時と場所は変わって、夜、再びタバサの部屋。
「それで、俺は明日から基本的にはどうすりゃいい?」
部屋についてやることのなかった2人はとりあえず明日からどうするかを決めることにしました。
「自由でいい。用があったら呼ぶ」
「分かった〜」
話し合い、というには短すぎますが、一応明日からの予定は何もないということで埋まりました。
そのあとは、タバサは本を読み、リュートはタバサの邪魔にならないようにリュートを弾きました。うるさかったらサイレント―部屋の中の音を無くす魔法をかけようとタバサは考えていましたが、ゆっくりと落ち着いた曲調だったので、そのままBGM代わりにとサイレントをかけませんでした。
ゆったりとした時間が流れていましたが、今日は色々あって疲れたのか、リュートは不意にあくびをします。
「タバサ。本読んでるところ悪いんだけどさ、そろそろ寝る場所を決めた方がいいと思うんだ。どこで寝たらいい?」
「………あ」
珍しく少し間の抜けた声をタバサは出しました。どうやら考えていなかったらしいです。
「ありゃ、まさかない?」
こくんと頷くタバサ。
「あー。それじゃ、椅子に座って寝るからいいよ」
「ごめん」
タバサは相変わらず表情に変化はありませんが、申し訳なさが含まれた言葉にリュートは笑顔で返します。
「気にしないでいいよ。元々はいないやつが増えたんだからしょうがないし。それに、酒で仲間に付き合って気が付いたら机に突っ伏して寝てることが多々あったからね」
@
(とは言ったもののなー)
夜も深くなり、タバサがベットに入ってある程度時間が経った後、リュートは顔を上げました。やっぱり飲んでいない状態では机に突っ伏して寝るのは厳しいのでしょう。
(あくびしたのに目が冴える、か…。未開のリージョンに来て興奮してんのかな?)
どう寝ようか迷っていましたが、春先の気候の程よく暖かい風が吹いていたのを思い出し、外の風に当たろうと窓縁に腰掛け、窓を開けます。
(……へぇ。月が2つ、か)
何気なく空を見上げてみると月が2つありました。他のリージョンでは月が1つなので、リュートは少し驚きます。と同時に、美しい光景に目を奪われます。
彼は壁に立てかけておいたリュートを手に取り何か弾こうとしましたが、タバサが起きてしまうかもと思い、再び壁に立て掛け、空を見上げました。そうしてボーっとしているうちに、ふと仲間のことを思い返しました。
青年は悪の組織壊滅後、元の職場――リージョン間を移動する船の乗組員に再就職して、名前が出てきたユリアと友達以上恋人未満な関係を維持しています。また、途中で出会った女の子や実は幼馴染だった半妖の少女とも親交が続いています。
元モデルは何気に生きていた夫とアツアツな新婚生活を送っています。時々、彼女の家の夕飯にお呼ばれしますが、そのたびに戦っていた日々が懐かしい、たまには冒険に行きたいとぼやき、旦那さんはそれを止めるのが日常茶飯事になっています。
半妖の少女は打ち倒した者の位を引き継ぎ、人間と妖魔の架け橋となるべく日々尽力しています。会合などで会った際、その傍らにはいつも付き添う少女の姿をリュートは見ています。
金髪策士は彼の故郷の復興を支援した後、ある日、まだ見ない術を探してくると言って旅立ちました。時々連絡をとるのですが、いつも片方としか話せず、もう片方の様子は分かりません。
記憶喪失だったメカは彼(彼女?)を拾ってくれた姉弟の所へ戻り、世話しています。旅の終盤は世界で1つだけの最新ボディだったのですが、今はあのぼろっちぃ、愛着のある(姉弟談)ボディに戻しているらしいです。
緑色のモフモフはかつてのリュートみたいに自由にやっているようです。会うたびに色々なモンスターに変化しており、さすがにドラゴン状態でリュートの仕事部屋に飛び込んできた際にはリュートも驚きました。
その他にも、相変わらず飲んだくれの剣豪、ますます色々とクレイジーな刑事、結局神社に戻った元妖魔、よりを戻した弁髪、身元の引き取り手がいない子供たちを引き取っている伝説の瑞獣、人間だったころと変わらないロボットなどなど。
(久々にみんなで会いたいなー。なんかここんとこなかなか集まる機会がなかったし)
みんなが一度に集まったらどんなににぎやかになるのだろう。と内心笑いつつ、リュートはあくびを一回。
(ん、今度はちゃんと眠気も来たか。それじゃ、今度はちゃんと眠ろうかな)
リュートは窓を閉めた後、椅子に腰かけ、机に顔を伏せました。