Fate/EXTRA 保健室脱却   作:南条

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 二話です。今回は張り切って書いたので、疲労が半端じゃないです。

 そして今回はちょっとした意味深が…?


何かの間違いです

【未定/00/11/15】

 

 

 

 現実をしっかりと受け止めたところで、すっかり意気消沈しています。自分の名前も思い出せないというまさかの展開に、なかなか頭が追いつきません。この先どうなるか見当もつかないし…不安だけが募っています。

 しかし悲観ばかりではいいことなど起ころう筈もありません。まずは今の状況をきちんと整理したいと思います。

 

 えーっと…とりあえず私がマスターで、後ろで腕を組んでいる男性が私のサーヴァントさんで、目の前で椅子に座っているのが新しい保健室担当。

 

容量不足(キャパオーバー)による一時的な意識喪失。…つまらないわね。ここにはもっと重病になってから来なさい。」

 

 何故か保健室担当の私がマスターとして再現された中、どうやら゙---゙は別のデータを保健室に持ってきたようです。

 それが目の前の白髪の女性、「カレン・オルテンシア」さん。一言で言うなら美人さんです。いかにも外国生まれですといった容貌でスタイルもいい。髪型は普段は下ろしてるらしいのですが、今は高くまとめたポニーテール。ちょっと口が悪い時もあるけど…保健室(ここ)を任されるくらいなんだから、きっと根はいい人の筈ですよね。

 

「今、なにか遠回しの自画自賛を見たような…。」

 

 サーヴァントさんが何か言っていたようですが聞きません聞きたくもありません。というか心でも読めるんでしょうかこの男性(ヒト)は…。

 

「さあ、もう用は済んだでしょう?さっさと出て行って。」

 

「えっ?あ、はい。」

 

 …根はいい人だと、信じたいなあ…。

 

 

 

【未定/00/11/20】

 

 

 

 何をすればいいのかも分からないまま、元私の部屋(保健室)を半ば強制的に追い出されてしまう。

 …とりあえずトイレにでも行こうかな。

 そう思って一階トイレに向かう途中で、何人かのマスターとすれ違う。全員がピリピリとした雰囲気で、話しかけることすら許されないような空気が廊下を覆っていた。…まだ謎が多いままだけど、はたから見れば私も一人のマスター…なんでしょうか。

 なぜここにいるのかも分からない私が、彼らと同じマスター。どうも場違いな気がしてならなくて、同時に他のマスター達に申し訳ない気持ちにもなった。

 

 突然 戦場の一端に立たされ、望みどころか聖杯戦争に参加するという意思のなかった私が、身分知らずの戦いに挑む。

 

 劣等感どころの話ではない。彼らとは何もかもが、そもそもの()()()()()

 

 そう考えていると、自分はここにいるべきではないという思いが込み上げてきた。その思いこそが、彼らを侮辱するものだというのに。

 

 …ダメよ私、こんなこと考えてちゃ。今はトイレで一息つくことだけを考えるの。

 そう言い聞かせ女子トイレに入る、ところでサーヴァントさんが止まった。

 

「む、トイレか。では私はここで待っているとするよ。」

 

 姿を消した状態ならバレないかもしれないのに、それでも律儀にするなんて…やっぱりいい人なのかもしれない。

 …いや、まあだからといって間近で覗くようならそれはそれで最低なんですけどね。

 

「正直、気持ちを落ち着かせるだけならマイルームで十分なんだが、君がそこでいいというなら従うまで。ゆっくりしたまえ、マスター。」

 

 まさかそこまで気づかれてるなんて…この人、実は凄い英雄なんじゃ…?

 とにかく、今は彼の気遣いに感謝してゆっくり落ち着こうと思いトイレに入った。

 

 すると、洗面所で一人の女性に出会った。

 

 皆が使う場所なのだから当然だと言えば当然なのですが、目の前の女性は明らかに他と違っていたんです。来ているのは普通の制服ではなく、赤い服。黒のミニスカートとニーソックスを履いていて、とてもきれいな顔立ちをしていた。勝気な吊り目で、目立つ黒髪のツインテール。

 

 一目見ただけで彼女の名前が頭の中に浮かび上がった。…そうだ、彼女の名前は━━━

 

 

 

【未定(サーヴァント視点)/00/11/25】

 

 

 

 まったく…まさかこんな聖杯戦争に巻き込まれるとは。それにマスターがあの゙間桐桜゙というのも、偶然にしては出来過ぎだ。聖杯は私に何を望んでいるというのか。

 しかし、ここは私がいた世界とは違うのやもしれんな。まあ彼女が記憶を失っているということもあるから、断言はできないが…パラレルワールド、といったところか。

 壁に背中を預けながらそんなことを思う。と、そこで一つの疑問に行き当った。

 パラレルワールド。となると、まさかとは思うが、()()も…

 

「よう、そこの兄さん。」

 

 物思いにふけっていると、どこからか声が聞こえてきた。

 姿を消している状態なのに話しかけてこられる。つまり相手はサーヴァント。

 

 ここは校内だ。゙ペナルティ゙のことを考えれば襲ってくることはないだろうが、一応警戒はしておこう。

 

「…ったく、話しかけたってのに無視するとはな。これじゃ一人で喋ってるみたいじゃねえかよ。」

 

 愚痴りながら、相手のサーヴァントは目の前に姿を現す。

 

 青い髪は上げられており、全身の青い服(タイツともいう)はとても目立つ。獲物は持っていないが、おおよそ見当がついてしまった。

 …仕方あるまい。こちらはバレる心配もなし。姿を見せても問題はなかろう。

 

「わざわざ敵に姿を見せるとは、随分と余裕だな。」

 

 悪態をつきながら姿を現す。相手はさほど気にしない性格だからか、軽い口調で返してくる。

 

「おうよ。まあウチんとこのマスターは許さねえだろうがよ。あの嬢ちゃん、何気に要望が多くってな。苦労が絶えねえぜ。」

 

「同情でも誘っているのか?悪いが、私が君を気に掛ける義理はない。身内話なら丁重にお断りさせてもらおう。」

 

「ハッ、そうかよ。付き合いの悪い野郎だ。」

 

 私の言葉に腹を立てたのか、相手はそっぽを向く。どうやら仲良くはなれないらしいな。

 

「…おい赤いの。」

 

 そう思っていたら話しかけてきた。…それだけ暇を持て余している、ということか。

 やれやれ、仕方のない。(マスター)が戻ってくるまでの間だけでも、話に付き合ってやるか。

 

 

 

「お前、どこかで俺と会ったか?」

 

 

 

【未定/00/11/25】

 

 

 

「あなたは━━━」

 

 目の前の黒髪の女性…「遠坂 凛」さんはそこまで言うと黙ってしまう。何か気になるようで、こちらを疑う、いや探るような目。もう少しで出てきそうなのに、あと一息というところで名前が出てこない。そんな表情をしていた。

 

 かくいう私も、なぜ凛さんの名前が出てきたのか分からなかった。面識はないはずなのに。

 その証拠に、名前以外は何も出てこなかった。

 

「あなたもマスターなの?」

 

 いきなり話しかけられて驚く。そのせいか、私は何も言えなかった。

 声をかけられただけで動悸が激しくなり、足も震えてきた。

 

「ちょ、ちょっと!あなた大丈夫!?」

 

 見るからに様子がおかしいことに不安を抱き、凛さんがこちらに手を伸ばしてくる。その綺麗な手が肩に触れると同時に、

 

 

 

『━━━━━━━━』

 

 

 

 ()()()()()()

 

 ほんの少しの声の記憶、しかし酷くノイズがかかって何の記憶なのか分からなかった。

 すぐに現実に意識を戻すと、目の前の凛さんは目を大きく見開いていた。

 

「あ、あの…」

 

 声を振り絞る。ようやく出た言葉を聞いた凛さんは我に返ったようで、すぐに手を私の肩から離した。なんだか汗をかいているようにも見える。

 

「あ、あはは。ごめんなさいね急に。」

 

 少し苦しそうな顔でそう言うと、凛さんは急ぎ足で去ってしまった。

 

 

【未定(サーヴァント視点)/00/11/30】

 

 

 

「お前、どこかで俺と会ったか?」

 

 

 

 そう訊かれた時、一瞬呼吸を止めてしまった。

 

「━━━いや、気のせいだ。私と君に面識はない。」

 

 すぐに体裁を取り繕う。出来る限りに平常ぶり、さも平然と答える。。

 

「━━━何故そう思ったんだ?」

 

「ただの勘だ。だが、勘の割には的を得ていると思えてよ。」

 

 そこで会話は途切れ、少しばかり無言になる。相手もこちらの顔色を窺っていた。反応で当てるつもりだろうが、今の私にはもう無意味なことだ。

 

「…チッ。なんだかなあ。テメエを見てると無性に腹が立ってしょうがねえぜ。」

 

「…それはすまない。この顔はそんなつもりはなかったのだがな。」

 

 私の悪態に、今度は怒りを露わにする相手。

 

 …どうやら、戦闘も覚悟したほうがよさそうだ。

 

 武器を投影しようとする、と同時に横手の女子トイレから一人の女性が出てきた。

 マスターかと思ったが、見えたのは程遠い容姿。

 

「━━━っ」

 

 赤い服に黒いスカート、そして黒髪のツインテール…その姿に驚きはしたが、同時にやはり、とも思った。

 ゙間桐桜゙がいるのなら彼女もそうなのではと。

 

「なにしてるのよランサー…勝手に姿を現してるなんて…」

 

 当の本人は相手サーヴァントに歩み寄ると、疲れたような口調で責めていた。

 

「いや、大したことじゃねえ。それより、どうした?具合が悪そうだが。」

 

「別に、これくらい平気よ…。」

 

 見栄を張っているようにも見えるが、あれは違う。心配させまいと、余計な不安を感じさせまいという、彼女なりの気遣い。

 

 …どうやら、予想は外れていなかったようだ。

 

 間違いなく、彼女は「遠坂 凛」その人だ。

 …よもや、こんな形で会うことになろうとは。

 

「ほら、行くわよランサー…。」

 

「…ああ。」

 

 凛はこちらには気付かなかったようだが、代わりにランサーが一瞥してきた。忌々しそうに舌を鳴らすと姿を消し、廊下を歩くのは凛一人に見えた。

 

 

 

【未定/00/11/30】

 

 

 

 気持ちを落ち着かせるために入ったトイレで予想外のことが起きたので、結局緊張したまま出る羽目になってしまった。私は何がしたかったんだろう…。

 外に出ると入口の側でサーヴァントさんが待っていた。なぜ姿を見せているのかは気になったが、今の彼はそれどころではないように見えたから追及しない。

 

「…出てきたかマスター。では、早速゙マイルーム゙にでも行こうじゃないか。」

 

 ゙マイルーム゙…マスター一人ひとりに与えられている個人部屋のことで、他のマスターに侵入されることのない絶対空間。一休みするだけならトイレよりはいい場所。

 …知識があるなら最初からそこに向かおうよ私…。

 

 

 

【マイルーム/00/12/00】

 

 

 

 一階玄関に立っていた「言峰 綺礼」という名前の神父さんに゙携帯端末機゙どマイルーム認証コード゙というものを受け取り、今は私とサーヴァントさんだけのマイルームに来ています。

 

 ゙携帯端末機゙というのは試練(タスク)や対戦者発表時に連絡が届く、ここだけの機械のこと。他にもサーヴァントさんのステータスを見ることもできるそうです。

 ゙マイルーム認証コード゙とはその名の通り、マイルームに入るために必要なものです。

 

 マイルームといっても内装は普通の教室と同じで、装飾品などは一つもない。ただただ殺風景なだけ、という印象が強い。

 

「ふむ、やはりこういう場所の方が落ち着くな。どこぞの誰かに絡まれることもないし、見られているという心配もない。」

 

 サーヴァントさんはマイルームに入るなり、いくつかの机と椅子をあれこれ積み上げてふんぞり返っていました。今はそれらしく振舞っていますが、だからこそ先ほどのせっせと机を積み上げながら「違う…こうじゃないな。」とか言って試行錯誤を繰り返していたのがシュールだったと言いますか…かわいかったといいますか…。

 ギャップ萌えって、こういうのを言うんでしょうかね。

 

「…人の顔を見て笑うとは。何か変なものでもついていたかね。」

 

「ふふ…いえ。別にそういうことではありません。」

 

 自分の顔に手を当てて確かめるサーヴァントさんが微笑ましくて、つい笑ってしまった。

 

「まあ、そんなことはともかくだ。ある程度落ち着いてきたようだから、自己紹介を済ませるとしよう。」

 

「あ、はい。どうぞ。」

 

 自己紹介と言われて少しドキッとしたが、分からないことを気にしても仕方がないので、とりあえずその問題は置いておき、今はサーヴァントさんの自己紹介を聞くだけにしよう。

 

「もう知っているだろうが、私が君のサーヴァントで、クラス名はアーチャーだ。呼ぶときは好きな呼び方で構わない。」

 

 アーチャー…?聞いたことはあるけど…どういったものかが思い出せない。これも記憶の不備…?

 

「ふむ、その様子では最初から説明した方がよさそうだな。」

 

 気を遣ってアーチャーさんは最初から、知っておくべき基本的なことからおしえてくれた。

 

「まず、きみが今いるのは地球ではない。ここはムーンセルによって月に作られた、SE.RA.PH(セラフ)と呼ばれる電脳世界だ。」

 

 ………はい?

 

「…と言っても、すぐには理解しづらいだろう。順に説明していくとしようか。」

 

 アーチャーさん、お手数おかけします…。

 

「゙ムーンセル゙ 2032年に月面で発見された物質があるのだが、この物質名がムーンセル・オートマトンと呼ばれるものだ。まあ、実際には月そのもののことなんだがな。

 ムーンセルは遥か昔から存在するもので、巨大な演算器であり、記録媒体だ。地球の歴史全てを、それこそ世界の人間一人ひとりを、世界の人間が築いてきた一つ一つの歴史を記録している。これだけでも、とてつもない存在というのは分かるだろう?」

 

 えっとつまり…

 

「ムーンセルは月そのもので、地球の歴史を全て記録できるような規格外のデータバンク、ということですか?」

 

「そうだ。そして、今の゙聖杯戦争゙を起こしている張本人でもある。゙聖杯戦争゙のことは分かるかね?」

 

 ある程度は知ってますが、微妙です…。そう答えると、アーチャーさんは嫌そうな顔などせずに「では、それも後で説明しよう。」と言ってくれた。…やっぱりいい人ですね。

 

「ムーンセルの演算機能は正直、限界が見えない。人間が作ったスーパーコンピューター等とは比べものにならないほどだ。

 そして、それだけの演算機能を持っているからこそ、SE.RA.PH(セラフ)という電脳世界を作り出すこともできる。次はそれの説明をしよう。」

 

 ムーンセルに続いてSE.RA.PH(セラフ)というものの説明に入ろうとするアーチャーさん。大変ではないでしょうか…?

 

「゙SE.RA.PH(セラフ)゙ 霊子虚構世界、仮想世界、電脳世界の総称だ。月で行う聖杯戦争のためにムーンセルが用意した舞台のことで、マスター達はここに自身のアバターを送って聖杯戦争に参加するんだ。

 実際の体はきちんと地球にある。今の君の体は、マスターのアバターをムーンセルが再現しているに過ぎない。まあ、それでも感触なども再現されているから、普通の人間と大して変わりはしないだろうさ。

 …しまった、脱線していたな。しかしよく考えれば、SE.RA.PH(セラフ)についての説明は少なくてもいいのだが、そうだな…。簡単に言えば、オンラインゲームを巨大規模で再現したようなもの、といったところか。」

 

 要約すると、SE.RA.PH(セラフ)は今私がいる場所のことですね。ムーンセルによって作られた電脳世界で、オンラインゲームに近いもの…。

 

「ちなみに、SE.RA.PH(セラフ)の中に再現されているこの学校は「海月原学園(つくみはらがくえん)」という名前だ。覚えても覚えなくても変わらないがね。」

 

 SE.RA.PH(セラフ)に存在するのが海月原学園と…。だから保健室とかもあるんですね。

 

「海月原学園には一階から三階まで教室とその他の部屋がある。三階から屋上にも上がれるから、後で行ってみるのもいいだろう。

 二階にはマイルームと図書室がある。図書室は様々な情報が収容されているから、知りたい情報があったらそこに行けばいい。ある程度の本なら揃っているからね。

 保健室は一階の端にあり、その先に行くと花壇と教会がある。今の私に教会に行く機会はあまり訪れないだろうが、気になるなら行ってみよう。

 購買部は一階から階段を下りる。外には弓道場なんかもあるらしい。

 あとばアリーナ゙だが…場所だけ伝えておこう。保健室と反対方向の奥だ。奥には扉があってそこから゙アリーナ゙に行ける。実際に見た方が早いだろうし説明はそこに着いてからにするよ。」

 

 丁寧に説明してくれるので非常に頭に入ってくる。なんというか…アーチャーさんはお世話を焼くのが好きなのかもしれない。

 

「さて、ではそろそろ゙聖杯戦争゙の説明をしようか。」

 

 来た。私が巻きこまれているこの現状の理解に最も近いこと。

 

「まず、゙聖杯゙のことは知っているかね?」

 

 ゙聖杯゙…とても有名なもので、あらゆる願いを叶える万能の願望器。それが災いであろうと、聖杯にかかれば容易にもたらすことができる。

 恐ろしくもあり、喜ばしいものでもあるかもしれない。自分の願いを叶えられるという希望にもなるが、人類に恐怖を与える畏怖の存在でもある。

 

「聖杯は、なにも器の形をしているわけではない。例えどんな形状であろうと、人々の願いを叶えることができるものを総じて聖杯と呼ぶ。もし生き物がどんな願いでも叶えられるとしたら、それは生物であり聖杯だ。

 そして、ここでの聖杯とはムーンセルのことだ。ムーンセルに自分の意識を同調させ、願いを望むことで叶えることができる。

 しかしムーンセルは一般的な聖杯とは違う。願いを叶えるために世界のバランスを演算し、その願いに見合うように事を進めるため、通常の聖杯よりも時間がかかるんだ。 まあ、それでも願いを叶えるという絶対条件からは外れていないから、聖杯であることに変わりはないんだがね。」

 

 聖杯はムーンセル、月のことだというアーチャーさん。…最初から思ってましたけど、規模が大きい…。

 

「その聖杯を巡って魔術師(ウィザード)達はサーヴァントを使役し、殺しあう。それが通常の゙聖杯戦争゙だ。」

 

 その在りかたは知っている。七人の魔術師(マスター)は一人ずつ英霊(サーヴァント)を持ち、聖杯を求め最後の一人になるまで戦うバトルロワイヤル形式の殺し合い…。

 でも…

 

「通常は、ということは、ここのは違うんですか?」

 

「ああ、全く違う。まずマスターの数は七人ではなく、今この学校にいるのは128人だ。」

 

「お、多いですね…。ということは、サーヴァントもそれだけいるってことですか?」

 

「そうだ。きちんと128人分のサーヴァントが用意されている。ここまでの聖杯戦争を展開できるのはムーンセルだけだろうさ。サーヴァント一体を維持するだけでもとてつもない事だというのに、それを同時に128体。頭が下がるレベルだ。」

 

 より一層ムーンセルの凄さを思い知らされる。聖杯と呼ばれるだけはあるな、というのがアーチャーさんの見解のようです。

 

「そして何より違うのが、対戦形式だ。

 地上の聖杯戦争では周りのマスター全員が敵だが、ここでば一対一の真剣勝負゙だ。その勝負が七回戦まであり、最後まで勝てば聖杯にたどり着く。最終的に残るのは一人だけだが、そこに至るまでの過程が全く違う。

 だから全てが敵とは限らない。敵となる一人以外は協力者にもなりうる、ということだ。」

 

 それは分かったんですけど…

 

「どうやって相手を決めるんですか?」

 

「ムーンセルがランダムに決める。決まったら携帯端末機の方に連絡が来るだろうさ。」

 

 つまり、連絡が来るまでは戦うこともないけど、もし来たら…

 

「あの、相手が決まった瞬間に始まるんですか?」

 

「いや、そうではない。相手が決まると猶予期間(モラトリアム)が始まるんだ。

 猶予期間(モラトリアム)は七回行われる対戦全てにある。期間は一週間。この間に敵サーヴァントの情報を集めたり、鍛練をしたり、゙暗号鍵(トリガー)゙を取得したりする。」

 

 トリガー…?

 

「ああ、失礼。暗号鍵(トリガー)というのばアリーナ゙の奥にある鍵のことだ。トリガーは二種類あって、これを集めなければ闘うことができない。絶対に取得すべき大切なもの、それがトリガーだ。」

 

 なるほど…トリガーを取得するのが絶対条件ってことですね。

 

「それで、猶予期間(モラトリアム)が終わったら、そのあとはどうなるんですか?」

 

「決戦場に行き敵と闘う。無論、一対一でな。」

 

 一週間という期間を経たあと、お互いが殺しあう。その事実をアーチャーさんはさらりと言った。

 

「ここに戻ってこれるのはどちらか一方だけだ。勝った方が生き残り、負けた方は電脳死。さっきは『オンラインゲームのようなもの』と言ったが、それはあくまで例えだ。死ぬことに変わりはない。ここでも、地上でも。」

 

 つまり…二度はない。一度負ければ、そこに待っているのば死゙だけ。コンティニューという選択肢は存在しない、一回限りのチャレンジ。

 

 不安が襲ってきた。当然、といえば当然…。いきなり目の前に突き付けられだ不条理゙な死という言葉に、怖くならない筈がない。恐ろしくならない筈がない。

 

「安心しろマスター。私は君を死なせるつもりなど毛頭ない。」

 

 顔にでも出ていたのでしょうか…アーチャーさんは力強い声でそう話す。

 

「私は君だけの剣で、君だけの盾だ。障害は取り除く。危険からは死守する。何があっても君の傍にいるし、最後まで君の味方だ。」

 

 

 

「…だから、()を信用してくれ。君には傷一つ付けさせない。」

 

 

 

 優しい笑みを浮かべながら言うアーチャーさんは、こちらの顔をまっすぐ見つめる。

 

 見惚れてしまった。優しい笑顔で不安が消えた。

 

 我に返ると、顔が急に熱くなってアーチャーさんの方を見れない。思わず下を向いてしまい、答える声も急激に小さくなってしまった。

 

 …これって、もしかして…

 

「では、次は君の自己紹介を始めようか?」

 

 言われてハッとした。自分は名前が思い出せない…理由は分からないけど、自身に関するデータが何一つ出てこない。

 そのことをアーチャーさんに伝えると…

 

「なるほど、そうなのか。だが名前に関しては大丈夫だろうさ。」

 

 …?それって、どういう…

 

「む、マスター。端末が鳴っているぞ。」

 

 思惑から現実に頭を戻す。

 気づくと、携帯端末機が電子音を鳴らしていた。画面を見てみると…

 

 

 

『二階掲示板にて、次の対戦者を発表する。』

 

 

 

 奇しくも、一回戦目の対戦相手が決まってしまったらしい。

 

「…決まったようだな。では、早速確認してこよう。」

 

 あまり乗り気にはなれないけど、何もしないまま死ぬなんて…そんなの嫌。戦いたくなくても、生きるためには仕方のないこと。

 体が戦いを拒絶するが、あそこまで言ってくれたアーチャーさんを裏切らないためにも、私は二階の掲示板に向かった。

 

 

 

【決定/01/13/00】

 

 

 

 掲示板の前まで来ると、そこには二つの名前ど決戦場゙というものがあった。

 

『決戦場:一の月想海』

 

 その上に、二つの名前が書かれてあった。どちらも同じ苗字で、一つは『間桐(まとう) (さくら)』という名前。そしてもう一つは…

 

 

 

 

 

『マスター:間桐(まとう) 慎二(しんじ)

 

 

 

 

 

「これはまた…酷いものだな。マスター、下手をすれば一回戦は君にとって、大きな壁となりうるぞ。」

 

 アーチャーさんのその言葉が、深く心に根を張った。

 

 

 




 一回戦目はワカメという展開。

 ワカメも大変ですね。EXTRAでも大変な目に遭ってるのにここでもなんて…。マジ同情します(棒)

 次回から猶予期間が始まります。あんまり長引かせる予定はないので、頑張って更新したいと思います。

 皆様、それでは次の機会に。シーユー!ネクストローマー!
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