とある冥闘士の奮闘記   作:マルク

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2週間以上も空いてしまい申し訳ありません。(汗)


見てみるとお気に入り登録件数122件!!

まさか100件突破できるとは思ってもみませんでした。

一応、完結を目指しているので応援よろしくお願いします。


05/旅立ち

 

 

 

俺の目が覚めた時、早速一騒動が起こっていた。

兄上が連れてきた医師達の見立てでは門下生達の大半が剣士として再起不能との事だった。今はまだ門下生達は意識を失っているのでその事実を知らないが、いずれ話さなくてはならない事を考えると胸が痛む。あれほど鍛錬に打ち込んでいたにもかかわらず、その道が突然失われてしまったのだ。彼らはこれから何を支えに生きていけばいいのだろう。杳馬に勝利したにもかかわらず、支払った代償はあまりにも大きすぎた。荒事に関わる以上、いつかこうなる事は予測できた事である。だが、彼らの身を案じて悲しむ事は間違いじゃないはずだ。戦わせなければ良かったと後悔する事が間違いなのだ。彼らの武士の心を侮辱しない為に、俺はただその辛い現実をあるがままに受け止める事しかできなかった。

 

 

師範も必死で医師達を連れてきた兄上も、悔しさを隠せず肩を落としている。せめて自分にもっと力があればと…。

 

「いや~、残念だったなァ。まァ、こんな事もあるさ。生きているだけ儲けもんだろ?」

 

この事態を引き起こした張本人が俺達を慰めてくる。悪気があるのか無いのか分からないが、今は黙っていて欲しい。どんな言葉をかけられても、慰めにすらならないのだから。

 

「今回は俺にも責任があるしなァ。条件次第なら俺が治してやっても良いぜ?」

 

しかし、杳馬から続けて発せられた言葉に全員顔を上げる事になった。

 

「その前にまず、俺の身の上から話しておこうか。」

 

 

 

杳馬の話は一般人には荒唐無稽な話だった。

自分はとある神に仕える戦士であり、あと十数年以内に地上の覇権を掛けた神々の戦争が起きる。その戦争に参加する仲間に俺を加えたいので、これから自分と修業の旅に連れて行きたいとの事である。

 

普通なら一笑される話も、先程人知を超えた動きをしてみせた杳馬が言うと否定できなかった。

 

 

「待ってください。何故まだ子供の行人を選ぶんですか?普通、大人を選びませんか?」

 

理不尽な取引に兄が抗議する。

 

「お兄ちゃんの疑問は尤もだな。実はその戦士達の間で使われている特殊な力に、弟クンは目覚めてしまったのさ。」

 

砕ッ!!

 

兄の疑問に答えながら、折れた木刀を指先を当てただけで粉々にしてしまう。

 

「この力を小宇宙(コスモ)と言い、コレを用いれば拳で空を裂き、蹴りで大地を割る程の力を手に入れられる。ただ問題があってなァ。目覚めさせようと思ってもできない奴の方が圧倒的に多いんだ。だから弟クンは貴重なのさ。」

 

杳馬の言葉に兄は何も言えなくなる。恐らくまた自分が代わりになろうと考えたが運の要素が強く、あまりのハードルの高さに自分では不可能だと結論を出したのだろう。

 

 

「その神々は地上の覇権を握った後、何をするのですか?戦う目的を知りたいのですが…。」

 

再び肩を落とす兄を余所に、師範が疑問をぶつける。

 

「片方は現状維持。人間の善性を信じ、何も行動しない神だなァ。もう片方は人間をこのまま放っておく訳にはいかないと考え、安らぎを与えようとしている神だ。ちなみに俺が仕えているのは後者の方さ。」

 

うん。言い方が悪いだけで嘘は言っていない。だけど原作知っている身としては『もっと詳しく説明したら?』と抗議したい。おーい、アテナがまるでニート神に聞こえるぞー!そしてハーデスの与える安らぎの形は『死』なんだけど…。まあ、真実を知っている理由を尋ねられたらアウトだから言いませんがね。

 

「後者はともかく、前者の神は果たして存在する意味はあるのでしょうか?」

 

前者の神のあまりの悠長な姿勢に、師範が頭を抱える。戦場で人の醜い部分を少なからず知っている為に『神などこの世にいない』と諦観していたというのに、神は実際は存在していた。だがそれも有名無実化しているという体たいらくなのだから、仕方が無いかもしれない。

 

「一応言っておくが人間の問題は人間で何とかしろっていうだけで、神話時代の魔物が人を襲わない様に狩ったりしているぞ。」

 

さすがに哀れに思ったのか、杳馬が敵であるはずの神のフォローに入る。

 

それでも師範は考え込んでしまう。

 

「どうする?数多い門下生の人生か、子供一人の人生か好きな方を選びな。」

 

杳馬が選択を迫る。どちらを選んでも、師範は苦痛を強いられる悪魔の選択を……。

 

「テメエが拒否したとしても、俺が力ずくできたら守り切れるのかい?」

 

黙り込む師範に杳馬が止めのダメ押しとばかりにIFの話を挙げる事で、師範はその固く閉ざされた口を開いた。

 

「……それでも私自身は反対です。だけど行人君、君自身はどうしたいんですか?君の人生です。私達が勝手に決めていい物じゃない。最後に決めるのは君自身ですよ。」

 

「俺は強くなりたいです。日本は泰平の世になり、刀を振るう機会が少なくなってきました。これでは俺の技を完成させる事は難しいと思います。だから杳馬さんの特訓を受けたいです。いえ、どうかお願いします!俺を鍛えてください!」

 

その問いに対し、俺は頭を床に擦り付けて懇願する。俺の欲しいモノは『強さ』が必要不可欠なのだ。この機会を逃すと俺はきっと後悔するだろう。万感の思いを込めて杳馬に向かって頭を下げ続ける俺を見て、堪らず兄が声を上げる。

 

「何故だ!何故いつもお前が貧乏くじを引く様な真似をする!父上達には僕は何て言えばいいんだ!」

 

「父上達には俺から話すよ。そして兄上、勘違いしないでくれ。俺は欲しいモノがそこにあると思うから行くんだ。周りに流されてこの道を選んだ訳じゃない。心配してくれて有り難う。」

 

俺はそう言い、兄にも頭を下げる。転生して得た新たな家族だが、やはり簡単には馴染めなかった。でも兄ができるだけ自分に構ってくれたおかげで、そんな事も無くなった。兄が俺に接してくれた時間に、家族の暖かさを感じたからだろう。こんな形で家を出る事になるとは思わなかったが、どうか俺の分まで頑張って欲しい。

 

 

 

その後家に戻り、心配してくれている家族に事の顛末を話した。当然、父には説教と拳骨を貰い反対されたが、それでも説得を続けた。神の存在を信じない両親は、杳馬に会ってもらい普通の人間ではないという事を実感してもらった。(具体的には『時間を巻き戻して』門下生達の怪我を治しているところを見てもらったのである。)そして師範も説得に加わり、杳馬が邪魔する者は皆殺しにしてでも我を通す危険人物という事と、それを可能にする力がある事を伝えたらさすがに何も言えなくなり、最後には渋々頷いてくれた。

 

思い立ったが吉日という杳馬の提案により、俺はその日のうちに旅立つ事になった。

説得に旅支度などをしていたせいで、現在は草木も眠ると言われる丑の刻である。(人目に付きたくないとの事なので逆に都合が良いかもしれないが…。)

俺達は道場の敷地内で一旦集合し、それぞれ別れの挨拶を交わした。

 

 

 

 

 

「辛くなっても挫けるなよ。そして必ず生きて日本に帰って来い。」

 

「うん。俺は必ず帰ってくるよ。兄上も俺がいなくても負けないでくれよ。」

 

兄の言葉につい涙腺が緩んでしまうが、ここは堪えて笑顔で別れよう。もしこれが今生の別れになるのなら、笑顔の自分を覚えていて欲しいから。

 

「行人君、君にはこれを渡しておきます。」

 

師範が俺に信じられない物を渡してくる。

 

「こ、これって師範の脇差じゃないですか!破門された以上、俺はもう刀を持てませんよ。」

 

例えどんな理由があろうと師範との約束を破った俺も、あの後ただでは済まなかった。『罪には罰を』という事で、破門されてしまい剣を振るえなくなったのである。

 

「物は使いようですよ。これはあげるのではなく、貸すだけです。だから返しに来る為に必ず生きて帰ってきなさい。」

 

これは楔という事か。

俺が生き急ぐ生き方をするので、師範は死ねない理由を与えようという心算なのだろう。師範の思惑に気づいた俺は、その心遣いに感謝し受け取る事にした。

 

「分かりました。必ず返しに帰ります。師範もそれまでお元気で…。」

 

 

「んじゃ、そろそろ行きますか。」

 

別れの挨拶を一通り終わらせた事を確認した杳馬が出立を告げるが、兄が疑問を投げかける。

 

「しかし、どうやって異国まで移動するんですか?海路を使うとか?」

 

「そんな物よりももっと良いモノがあるんだよ。」

 

杳馬が両手を合わせると眩い光が迸り、その光の中から一頭の翼を携えた白馬が現れた。

 

「これはまさか、『天馬』……ですか?」

 

この場にいる全員が、目の前にある神秘の美しさに見入っていた。空想でしか存在を許されなかった生き物が現実に現れるという奇跡に呆然とするしかなかったのだ。いち早く現実に戻った師範が非常識な出来事の感想を述べる。

 

「もはや何でもアリですね。やはりこれも小宇宙の恩恵なのですか?」

 

「いいや、コイツは俺の相棒みたいなモンだなァ。ほらボーッとしてないで、さっさと乗った乗った。」

 

言われて正気に戻った俺は慌てて天馬の背中に跨り、続いて杳馬が後ろに乗る。

 

「振り落とされないようシッカリ掴まってなァ。んじゃ、出発~~ッ。」

 

そうして春先の日本の夜空を、とある町から一筋の流星が駆けていった。

 

 

 

 

 

Side:Master

(どの子も大きくなっていくものですね。別れの日がこんなに早く来るとは…。)

 

辛い戦いに身を投じる事になった弟子から、私は視線を下に向ける。

そこには砕かれたまま鞘に納まっている刀があり、これを手に入れた時のことを思い出した。

 

 

 

 

いつも世話になっている親方に重大な決心を伝える為、彼の工房に訪れた時の事である。

 

「侍を辞めて、道場を開く?あんだけ人を斬ってきたお前さんが何言っていやがる!」

 

「もう決めた事です。私は刀を置きますよ。妻と子を失って、続ける意味はありませんから。いえ、愛する者ができた時にこの道を選ぶべきでした。」

 

戦場から命からがら帰宅してみれば、待っていたのは物言わぬ愛する者達の躯(むくろ)だった。私は何の為に戦っていたのだろうと、己の剣の無力さと武士の生き様に嫌気が差してしまったのである。

 

「お前さんが不在の時を狙って襲われたって聞いちゃいるが、勿体無ぇな。その腕も錆びついちまうのか。」

 

「戦場で何度も死ぬほどの大怪我をしてきたのに、家族の死はそれ以上の苦痛なんですよ。せめて未来を担う若者達に、私の経験を生かすことができればと思いました。」

 

「やれやれ、この業界も知り合いが少なくなってきやがるなぁ。天下泰平の世になり戦が随分と減っちまって良い方向に進んでいるんだろうが、俺達には生きにくい世になっちまいやがった。倅が出ていくのも分かる気がするぜ。」

 

親方の話で聞き逃せない言葉が出てきた。

 

「そういえば、お子さんの姿が見えませんね。てっきり出かけているだけと思いましたが…。」

 

いつもは元気な笑顔で迎えてくれる、あの青年が見当たらなかったのだ。喧嘩でもしたのだろうか。

 

「『自分の理想の刀を作りたい。その為には異国の剣についての知識も必要なんだ。だから俺は日本を出るよ。親父、今まで育ててくれて有り難う。』だとよ。まだまだ教え足りない事が沢山あったていうのに、最近の若い連中は…。」

 

よっぽどショックだったのだろう。一言一句その当時の遣り取りを覚えているようである。

だがその理由なら分かる気がする。若者なら自分の夢を見つけたら追いかけずにはいられないだろうから。

 

「親方にそっくりじゃないですか。『一生に一度の人生なんだから、納得できるまでその道を歩み続けろ。』というあなたの教えに影響されたんですよ。きっとね。」

 

「分かっちゃいるけどよ。ハァ~。」

 

理想と現実は違う。夢見がちな彼の事が心配なのだろう。私ももう少し早く気づければ、家族を失わずに済んだかもしれない。

 

「まあ今はお前さんの話だ。道場を開くって言うなら、何も無いって訳にもいかねぇだろ?」

 

そう言いながら、奥の方から何か布で包まれた長い物を持ってきた。

 

「倅が最後に仕上げた作品だ。俺とお前さんとの仲だからな。コイツを置いておいてくれねぇか?」

 

親方の話を聞きながら布を解くと、見慣れた物が現れた事で驚愕した。

 

「真剣ですか?しかし私は…。」

 

「かーっ!男が細けぇ事を気にしてんじゃねぇ!だったら使わなきゃ良いだけの話じゃねぇか。いいか、コイツはお前さんだから渡すんだ。お前さんなら俺が、倅が納得できる使い方をしてくれると信じたからだ。だから……どうか受け取ってくれ。」

 

今まで聞いた事の無かった親方の悲壮な声に、私は何も言えなかった。妻と子に先立たれた身としては決して他人事では無かったので、その心遣いを有り難く受け取る事にしたのだ。

 

「分かりました。有り難く頂戴します。」

 

 

 

そして今回、この刀の分身である脇差を携えて弟子が旅立つ。

 

(あなたの父親が渡った外の世界に、一羽の雛が巣立ちます。どうか彼の力になってあげて下さい。)

 

そう脇差に祈りながら流れ星を見送っていたが、ふと気になる事が出てきた。

(しかし『聖剣や神剣のような魔を断つ剣』を作りたいと言っていた彼の刀が、悪魔と言っていいあの男と戦う事になった私の下にあったのは、これも運命……なのでしょうか?)

 

初めて振るったが、恐ろしいほど自分の手にしっくり馴染んでいた。きっとあの刀でなければ、老いた体で飛燕剣を放つ事はできなかっただろう。彼と数奇な運命に感謝し、私は家路につくのだった。

 

 

 

 

 

 




現実の方の忙しさのせいで、またしばらく更新が空きますがどうかお許しください。

次の更新は最短でも3月くらいになると思います。


改定後:とりあえず改定してみました。色々ツッコミ所があると思いますが、どうか大目に見てください。(話の続きが書けませんので。)
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