ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】   作:名前はまだ無い♪

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前回の「ラブラIb!」

メ「それに、触るなぁぁぁぁぁ!!」
ワ「投げたナイフが悉く外れるなんて、ボクはなんてツイてないんだ!」



『生命の滴』

「ここがメアリーちゃんの部屋?」

 

 穂乃果は室内をぐるりと見回す。部屋の床には絵が描かれているお絵かき帳、その近くに転がっている色とりどりのクレヨン、赤い目をした青い大きな人形、絵本の入った本棚、そして絵画の入っていない額縁とその下にある『メアリー』と書かれたプレート。

 

「ずいぶんメアリーらしい部屋じゃない」

「うん」

 

 穂乃果同様部屋を見回したギャリーの言葉にイヴも頷く。メアリーは二人の言葉に照れたように顔を赤らめ視線を逸らす。しかしトントントンと木製の扉に三本のナイフが突き刺さる音で全員が我に返る。

 

『ははっ。この先は一体どこに繋がってるんだろうね。キミは何か知ってるかい?』

『キミにも分らないんだね。もしかしてメアリーが行きたがっていた外の世界への出口があったりして』

 

「メアリー! この部屋に抜け道とかは!」

「そんなの知らないよ! ていうかなんでアレまでここにこれるの!?」

 

 ワカバの声を聴いて焦ったように言い合うギャリーとメアリー。そんな二人を無視して部屋の中を再度部屋を見回す穂乃果とイヴ。そして部屋の違和感に気付く。最初に見た時にはなかったモノがそこにあった。

 

「お姉ちゃん、あれ」

「うん。二人ともこっち来て!」

 

 なおも言い合っている二人は穂乃果に呼ばれ、イヴと穂乃果の近くに寄る。

 

「なに、これ?」

 

 部屋の持ち主であるメアリーがそれ(・・)を見て驚きで目を見開く。

 

 

 

 

 

「それにしても暗いね」

『ぼくは みえてる』

「キミが見えていても、ボクが見えてないと危ないのには変わりないんだけどね」

 

 あれから手当たり次第勘次第でピンクの建物に辿り着いたワカバは、僅かに残っていた体温から穂乃果達がこの部屋にいたことを悟り、部屋の中を見渡す。

 

「これは困ったね。二階からも音がしないって事は彼女達はもうここにはいないみたいなんだよね」

『あきらめる?』

「まさか。今諦めたらここまでの努力が水の泡になっちゃうからね。でもあまりゆっくりは出来ないんだよね」

 

 ワカバは少し慌てた様子で部屋の壁をナイフの柄で叩いて回る。

 トントン、トントン、トントン、コンコン、トントン

 

「ん?」

 

 ワカバは立ち止まり、一箇所だけ音が違った壁を振り返り、ニヤリと嗤う。

 

『わるいひとのかお』

「そりゃあ今のボクは悪いからね」

『ぬかしおる……?』

 

 人形のメッセージを無視して音の違った壁の前に立つと、ナイフで壁紙を切り裂くと、壁紙が剥がれ、薄暗い空間が露わにされる。

 

「さ、進もうか」

『あってるの?』

「それを聞くのは愚問ってやつだよ」

 

 ワカバが空間に足を踏み入れると、何もなかったはずの場所に階段が現れる。ワカバはそのまま足を踏み出し地下へと下りて行く。下りている途中、突然ワカバがナイフを三本ほど前方斜め下に向かって放り投げる。少しの間を置いてトントントン、と何かに刺さる音が返って来た。

 

「ははっ。この先は一体どこに繋がってるんだろうね。キミは何か知ってるかい?」

『しらないよ』

「キミにも分らないんだね。もしかしてメアリーが行きたがっていた外の世界への出口があったりして」

『はは まさか』

 

 人形と軽口を叩き合いながらワカバが階段を下りて行くと、先ほど投げたナイフが刺さっている扉に辿り着く。

 

「到着っと。さて彼女達はどこにいるのかな……あれ?」

『いないね』

 

 メアリーの部屋に入ったワカバは無人の部屋を見て首を傾げる。部屋の中には隠れられる場所はなく、また別の部屋に繋がる扉や通路も見当たらない。

 

「来る場所間違えたかな?」

『どんまい……?』

「それは違うよ。まだ彼女達がこの部屋のどこかに隠れている可能性が残ってるからね」

 

 ワカバは部屋中を見渡し、壁の一箇所に何かを見付け近付く。

 そこには赤く光る文字で

『ここはどこ』

 と書かれていた。

 

「ここって、この部屋の事かな?」

『ちがう……とおもうよ?』

「と、言うことは。答えは決まってるね。ここは『ゲルテナの世界』だよ」

 

 ワカバが言い切ると同時にゴゥンゴゥンと床が降下を始める。ワカバが上見ると天井から新たな床が下りて来ていた。

 

「へぇ、これはまたファンタスティックな仕掛けだね。さぁ、鬼ごっこの再開といこうか」

 

 ワカバは物音のする天井を見上げながら呟いた。

 

 

 

 一方、ワカバが部屋に着く前に壁の謎のメッセージを解いた四人は下降中の床に座って休憩をしていた。

 

「これ、どこまで下りるのかな?そこそこ下りたと思うんだけど」

 

 穂乃果がメアリーを抱きながら呟くと、それに答えるように床は止まる。

 

「着いたみたいだよ?」

「みたいだね」

 

 床が完全に止まったことを確認した四人は立ち上がり、唯一の出入り口である扉に慎重に近付く。

 

「ね、ねぇ。もしこの扉の向こうに作品がたくさんあったら、どうする?」

 

 ドアノブに手をかけたギャリーが不安そうに振り返り聞く。

 

「またこの部屋に戻ってくる、とか?」

「それしかないよね」

「他に行くところないし」

「……じゃあ開けるわよ」

 

 三人の言葉を受け、ギャリーが覚悟を決めて扉を開ける。扉を開けると、薄暗い廊下の先に両開きの扉があるのが見えた。

 穂乃果達はギャリーを先頭に廊下を歩き、両開きの扉の前まで行く。

 

「ここまで何もなかったね」

「うん。何もなかったね」

「怪しいくらいに何もなかったわね」

「逆に何もなさ過ぎて怪しくないね」

 

 扉の前に立つ四人は思ったことをそれぞれ口にする。そして再びギャリーがドアノブを握り扉を押し開ける。

 扉を開けた先の光景を見て穂乃果、ギャリー、イヴの三人は驚きで目を見開く。

 

「ねぇ、ここってまさか」

「多分そのまさか、みたい」

「……美術館」

「ここがそうなの?」

 

 驚く三人とは逆にキョトンとしているメアリー。

 

「どうしてメアリーは美術館のこと知らないの?」

「ん〜、私が絵の中から見ることが出来たのって、絵が飾られてる所だけだったんだよね。だから、偶に外の風景が変わるな〜程度しか外の景色知らなくて」

「成る程ね。絵画は飾られてる範囲しか見えないってわけね」

 

 メアリーの説明にギャリーは納得のいったように頷く。

 

「て、そんな事は今はどうでもいいの! 早く外に出よ!」

「まぁメアリーがそう言うならいいんだけど……

「でもどうやって外に出るのかな?ここが関係してそうだけど」

 

 穂乃果が受け付けに行きそこにあるパンフレットを取ろうとするも、あと少しの所で見えない何かに阻まれてしまった。ギャリーも触ろうとするも穂乃果同様見えない何かに阻まれる。

 

「取り敢えず美術館と造りは同じみたいだから、二手に分かれて調べわてみましょう。何かあったら大声で助けを呼ぶこと」

「はーい」

「それじゃあギャリー、行こ」

「私達も行こっか、メアリーちゃん」

 

 穂乃果はメアリーの手を引き一階の探索へ、ギャリーもイヴの手を引き二階へと上がって行った。

 

「ねぇホノカ。ここってそんなにホノカ達がいた美術館にそっくりなの?」

「そうだね。人がいるいないの差はあるけど、それ以外はまったくの一緒だよ」

 

 メアリーは楽しそうに辺りを見渡しながら穂乃果と並んで歩く。

 そして一階を一通り回った二人は何も手がかりを掴めなかった為、ギャリーとイヴが調べている二階へと上がる。

 

「……?」

「どうしたの?ホノカ」

「……メアリーちゃん先に行ってギャリーさん達と合流してて」

「え? ホノカ!?」

 

 メアリーの呼びかけを無視して穂乃果は階段を下りて一階に戻る。一人残されたメアリーは穂乃果に言われた通り、ギャリー達と合流すべく歩き始める。

 一階に下りた穂乃果は、先ほど聞こえた物音の正体を探して階段の下で辺りを見回す。

 

「や、やぁ」

 

 両開きの扉に凭れ掛かるように座っている人影がいた。それは胴体の真ん中に大きな穴を開けたワカバだった。

 

「どうしたの!?」

「ちょっと色々あってね」

 

 ワカバに駆け寄り穴を心配そうに見る穂乃果。ワカバはそんな穂乃果を見て驚きながらも笑みを浮カかべる

 

「これ、メアリーに」

「……これは?」

「これは『生命の滴』だよ」

 

 ワカバが胸ポケットから取り出した液体の入った瓶を穂乃果に差し出す。穂乃果は戸惑いながらもそれを受け取り、ワカバを見る。

 

「それに薔薇の花弁を数枚入れて垂らすと、どんな薔薇でも満開になるんだよ」

 

 ワカバから説明を受けた穂乃果は渡された物を見てから若葉に向き直る。

 

「ねぇ、聞いていいかな?」

「はは。ついさっきまでキミ達にナイフを投げてたボクに何か聞きたい事があるの?」

 

 ワカバは自嘲気味に笑い穂乃果に問いかける。穂乃果はそれに頷き返し、聞きたかったことを口にする。

 

「あなたはなんでこんな事をするの?」

「こんな事って?」

「あなたが今までしてきたこと。全部だよ」

「……へぇ。一体いつ気付いたのかな?」

 

 穂乃果の言葉にワカバは驚きながらも、穂乃果の真剣な目を見て観念したように質問に答える。

 

「そうだね。どうやらキミはボクがキミ達の命を狙ってない事は分かってるんだよね?」

「なんとなくそんな気はしてたよ。だって、あそこまでナイフ投げるのが上手いなら私達に当てることも出来たはずだし」

「キミ達が幸運だった、とは考えなかったのかな?」

 

 ワカバの問いに穂乃果は静かに首を横に振る。

 

「だってあなたはナイフを投げる時、必ず誰かが後ろを見た時か、私達に当たらない所に投げてたじゃん。それに足音を消して投げることも出来たのに、あなたはそれをしないどころか私達に存在を主張するみたいに声を出してた。だからもしかしたらって……」

「本当にキミは素晴らしいね。キミに、キミ達にならメアリーは任せられそうだよ」

「それって」

 

 言葉の意味を聞こうとした時、ワカバが寄りかかっている扉が僅かに動く。それを感じたワカバは慌てて扉を押さえつける。

 

「そうそう。言い忘れたけど、実は今この向うに作品達がいてね。ここを破られるのも時間の問題かもしれないんだ。だからキミ達は早く元の世界へ行った方が賢明だよ」

「……あなたはどうなるの?」

「さぁ? ま、ボクはこの世界の裏切り者だからね。なるようになるさ。さ、早く行きな」

 

 ワカバに言われながらもその場を動こうとしない穂乃果に、今までワカバの横で扉を抑えていた青い人形が飛びつく。

 

『はやくいかないと』

「最後に一つ、メアリーに伝えておいて。キミは何も心配する事はないって」

「分かった! 絶対に伝えるよ!」

 

 人形が壁に文字を浮かばせながら穂乃果の頭をペシペシと叩く。穂乃果は苦悶の表情を浮かべると、ワカバをチラリと見て階段の方へと駆け出す。

 

「これでボクも希望の踏み台になる事ができた、のかな? 穂乃果、ギャリー、イヴ。メアリーの事頼んだよ」

 

 ワカバは天井を見上げながら誰にともなく呟き、なおも叩かれ続けている扉を押さえる。

 

 

 

 メアリーはギャリーとイヴの二人と合流するため美術館の二階を駆け回っていた。

 

「はぁ、はぁ……二人とも、どこにいるんだろう」

 

 あまり広くないはずの美術館。しかしメアリーは未だに合流できずにいた。メアリーは不安に駆られながらも足を休める事はせずに二人を探す。

 

 《メアリー、聞こえてますか……?》

「誰!?」

 

 突然聞こえた声にメアリーは立ち止まり周りを見回す。しかし視界には人影どころか作品の影すらなく、メアリーは警戒する。

 

 《オイラの事を探してんなら無駄無駄ァ! 私様からはあなたは見えても、あなたから私様は見えないだから》

「……それで、あなたは何がしたいの」

 

 メアリーが目を細めて左右に視線を飛ばしながら聞く。声は面白そうにククッと笑うと続ける。

 

 《あなたは本当に外に出られると思ってるのですか?》

「当たり前じゃん! その為に今こうして皆で出口を探してるんだから」

 《外に出られるのが入ってきた人数と同じ、て言ってもぉ~?》

「それってどういう……っ!」

 

 声の言葉にハッと息をのむメアリー。その様子を見て楽しそうに嗤う声。

 

 《気付いたか。そう、この世界に入ってきた人間はギャリー、穂乃果、イヴの三人だけ。つまりだ! この世界から外に出ることの出来る人数は三人だけって事だ! 絶望的だよなぁ! 絶望しちまったよなぁ! 今まで皆仲良しこよしで出られると思ったら、一人だけここに残らないといけないなんてね。で、メアリー、あなたはどうするの?》

「どうするって……」

 《びえええええん! 今まで仲良くしてた人達を裏切らないといけないだなんて、かわいそうだよぉぉぉおお!! で、でも別にあなたに意地悪してる訳じゃないんだからね! それがこの世界の決まりなんだから! か、勘違いしないでよね!》

 

 メアリーは声の言葉に蹲り、目を固く瞑り耳を塞ぐ。それを見て声はさらに嘲笑う。

 

 《まさか自分を犠牲にして他の三人を出すのかな? きゃはー、カッコイイー! ま、そんなことはどうでもいいんだけど。ほら、ゲームでもさ、やっても無駄な行為とか色々あんじゃん? あなたがやろうとしている事はそれとまったく一緒の事なんだよ。一度希望を持ったモノの絶望。素晴らしいものだね。ま、そんな風にしたところで、この声はキミに届くんだけどね。うぷぷぷ》

 

 最後に笑い声を残し声が聞こえなくなった。メアリーはそれでもなお、声に言われたことを考えてしまいその場から動くことが出来なかった。

 

「メアリーちゃん!?」

「ホ……ノカ……? ホノカ!」

 

 穂乃果が二階に上がると、階段から少し離れた場所でメアリーが蹲っていた。体を揺すぶられたメアリーは相手が穂乃果と分かると目に涙を浮かべて抱き着く。状況が掴めない穂乃果だが、メアリーの身体をギュッと抱き返す。

 

「あら、アタシ達邪魔だったかしら?」

「メアリー、大丈夫?」

 

 穂乃果がメアリーを安心させていると、二階の探索をしていたギャリーとイヴが通りかかり声をかける。穂乃果はメアリーを抱き締めたまま二人を見る。

 

「一階は特にそれらしき物はなかったけど、二階はどうだった?」

「それらしき物はあったけど、それだけね」

「そっか……メアリーちゃん、落ち着いた?」

「……うん、ごめんね」

「メアリー、何があったの?」

 

 穂乃果とギャリーが情報交換をしながらギャリーとイヴが見つけたそれらしきもの、『絵空事の世界』へと着く。その間に落ち着いたメアリーは、イヴの質問に先ほどの声の事を簡潔に答える。

 

「そう、ここから出られるのは三人だけなの」

「うん。だから私の事はいいから三人が元の世界に戻ってよ」

「メアリー、それはだめ。皆で出るって約束忘れたとは言わせない」

「でも、私は元々ここの世界のいて、皆を巻き込んじゃったから、だから、私がここに残るのは当然で……」

 

 ギャリー、メアリー、イヴが声の言っていたことについて話し合っている中、穂乃果だけが頭上の人形に頭を叩かれていた。

 

「え? なに?」

『じかんない それとでんごん』

「あ、そうだった!」

 

 人形のメッセージを呼んだ穂乃果は、階下の状況を説明しようと三人の方を向くと目が合う。

 

「? どうしたの? 皆」

「お姉ちゃんそのお人形さんといつの間に仲良くなったの?」

「ていうか、どこから持ってきたの?」

「あ、あんまりそれを近づけないでね。分からないけど碌な思い出がなさそうなのよ」

 

 一名ほど向けている視線が違かったものの、穂乃果は人形の事、作品がすぐそこまで来ている事、それをワカバが食い止めている事を簡潔に話す。

 

「それとメアリーちゃんに。「なにも心配する事はない」ってさ」

「なにも……?」

『しずく』

「ってこれの事だよね?」

 

 人形のメッセージで穂乃果は『生命の滴』が入った瓶を取り出す。

 

「それに薔薇の花弁を入れればいいのね?」

「説明通りなら。だけど……」

「うん。薔薇ってこの世界だと命と同じ。そのことは穂乃果とギャリーがよく知ってるでしょ?」

 

 メアリーの言葉に穂乃果とギャリーはそれぞれ花弁が千切られたときの事を思い出す。穂乃果は黒い腕からイヴを守るときに千切られた事。ギャリーはこの世界にきてまもなく、作品達に襲われ千切られた事。

 

「だから」

「でもそれでメアリーがこの世界から出られるなら、安いものよね」

「確かに痛いのは嫌だけど、それでもメアリーちゃんをここに残すくらいならお安い御用だよ」

 

 メアリーが止めようとした時、それを遮ってギャリーと穂乃果は自身の薔薇の花弁を一枚ずつ千切る。千切った瞬間に身体に激痛が奔るも、二人は歯を食いしばってそれを耐える。

 

「メアリー、私の薔薇も使って」

「イヴ!」

「……ぁぅ!」

 

 メアリーが止めようと手を伸ばすも、それより早くイヴは自分の花弁を千切る。イヴは激痛に声を僅かに漏らし、目に涙を貯めながらも、花弁を手にしっかりと持つ。

 

「ギャリー、ホノカ、イヴ、皆ありがとう」

 

 三人の文字通り命を張った行動にメアリーは涙を流してお礼を言う。三人はそれに笑顔で返し、穂乃果の持っている瓶の中に花弁を入れる。

 花弁が液体に触れると、透明だったものが茶紫色に変わる。

 

「メアリーちゃん。薔薇、貸して」

「う、うん」

 

 メアリーから薔薇を受け取った穂乃果は『生命の滴』を垂らす。滴が薔薇に触れた途端、黄色だった薔薇が水滴の触れた場所から色が変わっていき、最後には赤、青、黄、茶の四色の花弁からなる一輪の薔薇に変化した。そして穂乃果が薔薇をメアリーに返すと、一陣の風が吹いた。

 

「メアリー、ちゃん?」

「なに?」

「メアリー、その髪どうしたの?」

「あとその目」

 

 ギャリーとイヴに言われメアリーが自分の髪を見ると、黄色だった髪が灰がかった紫に変わり艶やかになっていた。さらに穂乃果から渡された鏡を覗き込むと、水色だった瞳がこげ茶色に変わっていた。

 

「これ……」

「人形さん何か知ってる?」

『たぶん ばらのえいきょう』

 

 メアリーの変化にイヴは人形なら何か知ってるのではと思い聞くと、人形はメアリーの頭の上に移動したあと、すぐ近くの壁に返事が映される。

 

「なるほどね。きっと髪はアタシとイヴ、メアリーの色が。それで瞳の色は穂乃果とメアリーの色がそれぞれ合わさったのね」

「てことは今の私がいるのは皆のおかげって言っても間違いじゃないんだ」

 

 ギャリーの分析にメアリーが嬉しそうに笑顔を浮かべる。そして再び出口を探し始めようと絵を調べた時、ギャリーはふとした事に気づく。

 

「ねぇ、これ。額縁なくなってない?」

「ホントだ……絵の中に入れる?」

「ちょ、イヴちゃん!? 危ないかもしれないのに何やってんの!?」

「じゃあここから外の世界に行けるの?」

 

 ギャリーの言葉にイヴが絵に手を近づけると、イヴの手が絵に触れた途端止まるわけではなく絵の中に吸い込まれていった。それを見ていた穂乃果は慌ててイヴの手を引き抜く。メアリーはその行為と絵を見て呟く。

 

「そうね。この絵はアタシ達のいた美術館みたいだもの」

「それじゃあ、いっせーので飛び込もっか」

 

 ギャリー、イヴ、メアリーの三人は穂乃果の提案に頷き、絵の前に横一列に並ぶと手を繋ぐ。

 

「それじゃあいくよ」

 

 穂乃果は左右を見て全員に確認を取る。そして四人は息を合わせる。

 

『いっせーの!』

 

 四人は一斉に絵の中に飛び込む。その時、メアリーの脳内に再び声が響く。

 

 《本当に外に行くなら最後に一つだけ。オマエがあくまで”希望”にこだわるならそれはそれで構わないけどさ、でも覚悟しておきなよ。これから先、オマエの前には次々と”絶望”が立ちはだかることになるよ。どこへ進もうと……どこへ逃げようともね……》

 

 そして四人の視界は真っ白に染まっていった。

 




次回「ラブラIb!」最終回。


♪♪♪

青い人形
書いていくうちに愛着が湧いてきました。本編でもあの人形可愛くないですか?(心壊)

下降する床
地下へと下りて行くエレベーター……某希望厨……うっ頭が……うぷぷぷぷ

もう一つの美術館
この世界には並行世界というものがあってですね。え? それとこれは関係ない? そうですか。

『生命の滴』
メアリーの救済アイテム。
説明すると、数枚の薔薇の花弁を生贄に本物の薔薇を召還する感じ。

ワカバ
信念は「敵を騙すならまず見方から」
書いていて一番楽しかったキャラ。実はいい奴だった。そして最後まで()った奴だった。


正体は『誘惑』。今作品では声だけの登場。
中身は一人十四役を披露した絶望さん。順に陰気、漫画、女王、メガネ、ぶりっ子、キザ、凶悪、素、泣き虫、ツンデレ、恍惚、おちゃらけ、冷酷、黒幕。
元ネタが分かる人は比較してみてください。

容姿が変わったメアリー
本編での説明通りです。それ以外には言いようがないですし?

『絵空事の世界』
それは始まりであり終わりである。
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