超能力生徒ミノリ 作:ディスク
「ほら邪魔よ!退きなさいガキ!」
昼休み、高等部の生徒が2ーA…つまり俺らのクラスに絡み、ボールを投げて乱暴をしてきた。
「痛っ…!あんた達ねえ!」
その被害を受けた柿崎が怒り、仕返しとばかりに怒鳴る。
「止めろ柿崎。そんなガキみたいな奴に怒鳴ったところで何の得にもならん。むしろ今の出来事を記録して…」
俺が柿崎を止めようとすると高等部の連中が俺にボールをぶつけて笑っていた。しかも思い切りやりやがって俺はその衝撃て吹っ飛んだ…普通の奴なら大泣きしてもおかしくない。
「はっ!」
俺は体勢を整え、着地してドヤ顔を決めた。
「だ、大丈夫?」
柿崎が近寄り心配をする…だが俺は超能力のパワーのせいか不思議と痛くない。
「俺はな。だが…やっちまったな。」
そして奴が現れた。そいつはかつて薙刀一つで学園内の魔法使いを相手に勝利し、自分の服を真っ赤に染めた男…そう。あの男だ。
「私の娘になにぉするかぁぁぁぁーっ!!!」
親バカである俺の親父だ。高等部の生徒を関節技で失神させ、大暴れ。その姿はまさに悪鬼羅刹。容赦がない。
「親バカ親父!目ぇ覚ませぇぇぇえっ!!」
俺は親父を殴って止めた。
「では実梨。私は失礼するよ。」
親父は俺にぶん殴られ、その後何をどう勘違いしたのか「実梨!遂に私の道場を継ぐ気になったか!!」などとほざき、闘う羽目にあった。もちろん高畑教諭などの協力を得て止めることが出来たがそれでもこの親バカを何とかしてもらいたい。
「帰れ。そして必要な時以外来んな。」
俺は余計なフラグを立てぬようにそう言ってやった。
「フハハハ!」
親父は高笑いを上げてその場を去った。
「…まあそういうことだ。下手に力づくで解決しようもんなら親父が飛んでくるから注意しな。」
「わかりましたわ…ですが覚えていなさい。この借りは絶対に返しますわ。」
そして5時限目、体育の時間で使うコートに高等部の生徒がいた。
「高等部の皆さん。何のようで?あんた達は自習の時間だろ?」
俺がこんなことを知っているのはネギが昨日、高等部の女子生徒の監督をしに行くとかそんなことを言っていたからだ。初めての監督で舞い上がっていたんだろうが…これは酷いな。
「分かりきったことを…借りを返しに来ただけですわ!」
「…バレーなり何なりのスポーツで決着をつけるってか?」
「そうですわ。私達が勝った際はネギ先生をいただきましょうか。」
なるほど…そう来たか。これなら親父も出てこない。
「卑怯ですわよ!年齢も体格も全然違うでしょう!」
ネギが奪われると思い、雪広が首を突っ込み、暴走するが神楽坂が止めた。
「バレーでは私達が有利ですからそうですわね…ドッチボールなどではいかが?それでも不満ならこっちが11人でそちらはハンデとして倍の22人参加しても良い…どうでしょう?」
上手い手だな。相手が不利を悟らせ自分の有利に立つ作戦か。だが他の奴らは騙せても俺には通用しないぜ。
「ドッチボールか…悪くはないがドッチボールの関東大会出場したチームのメンバーを外して貰おうか。」
「な、な、何のことですの!?」
分かりやすい程動揺してやがる。確かこいつらは俺が三冠取った時、表彰されていたのをよく覚えている。
「惚けるな。お前達の素性なんぞすでに割れている。お前達はドッチボールで関東大会に出場した黒百合だろう?」
「ウゲェ!?バレてる!?」
「この卑怯者ー!」
「私達を騙そうとしたのね!!」
雪広と神楽坂は普段仲が悪いがこう言う時だけ仲良くなり、ブーイングをする。
「さらに…倍参加させたところでハンデにはならない。その分だけ領地が狭くなって密集してしまうからな。ドッチボールをやっているならそのことはわかっているはずだ。つまり…ハンデを初めから与える気なんぞなかったってことだ。」
「あがーっ…」
開いた口が塞がらない…まさしくそれを表現していた。
「先輩方サイテー!」
「まあ待てお前達。そう先輩達を批判するもんじゃねえ。先輩方にも面子ってものがあるからな。」
「でも!」
「先輩方にボールを顔に当てられた身である以上、お前達の気持ちもわからんでもない。だがなここで感情的になるのは子供のやることだ。そうなったら向こうに笑われて弱みを握られる。そうなったらどうなるかわかったもんじゃない。」
「…」
全員が黙り、沈黙する。
「だからこそここは耐えるんだよ。」
「実梨さん…」
さて全員が感動している一方、俺はどうするか考えていた。
「で…先輩方。今日のところは大人しく引いて俺達2ーAの邪魔をしないならこのことは黙っておきます。ですが正当な理由なしに邪魔をしたりした場合はどうなるか想像つきますね?何しろこちらには麻帆良のパパラッチと呼ばれる人がいますから…」
俺は朝倉に目を合わせるとメモと写真を取る準備をした。
「…くっ!皆さん、今日のところは引き上げますわよ!ご機嫌よう!」
ぞろぞろと帰り、撃退に成功すると高等部の生徒全員が歓喜した。
「凄かったよーっ!実梨!」
「カッコよかった!」
「私にも教えてー♡」
わらわらとクラスメイトが駆け寄り、俺に触ったり抱きついたりと大忙しだ。
「ほらほら、せっかくバレーの時間が取れたんだしやらないと勿体ないぞ。」
「はーい♡」
そう言うと生徒のほとんどはコートに入り、楽しんだ。
「ネギ、どうした?」
そんな中、ネギが俺に近寄って来た。
「実梨さんは凄いです…先輩方に臆する事もなく、あんな風に言葉だけで黙らせるなんて。」
「そりゃあの親父の暴走の被害にあった奴らに謝るために身についたもんだ。別に誇れるもんじゃねえよ。」
本当に苦労したぜ…何しろ魔法関係者は正論を述べないと納得しないし、何よりも厄介なのは正論を述べても納得しないパターンがあるからな。
「あはは…でもそれでも羨ましいですよ。僕はお父さんと会ったことなんてほとんどありませんから。」
まあそう考えると俺も恵まれているのか?…いや恵まれていないのかもしれない。やっていることがやっていることだしな。
「お前の親父さんか…どんな奴だったんだ?」
「お父さんはカッコよくて英雄って呼ばれるような人でした。6年前に一度会ったきりでよく覚えていませんが…それでも僕を助けてくれました。」
そう言ってネギは常に持っている杖を前にだす。
「これはお父さんの杖なんです。僕が立派な魔法使いになれるようにって預けてくれたんです。」
「この杖が…親父さんの形見か。立派なもんだ。」
「だからお父さんみたいにならなくちゃ…」
俺はその口を塞いだ。
「ネギ。お前は正義の反対は何だと思う?」
「悪ですよ。正義に敵対するのは悪だって決まっていますから。」
「そう答えるのはまだ半人前だな。だから親父さんがそれを寄越したのかもな。俺が思うに正義の反対は別の正義だ。」
「別の正義?」
「正義は何も一つじゃねえ。例えば病人の友の余命を医者から聞いてそれを知ったとする。勿論その友人は知らない。お前はその友人に報告することになったら嘘つくか?」
「…付きます。だってその人の絶望した顔なんて見たくありません!」
「嘘をついて幸せにさせる奴もいれば真実を告げて不幸にさせる奴もいる…ようするに正義の定義なんてものは曖昧なものだ。だからお前はお前なりの正義を見つけろ。」
「…はいっ!」
ネギも去ったし…気分転換に何かするか。