ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】   作:名前はまだ無い♪

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前回の「ラブラIb!」

ワ「ボクは信じてるよ。ボクの行動が世界の希望の礎になるってね。
そして……もし本当にそうなったら……
ボクを讃えてくれ。
ボクの偉業を伝えてくれ。
ボクの銅像を作ってくれ。
ボクを敬ってくれ。
ボクを……超高校級の希望と呼んでくれ」


投擲75%

 後ろから追ってきているワカバから逃げる為、階段を駆け上がる穂乃果、メアリー、イヴの三人。

 

「メアリーちゃん! どこか、少しでも隠れられる所、ない!」

「そんな都合の良い所……ある! さっきの部屋の、鍵のかかった部屋! あそこなら中から鍵を掛けられる!」

 

 穂乃果の問いに、少し考えたメアリーはさっきまでいた大部屋で調べることの出来なかった唯一の部屋の話を持ち出す。

 

「でもその鍵って」

「イヴの持ってる鍵で開くはず! イヴ!」

「うん! はいこれ!」

 

 メアリーはイヴから鍵を受け取ると、両方から手を放し穂乃果の横を駆け抜ける。そのまま穂乃果とイヴは手を繋ぎ直し走る。

 

「イヴちゃん頭下げて!」

「うん!」

 

 穂乃果がちらりと後ろを伺い見ると、ワカバがイヴの頭目がけてナイフを振り投げようとしていた。

 穂乃果の指示に咄嗟に頭を下げるイヴ。数舜あとに僅かに宙を舞う数本のイヴの髪の毛。

 

「ホノカ! イヴ! うわっ!」

 

 それから二、三本のナイフを避けたあと、メアリーが扉を開けて手を振って二人に叫ぶ。そのすぐ近くにナイフが投げられる。

 

「メアリーちゃん大丈夫!?」

「う、うん!」

 

 メアリーのいた部屋に飛び込みながら怪我の有無の確認を取る。メアリーは穂乃果とイヴが中に入ったのを確認すると、すぐさま扉を閉め鍵をかける。少し遅れてカカカン! と扉にナイフの刺さる音が鳴る。

 

「あ、危なかった~」

「ねぇ、それよりギャリーが……!」

 

 鍵を閉めたことにより出来た僅かな時間、穂乃果はギャリーを床に降ろし額の汗を拭う。イヴが指さした方を見ると、ギャリーは虚空に向かって笑いかけていた

 

「ホント、偶によ? 今はちょうど切らしてて……そう、結構好きなの。でも中々時間がね……」

 

 ギャリーはメアリーやイヴに見向きもせずに虚空に話しかけ続けている。メアリーは不気味に感じ、ギャリーの傍を離れると穂乃果の隣に立つ。

 

「あらアナタも? アタシ達気が合うかもしれないわね。フフ、でもアナタってホント面白いわよね。悩みとかなんでも話せちゃいそうだわ。アハハハ」

「このギャリーさんどうしよう」

「う~ん、叩けば治るかな?」

「そんな昔のテレビじゃあるまいし」

 

 メアリーの治療法にいやいや、と否定する穂乃果。その時部屋の中にパシン! と鋭い音が響く。二人が音がした方を見ると、イヴが右手を振り抜いた状態でギャリーの前に立っていた。

 

「目を覚ましてよ、ギャリー!」

「……い……ったいじゃない! いきなり何するのよ! ってあれ、ここどこ? ってイヴ?」

「ホントに叩いたら治っちゃった……」

「私もまさか本当に治るとは思わなかったよ……」

 

 イヴに叩かれて正気に戻ったギャリーは、そのまま抱き着いてきたイヴを抱き止める。その様子を見て何とも言えない表情を浮かべる穂乃果とメアリー。

 ギャリーは未だに状況を把握できていないのか、辺りを見渡す。そして視線が穂乃果の隣に立つメアリーにぶつかり、身を強張らせる。

 

「ちょ、穂乃果! メアリーから離れなさい!」

「え? なんで?」

「なんでってその子」

「人間じゃない?」

 

 ギャリーが言おうとした言葉をイヴが遮り、続ける。思いもよらない乱入者にギャリーは一瞬間の抜けた表情をするも、すぐに気を取り直して頷く。

 

「あなた達と別れてる時に『ゲルテナの作品集 下』ってのに書かれてたのよ」

「ちょっとストップ」

 

 ギャリーが情報交換をしようとした時、穂乃果が制止の声を上げる。

 

「な、なによ」

「訳は後で話すから、一旦移動しない? そろそろ不味いと思うんだ」

「あ、そうだった!」

「ギャリー、話はまた後で。今は逃げないと」

「逃げるって何からよ」

 

 ギャリーが説明を求めると、閉められた扉越しに声がかけられる。

 

「どうやら分散してボクの隙を見て攻撃、なんて事はしないんだね。まだそこにいるのは分かってるよ。だから動かないで待っててね」

「煩い! それ以上お兄ちゃんの声で気持ち悪い話し方しないで!」

 

 穂乃果がワカバにそういうのと同時に部屋の奥に走り出す。メアリーもそれに続き、ギャリーはイヴの手を引いて先行した二人の後を追う。

 四人が少し走ると背後から扉を蹴破る音が聞こえた。

 

「ギャリーさん、重要なことだけ先に言うね」

「えぇ」

 

 穂乃果は並んで走るギャリーに逃走に必要な情報を伝える。

 

「今後ろから来てるのがギャリーさんと行動していた何かしらの作品。アレは主にナイフを投げてくるから気を付けて」

「……それだけ?」

「うん」

「分かったわ。ありがと」

 

 ギャリーは穂乃果にお礼を言うと後ろをチラリと見る。

 その時、ワカバは両手に握ったナイフを無造作に振り、投擲した。ナイフはギャリーとイヴの僅か数センチ左を通過して目の前の壁に突き刺さる。

 

「ギャリーさんこっち!」

 

 T字路を右に曲がり後続のナイフをかわす。

 

「まったく、冷や汗ものね」

「まだ当たってないのが奇跡なくらいだよ」

 

 それからワカバのナイフから逃げる為、曲がり角を右に左にと曲がって行く。それを何度か繰り返した時、ギャリーはふと違和感に襲われる。

 

「ねぇ、気のせいかしら。どこかに誘導されてる気がするんだけど」

「たし、かに……ハァハァ、さっきから分かれ道になる度に……右か左にナイフが飛んできてる」

 

 ギャリーの違和感にメアリーが息も絶え絶えに賛成の意を示す。その横ではギャリーに引っ張られながらも、苦しそうに呼吸をしているイヴがいる。

 この時点で走り始めてそれなりの時間が経つ。子供の二人の体力はもう限界が近付いてきているのだ。

 

「メアリーちゃん、どこか身を隠せそうな場所、知らない?」

「えっと……もう少し進んだ所に、たくさんの建物がある場所に着く、はず」

 

 メアリーの言葉に穂乃果とギャリーは頷き合うと、互いに手を引いていた子供達を一思いに背負う。突然の事に驚きの声を上げるメアリーとイヴ。しかしギャリーと穂乃果はそれを無視して走り続ける。

 

「なるほど! 確かにそっちの方が少しは早く走れるみたいだね。でもね、その程度じゃボクを撒く事はできないよ?」

「ギャリー、左から!」

 

 後ろからゆっくりと追い掛け、両手にナイフを持ったワカバが楽しそうに笑い、賛美しながら再びナイフを投げる。

 投げられたナイフの方向をイヴが後ろを見たまま見切る。これまでは走る事に集中していたイヴだったが、ギャリーに背負われている今、走るより後ろからの攻撃を見る事に集中している。

 イヴの指示通り左側へと飛んでくるナイフをギャリーは右にかわす。

 

「素晴らしい! 速度が少し上がるだけじゃなくて、役割分担まで熟せるなんてね!」

「ホノカ、ギャリー。次右に曲がったらすぐに曲がり角があるからそこを曲がって」

「了解っ!」

「分かったわ」

 

 後ろからの声を無視してメアリーがワカバに聞こえない声量でナビゲートする。

 少しするとメアリーの言っていた分岐路を右に曲がる。この時、ワカバは左の通路に行かせまいと左側に三本のナイフを投擲していた。

 そしてメアリーの言った通り右に曲がると、確かに左側に通路があった。走り手の二人は迷う事無くその通路を駆ける。

 

「メ、アリーちゃん……まだ、なの?」

「もう少し。この通路の突き当りを左に曲がった所にあるから!」

「任せな、さいな!」

 

 穂乃果に場所を聞かれたメアリーは、何も出来ない無力感から泣きそうな声で答えるも、穂乃果は元気に明るく返す。

 暫く道なりに走り突き当りに辿り着く四人。後ろからはワカバの足音は聞こえてこない。

 

「ハァハァ……漸く撒けたかしら」

「撒けた、と……いいけど……」

 

 後ろからの脅威が感じられなくなり、その場で立ち止まって少し息を整えるギャリーと穂乃果。

 その時、安心して笑顔になっているギャリーと穂乃果の間の空間にヒュッ! と鋭い何かが通る音がした。それに続いて今の状況で一番聞きたくない声が届く。

 

『撒けたと思った? 残念だったね。今ボクは狩る側だからね、ゆっくりとキミ達を狩らせてもらうよ。せいぜい走り回って体力をなくすことだね』

 

 足音は聞えないまでも、声とナイフで追ってきている事、自分達の居場所がバレている事に焦りを感じ、四人は曲がり角を右に進む。

 

「何なのよあいつ! どうやってアタシ達の位置把握してるのよ」

「それより、どこに隠れるの?」

「あそこのピンクの建物とか、どう?」

「……ぁ」

 

 右の通路を進んだ四人はメアリーの言った通りの建物が建ち並んでいる空間に辿り着いた。

 穂乃果、イヴ、ギャリーの三人には、その空間は見ただけでも今までの場所とは違う事が分かった。今までの空間はどこか美術館の形を保っていたが、今立っている空間は全ての物がクレヨンで描かれていた。

 穂乃果が隠れ場所として選んだのは、あまり目立たない場所にあるピンク色の建物。

 

「そうね。あそこなら多少なりとも時間が稼げそうだし」

「メアリー、どうしたの?」

「え? あぁ、別に。じゃ、早くあそこ行ってホノカとギャリーは休も」

 

 穂乃果が隠れ場所を選んでから心ここに非ずだったメアリーに、イヴが心配そうに声をかける。イヴに声を掛けられてハッと我に返ったメアリーは、二人の背中を押しながらピンク色の建物を目指し歩き始める。

 

 

 

 

「さて困ったねぇ。どうせすぐに追いつけると思ってたら、まさかこんな所があったなんて」

 

 穂乃果達が建物に隠れたとき、ワカバが建物の部屋に辿り着く。辺りを見渡したあと頭を掻き、左手でナイフを弄ぶ。

 

「て言うか、ボクこの空間の事何も聞かされてないんだけど?」

『ぼくも いましった』

 

 ワカバが腰にしがみついてる人形に目を向けると、近くの壁に文字が浮かび上がる。ワカバは文章を読むと、眉間に皺を寄せたあと人形の頭を突く。

 

『ほかのみんなも ぼくといっしょ』

「てことはここはメアリーしか知らなかった空間って事かな?」

『たぶん?』

 

 ワカバは人形を持ち上げ頭の上に置くと、ナイフでジャグリングを始める。

 

「取り敢えず手当たり次第に切っていこうか」

『それ あぶないひとのかんがえ』

「あははは言われちゃったね」

 

 人形の文字を軽く流しワカバは一番近くの建物にナイフを振り下ろすと、建物の壁は少し揺れた後に消える。

 

「ここは外れか」

『ざんねんだったね』

「別に残念だなんて事はないよ。見つけられないという不幸が後でどんな幸運になって返ってくるのか、楽しみで仕方ないよ」

『あ そう』

 

 楽しそうに嗤うワカバを見て、人形は呆れたように文字を浮かばせ腰から肩の上に移動する。

 

 

 

 

「どうやら手当たり次第に建物を消していってるみたいね」

「それじゃあここに辿り着くまで時間は稼げるね」

「そうね」

 

 建物の屋上からワカバの様子を盗み見たギャリーと穂乃果は、階下に降りながらワカバの行動について話し合う。

 

「お姉ちゃん、ギャリー。どうだった?」

「しばらくここで休めそうよ」

「良かったぁ」

 

 ギャリーの言葉に安どの息を吐くメアリー。穂乃果もメアリーの隣に座り、休息をとる。

 

「それよりそろそろ聞かせてもらってもいいかしら?」

「?」

「メアリーの事よ。さっきは逃げるので精一杯だったから聞けなかったけど、聞かせてもらうわよ」

 

 ギャリーは穂乃果とイヴの前に腕を組んで立つ。ギャリーに見られている二人はどうしたものかと顔を見合わせた後、ギャリーと別れた後の話を掻い摘んで話す。

 

「……と、言う訳でメアリーちゃんは平気なんだよ」

「まぁ、そういう事なら。さっきはごめんなさいね、メアリー」

「ううん。これからもよろしくね!」

 

 話を聞いて警戒を解いたギャリーはメアリーに謝罪する。メアリーは頭を横に振り、にっこりと笑いかける。

 

『う~ん、ここも違ったかぁ~。ホントどこに行っちゃったのかな』

『え? 反対側にいるんじゃないかって?』

『でもボクの勘がこっちって言ってるんだ。だから僕はこっちを探してみるよ』

 

 突然聞こえた声に四人は身体を強張らせる。続いてコツコツと近付いてくる足音が響く。穂乃果は隣に座っているメアリーを、ギャリーは近くに立っているイヴを抱き寄せる。

 

「メアリーちゃん、この部屋って抜け道とかない?」

「え、っと……」

 

 穂乃果が小声で尋ねるとメアリーは部屋を見渡し始める。ギャリーとイヴは耳を澄ましワカバの足音に聞き耳を立てる。

 

「あそこ」

 

 メアリーが恐る恐る壁の一部を指さす。ギャリーがその部分に近付き調べると、僅かに色の違いが見て取れる。

 

「そこの先に、私の家があるよ」

「メアリーちゃんの家?」

 

 メアリーはコクンと頷くと穂乃果の元を離れ、壁に手を当てる。すると壁は徐々に薄くなり、地下へと続く階段が目の前に現れる。

 

「ここを下りて行けば着くよ」

「ありがとう!」

 

 穂乃果は振り返ったメアリーに抱き着きお礼を言う。メアリーも嬉しそうに笑い抱き締める。

 

「それじゃあ早速下りましょう」

「うん。メアリー行こ」

 

 先頭にギャリー、二番目にイヴとイヴに手を引かれるメアリー、最後に穂乃果が階段を下りて行く。

 穂乃果達が入った途端、入り口だった壁の部分は元の壁に戻り視界が悪くなる。

 

「ここ暗くて危ないから気を付けるのよ」

「少し、見えにくい、かな?」

「ちょっと待ってね~」

 

 穂乃果はポケットから携帯を取り出すとライトを起動させる。ギャリーもそれに倣いライターを取り出し火を点ける。

 

「ひぃっ!」

「どうしたの? メアリーちゃん」

「もしかして、火が怖いの?」

「う、うん」

 

 ライターの火を見ると、短く悲鳴を上げてイヴの背中に隠れる。それを見たギャリーは慌てた様子でライターをしまい、携帯を取り出す。

 

「ごめんなさいね、メアリー。まさかそんなに怖がるだなんて思わなくて」

「ううん。ギャリーは何も悪くないもん」

 

 申し訳なさそうに謝るギャリーに、首を横に振って答えるメアリー。

 それから光源を手に入れた四人は慎重に階段を下りていき、階上から激しい音がしたのと同時に階段を下りきった。

 

「今の音は……」

「きっと、ワカバ擬きが壁を壊したんだと思う。こっち!」

 

 メアリーが穂乃果の手を引っ張り早足で歩き出す。ギャリーもイヴの手を取り後に続く。少し歩くと一枚の扉の前に辿り着く。メアリーは躊躇いなく扉を開け中に入る。続いて穂乃果、ギャリー、と中に入り最後に入ったイヴが扉を閉める。

 三人が息を整えていると、先に入っていたメアリーが部屋の奥から歩いてくる。そして三人の前で止まると両手を広げて笑顔になり、口を開く。

 

「ようこそ、私の部屋へ」

 

 




もうオリジナルルートに入って先の展開がワカンネ


♪♪♪
ギャリーを背負って逃げる穂乃果
まぁスクールアイドルで体力つけてますから、これくらい出来るでしょう(震え声)

投擲されるナイフ
当たらないのは希望厨の幸運の前振りか、それともただただ下手なだけなのか……

叩けば直る
昔のテレビは配線とかの問題で叩いたら直ったらしいね。最近のは直らないけど。

情報交換
今はそれどころじゃない! 逃げるんだよぉ〜!

誘導されている……?
まぁ、さすがに勘づきますよね

クレヨンの空間
下手したらあそこで時間かかるんですよねぇ〜

ワカバの知らない空間
狛ったねぇ(ネットリ)

ピンクの家
メアリーの家。という設定
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