ただ最近は書きたい意欲が溜まっているのでヤバいです。色々とアイデアが浮かんじゃって…これも書きたいけどハーメルンに乗せはじめたら全体の余裕がなくなるよちくしょう…!!というジレンマに板挟みされています。ヤバいです。私が。
それはともかく、今回はストーリーが一気に進みます。サブタイ通りに不測の事態が起こりまくります。大変なんです。ヤバいです。桜が。
新キャラまで出てきて、一回戦の内に詰め込まれ過ぎィ!!とか思った人、大丈夫です。ちゃんと回収しますので、安心して見てください。
それでは、どうぞ。
━━━覚悟なんてない。
━━━ノイズの走る世界から抜け出して、
━━━気づけば戦場に立っていた。
━━━傍らには真紅の剣。
━━━抗うための道具はそれ一つ。
━━━進むための道具もそれ一つ。
━━━『死にたくないから』
━━━戦う理由も、それ一つだけ。
━━━本当にいいのだろうか?
━━━この戦いの中で勝ち抜くのはよい事なのか?
━━━希望や信念を持つ者達を踏み台にして、
━━━それでも尚この足で歩むのは正しい事なのか?
━━━もし、もし違うと言うのなら、
━━━『俺』は━━━━━
【━━━━━/--/--/--】
━━━懐かしく感じる。
炎と瓦礫で埋め尽くされた街…死体で構築された荒野にはかつての喧騒などなく、死と絶望の匂いだけが空気に紛れ漂っていた。
その中で少年は空を見上げていた。
いや、仰向けに倒れ、空しか見ることが出来なかったのだ。
辺りを見れば建物の残骸、息絶えた人の体しかないから。
現実から目を背けたくて。
悪い夢なのだと信じ込みたくて。
灰色の空だった。
煙で汚された、哀れな空。
それを拭いたくて、少年は小さな手を伸ばした。
でも届かない。
どれだけ伸ばしても、掴むのは虚空だけだ。
掴んでいたモノ全てがその手から滑り落ち、
少年の中にあるモノも流されていく。
手を伸ばすことも限界に達した時、
誰かがその手を取った。
その瞬間に少年の全てが書き換えられた。
全てが塗り替えられたのだ。
━━━空の色が、変わった気がした。
【マイルーム(アーチャー視点)/04/02/48】
「…懐かしいな、あの光景も…」
思えば、あれが私の始まりだった。色を無くした世界が、唐突に色付き始めた。それと同時に授かってはならないものを授かり、やがて叶わぬ願いを永遠に叶えてしまった。
…間違っていた。それは自分がよく分かっている。
ふと、マスターの方に視線をやる。
…よく眠っている。私に背を向け、恐らく眉間にしわを寄せているだろうな。あの言い方だ。不満に思われても仕方がないだろう。
それでも構わない。私は何が何でも彼女を守る。
多少の不満など耐えてみせる。絶対に傷付けはさせない。それが今の私の役目だ。
かつて守れなかった命を、私の命に代えてでも守りきってみせる。
【図書室/04/12/20】
私は今、慎二さんのサーヴァントであるライダーの情報を掴もうとしている。外見、武器、何でもいい。彼女の真名を探り当てるためなら多少の無茶をしてでも…。そう思い立ち、私は図書室まで来たのだった。
しかしそんな簡単に情報が見つかるはずもなかった。考えてみれば分かっているのはクラス名だけ…真名に至るには情報が少なすぎる。せめて武器の名前とか、゙宝具゙の能力とか…そうすれば特定するのにも苦労はしないのだけれど…
「そんな簡単に分かる筈ないよね…」
開いていた本を閉じ棚へと戻す。するとそこで端末がバイブと共に音を上げた。画面を開いて見てみると…
『::
…と、第二層へと足を促す文面が出ていた。ようやく二つ目のトリガーが出たけど、
「そんなに上手く行くかな…」
相手は慎二さんだ。自分に卒倒用の
…どうしよう。容易に想像できてしまう。
もし本当にそんなことをされたらまずい…。私自身は記憶がないから魔術の心得なんて分からないし、それこそ解き方なんて知っている筈もない。もしもの時はアーチャーさんに頼るしか…
『戦いは私の専門だ。君のでも、ましてや協力してするものでもない。だから手助けは必要ない。』
と、そこまで考えて、ふと昨夜の事を思い出してしまう。
アーチャーさんは私が戦闘に参加することは避けたいのだろうか…。確かに危険ではあるけれど、何も私がサーヴァントと闘う訳ではないんだし、あそこまで強く否定する必要も…。
…自分の心の中に黒い感情が湧いてくるのを実感し、私は考えるのを止めた。そもそも理由を確認せずに一人で悩んでいたって、解決するどころか状況は悪くなる一方だ。
確かにこの聖杯戦争は相手の情報を集め戦う、その名の通りの゙戦争゙だ。しかしだからといってサーヴァントとのコミュニケーションを
一対一で戦う以上、敵との実力はもちろん、戦略や知能、そして信頼関係もが結果を左右するのだと私は思う。もしお互いが相手をきちんと知れていなかったら不安が募り、動きを鈍らせるかもしれない。しかし信頼関係が築かれていれば、それは自信へと変わり、更に力になるかもしれない。
私の『一人で悩む』という行為はアーチャーさんを信用していないという意味に直結する。それは状況を不利にするし、何より失礼だ。
だから、きちんとアーチャーさんと話し合おう。話し合った上で、今後どうするかを一緒に考えていこう。
心の中で堅く誓う。今の私では頼りないかもしれない。でも、アーチャーさんと先に進むためにも…
「ん?あれは…」
図書室の窓からは校庭が丸々見えるうえ、角度によっては弓道場も見える。私は丁度それも見える場所にいて、青い髪の慎二さんは特に目立ってよく見えた。人目を気にしながらコソコソと移動しているけど…何をしているんだろう?
…まさか、何か妨害をするための準備だろうか?もしそうだとしたら見過ごせない。何をするのかきちんと見ておかないと…。
慎二さんは周りをきょろきょろとしながら歩いていて、いかにも不振だ。目的の場所に着いたのか、弓道場の前で一度止まった。すると今度は中々動かない。ずっと弓道場を見ているだけで、特にこれといった動きを見せない。そのまま時間が過ぎ、何でもなかったのかな…?と思った時だった。また動き出した。しかし今度はここからでは見えない弓道場の裏に行ってしまい、残念ながら何をしているのかは分からなくなってしまった。
「…後で行ってみよう。これ以上は好き勝手させられない」
突如として湧いてきた責任感を胸に、気付けば私はそんなことを言っていた。
【二階廊下:踊り場/04/12/56】
「間桐さん」
ふと、後ろから声をかけられた。振り向いてみるとそこには凛さんが立っていて、少し警戒してしまう。あの協力要請を受けてから少し考えたけれど、どうしても裏があるのではないかと勘繰ってしまうからだ。本当はそんなことないかもしれないのに…。
「少し時間いいかしら?」
「あ、はい。大丈夫ですけど…」
「そう?よかった。ちょっと確認しておきたいことがあってね」
何だろう…確認しておきたいこととなると限定されてくるけど、記憶の事以外は大して思いつかないなぁ…。
「間桐さんって、他に協力してる人とかいるのかしら?いるなら誰か、とか教えてほしいのだけれど」
協力してる人って言われても…ラニさんは違うのかな…?ラニさんとそういう話をしにいったのは覚えてるのに大事なところで記憶がない状態だし…かと言って今更言って「既に断ったはずですが」とか言われたらとかどうしようとか考えてて確認できていないし…。
結局ラニさんとの関係を私自身がよく知らないのに、ここでラニさんと協力関係だって言ったらどうなるか…。でもここで居ない、って答えて、もし関係が出来ていたとしたら嘘を吐いたことになるし…。
…あれ?この状況どうしよう?
「あ、あー…えっと、その…」
「………?」
何と答えればいいのか分からず、つい目を逸らして返事を濁してしまう。まずい…!これでは余計に疑われるだけなのでは…!?
「間桐桜」
とか考えていたら、また後ろから声をかけられた。よかった…!これで凛さんの視線から(一時的に)逃れられる!ありがとう声をかけてくれた人!そう思いながら振り向く。
でもなんか、聞いたことのある声だったような…?振り向いてみると、そこには褐色の肌の少女が立っていました。
「少々確認したいことがあります。時間がある時で構いませんが」
まさかの本人登場。
え!?なんなんですかこの状況!?なんか勝手に私が追い詰められていくんですけど!?
「………あなたは、確か…」
凛さんが声を漏らす。ぎりぎり聞こえるくらいの声だったけど…この反応…
「凛さん、知っているんですか?」
「えっ?ああ、いえ…初対面よ。でも、知ってると言えば知ってるかもね」
「??」
不思議な言い回しに頭が混乱する。初対面だけど知ってるって…どういうことなんだろう?
「…遠坂、凛…」
考えていると、ラニさんも同じように声を出した。それ以上は何も言わず、お互いがじっと見つめあったままで動かない。辺りは緊迫した雰囲気に包まれる。他の生徒たちはこちらを見ながらじっとしている。誰も何も言い出せない状況に私は困ってしまう。どうすればいいんだろう…。
暫くの間、皆が動かないでいると…ラニさんが口を開いた。
「間桐桜、確認してもよろしいでしょうか?」
「へっ!?な、何をですか!?」
この静かな踊り場でいきなり話しかけられれば驚くのも普通だった。単に驚いたのもあるけど、名前を呼ばれるってことは周りの視線も集まるってことで…
『間桐さんって、あの可愛い子かな?』
『かなぁ…。ていうかさっきの謎の雰囲気は何だったんだ?』
『何あれ…間桐さんの取り合いか何か?』
『あ~綺麗だもんね間桐さん。同性からってのも案外有り得るかも…』
…こんな感じに話題が私に移ってしまう訳でして…。正直こうなることは予想できていたから心の中で「話しかけないで…!!」って念じてたのに、期待を裏切られたらまた別の意味で驚くよ…。
それにしても、ラニさんも確認したいことがあるって…また協力関係の話になるのかな…?だとしたら私は何も言えないです。だってどう答えてもどちらか一方に嘘を吐くという結果になるんですもん…。
「実は校内に微かな魔力反応があるのです。貴女は何か知りませんか?」
「え?」
予想していた内容と違い、それは何か危険な予感がする質問だった。
「二日ほど前から反応はあったのですが、昨日の内に数を増やし、今は反応が大きくなっています。これはただの魔術にしては数値が普通ではありません。恐らく誰かが故意にやっているものだと私は考えています。ちなみに三階の踊り場には、何の種類かは分かりませんが魔術の痕跡がありました。貴女には何か心当たりがありませんか?」
え?え?ちょ、待って…話が早い…。
「えっと、すみません…何のことなのか分からないんですが…」
「この学校内で無作為に魔術を使おうとする輩などに心当たりはありませんか?と訊いているのです。これを放っておけば、
…え?
「それって、どういう…」
どういうことなんですか?そう訊くまでの間に異変は起きた。
突然体に重力がかかったかのように重くなった。
『きゃあ…!!?』
『何、これぇ…』
『くっそ…!体、重…!』
気付けば、周りにいた生徒たちも同じようになっている。中には耐えきれず、床に突っ伏している生徒もいたが…
「ぐ…!何…!?」
これは重力というには少し違う気がした。なんというか、体力が削られて体が重くなったような…。厳しい運動をして手足が上手く動かないような感じに似ている。
「これは…まさが宝具゙…!?」
凛さんも同じように重くなっているのか、苦しそうな顔でそう言った。宝具…だとしたら、これは一体誰が、何のために…?
「…恐らく結界型の宝具ですね。その証拠に、空を見てください」
表情の変わっていないラニさんはそう言って、踊り場の小さい窓を指差す。言われて、窓の方に視線をやる。するとそこにあったのは…
「空が……赤い…!?」
そう、ムーンセルによって作られた青い空ではなく、まるで水彩のような赤い空だった。
「いえ…赤いのは、結界よ…。それも巨大な、ね…」
「結界…一体、誰が…」
そこまで言って、私の声は他の声に掻き消された。
『うぐぅああああああああああああ!!!』
一人の男子生徒が急に声を荒げ、頭を押さえだした。
そして見る見るうちに、彼の体は溶解していったのだ。
「なっ…!!?」
溶けていく彼の体はやがて血だけを残し、何もかもが消えた。服どころではない。肉や骨も一片たりとも残さずに消えた…いや溶解してしまった。
残された血は空中で球体となり、やがて少しずつ萎むように小さくなっていく。そして十秒と満たない内に、完全に消えた。
死ぬ。直感的にそう思った。
このままでは彼と同じ末路を辿ることになる。何とかしなければ…!!
「でも…どうすれば…!?」
たとえ動けても体は重いままだ。策もなしに動いて標的にされればその時点で死ぬ…。
どうすればいい…。どうすれば………。
「………」
廊下を蹴る音がすぐ横から聞こえ、気付けば階段を上がっていくラニさんが視界に入っていた。
「ラニさん!!」
大声で呼び止める。追いかけようとしたら足がもつれて転び、力のない自分を恨む。
ここで死んじゃうのかな…。
そんな考えが脳裏をよぎった次の瞬間、体が楽になった。
「え…?」
疲労感は残っているものの、ついさっきまでは動くことも辛かったのに…今は全然大丈夫だ。とりあえずゆっくりと立ち上がってみる。血の塊になることを警戒しながら、ゆっくりと…
「………何も、起きない…?」
たっぷりと時間を使って確かめる。どんな条件でああなるのかが分からない以上、下手に動くことは出来ない。とにかく気を張る。周りに注意しつつ、時間が流れていく感覚を覚える。
三十秒…いや、一分くらいだろうか?こうして待っていると、段々と時間の感覚を奪われていく。早く何とかしなきゃいけないのに…。
「………やはり、貴女
いつの間にか、階段を降りてきているラニさんがそう呟くのが聞こえた…って、貴女達?
見てみると、既に私の横に凛さんが立っていた。
「…あなたが何かしたの?ラニ=Ⅷ」
疑うような、それでいて威圧するような声質をしている凜さん。
「三階にあった魔術の痕跡を辿り、源を断ちました。一時的にですが…効果は薄くなるようですね。貴女達を見て確信することが出来ました」
対してラニさんはあくまで無感情に答える。
またもや二人の間で妙な空気が流れたが、それもすぐに終わる。状況が状況だし、争っている場合じゃない、って事かな…?ラニさんは階段を降り、私と凜さんのすぐ側まで来る。そこで凜さんがまた発言をし始めた。
「今のあなたの発言からして、要はこの結界を壊すにはいくつか魔力源を潰さなきゃいけないみたいね」
ふむふむ…ふむ?
「しかし、痕跡自体は極僅かにしか感じ取れません。それ相応の時間を要せば、また力が元に戻る可能性もあります。ここは時間短縮で手分けをするべきでは?」
ん、んん…?
「そうね…今はそれが最善でしょうね。間桐さんもそれでいいかしら?」
話が早くてついていけないんですけど!?
「手分けして…何をするんですか…?」
そこが良く分からないです。一体何をすればいいのか記憶のない私に教えてください。
「え?いやだから、魔力源を…って、そういえば間桐さんって記憶がないんだっけ?」
え?そのことは言ってないはず…何で凜さんが私の記憶の事を?
「は、はい…でも、何で…」
「調べるのは当然のことでしょ?協力関係だと言っても、いつかは敵になるんだから」
あ、そういうことか…確かに言われてみれば、それをしていない私の方がおかしいんだ。今は慎二さんやアーチャーさんとのことで頭が一杯だったから、そこまで回らなかったなぁ…。
「…協力関係?」
と、そこでラニさんが疑問を口にした。
…って、よく考えればこの状況はさっきと変わらない!?どどどどうしよう…!?何て答えれば…!?
「………そうだったのですか。では話は早いですね。間桐桜、貴女には魔術師自身を捜してもらいます」
…あれ?問い詰めない…?少し驚く。こういう時って普通はまくしたてるものだと思うけど…
…まあ、ラニさんは普通じゃないもんね。うん、納得。
「これだけの規模で結界を発動するには、
えっと、段々とこのスピードにも慣れてきたなぁ…。つまり結界を発動している魔術師を捜しだして止めさせればいいって事だよね?
「ちなみに、貴女達はその術者に心当りなどはありませんか?」
「こんな風にルールを無視して平気で宝具を使うような馬鹿なんて知らないわよ」
ルールを無視して、平気で………
…どうしよう。あの人しか思いつかない。いやでも、まさか本当に…?何か確かめる方法があればいいんだけど…。
「………あっ」
弓道場…そうだ。可能性はある。あんな所に人が行くとは思えないし、あの挙動不審だって、もしそうなのだとしたら説明がつく。だとしたら早くしないと…!
「あ、あの…!」
【弓道場:裏手/04/13/05】
「これね…間違いないわ」
弓道場の裏手には私、凜さん、ラニさんが集まって一点を見ていた。三人の視線の先には弓道場の壁…そこに小さな赤い魔法陣が描かれている。それは微かに周囲に違和感を発生させ、赤く淡い光を帯びてぼんやりとしている。
「とりあえずこれは破壊しましょう。このままじゃ嫌な予感するし」
そう言って凜さんは魔法陣へと掌をかざす。目を閉じ集中し始めたのだろうか…少し空気が静かになった気がした。
やがて凜さんの掌から強い光が発せられる。思わず目を閉じたけど、全く眩しくないことに気付いた。どういった原理なのか分からないけど…魔術ってすごいなぁ…。
「…これでよし。次からはもっと短縮できるわね」
しかも今の一回でコツを覚えてしまったらしい。才能の違いを思い知らされる。
「さて、間桐さんの話が正しいことが証明された訳だから、今回の騒動の犯人は…」
「アジア圏のゲームチャンプ、間桐慎二ということになります」
そう…ラニさんの言う通り、今回の犯人は慎二さんだろう。まさか偶然図書室で見た光景が役立つとは…なんというか、慎二さんの作戦はどこか抜けている。徹底できていない、という方が正しいのだろうか。かならず抜け目がある。
まあ今回は本当にたまたまなんだけど…。
「あのキザ男のことだから、どうせ学校内にはいないでしょうね」
「…そのようですね。魔力反応はアリーナの扉から漏れ出ているように感じます」
「え?じゃあ止めれるのは私だけなんですか?」
アリーナは対戦者同士以外は侵入できないようになっている。慎二さんがアリーナで結界を発動させているということは、対戦者である私以外は邪魔できないということだ。こればっかりは一本取られたと言わざるを得ない。
「そうなるわね…多分アリーナの中にも罠を張って待ち伏せてると思うし…」
罠か…確かに慎二さんのことだし、張っているのは十中八九間違いない。どうやって止めれば…。
「…ここで思考を巡らせても解決はしません。私と遠坂凜が源を断ち、間桐桜は間桐慎二を叩くのが一番効率的です」
「そうね…間桐さんは今すぐアリーナに行ってくれる?早いとここの状況を打開しないと」
魔力反応はアリーナから漏れ出てるっていう情報もあるし…ここは二人に任せた方がいいよね。私なんかよりずっと知識も経験もあるわけだし…
「分かりました!今から行ってみます!」
急いでアリーナに行って慎二さんを止めなきゃ…そう思い、少し走り出したところで…
「あ!ちょっと待って間桐さん!」
凜さんに呼び止められた。一体どうしたんだろう…今は急がなきゃいけないのに…。
「あなたの端末と私の端末を繋げておくわ」
「え?繋げるって…」
「通話できるようにするってこと。アリーナで異変が起きたらすぐさまそれで知らせて」
なるほど…向こうで何かあった時に連絡手段がないと困るもんね。さすが凜さん。場数を踏んできただけはあります。
「これで、よし…。OK、行ってきて!」
「はい!!」
急いでアリーナに向かう。校庭を走る途中でふと気が付く。
『さすが凜さん。場数を踏んできただけはあります。』
何故そう思ったんだろう…記憶はない筈なのに…。
【一階廊下奥/04/13/12】
着いた…!早く止めないと…!
私は勢いよくアリーナへの扉を開けようと取っ手を掴む、その時だった。
「待てマスター!」
急に姿を現したアーチャーさんに腕を掴まれ、その掴む動作を止められた。何で…?
疑問に思っていると、アーチャーさんは取っ手に手を伸ばした。そして触れると同時にバチッ!!という電気のような音が扉から発せられた。アーチャーさんは反射的になのか手を退き、扉をまじましと見ていた。まさかこれも妨害だろうか…。
「ただの時間稼ぎだな。どれ」
そう言って両手から剣を出すとそれで勢いよく扉を切りつけた…って、そんなことしたら扉も傷ついちゃうんじゃ…!?
しかし私のそんな心配とは裏腹に、切った箇所から膜のようなものが消えていき、扉には一つの切り傷もついていなかった。
「扉自身にかけるものではなく、扉の外側に薄くかけられていただけだったからね。これくらいなら私でも壊せるさ」
さすがだ…寸分の狂いもなく、妨害を退けた。さすがは元が英雄、といったところなんだろうか…。
ふと、また昨日の事を思い出してしまう。アーチャーさんにはアーチャーさんなりの考えがあるのかな…?
でも、今は訊いている場合じゃない。多くの人が危険に晒されているのだから、目の前の事に集中するべきだ。
「…行きましょう、アーチャーさん」
「…ああ、お供するよ。マスター」
今度こそ、私はアリーナへと続く扉を開き、足を踏み入れた。
【一の月想海:第二層/04/13/14】
第一層とは違い、辺りには海賊船の残骸のようなものが浮いていた。進むべき道は定められているため、方向は迷わない。それも一本道だから迷うはずもない。
しかしだからこそ、単純な罠が活躍する場となっているとも言える。絶対に油断してはならない…気を引き締めて一歩目を踏み出す。
…何も起こらない。
さすがに一歩目で、ということはなかった。それなら安心して進める…
…なんてことは、ないんだろうなぁ…。
「フッ…物覚えの早いマスターで助かるよ。どうやら私が助言する必要もなさそうだ」
アーチャーさんはそう言い、私の前の足元や壁を剣で切り付けていく。一太刀で道を切り開いていく様はとてもカッコいい。アーチャーさんの背中の安心感で、少し気を緩めてしまいそうだ。
少し進んでいると、淡い光を放つ透明な壁のずっと奥…見えづらいが、人影のようなものが見えた。きっと慎二さんだ。
急いでアーチャーさんの後をついていき、それでいてジグザグな道を慎二さんに向かって進んでいく。
走って、走って、走って…
違和感を感じた。
途中で曲がり角などがあり、時間がかかるのは仕方ないかもしれない。でも、これは…
「あの、アーチャーさん…!」
「…ああ。どうやらやられたな」
アーチャーさんは二つに分岐した道の前で止まる。ただ分岐している道ならよかった。しかしここは、
ぐるっと回ってきてしまったのだ。しかもさっきは一本道だったのに、今度は道が二本…頭が混乱してくる。
「恐らく幻術の類だろうが…まずいな。私はこれの解き方を知らない」
突破しようにも、方法が分からないなんて…慎二さんがこんな手を隠し持っているとは思わなかった。早く止めなきゃいけないのに、どうすればあそこまで行けるかが分からない。
そこで思い出した。凜さんとの通話だ。
凜さんなら、もしかしたら対処法を知ってるかもしれない。急いで端末の画面に新しく追加されている゙通話゙を選び、端末を耳に近づける。コールが始まり、何度か続いたところで…
切られた。
「………え?」
まさか切られるとは思っていなかったので場にそぐわぬ間抜けな声を出してしまう。
出れないなら分かる。魔力源を消すのに忙しいのかとも考えられるけど…切られるとなると状況は変わってくる。何かあったのかな…。
【三階廊下:踊り場(凛視点)/04/13/20】
どうなってんのよ…今は魔力源のことで忙しいってのに…。
階段の壁に隠れつつ、廊下の奥を隠れ見る。視線の先にはスーツを着た女性が立っていた。赤い髪で、ピアスをしている。後姿のため顔は見えない。でもそれでも直感でやばいということが分かった。
サーヴァントの気配がないのに、彼女の周りからは闘気が漂っていた。それも人間では考えられない程の、
何なのよ一体…あいつは普通じゃない。遠くてもよく見えた。
彼女が手袋を外したときは何もなかった。でも横たわっている生徒の傍にしゃがんで、
彼女の手の甲には令呪が宿っていた。
生徒の令呪を奪った…そうとしか思えなかった。マスターとしての権限を持っていなかった彼女が奪ったとしか…。
でも何でマスターでもない奴が令呪を奪うのよ!わざわざ参加してまで叶えたい願い
があるってこと?ていうか令呪を奪うなんて、どこの機関の技術よ!そんなの聞いたことないわよ!
どうする…?向こうはまだ気づいてないし、ここは逃げるべきかしら…。あのイレギュラーが落ちるのを待てばいいか…?
考えを巡らしながら、音を立てないように階段を降り始める。一段、また一段と、とにかく静かに。三段目だろうか。
端末から音が響いた。
やばっ…!!?急いで消さないと!!
端末を取り出して拒否を押そうとした瞬間、気配を感じた。
見る余裕はなかった。だが疲労感を覚えた体は咄嗟に動いてくれた。階段の手すりを飛び越えると、先程までいた場所に攻撃がされていた。階段を潰し、コンクリートに穴を開けていた。その一瞬、時間がゆっくりと流れたように感じた。私は目だけで相手の顔を見た。
その瞬間、その人物の名前が浮かんできた。
魔術協会゙封印指定の執行者゙…『バゼット・フラガ・マクレミッツ』
同時にあり得ないとも思った。イレギュラー中のイレギュラーが、この聖杯戦争に参加している。その事実がどうしても受け入れられなかった。
しかし考えている余裕などない。身を隠すために壁の死角へと移動し、教室の中に転がり込む。ここにも倒れている生徒は居たが、構っている時間がなかった。とにかくこの状況を脱するために教室に暗示をかける。一時的なものだが、これで防げるはず…。握っていた端末のコールを切り、全神経を教室の扉へと注ぐ。
とにかく、今生き残ることに集中する…!!
【三階廊下:踊り場/04/13/25】
バゼットは標的を逃したと判断し、追跡しようとする足を止めた。凜が顔を見たと同様に、バゼットもあの一瞬で凜の特徴を全て記憶したのだ。また会った時にでも消せばいい…その考えがあったために、深追いを止めたのだった。
踊り場に戻り、先ほどまで令呪を手の甲に宿していた生徒に近づく。
「ん、んぅ…」
そこで生徒は目を覚まし、自分に近づいてくる存在に気が付く。バゼットはスピードを緩めずに歩き、
首の骨を折った。
生徒は何が起こったのかを理解することもできずに死んだ。ただこの時、バゼットの手が動いた次の瞬間には、彼は真後ろの光景を見て死んだのだ。
人間の脳の処理が追いつかない速さで首を折った。この事実を見た者はバゼットただ一人となった。
彼女は死んだ生徒のポケットを探り、端末を手にする。
『
「日暮洋介…これからはこの名前ですね」
端末を弄り、バゼットは細工をした。
この生徒は今も生きていて、聖杯戦争に参加しているようにしたのだ。
令呪を持っているバゼットが端末に干渉することで、
これでバゼットは非公式に、マスターとしての登録を終える。端末をポケットに仕舞い込むと、死体の処理を始めた。と言っても、用意していた死体袋に詰めるだけだった。その光景は学校という場所にはとてもそぐわないもので、非日常をそのまま体現していた。
しかしバゼットはそんなことなど気にしない。手袋をきつくギュッと手にはめ直す。
「これより、ムーンセル破壊の任務を開始する」
彼女はただならぬ闘志を胸に、この世界への宣戦布告をした。
はい、如何だったでしょうか。第六話は色々と詰め込まれてて、少し混乱した方もいたかもしれません。
「そもそもEXTRAでは魔術協会って衰退したんじゃ…?」と思っている方は正しいです。そこら辺の詳しい説明は次回で凜が冒頭でやってくれますので更新をお待ち下さい。
パラレルワールドということなのでやれる事たくさんあるから楽しいです。ヤバいです。また私が。
まぁ、疑問に思ったことなども質問してくれて構いません。ネタバレにならない程度に説明を、もとい言い訳をしますので。
さて、そろそろ書くこともなくなってきたので、今回はここでお別れです。
皆様、それでは次の機会に。シーユー!ネクストローマー!