Fate/EXTRA 保健室脱却   作:南条

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 更新遅れて申し訳ありません。

 活動報告の方でも言っておりましたが、遅れた理由としては『受験勉強と試験でパソコン禁止令』です。

 言い訳がましいですが、ご理解いただけると助かります。

 非常に淡白な内容ですが、急いでるからです。そちらについても申し訳ありません。

 では、本編をどうぞ。

 追伸:文章が中途半端に終わっていましたが、こちらのミスで全文が反映されていませんでした。すでに改変済みです。申し訳ありませんでした


実力行使です

【マイルーム/02/11/25】

 

 

 

 硬い感触を肌で感じながら目を開ける。

 作り物の太陽の光が窓から差し込んでいて、マイルームの中にはいくつかの影が伸びている。

 

 ゆっくりと体を起こす。疲れはなく、むしろやる気も少し出ている。なんとか今日も頑張れそうだなぁ…。

 

「ようやくお目覚めか…もう昼だぞ、マスター。早く支度をするんだ。」

 

 積み上げられた椅子の一つにふんぞり返っているアーチャーさん。呆れた声に苦笑いで返す。

 

「すみません…こんなに疲れたのは久しぶりで。」

 

「ほう?記憶が戻ったのか?」

 

「え?…いえ、そうじゃないんですけど…なんとなく、そう感じたって言うか…。」

 

「そうか、まあ今は気にする必要もないだろうさ。焦らずともいい。」

 

「…はい。」

 

 自分の記憶がない。昨日まではそれだけが気になっていたけど、今は心持ちが違う。たった一日なので、まだ完全に切り替えるのは難しいけど…。

 

「マスター。まだ眠気があるなら洗面台で顔を洗った方がいい。洗面台はトイレにある。それと腹が空いているなら購買でパンでも買うのがいいだろう。あそこはパン以外もあるし、積極的に使用すべきだ。それでも足りないというなら私が作ろう。むしろ私に任せてくれればフルコースで用意する。前菜からデザートまで、腹持ちのいい料理を厳選する。その後はきちんと歯を磨くように。歯ブラシがないというのなら私がなんとかしよう。歯磨き粉もな。そして情報収集と行こうではないか。」

 

「え、えっと…?」

 

 私とは違ってたった一日で過保護なお母さんみたいになったアーチャーさん。なにがあったんだろう…?

 

「…昨日は危険な目に遭わせてしまったからな。君が望むなら、今の発言も全てなかったことにする。」

 

 あ…。

 そっか。昨日のアリーナでの攻防を、いや…きっと私が死ぬかもしれなかった最初の一撃、あれを気にしてるんだ。

 

 傷つけない、そう誓ったはずなのに危険な目に遭わせた。

 

 それを気にして、こんなにおせっかいを焼いてくれてるんだ…。

 

「…アーチャーさん。」

 

「何かな。」

 

「眠気はないので、ご飯が食べたいです。アーチャーさんが作ってくれる、ご飯。」

 

 なら、少しでもお世話になろう。アーチャーさんと親睦を深めるためにも。

 

「…洋風と和風、どちらがお好みかな?」

 

「じゃあ、和風でお願いします。」

 

「了解した。すぐに用意しよう。」

 

 そう言ってマイルームから出ようとするアーチャーさん。…って、それっていいのかな?待ってる間、私は無防備に…それにアーチャーさんが襲われる可能性が…!

 

「安心しろマスター。マイルームは不可侵領域だ。他のマスターは入ることができないように作られている。では、私は食材を探してくる。それまでここで待っててくれ。」

 

 言い終えるとさっさといなくなってしまうアーチャーさん。

 

 …何してよう。アーチャーさんが帰ってくるまで暇だなぁ…。

 とりあえず机から降りて、かかっていた毛布を畳ん…

 

「あれ?」

 

 私…毛布なんか掛けてたっけ…?

 

 …まあいっか。これは机に置いといて、と。

 一通りマイルームの中を見回してみる。装飾品のない殺風景な部屋は静まり返っている。何をするにも小さな音が響くほどに。

 

 窓の方を向き、太陽の光を浴びながら深呼吸をしてみる。清々しい朝…昼。新鮮な空気が肺まで伝っていくのが感じられて、更にやる気も湧き出てくる。

 …窓って開くのかな?

 

 鍵を開けようと力を入れると…びくともしない。どうやら無理そうだ。

 なんで開かないんだろう…。防犯のためかな?確かに、窓から攻撃されたら大変だもんね。

 

 …そういう世界、なんだよね。ここは。

 

 記憶がない状態で放り込まれたのは生死を賭けた戦いの場。まるで野生に生まれた小動物だ。喰われることが前提の生命。死ぬまで恐怖に晒され続ける。

 そう思ってた。でも、今はアーチャーさんがいて安心できている。戦場だというのに、そうとは思えないほどに心が穏やかだ。

 

 出会えたのがアーチャーさんでよかった。

 

 他のサーヴァントとじゃ上手くやれたのか分からないし、あの性格のおかげで現状を理解できているのもある。でもそれ以上に…

 

ガララッ

「マスター。前菜の準備ができた…む?」

 

 

 

 顔を見てるだけで、心が安らぐ。

 

 

 

「…マスター?」

 

「あ、はい?なんでしょう?」

 

「前菜の準備ができた。今すぐ食べるかね?」

 

「…はいっ。」

 

 一緒に食事とは行かなかったけど…一歩だけ、距離を縮められた気がする。

 

 今の私は、それだけで舞い上がった。

 

 

 

【三階廊下/02/12/00】

 

 

 

「…来ましたね。間桐桜。」

 

 三階廊下の奥で空を眺めていた少女、ラニさん。こちらが話しかけるよりも早い段階で気づいていたようです。それだけの実力を持つ人が私に協力関係を申し込んできた。

 

『ラニ=Ⅷと手を組むのは反対しない。戦力としては申し分ない。

 だが私が心配なのはそこではない。そのことも理解してほしい。』

 

 アーチャーさんにはああ言われたけど、これが私なりによく考えた結果。

 

 ハンデを背負っているなら、周りを出し抜かなければ。

 

「協力要請のお返事は?」

 

「…受けます。一緒に戦いましょう、ラニさん。」

 

「…受けるんですね。」

 

「え?」

 

 ラニさんは喜ぶでもなく、淡々と言葉を紡ぐ。

 

「私の予想では、あなたは要請を断ると思っていました。」

 

「な、何故…?」

 

 

 

「理由としては、あなたが優秀だからです。間桐桜。」

 

 

 

「あなたの゙回路゙は非常に興味深いものです。天性のものか変異のものかは定かではありませんが、あなたは比較的に他より秀でている。今回の対戦相手よりも遥かに。」

 

 自分は他より優秀…?

 

「それほどの腕前を持つあなたが記憶をなくした程度で負けるとは到底思えません。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 記憶がなくても勝てる…?

 

「十分な実力を持っているのなら協力など必要ない。むしろ協力者に情報を開示してしまう可能性すらあります。後半に行くほど厳しくなるこの戦争において、それは大きな痛手です。ならば最初から協力者など作る必要はありません。」

 

 そんなはずはない。記憶がなくても分かる。

 

「人間であるなら尚更です。人間は他人に対して情を抱いてしまう。殺し合いに不要な、ただの邪魔なプログラムを。」

 

 私は、強くない人間だ。はっきりと分かってる。

 

「初めて会った時の態度といい、あなたはその傾向が顕著であることは明白です。そんな人間が要請を受けるとは思えません。」

 

 そう。私は弱い人間なんだ。

 

「あなたは他人と繋がりを求めるがゆえに、他人を壊すことを忌み嫌う性格なのではないでしょうか。資料によれば、少なからずそういった人種は存在します。あなたがそうである可能性も高い。」

 

 私は、弱い。

 

「しかし、そうでない可能性もありますね。あなたはもしかしたら、他人を壊すことに()()を感じる人間なのでしょうか。」

 

 っ!!

 

「違います!!!」

 

 反射的に声を荒げる。柄でもない大声でラニさんの紡がれる言葉を切った。

 

「…違います。私は、知りたいんです。」

 

「…知りたい?」

 

「はい。」

 

「それは、あなたの記憶のことでしょうか。」

 

「いいえ。」

 

 

 

「ラニさんの事をです。」

 

 

 

 ラニさんは目を丸くした。

 

「ラニさんの言うとおり、私は他人を意識してしまう性格なんでしょう。その証拠に私は、ある人に気を遣いました。その人に嫌な思いをさせたくない、そんな考えが気づかないうちにあったのかもしれない。」

 

「…それが私への知的探究心につながるのですか?」

 

「はい。私は気づかないうちに、声をかけられた時からラニさんのことを気にしていたのかもしれません。」

 

「理解不能です。他人を気に掛ける性格、そこまでは良しとできます。しかし貴方の゙ソレ゙は全くの別物です。

 例えるなら、それば本能゙と同じです。食欲があるから食事をする。睡眠欲があるから睡眠をとる。あなたのはそれらと一緒です。゙人を気にする性格゙だから゙人を気にしてしまゔ。本能の観点で言えば論理的に見えなくもありませんが、そんなのはただの暴論です。」

 

「根拠なんてありませんから、確かにそうなるかもしれませんね。でも、それは悪い事でもないでしょう?」

 

「いいえ、悪い事です。言ったはずですよ。この戦争において情をかけるのは不要なことだと。それが声をかけられただけで気を遣うなど、ウイルスにでも感染してるとしか思えない゙不良品゙です。そんなものは排除されるのが当然の末路です。」

 

「本当にそうでしょうかね?」

 

「…どういう意味でしょうか?」

 

「確かに私は不良品ですよ。記憶もない、覚悟もない、性格は致命的で、何もかも人に頼りっぱなしの赤子です。…でも私は、まだ゙改良゙できるレベルだと思いますよ。

 そしてその改良に、あなたも必要なんですよラニさん。あなたにとって有用で、私にとっても有用。ならもう、協力する他にないじゃないですか。

 

 

 

 あなたはただ、私のことなど゙気にせず゙に協力すればいいだけの話です。」

 

 

 

【三階廊下(ラニ視点)/02/12/10】

 

 

 

 理解できない。なぜそこまで自身に満ちた顔をしているのですか。

 

「本当にそうでしょうかね?」

 

 理解できない。なぜそこまで自身に満ちた立ち振る舞いができるのですか。

 

「…どういう意味でしょうか?」

 

 理解できない。理解できない。理解できない。

 

「確かに私は不良品ですよ。」

 

 いいえ、あなたの回路ば完成されている゙。

 

「記憶もない、覚悟もない、性格は致命的で、何もかも人に頼りっぱなしの赤子です。」

 

 いいえ、あなたの本質ばそんなものではない゙。

 

「…でも私は、まだ゙改良゙できるレベルだと思いますよ。」

 

 これ以上、何を゙改良゙すると言うのですか。

 

「そしてその改良に、あなたも必要なんですよラニさん。」

 

 初めてですよ。

 

「あなたにとって有用で、私にとっても有用。ならもう、協力する他にないじゃないですか。」

 

 人に゙恐怖゙を感じたのは。

 

「あなたはただ、私のことなど゙気にせず゙に協力すればいいだけの話です。」

 

 

 

 あなたは、何者なんですか?

 

 

 

【三階廊下/02/12/10】

 

 

 

「…いいでしょう。あなたの性質については更なる追及が必要ですが、確かに今するべき話題ではありませんでしたね。謝罪します、間桐桜。」

 

「構いませんよ。今は協力者が増えた、その事実だけ分かればいいんです。」

 

「…。」

 

「それでは、また会いましょうね。ラニさん。」

 

「…はい。また、後日に。」

 

 

 

【図書室/02/13/00】

 

 

 

 気付けばラニさんと別れていて、何故か私は図書室にいた。

 

 ラニさんと話していた内容が思い出せない…。それどころか、゙私はラニさんと話していたのが、それすら疑問に思えてくる。

 アーチャーさんに訊こうにも、返事をしてくれない。いや、相槌を打っているだけ、という方が正しいかもしれない。考え事でもしているかのように…。

 

 …とりあえず、どうしよう。アリーナに行くにはまだ早いと思うし…。

 

 ふと、アーチャーさんが昨日言っていたことを思い出す。

 

『この聖杯戦争ば情報戦゙と言っても過言ではない。相手の情報を集め、真名まで至れれば勝利に近づける。探すのはトリガーだけではない。相手のことを知るためのヒントもだ。決して見落とすことはないように。』

 

 情報…そうだ。一つ目のトリガーを手に入れて安心してたけど、大事なのはそれだけじゃないんだった。

 と言っても、どうすればいいんだろう…?誰かに訊いてみる、とか…?

 

 …ダメだ。私、本当に一人だと何もできない…。

 自分が情けないよ…。

 

 慎二さんのサーヴァントの情報、失っている記憶の事…目的はあるのに、どうやってそれに近づけばいいのかが分からない。

 

 …悩んでても仕方ない。まずは情報を得ることにしよう。記憶の事は後回しだ。

 

 えっと、ここは図書室。調べものには役立つ場所だし、少なからず人もいる。…よし、ここの人たちに訊いてみよう。

 まずはあそこにいる、金髪の人に訊いてみよう。なんかオーラが神々しいけど、気後れしちゃダメよ桜…。

 

「あの!」

 

 思わず声が大きくなる。

 

「はい?」

 

 帰ってきたのは聡明な声。見た目は金髪碧眼の美少年。服装が制服ではなく、オレンジ色の目立つものだった。そして何より、堂々としている。何者にも動じない凛とした瞳に引き込まれそうになる。

 

「えっと…その…」

 

 予想以上の紅顔に何を言おうとしていたか混乱する。すると、

 

「…間桐桜さん、ですか?」

 

 何故か私の名前が出てきた。

 

「え?は、はい…?」

 

 そして何故か疑問形で返してしまった。何をしてるの私は…。

 

「フフッ…面白い人ですね。貴女のような方は見ていて飽きが来ません。」

 

「は、はあ…」

 

 微笑しながら話す少年。綺麗な笑顔だと思った。

 

「ところで、何か御用でしょうか?」

 

「あ、その…今、相手の情報を集めてるところなんですが…えっと、慎二さんのことについて、何か知ってることとか…」

 

「慎二…間桐慎二さんですか。あのアジア圏のゲームチャンプの」

 

 そうだったんだ…知らなかった。

 

「そして女癖が悪く、俗語で言ゔキザ゙の雰囲気を醸し出している青髪の」

 

 あ、それは知ってます。ていうか第一印象がそれですし。

 

「そうです。その慎二さんです」

 

「彼は実力はありますが、言動は比較的に幼稚なので校内を歩くだけで情報は入ると思いますよ。ここには貴女達以外に126人もの生徒がいるのですからね」

 

 幼稚って…凄い爽やかに言ったなぁ…。これぐらいのレベルになると嫌味に聞こえないから不思議です。

 

「アリーナに用事がないなら一日中学校にいても問題ないと思いますよ」

 

「そ、それは言い過ぎでは…」

 

 闘う必要すらないと言われては立つ瀬すらないと思いますが…。

 

「…それだけ、実力差があるということですよ」

 

「え?」

 

 何か言ったかな…?声が小さくて分からなかったけど…。

 

「いえ、気にしないでください。゙些細゙なことですから」

 

「?」

 

「すみませんが僕もやることがあるので、これで失礼します。慎二さんの情報が入ったら伝えますので。ではその時まで」

 

「え、あ…」

 

 金髪の少年はスタスタと図書室から出て行ってしまった。

 

 

 

 …ていうか、名前も聞いてないんですけど…。

 

 

 

【マイルーム/02/15/00】

 

 

 

 あれから少し訊き込みをしてみたけど、使えそうな情報はなかった。というか愚痴を聞かされたり、苗字が同じだということに同情されたりと、何か違う気がしてならない。

 アーチャーさんも黙ったままだし…とりあえず小休止。

 

 椅子に腰かけため息を吐く。

 

「マスター」

 

 そのすぐ後にアーチャーさんがようやく喋り始めた。

 

「アーチャーさん…どうしたんですか?今までずっと黙ってたのに…」

 

「少し気になることがあってな。君のことについてなんだが…昨日に君がトイレへ行ったとき、中から遠坂凛が出てきただろう。顔を合わしたかね?」

 

「えっと、正確にはお手洗い場でばったり出くわしたと言いますか…まあ、はい」

 

「触れたか?」

 

「え?」

 

「遠坂凛の体に触れたか、と聞いているんだ」

 

「触れましたけど…」

 

 それが何なのだろう…。聞き取ることのできない記憶が蘇っただけで、他は何も…。

 

「何か起きなかったか?」

 

「…記憶が、少し戻りました。何の記憶かは分かりませんけど…」

 

「…。」

 

 顎に手を当てて思案顔になるアーチャーさん。しかしすぐ顔を上げてまた別の質問に移った。

 

「訊き込みをしているとき、女生徒に手を握られていたな?」

 

 ああ…確か「あの間桐君と同じ苗字なんて…間桐さん可哀想!」とか言いながら何人かの人が握ってきたような…。

 

「それが、どうかしたんですか?」

 

「その時、()()()()()()()()?」

 

 言われて気が付いた。

 凛さんの時には不鮮明な記憶が蘇ったが、他の女生徒に触られた時には…

 

「何も起きませんでした…。本当に、何も…」

 

「…分かった」

 

「え?何がですか?」

 

 アーチャーさんの話、というより一人で納得するスピードが速すぎてついていけない…。

 当の本人であるアーチャーさんは真面目な顔で、こう言った。

 

 

 

「マスター。すまんが、少し試して欲しいことがある」

 

 

 

【一の月想海:第一層/02/16/00】

 

 

 

 

「…どういうつもりだ?お前」

 

「…少し話したいことがあるんです、慎二さん」

 

 アリーナの中で広間のような空間…昨日お互いのサーヴァントが闘った場所で、前回とは立ち位置が逆の形で向き合っている。

 慎二さんは明らかに怒りを露わにしている。アーチャーさんの言葉にまだ腹を立てているのでしょうか…。

 

「話したいこと?そんなもんこっちには無いね。お前には用なんてないんだよ」

 

 私の事には興味が無さそうに鼻を鳴らす慎二さん。

 

「ほら、早くお前のアーチャーを出せよ。昨日のお返しをしなきゃ僕の気が済まないんだからさ」

 

 やはり狙いはアーチャーさんへの仕返しですか…。ねちっこいというか、根に持つタイプですね。

 まあ、そう言われてもアーチャーさんは…

 

「アーチャーさんならいませんよ」

 

「…はぁ?」

 

 正確にば私の傍にはいない゙だけど…。

 

「私は闘うためにここで貴方を待ってたんじゃありません。さっき言ったように、話したいことがあるからです」

 

 慎二さんの目的がアーチャーさんへの仕返しなら、アーチャーさんが居なければいい。居たらすぐ戦闘になっで目的゙が果たせないし…。

 でも居ないなら話は別。もしかしたら話くらいは聞いてくれるかもしれない。

 

「意味分かんないなー。何で僕がわざわざ敵と話さなきゃならない訳?さっさと消えないと、ここで殺すぜ?」

 

 しかしそれでも聞く耳を持たない慎二さん。正直、本当に殺しに来そうな雰囲気だ。慎二さんのサーヴァントはただ斜め後ろで突っ立っている。

 

「っ…別に構いませんよ」

 

 恐怖を悟られぬように強気に言う。慎二さんは面食らった顔をする。

 

「でも、少しだけでも聞いてください。お願いします」

 

 深く頭を下げる。慎二さんは小さく、しかしこちらに聞こえるような舌打ちをすると…

 

「…いいだろう。で、話ってなんだよ?」

 

 渋々ながら承諾してくれた慎二さん。良かった…これで、もしかしたら…。

 

「…少し、()()()()いただけませんか?」

 

「………は?」

 

 慎二さんは意味が分からなそうに眉間にしわを寄せた。

 

「触らせるって…何が?」

 

「手でも何でも…肌に触れさせていただけませんか?それで分かることがあるので…」

 

「いやいや、ちょっと待てよ。なにそれ?意味分かんないんだけど…」

 

「説明しなくとも、やってみれば分かるんです。お願いします!」

 

 またもや深く頭を下げる。これで断られたら実力行使しかなくなる。それだけは避けたい。

 

「…もし嘘だったら、あのアーチャーへの仕返しなんて関係なく、お前をすぐ殺すからな」

 

 そう言いながら手を出してくれる慎二さん。よし…これで…。

 その手に触れるために手を伸ばす。

 

「…。」

 

 あと少しで触れる。

 そこで気づいた。

 

 

 

 慎二さんの口角が上がっていた。

 

 

 

「っ!!」

 

 私はすぐに手を戻し、一歩後ろにさがった。

 

「な、なんだよ?触らないのか?」

 

 意外そうな顔をわざとらしく見せる慎二さんを睨み付ける。

 

「…その手に、何か仕込んでいるんじゃないですか?」

 

「…チッ!なに気づいてんだよ…。そうだよ、卒倒用の軽いプログラムを仕組んだんだよ。保身のためだ。別に悪いことではないだろ?」

 

 呆気なくネタをばらす。成功しなかったら隠す気もないなんて…変なところにこだわりがあるらしい。

 …ただ困った。これじゃあ…

 

 

 

『実力行使だな、マスター』

 

 

 

 アーチャーさんの声が響く。私の後ろの通路から勢いよく矢が放たれ、私と慎二さんの横をすり抜ける。狙いは敵サーヴァント。

 

 ガキィン!!と金属音が鳴り響く。敵サーヴァントは杭のような武器でアーチャーさんが放った矢を弾いた。

 

「すぐに片づけるぞ、マスター」

 

 私の傍に現れると、アーチャーさんは黒い剣を出し、

 

「失敗はするな。チャンスは一度だけだ」

 

「…はい!」

 

 私はそれを受け取り、両手で不恰好に構える。

 

「なっ…なに考えてんだコイツ…!!」

 

「…退がってください、マスター」

 

 敵サーヴァントが前に出て、低い姿勢で止まる。

 それに対するようにアーチャーさんも昨日の二つの剣を出す。

 

 どちらも体制は整った。セラフが介入するまでにかかる時間はほんの僅か。

 

「それまでに、終わらせる…!」

 

 私が一歩踏み出し、二人のサーヴァントも同時に動き始める。

 

 何としても、目的を達成する…!!

 

 

 

 

 

【セラフ介入まで、あと二十秒/02/16/10】

 

 

 

 

 




 時間があればもっと長く書くつもりでしたが、予想外に時間がかかってしまったので、戦闘前で区切らせていただきました。

 次回からは受験の事を気にせずに書けるので、今回よりは早く更新できると思います。時間がかかって一か月、に抑えたい所存です。

 とりあえずこんなところです。受験結果はまだです。結果に関わらず執筆は続けるので、これからもよろしくお願いします。

 皆様、それでは次の機会に。シーユー!ネクストローマー!
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