神崎優 高校一年生。剣道部。
今年、志望していた公立高校に入学した。中学生の時は本当に無口で、かといって友達がいなかったわけではないが、心機一転。高校ではこの無口で謙虚な性格を直そうと思っていた。
直そうと思ってたのに···
部活の時間。大会が近づいているということもあって、レギュラーを決める大事な部内試合が行われていた。
しかし、俺ら一年には関係のないこと。一年生は主に、試合に必要な備品を運んだり、時間を計ったり、そんなことをしていた。今年入ってきた一年生は剣道初心者がほとんどで、経験者は俺一人だった。だから、ルールの分かる俺が審判をしていた···はずだった。
「何で俺が、先輩と試合しなくちゃなんねぇんだよぉ···」
「まあまあ、良かったじゃないか。ひょっとしたらレギュラー入っちゃうかもよ?」
「それはねえよ···」
俺は中学生の時、県で3位という実力だった。ちょっと自慢できると思う。その腕を先生に見込まれて、先輩と試合をすることになった。 全く面倒なことを···
別に試合が嫌いな訳ではない。むしろ先輩と試合が出来るというのは光栄なことだ。
だがもし一年の俺が先輩に勝ってしまったら?
もし一年の俺がレギュラーになってしまったら?
先輩は去年からレギュラーを狙っているのだ。きっと今年なら、と思っているに違いない。
だから俺がでしゃばるわけにはいかない。先輩の夢を邪魔するわけにはいかない。レギュラーは来年になってからでいい···
それだというのに···
「面あり!」
「「「おおおおおお!!」」」
やっちまった
「すげぇじゃねぇか神崎!!一年でソッコーレギュラー入りかよ!!」
「言った通りだったろ!お前なら出来るって!」
「相面凄かったな。あんなに速く打てるもんなのか。」
やめろ。褒めるな。ああ、冷や汗が出てきた。何でそんなこと大きな声で言えるんだよ。
レギュラー入りが決まってこんなに嬉しくないのは俺くらいだろうか。
先輩、泣いてんじゃねぇか。
放課後 帰り道
「だぁああもうくっそ!!」
最悪だ。こんなに最悪な気分になったのは初めてだ。もう嫌だ。こんな高校生活嫌だ。逃げ出したい。今すぐ!!
此処から居なくなりたい!!!
「その願い、叶えてあげましょう。」
「え?」
突如足下に穴が出現した。うわっ、何か目みたいなのめっちゃある···
···っじゃなくてッ!!
「うわぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」
なすすべなく、落ちた。
「フフフ、ようこそ。幻想郷へ。」
少年落下中