超能力生徒ミノリ 作:ディスク
図書館島に入り、俺達は二体のゴーレムが設置されている部屋にたどり着いた。なお、道中桜咲が木乃香と距離をとったり、雪広がネギに息を荒くしながらセクハラしたりと色々なことがあった。
「見てくださいネギ先生!あそこに本がありますわ!?」
雪広が指さした方向を見ると確かにそれらしき本があった。
「あ、あれは…!!」
「どうした?ネギ?」
「あれは伝説のメルキセデクの書ですよ!僕も見るのは初めてです!どうしてこんなアジアの島国に…」
「アジア舐めてっと痛い目にあうぞ。ネギ」
俺の言葉は他の連中の声にかき消され、ネギには届かない。…別にいいけどな。
「これで最下位脱出よーっ!」
「一番乗りアルーッ!」
「あ、ズルい!私もー!」
神楽坂、古菲、佐々木が声を出し興奮して本がある場所まで走ろうとする。…元気な奴らだ。
「お待ちなさい!皆さん!こういったものには罠があると決まっています!」
雪広の声も届かず、全員が本の元へと行く橋を踏んだ。
「ワァァァっ!?」
瞬間、橋が崩れ、反射神経がこの中でも優れている長瀬や古菲ですらも反応出来ず全員がそこに落ちた。
「痛っ!?」
だがすぐ下に、この変な石版があったおかげで全員が怪我をすることなく着地出来た。
「これは…ツイスターゲーム?」
ツイスターゲーム…?何だそりゃ?マジにわからん。
「フォフォフォ…」
ゴーレムから声が聞こえ、そちらを見ると顔の目に当たる部分から光が見えた。
しかしこの声を俺は聞いたことがある。それも一度限りじゃねぇ…
「ぬらりひょん…!!」
そう、この学園都市の学園長だ。
「何言うとるの?実梨。あれが爺ちゃんな訳ないやろ〜?」
「そうじゃぞ。ワシは名もなきゴーレムじゃ。決してぬらりひょんではないぞい」
「黙れ。俺はその声を何度も聞いたことがあるからわかるんだよ。そうだろ?麻帆良学園都市学園長、近衛近衛門。本名、ぬらりひょん?」
木乃香が否定し、ぬらりひょんも否定する。しかし俺はこの声を何度聞いたことやら…まず初めに会った時は悲鳴や驚愕の声を聞かせてもらった。次は依頼なんかを頼む時のシリアスな声。そしてひょうきんな態度のような声。すべてを聞いた俺に死角はなく、否定するのも容易い。
「ワシの本名はぬらりひょんではない!近衛近衛門じゃ!…あ」
「学園長…」
ぬらりひょんの行動に桜咲が頭を抱えた。苦労する上司ってのは持ちたくないもんだぜ。
「で、ですが実梨さん!仮に学園長がここにいたとして学園の方はどうなさっているのでしょう?」
雪広が声を荒げ、俺に尋ねる。まあここでこの世に魔法があるという事実を教えてもいいがそうすると説明が面倒だしな。何よりもゴーレムがぬらりひょんだってことをバラした責任もあるしフォローするか。
「ぬらりひょん本人はここにはいない。大方ぬらりひょんが昔の葉加瀬の発明品を弄っていたら偶々ああいうゴーレム型のロボットがあったんだろ。ぬらりひょんが学園の方でのんびりとそれを操って利用しているにしか過ぎない。このツイスターゲームを設置したのも俺達の行動を嗅ぎつけたってところだな」
「しかし、どのようにしてあのロボットをここまで運んだのでしょうか?」
「そこからは本人に聞くしかないだろうが…後でもそんなことは聞けるだろう?問題はこのツイスターゲームを何故用意したのかってことだ」
「うむ。時野君、よくぞ聞いてくれた」
「褒めるなよ…それで一体これは何なんだ?」
「このツイスターゲームで幾つかの問題を出す。ワシが英語を言うから君達が日本語で答える。それだけじゃ。さらに雪広君、木乃香、そしてネギ先生が参加せず全問正解だった場合はこの本をやろう」
つまり英語ができる奴等抜きで英語の問題をやれと。無理難題言いやがるぜ。
「ええっ!?そんな大切なものを渡していいんですか!?」
「ただし!負けたらこのツイスターゲームもろとも下に落ちるから受けるか受けないかはお主達次第じゃ♡」
ハートを出すな!キメェ…
「学園長、流石にこれ以上下に落ちたら図書館島から出られないんじゃないでしょうか?」
雪広がまともなことを…俺は嬉しいぞ!
「フォフォフォ。安心せい。あそこには表に出るエレベーターがある。ただし頭を働かせないと出られんようになっておる」
「つまり下に落ちたら勉強地獄ってわけか」
「時野君大正解!ま、そういう訳じゃ。この本にはそれだけの価値があるという訳じゃな。どうする?」
「やるしかないでしょー☆」
しばらくする間もなく佐々木が答え、次々と他の奴らも同意していく。
「仕方ない…やるか。」
俺が同意するとぬらりひょんも満足げに頷いた。
「私は遠慮しておきま…」
「やれ。」
「…はい。わかりました。」
桜咲も協力してくれるし言うことなしだ!
数分後、俺達はぬらりひょんの陰謀でがっちりと動きが取れなくなってしまった。
「が、学園長!早く問題をーっ!!」
桜咲が叫ぶように問題を出すように促す。というのもツイスターゲームでその場から離れたらアウトというルールなので無茶な体勢のまま維持している。つまり全員が苦しみを味わっているんだよ。ぬらりひょんの奴め…後で覚えてろ!
「最後!dishを日本語では?」
「これは簡単ですわ!」
「ほらよくメインデッシュとか言うやろー。せっちゃん頑張ってーな!」
dish、メインデッシュ…何だ?英語を勉強してもさっぱりわからん。小学生の頃英語の勉強しておけば良かった…
「お!」
佐々木が『お』を押し、正解へ一歩近づいたはずだ。
「さ!」
桜咲は木乃香にいいところを見せようと木乃香の顔を見ながら『さ』の文字を踏む。
「ら!」
神楽坂が踏んだのは『る』…つまり
「おさる?」
猿はモンキーである。流石の俺でもそれくらいはわかる。
「フォフォフォ。外れ〜!」
…まあ要するに外れたことだけは理解できたということだな。
「アスナのおさるーっ!!」
古菲が神楽坂を批判し、参加していない三人も含め全員がその場から落ちた。…確かに今の状況は木から落ちたおさるだな。
とはいえこのままじゃマズイ。俺はともかくほかの連中(特に夕映)が潰れたトマトのようになりかねない。ぬらりひょんが何か仕掛けているとはいえ自分から正体をバラしてしまったからな…不安だ。
いやそれ以前にこのことを親バカ親父が聞いたらどうなる?あのおっさんは俺の為であれば図書館島を真っ二つにしかねないぞ。そこんところぬらりひょんに注意しておくのを忘れていた…一応手紙を残しておいたから平気だとは思うが万一親父が来たら俺がこの手で…ぬらりひょんに全責任を負わせるからな!
「We feel all right!」
俺はそう叫んだ後パワーの一つ、ストンプを発動させた。
ストンプは地面を踏みつけ、衝撃波を発生させるパワーだ。もっとも衝撃波と言っても威力そのものは他のパワーに比べて劣る。それどころか威力単体でいうなら上位互換のパワーがあるくらいで威力は重要視されていない。
しかし、そんなストンプの魅力はなんといっても他のパワー等と連携が取りやすいという点にある。
例えばストンプのエレメントの一つであるグラビティ。これは周囲にあるものを浮かび上がらせるだけでなく一定時間無重力状態にすることが出来る。
「…やべミスった」
俺は肝心なことを忘れていた。それはストンプの効果の範囲だ。ストンプは使用者と同じ地面に接してかつ、半径30mくらいの範囲円にいる奴らがストンプの効果の対象になる。しかし俺がストンプを発動したことによって速度が上がり真っ先に落ちてしまった。…それ以前に俺があいつらと同じような速度で落ちても意味がない。
「仕方ない…別の方法でやるか」
俺はそう呟いて、ザブンッ!!と着水(下は地面じゃなかった)する。その後すぐに上を向いて奴らが来るのを待つ。俺が3秒弱でこれたということは高度135mくらいってところだな。
ここからの高さだと途中まで重力加速度、9.8m/sに従い加速しながら落下していくが空気抵抗なども考慮するとある一定の速度で落下していく。となれば後数秒でここに来るか。
「わぁぁぁぁーっ!?」
よし!計算通りだ!ここでテレキネシスのフォースを使って衝撃を抑える。
「はっ!」
ポチャン…
手を上に向け、突き出し、テレキネシスを発動させると夕映以外の全員が緩やかに着地…いや着水した。
「ど、どういうことアルか?」
「拙者もよくわからんでござるが…実梨殿の仕業ではないかな?」
そのことに不思議に思った、気絶していない二人、古菲と長瀬が話し合い俺を見る。
「いや…夕映を止めたのは俺だがお前達を止めたのは俺ではない。」
テレキネシスの弱点は対象物は一つしか選べないということだ。そのため身体能力が低く桜咲のような守護者もいない夕映を助けたんだが…無用の長物だったようだ。
…ちなみに桜咲は木乃香を守るように背を向けて「このちゃんは私が守る…このちゃんは私が守る…」などと言いながら白目剥いて気絶していた。
「とりあえずもう遅いし、今日は寝て休んでおけ…明日から俺達は勉強漬けだ。」
「結局そうなるアルね…」
「仕方ないでござるよ。これも修行のうちで…」
二人が何だかんだ言っているが俺は夕映を丁寧に下ろし、瞼を閉じた。
用語解説
メルキセデクの書
ネギ曰く魔法使いなら誰もが知っている伝説の書物。
ストンプ
地面を踏みつけ衝撃波を出すパワー。範囲も他のパワーに比べやや広め。唯一フォースのエレメントがないのが特徴
グラビティ
ストンプ専用のエレメント。このエレメントで攻撃すると対象物が無重力状態になる。