Fate/EXTRA 保健室脱却   作:南条

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 ………。

 …謝ったら許してくれますか?更新が半年も空いたことを。

 まあ許す許さない以前に謝らなければいけませんよね本当にすみませんでしたぁ!!!
 言い訳はしません。単純にゲームとかしてたらあっという間に時間が過ぎてたことに危機感とか感じなかった私が悪いのですから。本当に、更新遅れて申し訳ありませんでした…。

 今まで「早く更新しないかなぁ」「まだ更新されてない…」「半年経った」「これ失踪じゃね?」とか思わせてしまった皆様、犯人はこいつです。この無駄に図太い神経してるこいつが犯人です(私です)。

 あ、それと最後にもう一つ。

 本当にすみま(ry


いけない事ですか?

【セラフ介入まで、あと二十秒/02/16/10】

 

 

 

 目的を達成するために足を動かし始める。ただ一歩目を踏み出すその動作の内に、二人のサーヴァントは互いの距離を詰め武器を交らわせていた。

 私は一直線に慎二さんに向かう。真横で金属音が鳴り響く。たった一瞬の間に何度ぶつかっているのか見当もつかない。すぐ側で火花が散るのを視界の端で認識する。

 

 怖くない訳ない。

 

 でもやらなければいけないんだ。

 

 今すぐに止まりそうになる足を無理やり前に動かす。あと少しで剣が届く。

 そこで敵のサーヴァントが武器を飛ばしてきた。牽制のためだ、とすぐに分かった。これ以上進んだら当たるかもしれない。それでも私は止まらない。必死に前に進む力だけを振り絞る。

 

「…」

 

 敵のサーヴァントは飛ばした武器を戻そうとはしなかった。当たっても構わないと考えているのだろうか。

 このままだと本当に当たる。別に戻すことに賭けてたわけではない。きちんと確信があったからだ。

 

 側で金属音が鳴ると、すぐに赤と黒の背中が見えた。

 

「行けマスター!」

 

 私に傷を付けさせないと誓った人が守ってくれる、私にはその確信があった。

 

 背中を押すような声を後ろに追いやり、慎二さんの元に辿り着いた。

 

「なっ…!?」

 

 黒い剣を両手で思い切り振りかぶる。

 

「や、止めろぉ!お、おい()()()()!助けろぉ!!」

 

 剣を一気に振り下ろす。力が強すぎたのか、すれすれで止めようとしても思い通りにならないと直感的に思った。

 危うく顔に当たるというところで、

 

 

 

 黒い剣を弾かれた。

 

 

 

 いや、弾かれたというよりは壊された。私が振り下ろしていた剣は、その刃の中間くらいで二つに割れていたのだ。宙に舞うのは粉々に砕けた刃の破片と、敵のサーヴァントの武器だった。鎖同士がこすれる音と共に、武器は持ち主の手元に帰っていく。そして一秒にも満たない時間の内に刃の破片が辺りに落ち、私の手には不恰好な剣の残骸だけが握られていた。

 

「あっ…!!」

 

 私は破片に気を取られ、視線どころか体ごと向きを変えてしまう。

 その時、何かが視界の端に映った。

 

 慎二さんの手だ。

 

 そう思った時には遅かった。既にその手は私の頬に触れ、

 

 

 

『━━━るな━ら!!』

 

 

 

 記憶が蘇った。

 

 

 

『━━いつの家には━━━っただ━!』

 

 少しばかり不鮮明な映像と共に、慎二さんの声が聞こえてくる。

 

『お前は僕━言うことだけ聞いてれば━んだよ!!』

 

 段々とノイズを掻き消しながら、映像も音声もはっきりとしてくる。

 

『…なんだよその眼は。それが!()に対する目つきかよ!ああ!?』

 

 これは、慎二さんが…私を蹴っている映像…?

 

『本当にお前はどんくさい奴だよなぁ。そう思ってるの、僕だけじゃないんじゃない?』

 

 一瞬、砂嵐が走ったかと思うと、場面が変わっていた。

 どこかの廊下だろうか…?少しほの暗く、埃くさい。装飾を見れば立派な建物だということは分かる。しかし正確にどこなのかはよく分からない。

 

 

 

『本当は━━━の奴だって、お前のことバカにしてるだろうさ』

 

 …?ノイズがかかって聞き取れないところがあったけど…なんだろう。文脈からして、人の名前だろうか…?

 

『そんな…()()はそんな人じゃありません!』

 

 これは、私の声だ。誰かを庇うように…でも、少し恐怖を感じてる。何に対して?

 

『ハッ、そんなの分かんないじゃん?それとも証拠でもあんのかよ?』

 

 これは会話の記憶なのだろうか…?それにしても、これは記憶が蘇っているというより、記憶を()()()()()()()という感じだ。

 

()()()…どうして、そんなことを…』

 

 兄…さん…?誰が…?

 

『お前がムカつくからだよ!()のくせして、()をほったらかしにしやがって!』

 

 え…?これって、つまり…私と慎二さんは兄妹の関係、っていうこと…?

 

 

 

『お前は間桐の人間なんだから、この家で家事でも何でもすればいいだろうが!わざわざ━━━の奴のところに行く必要はないんだよ!!』

 

 慎二さんが髪を掴み、私は廊下に倒される。そのまま慎二さんに何回も蹴られる。

 腕、足、わき腹…慎二さんは暴言と文句を口にしながら、蹴る足を止めようとはしない。

 

 …これが、私の記憶なの…?

 

 

 

 また場面が変わった。

 

 その瞬間、今の私の背筋が凍りついた。

 

 記憶の中の私は、ただ同じ言葉を繰り返しながら、自分の手と、とある一点を交互に見ていた。

 

 私の手は赤く染まっていた。

 

 そして足元には、同じように赤く染まっているナイフが落ちていた。

 

 ふと、記憶の中の私は視線を移した。

 

 私の口から呟きが漏れながら、視界に映ったのは…

 

 

 

『兄さん…ごめんなさい…』

 

 

 

 

 

 ━━━血だまりに沈む慎二さんの姿だった。

 

 

 

 

 

「うわぁぁあああぁあぁぁぁぁあああああ!!!」

 

 大声を上げながら体ごと離れる慎二さん。見てはならないものを見たように、苦しそうな顔で荒い呼吸をしている。

 

「な、なんだよ今の…!僕の首が…!首…ついてる…?」

 

 両手で首があるのを確認するように全方向から触っている。そして…

 

「ヒッ…!!?」

 

 こちらの顔を見るなり、以前も持っていた石を握りこんだ。

 

「あっ…待って!」

 

 声をかけるも、慎二さんと敵サーヴァントはその場から姿を消した。

 戦闘が終わったことを確認したアーチャーさんがこちらに寄って来る。

 

「…一応、目的は達成だな。マスター。

 元々は脅しをかけ、相手の情報を掴む予定だったが…あの男、身の危険が迫った途端にクラス名を口走った。これで敵のクラスばライダー゙と確定したも同然だ。」

 

 そう…慎二さんは確かに呼んでいた。あのサーヴァントの事を゙騎兵(ライダー)゙と。

 

「なるべく負担はかけないようにしていたのだが、こちらの読みが浅かった。ライダーは昨日の内では力を全く出していなかった。

 その証拠に、君が切りかかろうとした時に、驚くべき速さで動いた。反応できる速度だが、予想外で体が動かなかった。すまなかったな。マスター」

 

 こちらに頭を下げ謝るアーチャーさん。すると何かに気づいたのか、床に落ちている破片を拾う。

 あれは…剣のものとは違う。限りなく透明に似せた何かの破片だった。

 

防御術式(プロテクトコード)の破片か…。卒倒用のちんけな物だが、なるほど。体に纏うことで一種の鎧の役割を持つのか。

 恐らく君の剣がかすりでもしたんだろう。術式(コード)が発動したにも関わらず、当たったのは無機質。空振りした、というところか」

 

 アーチャーさんは私に聞こえるように説明を始めていた。

 しかし当の私は話の内容がうまく頭に入ってきていなかった。

 

「コードが壊れていることに気づかず、君の意識をなくすために触ったんだろうが…そのおかげで、記憶の方も進展したかね?マスター…っ!?」

 

 腰の力が抜け、その場に座り込む。アーチャーさんはいち早く異変に気づき、私の手を取る。

 

「マスター、どうした!」

 

 アーチャーさんが呼びかけるが、私は返事ができなかった。

 必死に記憶から消そうとしても、より脳裏に張り付く映像に気を取られているからだ。

 

 あれを私の記憶と認めたくない。

 

 なのに、忘れようとするほど、余計頭の中に残る。

 

 

 

「マスター、返事をしろ!マスター!」

 

 体を揺さぶられ、そちらに気が向く。

 

「…アーチャーさん…」

 

「…ハァ…怪我は?」

 

「いえ…怪我は…ないです…」

 

 普通に声を出したいけれど、口さえうまく動かない。

 その様を見たアーチャーさんは私の体を抱え、すぐにマイルームへと向かった。

 

 

 

【マイルーム(アーチャー視点)/02/17/00】

 

 

 

 …記憶を蘇らせるべきではなかったか。あれはライダーだと私は気づいていたが、今後のことを考えると、情報集めの要領を知ってほしかった。だが、それが仇になった。

 

 明らかに考えが足りていなかった。

 

 どうせなら全く関係のない生徒との対戦の時に、きちんと教えるべきだった。早とちり…いや、焦っていたな。間桐桜の潜在能力も考慮すれば、今回の相手は簡単に勝てた。だというのに俺は…

 

「…スー…スー…」

 

 …今は眠っているが、起きた時にどうなるか…。

 間桐慎二との記憶を見た彼女は様子が変だ。アリーナでも返事ができないような状態に陥っていた。見た記憶はそれほどのものだったのか…?

 

 …とにかく、彼女はこれ以上前線に出るべきではないな。

 

 

 

【マイルーム/03/02/24】

 

 

 

 唐突に目が覚めた。

 

 まず視界に入り込んできたのは、殺風景な教室から見える夜空だった。電脳世界とはいえ本物のように星が瞬いている。月を遮るような雲はなく、怪しげな光が私を照らしている。

 ゆっくりと体を起こす。黒板の方を向いてみると、無造作に積み上げられた椅子の一つにふんぞり返って目を瞑っているアーチャーさんがいた。

 …寝てる、のかなぁ…?

 

 サーヴァントって寝る…ものなの?元は人だからやっぱり睡眠は必要なんだろうか?

 

 …寝顔、初めて見た。

 

 音を立てないように静かに机のベッドから降り、少し近づいて見てみる。

 いつもは無愛想で、ほとんど無表情な顔をしてるけど…寝顔も似たようなものだった。寝息が聞こえる距離でまじまじと見ていることに気づくと、途端に恥ずかしくなってきた。

 …ちょっと、外の空気でも吸おうかな?

 

 

 

【二階廊下/03/02/27】

 

 

 

 夜の廊下に出てみると、ひやっとした空気が背中を寒くした。やっぱり夜は少し冷える。戻ろうかとも考えたけど、こんな機会は滅多にない。体験しておいても損はない筈。

 時間も時間だからか、私以外に廊下に出ている生徒は一人もいなかった。いつものピリピリとした雰囲気が感じられないというのも不思議だ。私だけ別の場所にいるようで、それはそれで寂しくもある。

 一歩進むだけで靴とコンクリートがぶつかる音が響き渡る。耳を澄ませば服が擦れる音だって容易に聞き取れる。

 

 本当に一人なのだと再認識する。どうせなら普段ではできないことをしてみたいけど…

 

「あ…そうだ」

 

 屋上に行ってみよう。この時間なら凛さんもいないと思うし…よし。

 

 

 

【屋上/03/02/31】

 

 

 

「うわぁ…綺麗…」

 

 屋上へと続く重い鉄の扉を開けると、辺り一面に星の海が広がっていた。

 一つ一つがその存在を主張し合っているように瞬き、その全てが同等の美しさを放っていた。

 真上を向きながら歩を進める。両手を広げたまま、一歩ずつゆっくりと。

 少し無理をして、腰を反らしてみる。視界が動き、そこに映る星の数が変わる。

 

 すると星ではない無機質が映った。恐らく屋上にある貯水タンクやら何やらだろう。そう思った私はそれを気にも止めようとしなかった。

 

 しかしまた別のものが映った。それは黒く、微風になびくもの…゙髪の毛゙だ。

 私は咄嗟に姿勢を戻し、体の向きを変えた。

 

 

 

 そしたら、いたんです。屋上でも一際高い所に…

 

 

 

「久しぶりね、゙間桐さん゙」

 

 

 

 髪をなびかせながらこちらを見下ろず遠坂 凛゙さんが…。

 

 

 

【再会/03/02/35】

 

 

 

 凛さんは屋上に降り立つと、まっすぐにこちらを見据えてきた。

 私は以前のような症状に見舞われることはなかったが、体が硬直してしまって動けない。

 

「………」

 

「………?」

 

 お互い何も喋らず立ち尽くす。凛さんは本当に顔を見ているだけで、近づくわけでも何か仕掛けようとしているわけでもない。

 前回のように、何かを探ろうとする眼をしている。

 

「あ、あの…」

 

 その視線にたまらず声を出す。

 

「ん?どうしたの?」

 

 返事はまさに凛としていて、つい聞き入るような声だった。

 

「何か…用でしょうか…?」

 

 用、そう聞いておいて、自分の中ではあらかた見当はついていた。

 

 

 

『━━━━━━━━』

 

 

 

 あの記憶のことだ。

 

 あの時はとても不鮮明で、慎二さんとは違い映像もなかった。なぜそうなったかは分からないけど…多分、凛さんも私と何かしらの関係があったんだ。

 きっとこの人は、それを確かめたい…だから声をかけてきた。

 

「用…ね。まあ確かに、少し気になることがあるのよ。貴女に関係のあることで」

 

 …やっぱり、あの記憶のこと…

 

「でもいいわ」

 

 ………。

 

「え?」

 

「確かめたいところだけど、今はそれどころじゃないの。他の用を済ませるわ」

 

 えっと…私に関係していることで、他の事…?

 凛さんと私で関係していることといったら、私は記憶しか思いつかない。他に何かあっただろうか?

 

「間桐さん、この聖杯戦争、協力し合わない?」

 

「…え?えぇ!?」

 

 思わず大声で驚いてしまう。

 私と凛さんが協力って…いいのだろうか?確かに記憶の事と言い、協力することで利益になるのは間違いない。いや、それどころか不利益になることがないと思う。

 凛さんは姿だけでなく、雰囲気から他のマスター達とは違う。追い越せない壁のような、埋めようのない差を本能的に感じ取れる。他とは隔絶された力を。

 

 そんな力を持っている凛さんと協力できれば…これ以上に頼もしい味方はいないだろう。

 

 …でも、どうなんだろう。何か見落としているものはないだろうか。

 アーチャーさんに言われた通り、メリットに反するデメリットを必死に考える。でもこれといって…

 

「あ…」

 

 記憶…そうだ、記憶だ。

 記憶が戻るのはいいことだ。これから戦っていくのに、記憶があるのとないのとでは気合の入り方、もとい覚悟の強さが変わってくる。今の私は死ぬことを恐れているけど、記憶が戻ればそれも少しづつ変わるかもしれない。

 

 でも逆にも取れる。

 

 もし凛さんも記憶を蘇らせることが出来たとしたら?

 

 そして私は不十分に、凛さんだけが十分な記憶を手に入れたとしたらどうなるだろう。

 

 協力関係を切られて、潰されるのがオチではないだろうか。

 

 きっとそうなる。この協力要請は凛さんから言い出したこと…利益になることがあるから行動に移したんだ。

 

 …恐らく、凛さんの方も記憶が戻るんだ。

 

 更に言えば、私は元が空っぽ、凛さんは元がある状態だ。

 

 二つのバケツに同じ量の水を入れても、元から水が入っているバケツの方が量は多くなるに決まってる。

 

 得をするのは凛さんの方が確率が高いのは明らかだ。

 

 

 

 だからと言ってチャンスを不意にしていいのだろうか?

 

 いや、いいはずがない。

 

 この聖杯戦争は負ければ死ぬ。

 

 死んだら次なんてないんだ。

 

 この要請も次があるとは限らない。

 

「………」

 

 なら…好機を逃すわけにはいかない。

 

 今必要だというなら、何が何でも手に入れよう。

 

 それが、この戦争で生き残るために、()()()で考え出した答だ。

 

 

 

【マイルーム/03/9/56】

 

 

 

「…それで、遠坂凛と協力関係を築いたと…」

 

「す、すみませんアーチャーさん…一人で勝手に決めて…」

 

 あの協力要請を受けた後、マイルームに戻り睡眠をとった。そして朝起きてみると、目の前にアーチャーさんの顔がありました。その時点で驚いたのに、私が夜マイルームの外に出たことを知っていた。もちろんその後の出来事も。勝手に一人で抜け出したことに対する説教が約一時間続き、アーチャーさんも疲れたのか、大きなため息を吐きながら現状確認をしているという状況なのですが…

 

「私は別に、一人で関係を作ることに怒っている訳ではない。ただ君の行動は軽率だと言いたいだけだ」

 

 大変ご立腹なアーチャーさん。それだけ心配をかけたことに罪悪感を覚えない筈がない。返事をする度に自分の肩が小さくなる。

 

「…反省しているようだからここまでにしよう。次からは気を付けてくれ」

 

「はい…」

 

 ようやく解放された…。狭くなっていた肩を戻し、少し足を崩す。ずっと正座だったから痺れが…。

 

「それにしても、まさか向こうから協力を要請するとはな。それもこんなに早い段階で。何か裏でもあるのか…?」

 

 アーチャーさんは独り言を呟きながら椅子から立ち上がる。そのままマイルームから出ようとしたので、どこに行くのか訊いてみると、

 

「とりあえず、君の朝食を用意する。腹が空いていては何も出来んからな。」

 

 そう言い残し、ぱっぱと出て行ってしまう。今回はおまかせですか…少し楽しみですね。

 

 

 

 …というかアーチャーさんって、どこから食材を仕入れてるんだろう…?

 

 

 

【一の月想海:第一層/03/17/20】

 

 

 

 体力増強のためにアリーナを走り回る。気休め程度にはなる以上、やっておいて損はないと思う。

 そうしていて気付いたことが二つある。

 

 まず゙この世界にも痛みという概念がある゙こと。

 通路で転び怪我をしたのだが、この体にはきちんと痛覚が備わっていた。死ぬのも嫌だけど、それ以上にサーヴァント同士の闘いで飛び火でもしたらまずい。下手をしたら死ぬより辛い痛みを受けるかもしれない。

 それだけじゃない。もし足を怪我でもしたら探索に支障を来すかもしれないから、どんな時でも気が抜けない。

 

 そしで体力という概念も存在する゙こと。

 足に疲労が溜まったり、息切れを起こすこともある。どこまで正確に人体を再現しているのか気になるほどだ。

 

 たったこれだけでも、分かれば得にはなる。情報戦というなら相手の事だけでなく、この聖杯戦争のシステムを理解していた方がいいかもしれない。

 

 

 

 そういえば…慎二さんはプログラムを仕掛けたりしていたけど、どうやるんだろう?携帯端末にそんな機能はないし…。

 慎二さん専用なのだろうか?だとしたら少しずるい気がする。そのプログラムをサーヴァントにでも付けたら厄介…

 

「ん…?」

 

 サーヴァントにプログラムを付ける…?なんかそういうの、システムにあったような…

 

「んーと…えっと…?」

 

 必死に頭からその情報を捻り出す。

 確か…マスターがサーヴァントを手助けできる゙何ががあったはず…。

 

 攻撃力を上げたり、敵の攻撃から守ったり、相手に症状を与えたり…とか。様々な能力があって、それをやるには…

 

 

 

 ………。

 

 ………。

 

 ………。

 

 

 

 全然思い出せない。

 

「なんでこういう大事なことが思い出せないのよ桜…!

 

 思い出せ…!言峰神父がそれっぽいことを言ってたはず…!

 

 

 

『サーヴァントば有能゙であっても゙万能゙ではない。出来ないことは必ずある。それをどう補えるかでマスターの資質が決まる。精進したまえ』

 

 

 

 うーん…少し違う。言峰神父じゃなかったっけ…?それじゃあの蒼崎姉妹さん…?

 

 

 

『この教会でば魂の改竄゙っていうものがあってね。霊格が落ちてしまっている英霊

を強くすることが出来るの。サーヴァントを強化したかったらまた来てみれば分かr』

 

『そんな説明では不十分すぎるだろ。大事なところを間違えてもいるしな。やはりお前は体を動かすことしか能のない筋肉バカ女か』

 

『ハァ!?じゃああんたが説明しなさいよ!』

 

『いいだろう。

 

 …゙魂の改竄゙とば英霊の抜け落ちた霊格を取り戻させる゙ことだ。

 

 マスターの魔力量や資質によって、呼び出されたサーヴァントは能力を制限されることがあるんだ。ステータスのランクダウン、宝具の封印、固有スキルを削除されることもある。もちろんそんなのはどうしようもない。マスターの力量で決まってしまうのは必然であり絶対のルールだ。

 

 だが魂の改竄をすれば、マスターの力量の差を埋めることが出来る。

 それは決しで強化゙ではない。簡単に言えば゙修復゙だ。制限している鎖を断ち切るだけ。元々の上限を超えることなどは決してあり得ない。

 

 つまり魂の改竄というのは、サーヴァントというパズルを完成させるための絶対条件。空いているスペースにピースをはめ込んで行って完成させるその作業だ。

 決して強くするわけではない。元に戻しているだけなんだからな。だから過度な期待はしない方がいい。サーヴァントの強さはマスターの強さで決まる。魂の改竄はその差を少しでも埋めるための処方箋でしかない。

 

 分かったな?魂の改竄をして元に戻しても、勝てない相手は存在する。あまり頼りすぎるものでないことを覚えておけ』

 

『説明がガチすぎて引いた』

 

 

 

 すごく長い間思い出していたけどこれも違う。サーヴァントの強さを取り戻す魂の改竄とはまた別物の…

 

 

 

『概念礼装というモノはですね、サーヴァントのステータスを上げたりとか状態を良くしたりとか…要は手助けができるんです。どうですか?今ならお安くしときますが…』

 

 

 

 そうだ!概念礼装!やっと思い出せた!ありがとう購買部のお姉さん!

 

「こうしちゃいられない…!」

 

 

 

【一階廊下/03/20/20】

 

 

 

 私はアリーナから出てすぐさま購買部がある食堂へと向かった。

 

 が…

 

「閉まってる…」

 

 そう。そもそも遅い時間にやってるはずもなく、購買部は見事に暗闇に紛れていた。

 …まあ、また明日買えばいいか。

 

 少し肩を落としつつ、私はマイルームへと向かう。中に入ると、すぐさまアーチャーさんが姿を現す。

 

「マスター、購買部にどんな用があったんだ?随分と急いでいたようだが」

 

「えっと、概念礼装っていうのを買おうと思ったんです。少しでもアーチャーさんの役に立てればと思って…」

 

 事情をありのまま説明する。隠すようなことでもないし…構わないよね。それにアーチャーさんだって助けがあった方が楽に

 

 

 

「そんなものは必要ない」

 

 

 

 ━━━なる、と思った時点で驚いていた。返ってきたのは、思いもよらなかった辛辣な返事だったからだ。

 何故…?そう問いかけようとする前に、アーチャーさんはまた話し始める。

 

「戦いは私の専門だ。君のでも、ましてや協力してするものでもない。だから手助けは必要ない。君は情報を集めることに集中してくれ」

 

「………」

 

 何も言えなかった。正論だから言い返せないのではなく、ただ言い返す気にならなかった。何故だろうか。考えても全く答えが浮かんでこない。

 

「…そろそろ寝た方がいい」

 

 それだけ言うと、アーチャーさんは椅子にふんぞり返り目を閉じた。その動作を見守り終えた私も寝床へと歩を進め、体を横にした。

 

 眠りに着くまで色々な思いが頭の中で交錯した。

 

 

 

 私が悪いのだろうか?

 

 悪いことはしてない。

 

 なら、なんであんな言い方を?

 

 助けるのはいけない事なのかな?

 

 どうして?

 

 どうしてなんですか…。

 

 

 

 私はその夜、すぐには眠れなかった。体は疲れていた。頭も使った。眠くなってもおかしくはないはずなのに、どうしても頭が眠ることを拒んだ。

 どんどんと思いが噴き出してくる。考えが、感情が、心に流れ込んできた。

 

 

 

 ようやく眠れた時、私は初めてアーチャーさんに不満を抱いていた。

 

 

 

 

 

【決戦まであと三日/04/00/00】

 

 

 

 

 




 はい、五話目終了です。
 ところで私いつも思うのですが、プロローグを省いたら四話目な訳じゃないですか。こういう場合って入れてカウントするものなんでしょうかね。私は入れる派なのですが…気になります。

 そんなことはさておき、明かされてしまいましたね桜の記憶。
 随分とブラックな記憶ですが、まぁ構いませんよね。だって原作でもワカメは桜に殺された経験がありますしお寿司。

 記憶の方もあれで完全ではありませんので、まだワカメとの駆け引きは続きます。記憶を手に入れるべきか、否か…桜はどちらを選ぶのか。
 乞うご期待ですぞ(というか期待してくださいお願いします)。

 皆様、それでは次の機会に。シーユー!ネクストローマー!
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