ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】   作:名前はまだ無い♪

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お久し振りです。

前回は青い部屋(通路?)を通過した所で終わりましたよ。

ではどうぞ


けいひん あげる

 イヴを身を挺して庇った穂乃果はイブに体を揺すられ目を覚ました。

 

「……イ、ヴちゃん?」

「お姉ちゃん大丈夫!」

 

 穂乃果は目に涙を浮かべて心配そうに顔を覗き込んでいるイヴをそっと撫で、自分の今の状態を確かめる。穂乃果は壁に寄りかかるように座っており、外傷は見当たらなかった。

 

「私、どうしてたの?」

「お姉ちゃんが私を庇って……あの手に」

 

 壁から突き出てる腕を指差す。穂乃果が立ち上がり見ると、その腕の下に一枚の消えていく花弁が落ちているのに気付き、自分のバラを見る。七枚あった茶色の花弁は六枚にに減っていた。

 その時穂乃果は壁紙に書かれていた文章を思い出す

 

『バラとあなたは一心同体。命の重さ知るがいい』

『そのバラ朽ちる時、あなたも朽ち果てる』

 

 二つの文章の意味を理解した穂乃果は恐怖を感じると共に、思わず自分の体を抱きしめ、その場にしゃがんでしまった。

 

「お姉ちゃん大丈夫……?」

「……」

 

 イヴの問い掛けにも穂乃果は塞ぎ込んでばかりで答えない。

 

「……お姉ちゃん……」

 

 そんな穂乃果を心配そうに見ると、くるりと黒い腕が突き出てる通路を振り返る。

 

「待ってて。私、お姉ちゃんの分まで頑張るから」

 

 それだけ言うとイヴは通路の真ん中を駆け出す。その途中で二、三度左右の壁から腕が出てくるもイヴには届かない。

 そして突き当たりに差し掛かり正面の壁にヒビが入るのを見たイヴは、慌ててスピードを落として出て来た腕を避ける。

 

 突き当たりを曲がり息を整えるイヴ。それからゆっくりと辺りを見回すとアリの絵と緑の扉が目に入る。イヴはゆっくりと扉に近付くと慎重にドアノブを捻る。

 

 ガチャガチャ

 

「開いて……ない?」

 

 どうやら鍵が掛かってる様で開く様子がない。青い扉同様どこかに緑の鍵が落ちてないかと考えたイヴは、怪しいと思われるアリの絵を壁から外した。

 

「……軽い?」

 

 絵を外したイヴはそのあまりの軽さに驚くも、探していた緑の鍵がないことに少し落ち込む。

 しかしふと、先程の穂乃果が落ちそうになった穴を思い出す。

 

「この絵、使えるかな……?」

 

 イヴは絵を見て呟くと、来た道を戻る。幸い隠れていた腕は先程全て出尽くしたらしく新たに出て来る事は無かった。それから伏せている穂乃果の脇を通り、最初に入った緑の扉を潜ると穴の淵に絵を置く。

 絵は穴よりも少し大きかったようで反対側の通路までの道が出来上がる。

 

 イヴは絵が破れないか不安になりながら一歩踏み出す。慎重に一歩、また一歩。足元の絵になるべく負荷を与えないようにゆっくりと歩く。そしてやっとの思いで渡り切った時、絵の安否を確認する為に振り返る。するとまるで踏み潰されたようにひしゃげた足と赤い液体がそこに描かれていた。

 イヴは内心謝りながら、これから進む道を見据える。そこは通路の先に扉があるだけの変哲のない通路だった。

 

「お姉ちゃん待っててね」

 

 イヴは未だに塞ぎ込んでいた穂乃果を思い出し、意を決して扉を開ける。

 扉の先にはエピローグと題付けされた絵。美術館で見た首のない石像。そしてその前には探していた緑の鍵が落ちていた。

 

「あった!」

 

 イヴは緑の鍵の元に駆け寄りそれを拾う。

 

 カシャン

 

「……?」

 

 静かだった廊下に突然響く無機質な音。顔を上げると先程まで離れていた石像がカシャカシャと音を立てて近づいて来ていた。イヴはその石像に危機感を感じ、慌てて来た道を走って戻る。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……!」

 

 先程通った扉を潜り絵を渡ると乱暴に渡ったのが原因なのか、イヴが渡り切った途端に絵が音を立てて破ける。

 

「これで……大、丈夫?」

 

 壁際まで後退り、歩いてくる石像を不安そうに見つめる。石像は前が見えてないのか穴を気にする素振りを見せずに足を踏み出し、穴に落ちていく。少しして下の方から石像の割れる音が聞こえた。

 

 それからイヴは穂乃果の元へ戻り、肩を掴んで揺らす。

 

「お姉ちゃん。鍵、取って来たよ……お姉ちゃん!」

「…………ゃん……?」

「お姉ちゃん見て、鍵だよ鍵!」

 

 イヴは緑の鍵を穂乃果に見せる。穂乃果は肩に手を置くイヴをぼうっと見つめる。

 

「お姉ちゃん! しっかりして!」

 

 イヴが薄っすらと目に涙を浮かべて穂乃果に抱きつくと、穂乃果も目に涙を浮かべてイヴにを抱きつき返す。イヴは正気に戻った穂乃果の反応に嬉しそうに笑った。

 

「ゴメンね、心配掛けちゃった。でももう大丈夫」

「うん!」

 

 それからイヴは鍵を穂乃果に渡し、黒い腕がウネウネと蠢いている通路を通り扉を開ける。

 

 ガチャリ、パキッ

 

 青い鍵同様、緑の鍵も扉を解錠すると取っ手の部分だけ残し折れてしまった。

 

「また壊れちゃったね」

「うん」

 

 二人は壊れた鍵を見て頷く。そして錠の開いた扉を開け中に入る。

 中に入って最初に目に付いたのは

 

「猫さん……?」

「それに魚の形をした窪み……?」

 

 壁に描かれた猫の顔の絵と、口の部分にある魚の形をした窪み。更に左右に続く分かれ道。その先には見慣れた扉。

 

「イヴちゃん。どっち行く?」

「うーんと、こっち」

 

 穂乃果に聞かれたイブは少し悩んだあと左の道を指す。穂乃果は頷くとイヴの手を引いて左の道を進み、扉を開けて中に入る。

 中に入ると一番近くの柱に青い文字と人の形をしたシミの様なものが目に入った。二人は柱に近付き文字を読む。

 

「かくれんぼしよ? どういう事かな」

「……あ!」

 

 穂乃果が呟くように読み上げ部屋を見回すも何を探せばいいのかが分からない。するとイヴが裾を引っ張り柱を指す。穂乃果が柱を見ると人形のシミが小さくなっていき、消えてしまった。

 

「隠れちゃった……」

 

 消えたシミを見てポツリとイヴが呟く。その呟きを聞いた穂乃果はハッとなって改めて部屋を見回す。目に入るのはカーテンが設置されている五つの柱と一つの絵。

 

「イヴちゃん、私達が鬼みたいだから、さっきの人を探そう」

「うん」

 

 それから二人は分かれて人形を探し始める。

 

「う~んいないなぁ」

 

 穂乃果は取り敢えず、と近くのカーテンを捲ると月の絵が飾られていた。穂乃果が絵の意味を考えていると、答えが出る前に部屋が薄暗くなった。遠くの方からイヴの驚いた声が聞こえた穂乃果は謝る。

 

「イヴちゃんごめんね」

「う、うん大丈夫だよ。それより見つかった?」

「ううん。イヴちゃんはどう?」

「こっちも見つからないよ~」

 

 イブの返事に穂乃果は顎に手を当て真剣に考える。

 一方イヴは柱から離れ、部屋の前に来ていた。そこには一枚の絵画が飾られていた。題名は『板前の腕』と書かれていた。

 

「頭……?」

 

 頭という部分に疑問を持つも、その後ぐるっと部屋を見回るも頭に続く絵は見つからなかった。イヴは続きを探すのを諦め、人形を探す作業に戻る。

 

「どこにいるのかな?」

 

 イヴは戸惑いながらも近くのカーテンを捲る。そこにはイヴによく似た服装の少女が吊るされていた。イヴは驚き柱から飛び退く。

 

「イヴちゃん!? どうしたの?」

 

 知らない内に悲鳴を上げていたのか穂乃果が慌てた様子で駆け寄る。

 

「う、ううん。大丈夫。それより早くあの人を見つけないと」

「そう? 私が言うのもあれだけど無理しちゃダメだよ」

「うん」

 

 イヴは頷くと穂乃果の腕に飛び付く様にしがみつく。突然のイヴの行動に首を傾げる穂乃果だが、特に離したりする事もなく一緒に人形を探し始める。

 そして穂乃果とイヴは、文章が書かれた柱に一番近い柱のカーテンを開ける。

 

「あ、見つけた!」

「うん!」

 

 カーテンを開けるとそこには探していた人形がいた。人形は見つかるや否や人形は形を変えて文字になる。

 

『みつかった けいひん あげる』

 

 次の瞬間、ゴトッという音とともに部屋の前に飾られた絵から魚の頭が落ちてくる。

 

「お姉ちゃん、落ちてきたよ」

「うん。でも絵から出てくるって今更だけど不思議だね」

「うん」

 

 穂乃果は頭を拾ってポケットに入れると、辺りを見回す。イヴはそんな穂乃果の行動に先程の自分と重ね合わし、この部屋にはもう半分のパーツが落ちてない事を話す。

 

「じゃああるとしたら反対側の部屋かな」

「たぶん。行ってみよ?」

「だね」

 

 そして部屋から出て行き、反対の右側の通路を進み中に入る。

 

「ここ、物置みたい」

 

 部屋に入って最初に思った事が穂乃果の口から零れる。

 部屋の中は石像や、段ボール、その他雑貨が乱雑に置かれていた。床に放置された看板には『資材置き場』と書かれていた。

 

「さっきの部屋より狭いから、手分けしてもすぐに見つかりそうだね」

「うん! そうしたら先に進めるよね?」

「うん。そうしたらここから出られるよ」

 

 それから二人は先程の部屋同様別れて探すも狭い室内。すぐに鉢合わせしてしまう。

 

「見つかった?」

「ううん。どこにもなかった」

 

 穂乃果の問い掛けにイヴは首を振って答える。

 

 ズズッ

 

「……? 何の音?」

「さぁ?」

 

 薄暗い部屋の中、突如何か重い物を引き摺る音が響き渡る。二人はお互いに顔を見合わせた後にキョロキョロと辺りを見回すも、音の原因は分からない。

 

「何の音だったのかな?」

「う~ん、何も見当たらない……ね」

 

 イヴの言葉に穂乃果が顔を上げると、薄暗い視界に何やら動くモノが映る。目を凝らすとその動いているモノがハッキリと映った。

 それはこの資材置き場に置かれていた顔だけの石像だった。大きさはイヴより少し大きい。それが徐々にイヴに近付いて来ていた。穂乃果は何か嫌な予感がする。そして

 

「イヴちゃん危ないっ!」

「えっ?」

 

 イヴに向かって倒れてくる石像から守る為に穂乃果は慌てて手を引く。いきなり手を引かれたイヴは突然の事で事態が分からずに、引かれた勢いそのままに穂乃果にぶつかってしまう。ぶつかられた穂乃果は倒れる事なくイヴを抱き留め、壁まで後ずさる。

 

 ガシャン!

 

 先程まで二人がいた場所に石像が倒れ、割れる。

 

「あ、危なかったね……」

「う、うん。ありがとう」

「どういたしまして」

 

 震えながらも笑顔でお礼を言うイヴに穂乃果も笑顔で返す。それから二人は石像が割れた場所まで近寄ると、木造の魚の片割れが落ちている事に気付き拾う。

 

「これで魚が出来上がったね」

「これをさっきの場所に……?」

「たぶん」

 

 魚の形になった物を手に猫の顔の前に戻る二人は、せーの、と一緒に窪みに魚を押し込む。

 

 にゃあにゃあにゃあにゃあ

 

 魚を押し込むと同時に部屋中に猫の鳴き声がこだまする。それと同時に真の前の壁が消え、道が出来上がる。

 

「イヴちゃん。行くよ」

「うん」

 

 穂乃果はイヴの、イヴは穂乃果の手をギュッと握り出来た道を歩き出す。

 




遅れてすいませんでした。いや、本当に。
でも偶に見に来て下さってる読者さんがいるから書く気力になります。たとえ一人でも。

ありがとうございます。

♪♪♪
蟻の絵で通れた穴
別名:穂乃果が落ちかけた穴。ゲームだとそんなに大きくはない。

塞ぎ込む穂乃果
あの文章を読めたからこそ、命の危機に怯える女子高生のイメージを体現させてみました。

黒い腕
うにょうにょうにょうにょ

蟻(の絵)
ドラマCDではイケボだった蟻。
破けたあの絵は誰が直すのか……直るのかな?

かくれんぼ
漢字で書くと「隠れん坊」
今回は一方的に鬼にされた穂乃果とイブ。

たくさんの猫の鳴き声
にゃあ


それでは次の更新までごゆるりと当美術館をご堪能下さい。
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