とある冥闘士の奮闘記   作:マルク

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01/転生先は……

 

 

どうも無事に転生できたようです。時代は18世紀、江戸時代徳川幕府が治める町のとある武家の次男坊として第二の生を受けました。

 

外国に転生したらどうしようかと不安だったが、日本に生まれて良かった。

 

贅沢を言うなら、現代と比べて蛍光灯も無ければエアコンも無い。今まで当たり前に有った物が無いというのは不便極まりないものだった事ぐらいである。

それでも人は慣れる生き物である。1年もすればなんとか落ち着いてきた。

 

 

さて現在の俺の年齢は7歳。武家の生活はそこそこ恵まれている方である。立派な屋敷に3食の食事、熱い風呂、清潔な布団がある。

 

 

うん、ゴメンなさい。そこそこではなく、かなり恵まれていますね。

 

ただ問題が無い訳ではない。躾が特に厳しいところがまさにそれだろう。日の出と共に起床し、剣術の鍛錬、走り込み、朝食後も勉学に乗馬、午後は道場と様々な習い事がある。

まあ、なんとか耐えています。今回の肉体は前世の物よりもややハイスペックのようで、かなりの高さの木の上から落ちた時も掠り傷程度で済むぐらいには頑丈だったし、剣術も同世代では兄以外負け無しだし、大人には勝てないが相手の太刀筋を予測し躱す位はできる。

 

そんな自分の容姿はと言うと、

 

「行人(ゆきと)ーー。そろそろ道場に行く時間だよーー。」

「はーーい、今行くよ兄上ーー。」

 

背中まで伸ばした長い黒髪を紐を使って後ろで結び、切れ長の目のせいかどこか刀剣を思わせる。『リングにかけろ2』の志那虎 伊織や『星矢ND』の以蔵にそっくりと言えば分かり易いかもしれない。ちなみに兄の名は歩(あゆむ)と言い、薄く茶がかかった髪に、穏やかな眼差しから生まれる容姿は優男で通用するだろう。こちらは河井 響や『B'T-X』の高宮 鋼太郎だな。

 

春とはいえ、まだ冷たい風に耐えながら道場に行く為に大通りを歩いていくが、途中でつい愚痴をこぼしてしまう。

 

「あーあ、明日のこの時間はまた勉学かー。体を動かす方が気楽で良いんだけどなー。」

 

この時代の文字は読めなくもないが、先生の教える字は達筆過ぎて一から学びなおさないといけないのだ。

 

「あはは、文武両道。立派な武士になるには頭も必要だからね。行人なら大丈夫さ、すぐにものにできるよ。」

 

ホントにできた兄である。前世でも俺には兄がいたが、つくづく自分は兄弟に恵まれているようだ。

そんな感じで二人でお喋りしながら歩いていると、あっという間に道場に着いてしまった。

 

 

道場に着いたら、まずは今日も有り難く使わせてもらう為に挨拶から始まる。

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

さあ、気合を入れていこう。

 

 

「素振り300本始め!」

 

師範の号令により鍛錬が開始する。

 

風切り音と共に振るわれる竹刀。その度に重なる掛け声。踏み込む事で軋む床の音。どれもが心地いい。前世は学校の授業でしか取り組んでいなかった剣道が、今世では最高の楽しみに変わったのだから人生は分からない。

 

 

しばらく稽古を続けて、貴重な休憩時間中に床や壁のひんやりとした感触に浸っているところへ、兄上が何と無しに聞いてきた。

 

「そういえば行人は将来の夢とか考えた事はある?」

 

「どうしたの急に?」

 

「僕は長男だから家を継ぐ事になるけど、行人はそうもいかないだろ。だから少し気になっただけさ。」

 

そうこの時代、長男は家督を継ぐのが義務付けられている。つまり次男坊でしかない自分にはある程度の自由があると言えば聞こえは良いが、要するに必ず家から出て独立しなければならないのである。

 

「さすがにまだ決めていないよ。今はまだ立派な武士になる為に精進するだけだよ。」

 

そう当たり障りない返事をする。実際、冥闘士になる為に転生したのに未だその兆しすら現れない。さすがにまだ子供の俺に冥衣を纏わせるとは思わないから、あと10年は経たないと採用か不採用かの結果は分からないだろう。先が長いな!!

 

「まあ、まだ若いんだし焦る必要はないよ。父上達は武士にすることに拘っているけど、僕はそれが行人のやりたいことなら他の道を目指しても良いと思っているよ。好きなことじゃないと長続きしないからね。」

そう言って、兄は先輩達の方に目を向ける。つられて俺もそちらに目をやる。

 

 

誰もが必死の形相で剣を振るっている。自分こそがこの国を支えるんだという気迫が伝わってくる。だがここにいる何人が夢を叶えられるのだろうか。

前世でも友人が何人かいたが、幼い頃の夢を叶えられることができた奴は一人もいなかった。しかも俺は日本の未来を知っている。このままいけば刀の、いや武士に未来は無いということを。

 

「僕も剣の稽古は好きだけど、異国の様子が気になるな。刀や槍では鉄砲には勝つのは難しいことは過去の記録を紐解けば分かるのに、いまだに日本は剣の方に重きを置いている。きっと異国では鉄砲を改良して、弱点を克服しているはずなんだ。このままで良いとは思えないよ。だから行人が武士以外の道を選ぶなら、むしろ安心するんだ。」

 

相変わらず兄は先を見る目が凄い。全て正解である。『ひょっとしたらこの人も転生者?』と思っていた時期があったが、どうも違うらしい。兄上マジパネェ。これならお家の将来は安泰だろう。

だが気になるのはこちらも同じだ。そこまで見通しておきながら、自分の身の上を不幸とは思わなかったんだろうか?長男というだけで将来を周りに決められていた兄。正直この人は前世の記憶持ちの俺でも、文武どちらも敵わないほど優秀である。そんな彼は俺に嫉妬などはしていないんだろうか?

 

「兄上は別の道を探そうとはしないの?」

 

「僕は跡取りだからね、そうもいかないよ。」

 

こちらを見向きもせずに答える。兄としての意地なのか、本当に気にしていないのか、その表情からは特に負の感情は感じられなかった。その後は休憩時間が終わるまで、俺達は一言も喋らなかった。

 

 

 

 

 

「「「「「有り難うございました!」」」」」

 

そして日が西に傾いて夕暮れに差し掛かり、稽古が終わったので帰り支度を始めようとした時にヤツが現れた。

 

「たのもーーーーー!」

 

突如響いた大声により、周囲に動揺が広がる。

 

「一体何事だ?」

 

先輩の疑問に答えるかのように、招かれざる客はさらに言葉を続ける。

 

「誰もいねぇーのかい?ここらで一番デカい道場だって聞いたんで、道場破りに来てやったぜ。まさか逃げねーよな、お侍様方?」

 

 

 

『逢魔が時』という言葉を御存じだろうか?

別名で『大禍時(オオマガトキ)』とも言い、1日のうちで禍々しい時とされている。それは何故か。

昼から闇夜への橋渡しの時間とは1日の終わり、遊び友達との別れ、そして夜に活動する為に魔物が人前に姿を現そうとする時間だからである。この時間は現世(うつしよ)と常世(とこよ)の境が無くなるのかもしれない。

 

 

 

そして今日、俺は悪魔に逢った。

 




突如現れた訪問者、原作ファンの方なら分かると思います。

日本人で悪魔のあの方です。

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