「は?紅魔館?」
「おう!今日は紅魔館に連れてくぜ!!」
紅魔館とは、ご存知吸血鬼の住む館である。人間は勿論、妖怪でさえ近づかない程紅魔館は危険な場所である。稀に小·中級妖怪が己の力を見せつけんと、乗り込むことがあるが、大半は紅魔館の門番に叩きのめされる。例え門番を突破したとしても、更なる強者が奥で待ち構えているため、攻略は無謀である。
「それ故に、レミリアは退屈してるって言ってたし、丁度いいんじゃないか?」
どうやら魔理沙は自分基準でしか考えられないようだ。普通の人間が紅魔館なんて、無茶にも程がある。
「てゆーかなんで紅魔館なのよ。無難に人里にしときなさいよ。」
「人里は普通過ぎるぜ。今あいつに必要なのは刺激だと思うんだ。この幻想郷の力のある奴らに会わせたほうが、優の為にもなると思うぜ。」
なるほど、刺激か。さっき見た感じでは、感情の高ぶりが能力の開花条件なのかもしれない。確かに、人里に居てはのほほんとしてて刺激なんて到底感じることなど出来ないだろう。そうなれば能力の開花も遠ざかる。
「···あいつには刺激強すぎるかもよ?」
「刺激は強ければ強い程楽しいぜ!!」
楽しさは必要じゃないと思うけど···
「それに霊夢が私に頼んだんだぜ?」
「うっ···」
そういえばそうだったか。魔理沙の癖に、なかなか鋭い。
「まあ、いいわ。ちゃんとあいつのことも考えてあげなさいよ?」
「言われなくても分かってるぜ!!」
ダメな予感しかしない···
紅魔館に行くのだって、どうせ本を盗みに行くついでなのだろう。まあ、私に迷惑かからなければいいんだけどね。
「おーい優!!!」
「ふおぁ!?」
「おっ、起きたか?」
俺がチート能力を駆使して俺TUEEEEしてたら目が覚めた。どうやら夢だったようだ。
···別に俺TUEEEEしたいわけじゃないんだけどね。
「どうしたんですか魔理沙さん?」
「今日お前、ここを出るんだろ?だから私がお前が泊まれそうな場所を見繕ってあげようと思ってな。」
おお、それは有難い!!やっぱり魔理沙さんはいい人だ!!
「ありがとうございます!!」
「まあ、もう決めてあるんだけどな。時間も無いから、直ぐに出るぜ。準備してくれ。」
「は、はい!」
···準備といっても、何かすることあったっけか。 あ、そうだ。
「霊夢さん!!」
「ん?ああ、どうしたの?」
一番大事なことを忘れていた。しっかりとお礼とさよならをしないとな。
「本当にお世話になりました。怪我してるところを助けてくれて、泊めてまでくださって、この恩は絶対忘れません。近い内に必ずお礼をします。」
「あらそう?楽しみにしてるわね。」
「本当にありがとうございました。それでは!」
元気に挨拶して走っていった。さっきまでボロボロだったくせに、タフなやつね···
優の後ろ姿を見て、霊夢は自然と微笑んでいた。
「それじゃあ、これでお別れです。本当に色々とありがとうございました。」
境内にて、最後の挨拶を終えた俺は、魔理沙さんの箒に跨がった。
「それじゃあ出発するぜ!!」
フワッと、足が地面から離れた。
おおすげえ、ほんとに飛んだよ。
「それじゃあ···」
「優。」
「はい?」
突然霊夢さんに呼び止められた。
「呼び捨てでいいから。」
「え?」
「だから、呼び捨てでいいって言ってるの。あと敬語じゃなくていいわ。」
「!」
おお!なんか霊夢さんからそんなこと言ってくれるなんて嬉しい!!
「ついでに私のことも呼び捨てでいいんだぜ!!」
魔理沙さんまで!!
「じゃあ私のことはゆかりんって呼んでね!!」
なに言ってんのこの人!?
「なによ、アンタまだいたの?」
「優。こんなやつの言うこと無視していいからな。」
「ええと···」
いやぁ、さすがに無視はなぁ···かわいそうというか···
「えーと、ありがとうございました。ゆかりん···」
「「「!!?」」」
うわ、言っててくっそ恥ずかしいぞコレ!!もう二度と言わねぇぞ!!てかなんか視線がイタイ!!
「ねえ優君。やっぱ家来ない?」
「はいはい話進まないから。ちょっと黙ってなさい。」
「ありがとうございます。その内伺いますよ。」
「ええ。いつでもどうぞ。」
「じゃあ本当に出発するぜ!!」
「ありがとう霊夢!!紫さん!!またどこかで!!!」
真っ赤に染まった空に、俺たちは飛び出した。
ここからまた未知の世界だ。
きっと苦しいことや困難なことがたくさんあるだろう。
でも俺は強くなるって決めたんだ。
今までの俺とさよならする為に。自分自身を変える為に。
待ってろよ幻想郷。
更なる一歩を踏み出したという実感を確かに噛みしめながら、俺は再び決意した。
もう少し続くよ!!
「なあ優。」
「なに?」
「吸血鬼って知ってるか?」
魔理沙が妙なことを聞いてきた。
「一応知ってるけど···」
とりあえず答えた。まあ特別知識を持ってるわけでもないが、一般的知識くらいはあると思う。
「そっか。なら話が早いな。」
···何だろう。急に背筋がスッと冷たくなった。
「今日お前が泊まるのは···」
嘘でしょう?嘘だよね?嘘ですよねッ!!?
「吸血鬼の住む館、紅魔館だ。」
\(^o^)/
「俺に死ねと?」
「いやいや違うって。」
吸血鬼の館って···入った途端、血ぃ吸われてオワタするに決まってんじゃん。
俺にはおぞましい光景が目に見えてるぞ···
「大丈夫だよ。心配すんな。案外かわいいもんだから。」
吸血鬼にかわいいとかかわいくないとかあるのだろうか。
俺には吸血鬼が「キエーッ!!」とか叫んで襲いかかってくるビジョンしか見えない···
「それに私の知り合いでもあるから、話も通ると思うぜ。」
「そですか···」
早くも幻想郷旅行終了か。いくらなんでも早すぎだっつの。
俺のテンションが一気に下がった。
「ほい紅魔館到着っと。」
「赤っ。」
「だよな。」
あっか。真っ赤っかだ。目が痛いくらいに。だけど、規模がとんでもなくでかい。イオンモールくらいあんじゃねぇの? しかし、凄い館だ。威厳がピリピリと伝わってくる。一体どんな吸血鬼が出てくるのか···全然楽しみじゃない。きっと泊まらせてくれたとしても、血を対価に、なんだろうなぁ···その内貧血でぶっ倒れるだろうなぁ···奴隷みたいに扱われるんだろうなぁ···
もはや悪い可能性しか無い。
博麗神社に帰りたい···
ってダメだダメだ!!こんな弱気じゃいつまで経っても強くなれねぇぞ!!
ここは男として一つ、覚悟を決めてやろうじゃないか。
俺は顔を強く叩いた。
「ビビらないんだな。」
「ビビってるよ。めちゃくちゃ···」
「じゃあ最初の試練だ。」
唐突だな。
「あそこに門番。見えるだろ?」
「寝てるね···」
あれ門番だったのか。立ったまま鼻提灯作って寝てるよ。器用なことに。
「気をつけたほうがいいぜ。近づくと急に襲いかかってくるから。」
マジかよ···近づけないじゃん。主に俺が。
「そこで、だ。優。」
「へい。」
「あいつ。口説いて来い。」
「ハードル高ッ!!?」
近づいたら襲ってくるような門番を口説けとッ!!?無理無理無理無理!!!
「お前が口説いて油断してる内に私が中に侵にxy···入って許可貰ってくるから。」
「今侵入って言いかけたよねッ!!?本当にお知り合い!?」
「色々あんのさ。」
ダメだ全然信用できねぇ···俺今まで口説いたことねぇし···
「じゃ、手筈通りな!!」
「あ、ちょっ!?」
まだやるって言ってないのに···
だけどちょうどいい機会だ。人生初のナンパだぜ。
「やってやるぜ···」
優は一人、勇ましく戦いに臨んだ···
「オチが···あやふや···」
なんか寝ぼけてるぞ?
優は美鈴をモノにすることができるのか!?次回、戦闘開始!!(大嘘)