ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】   作:名前はまだ無い♪

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前回の一言ラブラIb!

『美術館に行ったら雪穂達が消えた…?』


そのバラ朽ちる時……

「えっとお名前、教えて貰っても良いかな?」

 

 あれから穂乃果は消えた雪穂と亜里沙を探しながら、隣で不安そうに穂乃果の手を握る少女に話し掛ける。

 

「……イヴ。お姉ちゃんは?」

「私の名前は高坂穂乃果って言うんだ。そっか、イヴちゃんか。よろしくね」

「うん」

 

 穂乃果はしゃがんでイヴに目線を合わせると、ニッコリと笑う。不安そうに俯いていたイヴも穂乃果の笑顔につられて笑みを浮かべる。

 

「確かイヴちゃんってお父さん達と来てたんだよね?」

「…うん」

「大丈夫! 二人とも無事だよ! ……あれ?」

 

 穂乃果が自分にも言い聞かせる様にイヴの頭を撫でていると、視界に映ったモノに違和感を覚える。首を捻るイヴの手を出し引きその違和感の元へと向かう。

 

 立ち止まった穂乃果とイヴの前には展示物に触らせない為のポールが美術館の床に転がっていた。どこのポール抜けてるのかと二人して辺りを見回すと、イヴが穂乃果の袖をクイクイと引っ張る。

 

「どうしたの?」

「……あそこ」

 

 イヴが指差した方を見ると「深海の世」のポールの一部が抜け落ちていた。二人が深海の世に近付くと、ポールがなくなった場所に青い足跡があった。

 

「これって、この絵の中に進んでる…よね」

「…行くの?」

 

 イヴは何かを感じたのか穂乃果の背中に隠れる。穂乃果はそんなイヴの頭を優しく撫でる。昔、自分が若葉にやってもらった様に優しく、安心させる様にゆっくりと撫でる。イヴは気持ち良さそうに目を瞑って穂乃果の手に頭を擦り付ける。

 

「じゃあ行こっか」

「うん!」

 

 イヴは差し出された穂乃果の手を握り二人は揃って深海の世に向かって歩き出す。そして二人同時に深海の世に足を踏み出す。

 

「……?」

「冷たく…ない…?」

 

 絵の中に入ると言う穂乃果本人にもよく分からない現象に不思議に思うも、その考えはすぐになくなった。

 なぜなら深海の世に足を踏み出した途端、本来なら水の冷たさが体中を襲うのだが、そんな具合は感じとれず、寧ろ何か得体の知れないモノを触っている感触が穂乃果とイヴを襲ったのだ。

 

「…気持ち悪い……」

「そうだね。こんな気持ち悪い所、早く抜けちゃおう!」

 

 穂乃果はイヴの手を強く握ると、得体の知れない感触を振り払うかの如く早足で、しかしイヴに無理のないペースで階段を降りていく。

 階段を降り切るとそこは美術館とは打って変わって青一色の廊下だった。穂乃果が左右を見ると、階段の横の壁にお情け程度の赤と青の二つの絵画が展示されていた。

 

「イヴちゃん。どっちに行く?」

「うーんと……こっち」

 

 イヴの指した方、階段を降りて右に続く廊下を進む。暫く進むと魚の様な絵と青い扉を見つける。

 

「…開けるよ?」

「……うん」

 

 穂乃果はイヴに確認を取るとドアノブをギュッと握り、ドアノブを回して思いっ切り手前に引く。

 

 ガチャガチャ

 

 辺りに響いのは鍵が閉まって開かない扉の音だった。

 イヴはドアノブを握ったまま固まっている穂乃果を不安そうに見上げる。そんなイヴに気付けいてない穂乃果の頰を一筋の汗が伝う。

 

「……お姉ちゃん?」

 

 イヴの呼び掛けに穂乃果はニッコリと笑い掛けると、ドアノブから手を離す。

 

「こっちの扉は開かないみたいだから反対側に行ってみよっか」

「うん!」

 

 穂乃果の笑みに安心したのか、イヴも笑顔で頷き返し、二人は来た道を戻り二枚の絵画の所まで戻る。

 

「あれ…?」

「階段が…なくなってる?」

 

 違和感に気付いたのは二人同時だった。先程穂乃果とイヴが降りてきた階段がなくなり、そこにはさも当然かの様に壁があったのだ。

 

「絵と絵の間に階段あったよね?」

「…うん」

 

 穂乃果はペタペタと壁を触るも、返ってくる感触はただの壁だった。

 穂乃果は階段という退路が断たれた事に不安を感じながらも、自分よりも小さいイヴを心配させない為に笑顔で、元気に、勇気付ける様に振り返りイヴに言う。

 

「よし! 気を取り直してあっちの道に行ってみよう!」

 

 穂乃果とイヴは先程行かなかった左の廊下を進む。すると今度は扉の前に机とその上に二輪の薔薇が生けてある花瓶があった。

 茶色と赤い薔薇が生けてあり、その隣の壁には一枚の紙が貼られていた。

 穂乃果は紙に書かれている文章を見ると

 

『バラとあなたは一心同体。命の重さ知るがいい』

 

 とだけ書かれていた。

 その一文に穂乃果は花瓶に生けてある二輪の薔薇を見る。先程までは茶色と赤い薔薇を綺麗だと思っていたが、一文を読んだ後だと何か恐ろしいものに見えてきたのだ。

 

「……お姉ちゃん、痛い」

「っ! ごめんねイヴちゃん。大丈夫?」

 

 イヴに呼ばれ、穂乃果はイヴを握る手に力が入っている事に気付き慌てて力を抜きイヴに謝る。

 それから穂乃果が扉の前に置かれた机を移動させて青い扉を開く。

 

「…きれぇ…」

「……」

 

 部屋の中に入ると綺麗な女性が優しく微笑んでいる絵がポツンと飾られ、その下には先程同様一枚の紙が貼られていた。

 イヴはその絵を見て呟くように言うも、穂乃果はどことなく不気味な感じがしてただジーっと絵を見つめていた。

 

「…お姉ちゃん。鍵あったよ」

「青い…鍵?」

 

 イヴが青い鍵を穂乃果に見せる。穂乃果はイヴから鍵を受け取り顔を上げる。

 

「っ……!?」

 

 先程まで優しい微笑んでいた絵が、今は目を見開き、口も引き裂けんばかりに横に広がっていたのだ。そして下の説明文も絵のタイトルから変わり、文章が現れた。

 穂乃果は恐る恐る絵に近付き、文章を読む。

 

『そのバラ朽ちる時、あなたも朽ち果てる』

 

 穂乃果は自身の手に握られている茶色い薔薇と、イヴが持っている赤い薔薇を見やる。そして文章の意味を考える。

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

「…ううん、なんでもない。大丈夫、大丈夫だからね」

 

 穂乃果は近付いてきたイヴに笑い掛け「よし!」と気合いを入れる。

 

「この鍵でさっき閉まってた扉を開けに行こう!」

「い、行こー」

 

 穂乃果が握り拳を振り上げると、それにつられてイヴも手を上げる。そして二人は手を繋ぎ、青い廊下を歩き出す。

 

 ガチャリ、パキッ

 

「扉、開いたね」

「うん。でも鍵が…」

 

 イヴが取っ手の部分だけになった鍵を見る。穂乃果も自分の手に握られている取っ手を見て少し考えたあと、そっと自分の手ポケットにしまう

 

「…?」

「お兄ちゃんがね、こういうのはいつか何かに使えるかもしれないから、取っておいた方が良いんだよって」

「そうなの?」

 

 イヴが見上げて穂乃果を見ると、穂乃果は笑って頷く。

 

「じゃあ開けるよ?」

「一緒に開ける」

「イヴちゃん……そうだね。一緒に開けよう!」

 

 二人はドアノブに手を重ねる。それからせーの、と声を合わせてドアノブを捻る。

 

 扉を抜けたその先は緑一色だった。

 

「今度は緑」

「緑色は目に良いって言うけど、流石にこれはちょっと…」

「ねえねえ」

 

 扉を潜り緑の廊下に驚いていると、どこかからか声が聞こえた。穂乃果は声の主を探す為にキョロキョロと辺りを見回すもどこにもこれらしき人物は見当たらない。

 

「お姉ちゃん、あそこ。アリさん」

 

 穂乃果の袖を引っ張りイヴが床を指差す。二人はしゃがんで声の主、アリを見る。

 

「えと…どうしたの?」

「ぼくアリ ぼく絵だいすき ぼくの絵かっこいい ぼくの絵見たいけどちょっと遠いとこにある」

「なぜ片言……」

 

 アリはそれだけ言うと壁の隙間に消えて行った。

 

「なんだったんだろう?」

「さあ? でも遠いとこって、このどっちかの先、だよね?」

 

 穂乃果は正面と右に続く廊下を見やる。

 

 正面の通路には一つの柱と張り紙。

 

 右の通路には数点の絵画に緑色の扉。

 

「お姉ちゃん。どっち行くの?」

「う〜ん。じゃあこっちから行ってみよっか」

 

 イウに聞かれ右の道を選ぶ穂乃果。

 廊下を進みながら壁の絵を見ると昆虫が中心に飾られていた。穂乃果が不思議に感じのは卵、幼虫、サナギ、成虫にそれぞれプロローグ、第一章、第二章、最終章と題付けされていた事だった。

 

「あれ? ここでおしまい?」

 

 絵を順番に見て行くと最終章と名付けられた成虫で終わり、隣にあったのは緑色の扉。穂乃果はドアノブに手を掛ける。

 

「今度は開くかな?」

「大丈夫」

「うん。じゃあ開けるよ」

 

 穂乃果が力を込めてドアノブを捻ると、予想に反してアッサリと開く扉。

 

「あり? 案外アッサリ」

 

 穂乃果は拍子抜けた声を出して少し開いた扉を見る。しかしいつまで見てても事態は進まないので、穂乃果はイヴの手を引いて扉を潜り中に入る。中は扉の外と同じ緑の廊下。

 

「何もない…?」

「っ! お姉ちゃん危ないっ!」

 

 穂乃果が廊下を左右に見渡しながら歩いていると、イヴが慌てた様に穂乃果の袖を引っ張る。穂乃果は突然の事にバランスを崩して尻餅を付く。

 

「いったぁい! いきなり引っ張ってどう……」

 

 したの? と続けようとして穂乃果は前を見て黙る。目の前には暗い穴が口を開いてた。あと一歩でも穂乃果が踏み出していたなら、足を踏み外し穴に落ちていたのだ。

 

「あ、ありがとう。イヴちゃん」

 

 穂乃果は震える脚を抑えつけイヴの頭を撫でる。イヴはそれに対して「ううん」と首を振る。

 

「それよりお姉ちゃん怪我ない?」

「うん。イヴちゃんのお陰で大丈夫だよ! でもこの先には行けそうにないね…」

 

 穂乃果はむん、と腕を曲げ元気である事を示すと穴の向こうに続いている廊下を悔しそうに見る。

 

「もう一つの道は…?」

 

 イヴの言葉に穂乃果は先程の選ばなかった方の道を思い出す。

 

「今はあっちに行くしかないみたいだね」

 

 二人は先程の分かれ道まで戻り正面の廊下を見つめる。

 

「何か書いてあるよ」

「え〜と、『はし に ちゅうい』? はしってどこの事だろ」

「さあ?」

 

 張り紙の注意書きに二人して首を傾げる。しかし穂乃果はすぐに考えるのを辞め、柱を回り込む様にして奥の通路に進み出る。

 

「とにかく先に進まなくちゃ何も始まらないもんね!」

「あ、待ってお姉ちゃん」

 

 穂乃果の後を走って追い掛けるイヴ。穂乃果は何気なく自身を追ってくるイヴを振り返る。その時、穂乃果は気付いた。

 

 走ってくるイヴのすぐ横の壁、その一部にヒビが入った事に。

 

「イヴちゃん危ないっ!!」

「え……?」

 

 穂乃果はイヴに向かって駆け出す。幸い距離はそんなに離れていなかったのですぐにイヴの元へ着くはずだった。

 

 

 

 

 

 ヒビが穴になり、そこから黒い腕が伸びてくるまでは……

 

「くっ、間に合…えー!!!」

 

 穂乃果は叫びながらイヴに飛び付く事ができ、なんとか腕からイヴを守る事ができた。

 

 その際、腕がバラの花弁を一枚毟り取ったのを知らずに…




いや〜思いの外執筆に時間が取れなくて遅れてしまいました。申し訳ない。

そんな事より第二話どうでした?楽しんで頂けたなら幸いです。

♪♪♪
イヴ
公式設定では無口な9才の女の子。今話では「お姉ちゃん」「うん」を多く言ってた気がする。多分気のせいじゃない

消えた階段、現れた壁
スピリチュアルやね♪


それでは次の更新までごゆるりと当美術館をご堪能下さい。感想、誤字脱字、アドバイス等もお待ちしております。
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