺すった。
けれど杏子さんの体は熱を失い既に冷たくなっていた。
暖かかった杏子さんの手から何の熱も感じなかった。
「うう・・・。うわああああああああ」
わたしは杏子さんの遺体の前でまた泣いた。
この世界でわたしは一人ぼっちになってしまった。
そしてもうすぐ鹿目さんが変貌した巨大な《魔女》が生まれようとしている。
わたしはこのまま死んでしまうのだろうか?このまま1人で孤独に死んでしまうのだろうか?記憶も失い今度は大切な人達を失って・・・。
失って失って失ってわたしは死んでしまうのだろうか?
わたしは途方にくれてただ呆然としていた。
その時だった。
わたしの首に何かが投げ付けられ巻き付いて来たのだ。
「え!?」
驚くわたしが首の方を見るとそれは鎖だった。
何本かの色々な色をした鎖がわたしの首に巻き付いていたのだ。
けれど鎖は直ぐに消え去るとわたしの体の中に何かが入り込んで来たのを感じた。
「何!?何なの!?」
「どうやら旨く行ったようやね」
驚くわたしの目の前に瓦礫の影から1人の少女が姿を現した。
紫色の髪を生やしたショートヘアーの少女だった。セーラー服を着てその肩には白いぬいぐるみを乗せている。
「あなたは誰なの?」
わたしは思わず声をかけたけどわたしと同じ位の年に見える《セーラー服の少女》は薄く笑っていた。
(朱奈・・・。聞こえるかい?朱奈?)
突然、わたしの頭の中に声が響いた。
「えっ!?わたしの頭の中に声が!?」
過去の経験からそれが《魔法少女》の使うテレパシーだとはわたしにも分かった。
けれど誰から送られたのかはわたしには分からなかった。
(僕は君の目の前にいるよ。目の前にいる彼女の肩に乗っているよ)
そう言われてわたしは少女の肩に乗っているぬいぐるみと目が合った。
ぬいぐるみはその瞬間、瞬きしてわたしの目の前に飛び降りて来た。
(やあ朱奈。僕の名前はキュウべえ。君は僕の存在は知っているよね?)
「あなたがキュウべえなの?」
わたしはキュウべえの存在をマミさんや暁美さんから聞いて知っていたけれど姿を見たのは初めてだった。わたしには《魔法少女》としての資格が無い為にキュウべえの姿は見えず声は聞こえない筈だった。
けれど私は今、キュウべえの姿を見て声を聞いている。
これはどういう事なのかわたしにも解らなかった。
(僕の姿が見えて声が聞こえているのなら君にも《魔法少女》としての資格が出来たと言う事だ)
「それってどういう?」
(朱奈。今、君は僕と契約する資格がある!)
キュウべえにそう言われてわたしは驚いていた。
どうしてわたしは急に《魔法少女》になれる様になったのだろう?
疑問を感じない訳じゃ無かった。
けれどわたしの目の前で《魔法少女》となったまどかさんは《魔女》になってしまった・・・。
「でも《魔法少女》は《魔女》になってしまうんでしょ?」
(確かにそうだね。けれど朱奈。君には今、資格がある。叶えたい願いがあるのなら僕が協力してあげるよ)
そう言われてもわたしには何を願えば良いのか解らなかった。
「ねえ」
突然、それまで黙っていた《セーラー服の少女》が私に声をかけて来た。
「帰りたくないんか?大切にしていた人達がいる過去に帰りたくないんか?」
「えっ?」
言葉を旨く返せないわたしに《セーラー服の少女》は語り続ける。
「奇跡を使えば、あなたを大切な人達が生きている時間に帰れるのよ。もしかしたらあなたが大切な人達を、《魔法少女》となったあなたが助けられるかも知れへんで」
そうだ・・・。
わたしは少女の言葉を聞いて思い出していた。わたしを助けて妹の様に可愛がってくれたマミさんやまどかさん。わたしが《魔女》を引き寄せると知ってもわたしの存在を肯定してくれた杏子さん。
そして・・・。
わたしが意図せずに傷つけてしまった暁美さん・・・。
大切な人達がわたしにもいた・・・。
そうだ・・・。わたしは・・・。大切な人たちに会いたいし助けたい!
「キュウべえ!わたしは・・・。わたしは・・・。わたしの大切な人達がいた時間に帰りたい!」
そう思うと同時にわたしは叫んでいた。
ありったけの思いでキュウべえに向かって叫んでいた。
「うっ!」
突然、わたしの体の中に痛みが走った。痛みと言うよりも電流の様な何かが走り回ったのだ。その走り回った何かは私の体の中から光り輝いて飛び出して来た。
(どうやら契約は成立したみたいだ。さあ朱奈。受け取って。それが君の祈りが生み出した《ソウルジェム》だよ!)
キュウべえに促されて私は茶色に輝く《ソウルジェム》を思いっきり握り締めた。
その瞬間にわたしの体は茶色の光に包まれてその姿を変えていた。
胸に大きな赤いリボンを付けた薄い茶色と赤色の《魔法少女》としての衣装にわたしは変わった。
ふと見ると右手にはボーガンが握られていた。
ボーガンの弓はSの文字をして中央に宝玉が埋め込まれた特殊な物だった。
瞬間、突如としてボーガンの弓が左回りに回転し始めたのだ。
それに応じて弓の中央にある宝玉が輝きを増している。
「何が起こっているの!?」
わたしはボーガンの輝きに瞼を閉じていた。
けれどわたしの足元に何か幾何学的な模様が作られ始めていた。
(朱奈。君の願いは叶えられた。これからどうなるかは君しだいだよ)
キュウべえの言葉を聞いてわたしはこれが過去へ戻る為に必要な事だと知った。
その時、《セーラー服の少女》がわたしの腕を掴んで来た。
「ウチも連れてって貰うで」
「えっ!?」
驚くわたしだったけれどその瞬間に私と《セーラー服の少女》は宙に浮かぶ感覚を感じていた。
わたし達は落ちていた。
それが何処に続く穴かは解らなかったけれどわたし達は落ち続けていた。
「うぅぅ」
わたしは悲鳴にならない悲鳴を上げながら堪えていた。
落ちていく中でわたし達の体には何かがぶつかりわたし達の体を揺さ振っていた。
その時、不意に《セーラー服の少女》の腕が離れた。
「!」
わたしが《セーラー服の少女》を見るとは薄い微笑を上げながらわたしよりも深い所に落ちて行った。
「待って!」
慌ててわたしは《セーラー服の少女》に左手を伸ばしたけれども同時にわたしが落下する勢いが衰えて行きわたしはばったりと何処かの地面に落ちていた。
「ひゃっ!?」
地面に背中から激突した痛みでわたしは暫く悶えていた。
痛い・・・。痛いけど・・・。我慢する・・・。
そう思ってわたしは必死になって立ち上がり周りを観察した。
何処かの閉鎖された工事現場の様だったが見覚えがあった。
「そうだ・・・。ここはわたしが前に隠れていた工事現場だ!」
呟きながらわたしは窓の外を見てみた。
そこからは破壊された筈の見滝原市の風景が目の前に広がっていた。
「わたし・・・。前の見滝原に帰って来れた!」
わたしの頭の中にはマミさんやまどかさん、杏子さん、暁美さんの顔が浮かんだ。
今度はわたしがみんなを助ける!
わたしは決意と喜びに胸を躍らせていた。