「ん?君はルイズの……。邪魔をしないでくれたまえ。まだ僕の怒りは納まっていないんだ!」
声の主はルイズの使い魔(になってしまった)サイトでした。
彼は授業が潰れた後、ルイズと共に爆発した教室の片付けをしていましたが、その時にルイズをからかいすぎたため、彼女から食事抜き宣言を受けました。
ご飯を求めてさまよっていると、ちょうど厨房に向かっていたシエスタに会い、賄いを食べさせてもらうことに。そのお礼として、配膳を行っているところでした。
睨んでくるギーシュに対してサイトは少し怒りを含みながら言います。
「そんなん知るか。大体、お前が二股すんのが悪い」
「そりゃそうだ!」
周りにいた野次馬が笑います。
「しかも身分差で何も言えないのを利用して責任転換するとか、みっともねえ」
サイトの言葉に対し、ギーシュはキザで芝居がかった口調でいいます。
「ふん、平民の癖に口のききかたがなっていないね」
「平民とか貴族とか知るかんなもん。悪いもんは悪いだろ」
ギーシュはバカにしたように鼻を鳴らします。
「平民に貴族の何が分かるのかい?」
ギーシュの言葉にカチンときたのか、サイトは言い返します。
「貴族貴族うるせえ。胸の薔薇でもしゃぶってな、貴族の坊ちゃん」
そこまで聞いて、ギーシュの目が光ります。
「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「あいにく、貴族なんかいない世界から来たんでね」
サイトもギーシュの真似をして、キザっぽく言います。その言葉を聞き、ギーシュは高らかに宣言しようとしました。
「けっ…」
「ちょっとごめんよー」
が、その場に似合わない、年上ながらもどこか抜けた声が遮りました。
「ふぅ…やっとで出れた」
リュートです。右手のお盆には、熱々のステーキが乗っています。
「何やってんの……って」
2人の所へ向かおうとしたその時、リュートは右足の裏に何か変な感触を感じました。
「うわっ!」
ジェットブーツのままだったらその何かを砕いたのですが、飛ばないんだったらただの重い靴ということで、厨房にあったサンダルをもらい、それを履いていました。
つまりは何かに乗ってしまい、滑りました。
そこからはスローモーションでした。前のめりにこけるリュート。右手から離れるステーキ。その先は、
ジュゥゥ…
「……」
ギーシュの顔面でした。 ぼとっ、とステーキが落ちたあと、
「………けっとあっっっっつい!」
決闘だ、と何事もなかったかの様に言おうとしたのですが、さすがに熱かったらしく、言葉半ばでもんどりうっていました。
その様子を見ていた野次馬たちは噴き出してしまい、しばらくの間、笑いが止まりませんでした。涙目だったシエスタはというと、笑いもせず慌てて氷のうを取りに行きました。
「キミ、何をするんだ!」
笑いが小さくなってから、氷のうを顔に当てながらギーシュは言いました。
「いや、本当にごめん。なんか丸っこいものを踏んだらしくて…」
リュートは踏んだ何かをギーシュに見せます。それは香水瓶でした。
「自業自得じゃん!」
生徒の1人が笑いながら言いました。
「ええい!決闘だ!2人ともまとめて相手してやる!」
恥ずかしさに耳まで真っ赤にしたギーシュは2人に向かいそう叫びました。さすがに決闘にまで事が広がるとよくないと思ったのか、メガネをかけた男子生徒の1人が止めに入ります。
「落ち着けギーシュ。いくら相手が平民でも決闘はよくない。しかも君が全般的にわ……」
「ならキミも手伝ってくれ!」
「へっ!?いやだから……」
「手伝ってくれるか、ありがとう友よ!」
「だから…」
「ヴェストリの広場で待っている。神聖な食堂を汚す訳にはいかないのでな。それでは先に行っておく」
そう言ってギーシュは食堂から出ていきました。
「ちょっ!僕の話を聞けぇぇぇ………」
メガネをかけた男子生徒の首根っこを掴みながら。
野次馬たちがギーシュを見送り、早く昼食を取って決闘を見に行こうとするなか、3人は立っていました。1人は怒り、1人は泣き、1人は困惑しています。リュートは呟きます。
「………何がどうしたんだ、これ?」
「リュート」
呆けているリュートのところにタバサが声をかけ、キュルケと一緒に寄ってきます。
「ちょうど良かった。いきなり決闘挑まれたんだけど、一体何があったんだい?」
2人は何故いきなり決闘になったのかを説明しました。
「あらら……。間悪いな、俺」
「何てことしてくれたのよ!このバカ犬たち!」
そのとき、やってきたルイズが2人に向かって言いました。
「今すぐ謝ってきなさい!じゃないとアンタたち死んじゃうわよ!?」
「いや、謝らない。なんで俺が謝らないといけないんだ」
「うーん、決闘か。あんまり痛いの嫌なんだけどな」
決闘する気になっているサイトとは対称的に、リュートはそんな言葉を口にします。
「すいません……。私が…私が…拾ってなければ…」
2人が決闘することになってしまい、罪悪感で泣き止まないシエスタは謝ります。
「いや、シエスタは悪くない」
「もしシエスタちゃんが拾ってなくても他のメイドさんが拾ったと思うし。ほら、スマーイル」
サイトが励まし、ニッコリ笑うリュートを見て、シエスタは少し笑顔になりました。が、まだ暗いままです。
「で、一体どうするの?」
キュルケが2人に訊ねます。
「俺は戦う」
「うーん、どうしよう」
リュートは考え込みます。そして、口を開きました。
「まぁとりあえずは配膳終わらせるか」