半端な色廃さんのブリーダー日誌   作:時雨オオカミ

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トレーナーカードってどうやって発行してるんだろう。


資格が必要?いざ、マサゴタウンへ!

 携帯獣取扱資格。

 

 トレーナーとして成人の10歳になる前の少年少女がトレーナーズスクールで取得する必要のある資格の名称。通称トレーナー資格。カード型になっていて、これに電子マネーを入れておくことも可能である。

 更にこれがあることでポケモンの6体所持が認められ、各地方の研究所に認可登録することでポケモンを預けることができるようになる。これを持っているだけで様々なポケモン関連の保険に入ることもできる。

 

 これはトレーナーカードとして必ずポケモンを所持した人物が携帯しているものである。しかしこのトレーナー資格は9歳の成人前にスクールか家での通信教育で取得する場合の二通りの方法しかない。資格試験も9歳以上でなければならないので私は無理だ。

 

 ならば未成年がポケモンを所持している場合はどうなるのだろうか。これには二通りのパターンがある。

 

 まず親のポケモンとして登録しておき、成人と共に〝 所有者(おや) 〟の表記を子供の名前に戻す場合。

 二つ目はペットとして一時的に専門の認可証を貰う場合だ。こちらはトレーナーとしてではなく、ポケモンをペットとして飼っている家庭で使われるものだ。

 

 これは様々なポケモンの知識を学ばなければならないトレーナー資格とは違い、所持しているポケモンについての知識が一定以上確認できれば発行されるものだ。これと合わせて未成年者バトル許可証を持っていれば子供でもポケモンを持つことができる上にバトルをすることができる。

 ゲームでは普通に幼稚園児が勝負を仕掛けてきたりしてきたが裏にはこんな大変な行程があったようだ。

 

 この資格を未成年者携帯獣取扱資格。通称楽々資格と言う。

 

「未成年の認可証は半年に一回研究所で発行できるわぁ。私達は一緒に行くことができないからちょっとした冒険ね。ちゃんと真っ直ぐマサゴタウンまで行くのよぉ~」

「念のためリッキーを連れて行ってもらうけど、よっぽどのことがない限り手出しさせないようにしてあるから自分達で頑張りなさい」

「はーい!」

 

 こうして私は資格を保持するにあたって研究所へ向かうために初めての旅に出ることになったのだ。

 

「よろしくね、リッキー」

「リィィ!」

「リッキーに乗って楽しないようにね」

「そんなことしないよ!」

 

 そう言って家を出る。これは少し前から決めていたことなので準備はバッチリだ。

 

「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい!」

 

 ソノオにある無数の花畑を横目に204番道路へと一歩踏み出す。

 

「ハクタイの森に行くことはあってもこっちにはあんまり来たことありませんねー」

 

 ソノオを出たので猫を被る。それに隣を歩くキリンリキ(リッキー)が首を傾げたがあまり気にすることではないと判断したのかすぐに微笑ましくこちらを見やる。やめてくれ、そんな優しい眼差しで私を見ないでくれ。恥ずかしくなってくる。

 

 ムックルの群れが木の枝に止まり、スボミーが日向でお昼寝中。脇道に見える林にはコロボーシがチラリと伺えた。そんな景色を眺めながら南へと歩く。隣にはパッカパッカと音を立てて歩くキリンリキと、その背に乗って昼寝をしている色違いコリンクの梔子(くちなし)。すぐ傍には足元に纏わりつきながら楽しそうに歩いている通常色コリンクの紫苑(しおん)。そんな光景にふと考える。

 旅に出るというのはこういう気持ちなのだろうか。こんな光景を毎日見ることができるのだろうか。

そう想像して心の内が温かくなるような気がした。

 

「ピー、ピィィ」

 

 目の前をヒメリの実を加えたムックルが通り過ぎていった。

 その姿を思わず目で追うとムックルが向かう先には林が広がっている。

 

「木の実か」

 

 少し考えて結論を出す。

 資格試験の日は三日後だ。余裕を持って家を出たので少しくらい寄り道をしても大丈夫だろう。遅刻は怖いが、遅くとも一日でコトブキシティに着くし、コトブキからマサゴタウンまでは半日もかからないらしい。野宿にさえならなければいいし、木の実を少し頂いてから荒れた抜け道を行こう。

 

「リッキー、少し木の実を採って来てもいいでしょうか」

「リィ?リィィ」

 

 リッキーは考えるような素振りを見せたが時間的に問題はないと判断したのか大きく頷いた。ありがたい。

 

「紫苑、なにか木の実でも採ってから行こ、きましょうね」

 

 自分で猫を被ると決めたのにこの有様だ。慣れていないので仕方ないかもしれないがちょっと悔しい。

脇道に逸れて林の中へと入る。林の中にはそれはそれは美しい景色が広がっていた。

 

 人の整備した景色もきれいだったが、自然の中はより一層綺麗だった。そこかしこに生活するポケモン達。木漏れ日が差し込む木々。静かな中に混じる水の流れる音。さわさわとそよぐ風。そんな景色の中を歩きながらますます旅に出たいという欲求が高まる。

 

 しかし私はまだ未成年。トレーナーズスクールにさえ通っていない年頃だ。この世界の住民の成長速度や成人が早いことを含めてもまだまだ子供。旅に出る日は遠いし、スクールだって入学するにはまだ一年ほどある。だが、来年の今頃にはスクールに入ることを考えたらドキドキした。

 

 スクールには自然に近い環境にした林を内蔵しているらしいし、様々な道へと進むための知識を蓄える場所。今から楽しみでしょうがない。前世では勉強は苦手だった覚えがあるけれど、この世界での勉強は楽しみだ。やはり好きなことを学べるからだろうか。学ぶ対象が好きであるかないかによっても心象は大分違うものだ。

 

「んみゃ~」

 

 紫苑が私の靴紐を引っ張り、それに驚いて思わず転びそうになる。

 

「わっとっと、どうしたの?紫苑」

 

 尚も靴を引っ張って先導しようとする彼女に首を傾げる。そして真似をしたのか紫苑まで首を傾げる。可愛い。

 靴紐を直しながら彼女の頭を撫でるとぐるぐると控えめに咽を鳴らした。

 

「ンミ」

 

 いつの間に起きたのか、簡潔に鳴いてリッキーの背から飛び降りた梔子が林の影へと隠れる。

 

「リィィ」

 

 そしてリッキーは私に分かりやすいように耳をピコピコと動かし、遠くを見つめている。コリンク達の動作では分からなかった私もその動作で何かが聞こえるのだと気づき、耳に手を当てて立ち止まった。

 

「――」

 

 川のせせらぎに混じって何かが聞こえてくる。それは女の子の声のようであった。

 

「ミャアー」

 

 痺れを切らしたのか、早くしろよとでも言うような声で鳴き、林の奥から梔子が顔を出した。

 

「はいはい、分かりましたよーだいたっ!?」

「ンミ!」

 

 適当な返事をすると梔子が怒ったように走り寄り、私の足に体当たりをかましてきた。電磁波を纏っていないだけマシかもしれないが結構痛い。足をさすりつつ、声のする方向へと歩いて行く。

 

 勿論、途中でオレンやモモンなどの木の実を採り過ぎない程度に収穫しつつだ。

 大振りで濃いピンク色をしたモモンの実はとても甘い。お菓子にもなるし、疲労回復なんかの薬にもなるし、甘いので薬として使っても嫌がられない優れものだ。そのかわりオレンの実は不思議な味がするので幾つも食べさせようとすると拒否されることもある。オボンの実はオレンよりも幾分か食べやすいのでそんな苦労はないのだが、どちらもモモンと混ぜて薬にすると食いつきが良い。

 チーゴの実なんかもモモンで食べやすくすることがあるし、モモンは良い味の中和剤だ。効能をかき消すこともなくなじむので幼いポケモンを扱うブリーダーにとってはいくらあっても足りないくらい大量に使うことになる。それに嗜好品にもよく混ぜるし。

 モモンの実は本当万能だ。

 

「タマタマ氷の息吹よ!」

「え!?」

 

 近づいてよく聴こえるようになった声に驚いて声が出る。

 

「転がるでトドメ!」

 

 まてまてまて、タマタマは氷の息吹や転がるなんて技覚えないぞ!?

 一体どういうことだよ!

 

「けむぅぅぅ」

 

 ビックリしながら出ていくと、そこには青い髪を左耳の上でハーフアップにしている女の子がいた。

 髪を結っているところには雪の結晶を象った髪飾りをしている。驚いたようにこちらと合った目は海のように深い紺色。すぐ傍には倒したらしいケムッソ。そして、ドヤ顔で手を叩くタマザラシがいる。

 

「あなた誰?」

 

 困ったように呟く同い年くらいの女の子にこちらも驚きつつリッキーと目を合わせる。

 頷かれたので紫苑と梔子を呼ぶ。ちょいちょいと指で呼んだだけだったが理解したようで梔子は私の肩へと飛び乗り、紫苑はすぐに私の腕の中へと納まった。

 

「私はソノオタウンのケイカですわ。マサゴタウンへと向かう途中で木の実を採っていたのですけど声を聴いて気になって」

 

 そう言うと訝し気な顔をしていた女の子はパッと輝く笑顔に変身し、傍らに佇むタマザラシを抱き上げた。

 

「あたしルクリア! ハクタイシティのルクリアです! こっちはパートナーのタマタマよ。覗き見してたあなたも資格を取りに行くの?」

 

 そう言ってタマザラシを指さす彼女、ルクリア。ああ、やっぱりそれタマザラシの名前なんだと呆れそうになるが一応それは隠しておく。まあ、人それぞれだしね。あとなんか微妙に黒いぞこの子。覗き見したのは事実だが不審者扱いか?

 ぐいぐいと迫るルクリアの勢いに押されつつ私は彼女の問いに答える。

 

「その通り、未成年者資格のためにマサゴタウンへと行く途中ですわ。途中で木の実を採ろうと思ってこの林の中に入ったの」

「そっかそっか、ならあたしと一緒ね。ところでその子たちは?」

 

 最初は興奮して捲し立てるような喋りを披露していた彼女だが落ち着いてきたのか声のトーンが下がり、口調も柔らかくなる。そんな彼女の視線が三匹に向かう。不思議そうに紫苑と梔子を見比べているので色違いを見るのは初めてなのかもしれない。

 

「青いコリンクが紫苑。黄色いコリンクが梔子。二匹とも私のパートナーです。キリンリキのリッキーは母のポケモンで、姉のような存在ですね。荒れた抜け道を通るのに着いて来てくれているの」

 

荒れた抜け道を通ってコトブキシティ、ひいてはマサゴタウンに行くのに技「岩砕き」が必要になる。コリンクたちは急ごしらえで教えても、ちゃんと岩を砕けるようになるまで時間がかかるので「岩砕き」を使えるリッキーに同行してもらっているのだ。

 

「おお素敵な名前。色と、旧時代の果物の名前でしょ? 今では食用のナチクの実って名前だったような」

 

 おお、由来をちゃんと当ててくれたのは両親以外では初めてだ。それに 「カントーの町の名前もシオンね」 だなんて言っているし、全部言い当てられたことはなかったから新鮮だ。

 

「よく分かりましたね。シオンタウンはともかく、旧時代の食べ物まで知っているのは珍しいです」

「恥ずかしい話、木の実と食べ物には人一倍関心があるから知っていたのよ。木の実のことなら何でも答えられる自身があるわ」

 

 少しも恥ずかしそうに見えないのは気のせいだろうか。むしろ自慢気に言っているような気がするのだが気のせいだろうか。

 

「でも、そのわりにはタマザラシのニックネームがなんというか……」

 

 失礼かもしれないが言わずにはいられなかった。私の名づけだって厨二と言われても仕方ない出来になることがあるし、とりあえず訊きたかった。そこは正直にいく。

 

「? タマザラシだからタマタマだけど」

「カントーのポケモンにタマタマっていると思うのですが」

「え!」

 

 知らなかったんかーい!

 

「知らなかったんですか?」

「あ、その、シオンタウンを知っていたのもご当地名物を調べたことがあっただけなので他地方のことはあんまり…… 」

「そ、そうですか」

 

 シオンに名物なんかあったっけ? それとも全地方の名物を調べてたりするのだろうか。大食いキャラっぽい雰囲気を感じ取った今だとありえそうだと素直に言える。

 

「な、ならニックネームを変えた方がいいのかな。ね、どうタマタマ?」

「タマー」

 

タマザラシは彼女の足元を転がりながら手を叩いている。

なんだかよく分かっていないような感じがする。初対面の私にもそれは分かる。

 

「タマタマ~」

「だめね、分かんない」

「別にそのままでもいいと思いますけど…… 」

「ううん、ニックネームは付けたばかりだし変えるなら今のうちにしとかないと」

 

確かに、変えるなら付けたばかりのほうがいい。被るのが嫌なのだろうか。今更だが指摘しない方が良かったか? しかしそれでは気づいたとき既に遅いわけで。

 

「うーん、ねえケイカさん。この子の進化形ってなんて名前だったっけ」

 

 おいおい、未成年者資格はパートナーの種族のことを把握していないといけないというのに大丈夫かこの子。だがまあ流石にキツく言うのは違っている気がするから質問に答えるだけにしておこう。これ以上重箱の隅を突くようなことを言うと泣かしてしまいそうだ。

 

「トドグラーとトドゼルガだったと思いますわ」

 

 会話に飽きてしまったのか紫苑は腕の中から飛び降り、梔子と共に鬼ごっこと言う名のトレーニングを始める。

 今は電光石火ありでやっているので結構二匹とも必死だ。連続で電光石火を使用するのは禁止しているので出すタイミングも重要だし、いいトレーニングになっている。

 

 クチナシは電磁波を纏った電光石火なんて離れ業を習得しつつあるので将来が楽しみだ。

 紫苑は今のところ技を効率よく、またトリトドン(粘土)のように細かくビームを出すとかの応用を練習している。今のところ一回分のPPで二個の丸いシグナルビームを投下できるようになっている。器用さは相当のものだからそのうち一回分のビームを五等分できるようになるだろう。

 

 コリンク達を微笑ましく見守りながらルクリアを横目で見るとハッとしたように指を鳴らした。

 

「ゼルゼルにする!今日からあなたはゼルゼルよタマザラシ!」

 

 名前の趣味は全く変わっていないようだが進化後も見据えた良い名前になったように思える。少なくとも声だけ聴いた私のように別のポケモンを思い浮かべるようなことはもうないだろう。

 

「いいんじゃないですか」

 

 本人、本ポケはよく分かっていなさそうだけれど。陽気に手を叩いてニコニコしているだけなので判断できない。まあ喜んでるんじゃないかな。

 

 感動の場面をしり目に集めた木の実を数えつつ水筒を取り出す。

 まだ出発したばかりで中身は一杯だが予備の水筒があるのでそちらに川の水をいくらか掬い、仕舞う。ポケモンセンターに泊れればいいがまだトレーナーカードを持っていないので有料だ。

 食事くらいは自分たちで用意したほうが安上がりになる。そのためにもう少し木の実を集めていこうと周囲を見渡した。

 

 タマザラシの手を取って抱きしめているルクリアはとりあえず放って置き、手ごろな位置に生えているヒメリの実を収穫していく。ちょっとしたスパイスにもなるし、元はヒメリンゴなのですり下ろして食べても美味しい。その代り量が少ないのでたくさん収穫することが大事だ。

 更に奥に生えている大量のオボン林を見つけて密かにテンションが上がる。あれだけあれば傷薬いらずだ。

 

「あの、私木の実を集めたいのですが」

 

 オボン林へと引き寄せられていく私の腕を掴み、タマザラシを片腕に抱いたルクリアが引き留める。それに逸る気持ちを抑えきれない私がわざと不機嫌そうに呟く。欲求優先はいつものことだ。

 ああ、あんなにオボンの実があるだなんて。作るならオボンクッキーなんていいかもしれない。あれだけあればケーキだって何個も作れるのだ。甘いもの好きとしてここは見逃せないはず。

 

「あ、その前にちょっといい?」

「なんですか?」

 

 腕を掴んだまま逃がさないとばかりにルクリアが微笑む。

 その視線は鬼ごっこ連戦連勝の梔子に向いているように思える。ああ、もしかして色違いが珍しいから気になるとか? それとも交換してほしいとかか? 彼女のポーチにはタマザラシの分と、あと二つモンスターボールがあるようだし、ありえないことでもない。

 

 そうして一人で勝手に結論を出して一人で勝手に呆れていると、彼女がギラギラと光る目でその口を開いた。

 

「ここで会ったのも何かの縁。ケイカさん、バトルしましょう!」

 

 そう彼女が言った瞬間、静観していたリッキーが楽しそうな声で鳴いた。座り込んでしまったのですっかり観覧する態勢だ。

 

 私はその言葉を聴いた梔子が嬉しそうにこちらに走り寄る光景を見ながらそっと笑みを浮かべた。この戦闘狂め。ま、私も人のことを言えないわけだけれど。

 

 そして互いに笑みを浮かべた顔で頷きあう。

 

「ルクリアさん、その勝負受けて立ちますわ!」

「ミィ!」

 

 その場に出されたタマザラシと梔子が向き合い、今バトルが始まった。

 

 

 

 




ルクリア
冬に咲くピンク色の可愛らしい花の名称。花言葉は優美など。
タマザラシって可愛いよね。でもタマザラシで遊ぶトドグラーは許 ざ ん
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