謙虚なやつが幻想入り   作:神威ヒロ

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だいぶ間が空いてしまいました。ごめんなさい!!


恩返し···

 俺は今、膨大な量の本に囲まれている。

 紅魔館の中にある、まさに知識の宝庫。パチュリーさんの管轄する大図書館だ。

 暇をもて余していたところ、咲夜さんに案内された。ここならいい暇潰しができるとのこと。何かお手伝いをしたいと言ったんだけど、きっぱり断られた。お客様、それも怪我人に仕事をさせることなど出来ないと言うのだ。なんていい人なんだろう。

 

 それで、お言葉に甘えてここに来たというわけだ。

 

 来たのだけれど……

 

 

 

 「··········」

 

 「···············」

 

 

 とっても気まずい!!

 

 元々、初対面の人と話すことが苦手な俺。外の世界でも、この性格故に友達は少ない。

 じっくり時間をかけて、親睦を深める派なのだ俺は。

 

 こっちに来てからは生きるのに精一杯だったため、そんな性格は崩壊した。

 まあ、そのおかげで霊夢や魔理沙、紫さん達と直ぐに打ち解けることが出来た。

 

 だからこの調子で、明るい性格を作っていこうと思っていたのだが……

 

 「··········」

 「···············」

 

 相手が無口だったら会話すら始まらない!!!

 

 これは想定外だ緊急事態だ!!初対面での会話は苦手だけど気まずいのはもっと苦手なのだ!!

 

 

 なんて贅沢な性格してんだ俺はァァァアアア!!?

 

 

 

 と、まあこういう具合。下手に動くことも出来ない。入り口で突っ立ったままだ。

 

 だがやることは決まっている。

 

 ミッション:話しかける

 

 これが目標だ。ちっせぇ目標だな自分で言ったんだけど!

 

 やることが決まってるのならば後は行動あるのみ。

 

 話しかける話しかける話しかける話しかける……

 

 何て話し掛けよう何て話し掛けよう何て話し掛けよう………

 

 「·····ねえ。」

 「はぃいいい!?」

 

 ミッション失敗

 

 「そんな所に立ってないで、こっちに来たら?」

 「は、はい···」

 

 俺の心の弱さは一級品だ。話しかけることすら出来ないなんて、将来が危うい。

 

 「神崎君···だったわね。」

 「はい。そうです。ノーレッジさん。」

 「パチュリーでいいわ。」

 

 わ。一回名前言っただけなのに覚えてくれてた!なんか嬉しい!

 

 「暇なんでしょ?ここの本は好きに読んでいいから···私に言ってくれれば、持ち出してもいいわ···」

 「あ、ありがとうございます!!」

 

 何回いい人!と言ったか。でも、いい人!!

 

 そうだなぁ。何読もう……この大量の本の中から、一冊を……

 

 「私は図書館の全てを把握してるから、読みたい本があったら言って···」

 「あ、はい!えと、幻想郷の歴史書なんかは···」

 「ああそれなら·····」

 

 

 、、、、、、

 

 

 

 さすが大図書館。歴史書だけで数十冊出てきた。既に3冊読み上げたが、なかなか分からないことが多い。幻想郷の成り立ちがパッとしないというか……

 

 ん?随分と胡散臭い文章だな。

 

 『この本の内容を信じるか信じないかは、あなた次第ですわ』

 

 あとがきを見てから背表紙を見てみると、

 

 著:八雲紫

 

 あの人本出してたんか。

 

 霊夢、魔理沙、紫さんと、四人で楽しげにしていたのを思い出して微笑んだ。

 

 

 「神崎君。ちょっといい?」

 「はい、何でしょう?」

 

 パチュリーさんが来たので本を閉じた。

 何だろう、とパチュリーさんの方を見た。

 

 「手、見せて···」

 「手?」

 「そう。左手···」

 

 あ、そう言えば怪我してるんだった。左手を見ると包帯がぐるぐる巻きだ。

 無意識に右手だけで生活していたみたいだが……

 

 俺昨日どうやって風呂入ったっけ?

 

 どうでもいいことを考えていると、パチュリーさんは包帯を解き始めた。

 包帯を取ってみると未だに生々しい傷痕があった。

 

 「貫通してたのね···」

 「いやぁ、はは、まあ···」

 「痛くないの?貴方人間でしょ?」

 「思い出したら痛くなってきました···」

 

 他愛もない会話が自然と始まった。

 先程の気まずさとはうって変わって、穏やかな空気が流れ始める。

 

 「ふふ。貴方、面白いわね···」

 

 あ!パチュリーさんが笑った!!ぃやったーー!!!

 

 ふと、パチュリーさんが俺の左手に両手を重ねた。

 

 「そのままにしててね。すぐ終わるから。」

 

 そう言うと、パチュリーさんの両手が穏やかな光で包まれた。

 暖かい光に当てられた俺の左手の傷は、みるみる消えていく。

 

 「え!?」

 「私は魔法使いよ。治癒魔法くらい造作もないわ。」

 

 そして左手完全復活。

 

 「うおおおおおお!!?スゲェエエエエ!!!?」

 「もう動かして大丈夫よ」

 「パチュリーさん!!ありがとうございますッ!!!」

 

 俺は両手で全力で握手した。失礼な気もしたが、そうせずにはいられなかった。

 

 「いいって。怪我してたら、本も楽に読めないでしょ?」

 

 パチュリーさんの優しさに感動して涙が出た。

 

 「何か俺に出来ることがあったら何でも言ってください!!何でも!!」

 「大丈夫···あっ」

 

 パチュリーさんは何かを思い出したかのように動きを止めた。

 

 「えっと、じゃあ、一つだけ···」

 「何でも!!」

 

 えらくモジモジしてる。恥ずかしいことなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 「運動···一緒にしてくれない···?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  太陽サンサン

 

 

 

 「あのパチェが!!?」

 

 「パチュリー様が!!?」

 

 

 「「「運動ぉぉおおーーーッ!!!?」」」

 

 

 「なによ···そんなに驚いて···」

 「だ、だってパチェ···私貴女が運動らしい運動してるところなんて、一度も見たこと無いんだけどッ!!?」

 

 そんなに運動してないの···?

 

 「運動しようとはしてたわよ。でも一人じゃ続かなくて···」

 「私誘えば良かったじゃない」

 「レミィ···貴女自分が吸血鬼ってこと忘れてない···?」

 「あ」

 

 なるほど。レミリアさんって意外と天然なんだな。

 

 「パチュリーさんの運動は僕が見ます。期待しててください!」

 

 これは恩返しでもあるんだ。責任を持って、最後までやり通すんだ。

 

 

 「絶対に痩せさせますからッ!!」

 

 

 

 

 しばし静寂

 

 そして頭にパチュリーさんのげんこつが降ってきた。

 

 が、しかし。

 

 「あれ?痛くない···」

 げんこつ喰らった気がしたんだけどなぁ···まるで頭にゴムボールが降ってきた位にしか感じなかったんだけど。

 不思議に思い、パチュリーさんを見ると、

 

 「っ~~~ッ!!」

 

 手を押さえて悶えていた。

 

 「パチュリーさん?」

 「なんでもッ、ないわ!あと、別に太ってるから運動するってわけじゃないんだか     らッ!!」

 

 

     !!!!!?

 

 人生で最も反省したことの一つになった。




パチュリーさんはきっと太らない体質。
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