ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】   作:名前はまだ無い♪

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あけおめー!(今更感

今年もよろしくお願いします。



○い服の女

 階段を降りた二人は赤い一本道を通り、その先にある赤い扉を潜る。扉の先の部屋には赤い銅像の「あ」、青い銅像の「うん」、一定の間隔で動く「心の音」などが飾られていた。

 

「赤い服の女?」

「綺麗な人……」

 

 そんな大小様々な作品の中、二人の目に留まったのは一枚の絵画だった。その絵画には赤いワンピースを着た女性の上半身だけが描かれていた。二人はその絵画に暫く見惚れていた。そんな時、突然ガラスが割れる様な音とともに女性の絵画が壁から落ち、女性が絵から飛び出して二人に迫ってくる。

 

「イヴちゃん逃げるよ!」

 

 穂乃果はその突然の出来事に考えるよりも早く、イヴの手を握り絵画から離れる為に走り出す。穂乃果は絵画から逃げる為に、右に左にと作品を盾に逃げ回る。運の良い事に今穂乃果達が逃げている部屋は障害物が多く、女性の絵画も上手く追えず、穂乃果達を見失った。

 

「お、お姉ちゃん……もう、ダメ……」

 

 イヴが息も絶え絶えな状態な事に気付き、穂乃果は慌てて止まる。

 

「わぷっ!」

「ご、ごめんねイヴちゃん!」

 

 穂乃果が急停止した為、手を引かれていたイヴは当然の如く穂乃果の背中に鼻をぶつけて止まる。鼻を抑えるイヴを見て穂乃果は慌ててイヴに謝り、お詫びの代わりに頭を撫でる。

 

「って、こんなのんびりしてる場合じゃなかった!」

「そ、そうだよね。撫でられてる場合じゃないよ」

 

 穂乃果の叫びにイヴも今置かれている状況を思い出したのか、先程の絵画から逃げる方法を考える。そして一つの事を思い出した。

 

「お姉ちゃん。さっき赤い扉があったよ」

 

 それは穂乃果に手を引かれ逃げている時だった。迫りくる絵画に何か対抗手段はないかと辺りを見回した時、作品の間からチラリと入って来たのとは別の赤い扉がミ\目に入ったのだ。

 イヴはその事を穂乃果に話すと、穂乃果は嬉しそうに笑った後にイヴからその扉の場所を聞く。

 

「分かった。いいイヴちゃん。今から言う通りにしてね」

「お姉ちゃん?」

 

 イヴは穂乃果の真剣な顔で話す内容に何か不安を感じたのか、穂乃果の服の袖を引っ張る。

 

「大丈夫大丈夫。これでも私は体力には自信があるんだから!」

「ほんと……?」

「うん!」

 

 穂乃果はイヴを安心させる為に笑顔で頷き、立ち上がる。そしてズルズルと絵画が近付いて来ている音の方へと駆け出す。

 

「さ、私はここだよ!」

 

 穂乃果は声を出しながら絵画の前を駆け抜ける。絵画は目の前を通った穂乃果を追い掛ける。イヴは物陰から絵画が遠ざかったのを確認すると、先程見付けた赤い扉に向かって走り出す。

 穂乃果が先程伝えた事は至極簡単な事。穂乃果が囮となって絵画を引き付けてる間にイヴが扉を開け、穂乃果が入ると同時に扉を閉める、といった事だ。

 イヴが扉に辿り着き、ドアノブに手をかけて回す。しかし返って来たのはこの世界に来て何回か経験している感覚。

 

「そんな……鍵が掛かってる……!?」

 

 イヴはこの土壇場での出来事にノブから手を離し、一歩二歩と扉から後退さってしまう。この部屋を散策した時、鍵のようなモノが無かった為扉は開いてると思っていたイヴ。もちろん穂乃果もそう思っていた。しかし現実は鍵は見当たらなく、扉も開かない。

 

「どうしよ……このままじゃお姉ちゃんが……」

 

 開かない扉の前でどうするか悩むイヴ。

 一方絵画から逃げている穂乃果はと言うと

 

「ハァッ……ハァッ……ダメだ。引き離せない」

 

 絵画から逃げ回る事数分。穂乃果はいつ追い付かれるか分からない、そして追い付かれたら最後、自分の薔薇がどうなるのか、緑の部屋で襲われた激痛を思い出す。そんな精神的な追い込みもあって、穂乃果は自分で思ってる以上に体力の消費が激しかった。

 

「このままじゃ……追い、付かれる……!」

 

 穂乃果は歯を食い縛りながら絵画から逃げる。その時、ふと視界の端にとあるモノが映る。実は穂乃果。逃げ回ってる間に赤い服の女が飾られていた場所に戻ってきていたのだ。そして穂乃果の目に映ったのは部屋と同じ赤い鍵。

 穂乃果が鍵を見つけたのと同時に、後ろの絵画が穂乃果に飛び掛かる。穂乃果はそれを床を転がる様にして躱し、転がった事で近付いた鍵を手に、イヴに教えて貰った扉の下へ走り出す。

 

「もしかしたら……この鍵は……」

 

 穂乃果は今までの事から、鍵がここにあると言う事は扉が閉まってるのでは? と考えたのだ。その考えは正しく、穂乃果が走ってる間にもイヴは扉の前で何か解決策はないかと考えていた。

 

「イヴちゃん!」

「お、お姉ちゃん! 大変なの! 扉に鍵が」

「うん。これで開くかもしれないから試してみて!」

 

 穂乃果は持っていた鍵をイヴの方へ放ると、イヴの元へ絵画が行かないようにほぼ来た道を戻る様に駆け戻る。

 イヴは穂乃果の放った鍵を拾うと鍵穴に差し込み、回す。

 

 ガチャリ

 

「開い……た……」

 

 イヴは鍵が開いた事に安堵しつつ、急いで扉を開け中に入る。そして開いたままの扉から穂乃果を呼ぶ。

 

「お姉ちゃーん!」

 

 イヴの声が聞こえた穂乃果は、再び飛び掛かってきた絵画を何とか躱して再び扉に向かって駆け出す。そして開いている扉からイヴのいる部屋に滑り込むと、それを確認したイヴが扉を閉める。

 

「ハァ……ハァ……」

「お姉ちゃん大丈夫?」

「もちろん……上手く行ったね。イェイ」

「イ、 イェイ!」

 

 穂乃果は息を整えながらも笑顔でイヴにピースすると、イヴも笑ってピースを返す。

 それから少し、穂乃果は息が整ったタイミングを見計らって立ち上がり、辺りの状況を確認する。

 道はT字路の様に左右に分かれている。そして合わさってる部分には一つの花瓶と、その花瓶の絵がすぐそばの壁に飾られていた。花瓶の中には水が満ちていた。

 

「これ、なんだろう?」

「う~ん。でも花瓶って事は花を入れるんだよね」

 

 穂乃果は少し考える素振りを見せると、自分の薔薇を花瓶に挿す。

 

「あれ……花弁が……」

「戻ってく……?」

 

 穂乃果が花瓶に挿した途端、黒い腕によって毟られた花弁がもとに戻っていってるのだ。

 

「これ一体どうなってるんだろう」

 

 穂乃果は元に戻った橙の薔薇を不思議そうに眺める。そんな時、突然呻き声が聞こえてきた。二人はバッと呻き声の聞こえる右に伸びる通路を見る。

 その先は薄暗く、二人の今いる場所からだとあまりよく見えない。二人は顔を見合わせると手を繋ぎ、呻き声の正体を突き止めに右へと通路を歩きだす。

 暫く歩くと青いモジャモジャの髪をした人が床に俯せになっていた。

 

「男の……人?」

「多分……あ、あの大丈夫ですか?」

 

 イヴは穂乃果の陰に隠れながら俯せになってる人物を見ながら、性別が男かを確認する。穂乃果も男性かどうか不安を覚えつつも、呻き声を上げてる人物に声をかける。

 

「うぅ……げほっ。くる……し……」

 

 穂乃果は咳き込む男性を起こすと、壁に寄りかからせた。するとイヴに袖をクイッと引っ張られた。

 

「どうしたの?」

「この人鍵持ってる」

 

 イヴが男性の手に握られた小さな鍵を指していう。穂乃果はやや力づくで手を開き、握られている鍵を取り出す。

 穂乃果は鍵を取り出すと通路の先を見る。そこには赤い扉とその前に首のない像が鎮座していた。

 

「……イヴちゃん。ちょっとここで待ってて」

「う、うん」

 

 穂乃果はイヴを男性のそばに待たせると慎重に、いつでも逃げる事の出来る様にゆっくりと像に近付いていく。しかし像は穂乃果が目の前に立っても動く気配は無かった。

 試しに穂乃果が像を動かそうと手をかけるも、像はピクリとも動かなかった。いくらスクールアイドルで鍛えてるからと言っても、所詮は女子高生。筋力は高が知れてる。

 

「う~ん。この扉の鍵じゃないのかな……」

 

 穂乃果は一人でそう言うと来た道を戻り、イヴの元へと戻る。そしてイヴに手を振るとそのままT字路の左の通路に進む。

 左の通路の先は小さな部屋と少しの空間で埋め尽くされていた。そして穂乃果は壁に貼られた紙に目が行く。その内容は青い鍵を拾った部屋で穂乃果達が目にしたモノと同じだった。

 

『バラとあなたは一心同体。命の重さ知るがいい』

『そのバラ朽ちる時、あなたも朽ち果てる』

 

 さらには床に落ちている青い薔薇の花弁。穂乃果は気になりその花弁を辿って行くと、行き止まりに辿り着く。目の前には『青い服の女』と書かれた作品名の書かれたプレートだけが掛かっていた。

 

「まさか……!

 

 あの注意書きの様なメモ

 倒れ呻いてる男性

 床に散らばる青い花弁

 最後に『青い服の女』と書かれたプレートだけがある

 

 その状況を見て穂乃果は一つの考えたくない最悪の可能性に行き着いた。それは「あの男性の薔薇が絵画に奪われ、何かしらの害にあってる」と言う事だ。それなら男性が苦しんでいる事に納得がいく。なんせ言葉を借りるなら「薔薇朽ちる時、持ち主も朽ち果てる」のだから。

 

「これはマズイ。急がないとあの人が……!」

 

 穂乃果は急いで花弁が続いてる小部屋に駆け寄るも、扉に鍵が掛かっており開かない。そこで穂乃果は男性が持っていた小さな鍵を使い開錠する。そして部屋に入って見たのは、先程必死になって逃げきった赤い服の絵画の青い服バージョンだった。その絵画の手には既に花弁を毟られ、青い子房だけになった薔薇が握られていた。

 

「……ぁ!」

 

 絵画が青い子房に手を伸ばした時、穂乃果は思わず小さく叫んでしまった。その声が聞こえたのか、絵画は手を止めると振り返り、穂乃果を見付けるや否や薔薇を放り投げて穂乃果に襲い掛かる。穂乃果は慌てはしたものの、扉を開けて絵画が出て来ない様に押さえつける。すると最初は扉を叩いていた音が段々としなくなり、完全に止んだと思ったら今度は何かを引き摺る音がした。次の瞬間

 

 パリーン!

 

 穂乃果のすぐ横の曇りガラスが粉々に割れた。その割れた場所から部屋に閉じ込めた筈の絵画が飛び出してきた。

 

「嘘……そんな事も出来るの……」

 

 穂乃果は絵画の行動に驚きつつも、今なら小部屋の中の青い薔薇を回収できるかもと思い、再び部屋の中に入る。穂乃果の思惑通り、部屋の中には先程放り投げられた薔薇が床に転がっていた。穂乃果はそれを拾うと大事そうに抱え、絵画のいる部屋へと扉を潜る。

 絵画は小部屋から出て来た穂乃果を見つけると最初同様襲い掛かる。しかし穂乃果も襲われるのは三度目。もう慌てる事なく心に余裕を持ってそれを躱し、T字路まで駆け抜ける。

 そこまで来た時に穂乃果はふと、花瓶の事を思い出す。後ろの絵画に注意しつつも青い薔薇を花瓶に挿すと、見る見るうちに花を咲かせる。穂乃果は薔薇が満開になるのを見届けると花瓶から抜き、男性とイヴの元へと急ぐ。

 穂乃果が二人の元へ息を切らして戻ると、イヴは不思議そうに穂乃果を見つめる。イヴからしてみると、確かに男性は呻いていたがそんな息を切らせる程急を要している訳ではないのだ。

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

「ハァハァ……そんな事より、早く逃げないと……あの青い服の絵が」

「青い服の絵……?」

 

 イヴは不思議そうに穂乃果の後ろを見るもそこには穂乃果の言う「青い服の絵」はなく、ただの通路が続いていた。

イヴの様子に穂乃果も振り返るが、やはりそこには何もいなかった。不思議に思うと同時に驚きの声が穂乃果から上がる。

 

「う、ぅうん」

「お姉ちゃん! この人」

 

 穂乃果の声が大きかったのか、壁に寄りかかっている男性が目覚ました。




なんか月一更新になりつつありますね。

♪♪♪
『赤い服の女』『青い服の女』
腕力凄そう。

『ガレット・デ・ロワの動く絵本』
知らない子ですね。

『男の人』
やっと出て来たあの人です。名前? 次回ですね。


それでは次の更新までごゆるりと当美術館をご堪能下さい。
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