ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】 作:名前はまだ無い♪
男性が目を覚ましてから少し。最初は穂乃果とイヴに驚き慌てふためいていたが、暫くすると冷静さを取り戻した男性は自己紹介をした。
「アタシはギャリーっていうの。あなた達は?」
「私は高坂穂乃果。それでこっちが」
「イヴ、です」
「そう、よろしくね。穂乃果、イヴ」
ギャリーは二人に微笑み壁から背を離し、立ち上がる。それから三人は情報交換をするも、分かった事はギャリーも美術館にいた事と気付いたらこの世界に来ていた事、そして穂乃果同様薔薇の花弁を毟られると痛みが襲って来る事だけだった。
「そっか……じゃああなた達もどうしてこうなったのか分からない訳ね」
「うん」
「ねぇギャリーさん。もし良かったら穂乃果達と一緒に出口を探さない?」
「勿論よ。こんな世界に可愛い女の子二人で行かせる訳にはいかないものね」
穂乃果の提案にギャリーは頷いて了承すると、さ、行きましょ! と歩き出す。しかしギャリーが数歩歩いた途端、壁に掛けられてる絵から唾のようなものが飛び出してきた。
「キャッ!」
突然の事にギャリーは驚き、尻餅をついてしまう。それから穂乃果とイヴに見られてる事に気付いたのか、素早く立ち上がると咳払いを一つ
「ま、まぁ今のは驚いただけだし。と、とにかく、こういう変なのがいるから気を付けて進むわよ!」
イヴと穂乃果は顔を見合わせてクスリと笑うと、ギャリーについて行き、通路の先にあった石像を退かすとその先へと歩を進める。扉を潜った先は灰色の部屋だった。床や壁、天井までもが灰色だった。そして三人の目を一番惹いたものは床から生えている一対の手だった。
穂乃果は過去二回に渡って黒い腕に襲われた事がある為、慎重になりながらその手を調べる。
『悲しき花嫁の右手』
『悲しき花嫁の左手』
手の前のプレートにはそう書かれており、さらに右手の正面の壁には『嘆きの花婿』、左手の正面の壁には『嘆きの花嫁』と題された新郎新婦の絵が飾られていた。
「この人達悲しそう」
「そうね。でも何で悲しいのかしら?」
ギャリーの言葉は最もで、イヴと穂乃果の二人も首を傾げる。少し考えるも結局答えが出る事は無く、三人は両手の間にある通路を進む事にした。
「それにしてもさっきの手はなんだったのかしら?」
「う~ん。『悲しき~』とか『嘆きの~』ってあったから多分何か悲しい事……失くし物とか?」
「……あ」
通路を進みながら先程の手と新郎新婦について考えていると、ふとイヴが声を上げる。そして前触れもなく来た道を駆け戻る。穂乃果とギャリーはイヴの突然の行動に驚き、慌てて追いかける。
「ちょっとイヴ!?」
「どうしたの!?」
イヴは二人の言葉に答える代わりに『悲しき花嫁の左手』の前に立つと、薬指に近付きジッと見る。
「イヴ、いきなり走り出したら危ないじゃない」
「そ、そうだよ。いつどこで何があるか分からないんだから」
イヴに追い付いた二人は軽く乱れた息を整えるとイヴに近付く。
「お姉ちゃん、ギャリー。私分かったよ。何で悲しそうなのか」
「本当!?」
「凄いよイヴちゃん!」
イヴの言葉に嬉しそうに顔を綻ばせる穂乃果とギャリー。それからイヴは薬指の何もない場所を擦りながら悲しそうに言う。
「さっき見た時は気付かなかったけど、この左手の薬指には指輪がないの」
「指輪って結婚指輪の事?」
ギャリーが聞き返すとイヴは黙って頷く。そして左手から離れると『嘆きの花嫁』の元へ行くと笑顔で安心させる様に絵に触れながら話しかける。
「大事な指輪は私達が見付けるから、安心して待っててね」
イヴの声が聞こえたのか、花嫁は少し安心した様に微かに笑うと頷く。
「それじゃあ指輪を探しに行こ」
「そうね。絶対に見付けて来るわ。だから花婿の人も嘆いてないでお嫁さんを励ましてあげなさいね」
「よーし、それじゃあ二人の大事な指輪を探しに、しゅっぱーつ!」
穂乃果が拳を振り上げ言うと、イヴとギャリーも同じ様に振り上げ元気よく先に進む。
そして通路を抜け広めの部屋に入った途端
ガコッ
「あっ……」
「え?……」
穂乃果が床に仕掛けられていた何かのスイッチを踏む。穂乃果は驚きのあまりスイッチを踏んだ体勢で固まり、ギャリーは涙目になりつつある穂乃果を何とか宥めつつ辺りを警戒している。一人イヴは状況に着いて来れず頭にクエスチョンマークを浮かべていた。
「と、特に何も起きないみたいね」
「う、うん」
穂乃果が踏んでから数十秒。何も起こる気配がなくホッと息を吐くギャリーと穂乃果。
「あはは。ゴメンね~」
「「ゴメンね~」じゃないわよ、まったく! 寿命が縮むかと思ったじゃない!」
穂乃果が頭を掻きながら謝ると、ギャリーが疲れた様に叫ぶ。イヴはギャリーを宥めると一人先へと歩を進める。そんなイヴを見て穂乃果とギャリーは顔を見合わせると、速足で後を追う。
「! イヴ!」
「え、きゃ!」
「何があったの!?」
歩いてる最中、突然ギャリーがイヴを持ち上げ、抱き寄せる。穂乃果はどうしたのかと
二人の傍に駆け寄る。すると穂乃果もギャリーに制止する様に言われる。
「穂乃果! あなたもそこで止まりなさい!」
空いている手で穂乃果を止めると、前に続く通路の床を睨む。
「まったく、レディのスカートの中を覗こうなんて、失礼な通路ね」
ギャリーの視線を追って二人が通路の床を見ると、十数個の目玉がパチクリと瞬きをしていた。しかし穂乃果はその中に一つ、違う目玉を指さす。
「ねえあの目、充血してない?」
「あらほんとね。でも目薬とかそういったの私持ってないわよ? イヴと穂乃果は?」
「持ってない」
「私も」
ギャリーの問い掛けにイヴと穂乃果は首を横に振る。充血した目を放っておくか、対処法を考えるかで話し合う事になった。結果、イヴのお願いで充血した目をどうにかする事に話は落ち着いた。
「どうにかって言っても、都合よく目薬とか落ちてる訳」
「落ちてたよ」
「……ハァ」
イヴが壁の溝に隠す様に置かれていた目薬を手に持つと、ギャリーに見せる。ギャリーは目薬が見つかるのがあまりにも早かった為、思わず頭を押さえ溜め息を吐いてしまう。
「じゃあ早速これを点しに行こっ!」
穂乃果がイヴから目薬を受け取ると、充血している目玉にそっと目薬を垂らす。
「あ、治ったみたい」
「本当ね。あら、どこに行くのかしら?」
目薬を点された目玉は瞑ると少し移動し、ジッと壁の一部を見つめる。
「あそこに何かあるのかしら」
「さぁ? でも行ってみるのもいいんじゃないかな?」
穂乃果の言う事も最もで、今三人はそのまま通路を進むか、目玉の見つめる先に行くかの二つの選択肢がある。
「ギャリー。私も行きたい」
イヴがギャリーのコートの裾を引っ張り言うと、ギャリーは自分の頭をガシガシと掻くとまた溜め息を吐く。
「仕方ないわね。その代り、行って何か危なくなったらすぐに戻るわよ」
「うん!」
「はーい!」
ギャリーの言葉に穂乃果とイヴは元気に返事をし、ルンルンと目玉の見つめる壁へと進む。
「ふぅ。あの二人、大人っぽいんだか、子供なのか。ま、考えても仕方のない事ね」
ギャリーは一人そう言うと肩を竦めて二人の後を追う。
「あ、ギャリー! ここの壁なんかおかしいの」
「なんかって、ちょっとそこ代わって」
イヴの言葉にギャリーは場所を代わり、壁を調べる。
「あら? この壁は偽物ね。壊すのは、硬さからして無理そうね。どうしたら良いのかしら」
ギャリーが壁を叩くと、コンコン、と音がする壁を前に悩む。
「どこかにスイッチとかあるんじゃないかな?」
「スイッチねぇ」
穂乃果とギャリーはスイッチを探して壁の周りを調べ始める。イヴは二人の少し後ろでその光景を見ていた。
「? どうしたの?」
イヴはふと自分の足元にいる目玉が自分をジッと見つめている事に気付き、しゃがんで話しかける。
目玉はイヴが話しかけるとパチパチ、と二回瞬きすると穂乃果とギャリーとは反対の壁に向かう。イヴは首を傾げながらも後について行き、壁を見る。そこにはスイッチがポツンと設けられていた。
イヴはそのスイッチを見た後、一度二人を見る。二人は未だにスイッチを探していた。
「もしかして……」
イヴはそのスイッチを少し躊躇いがちに押す。すると後ろからガコン、という音とともに二人の驚く声が聞こえる。振り向くと壁にあったと思われる扉が開いていた。
「開いた……?」
「これ、イヴちゃんが開けたの?」
「多分」
穂乃果の問い掛けにイヴは自信なさ気に頷く。それを見た穂乃果はイヴの頭を撫でると、手を引いてギャリーの元へ戻ると、三人揃って扉を潜る。
「あれ何かしら?」
通路に先はなく、すぐに行き止まりにぶつかってしまう程の距離しかなかった。
ギャリーはその通路の先に何かが落ちているのを見つける。三人が慎重に近付くと、それは赤色のガラス玉だった。
「綺麗」
「でも何に使うのかな?」
「う~ん。分からないけど、取り敢えず持って行きましょう」
穂乃果は拾ったガラス玉をポケットに入れると三人は来た道を戻り、目玉の通路に出る。そして先程選ばなかった先へと続く道を進む。
暫く進むと大きな白い蛇の書かれた絵画が飾られていた。
「ねぇ、この絵の目の部分。窪んでない?」
穂乃果が絵に近付きなが二人に言う。二人も近寄り確認すると、確かに目の部分が窪んでいた。
「蛇の目って確か赤よね? それにこの大きさ。さっきのガラス玉と同じくらいの大きさじゃない?」
「んーと、ちょっと待ってね。っと」
穂乃果は先程ポケットに入れたガラス玉を取り出すと、蛇の目の部分に嵌める様に近付ける。するとカコッっと軽い音とともにガラス玉が目の部分に嵌まる。嵌めると同時に隣にかかっている絵画が外れ、床に落ちる。
「これどういう仕掛けになってるのかしら?」
「さぁ? あ、でも何か書いてあるよ」
穂乃果が外れた絵画を持って戻って来ると、そこには確かに文章が書かれていた。
「え~っと「大きな木の上に」……? どういう事かしら?」
「この先にまだ何かあるって事かな?」
「何があるの?」
イヴの疑問に二人は答える事が出来ず、顔を見合わせる。
それから三人はイヴを真ん中に手を繋ぐと、通路を進む。
「あ、扉」
「なんか、またって感じがするわね」
「うん」
通路の途中にある扉を見つけると、ギャリーと穂乃果は恨めしそうに扉を見るも、中に入らないと先に進めない事が分かっている為、扉を開けて中に入る。
部屋の中にはいくつかの作品が飾られていた。
『ワイングラスのソファ』『憂鬱』『パズル』『感情』
「これ、木に見えるね」
「そうだね」
イヴと穂乃果は一番奥にある『感情』の元へ来ると、その作品を見上げて呟く。
「ちょっと待って。木ってもしかして、さっきの「大きな木の上に」ってこの上に何かあるんじゃない?」
「う~ん、でも何も見えないよ? ギャリーさんは何か見えない?」
穂乃果は背伸びをしても何も見えない為、三人の中で一番の長身であるギャリーに聞く。ギャリーも穂乃果同様背伸びをして木の頂上付近を見ると、何やら照明に反射して光る物を見つけた。
「何かあるのは分かるけど、ちょっと届きそうにないわね」
ギャリーは手を伸ばすも、あと少しと言う所で届かないでいた。ギャリーは背伸びをやめて、穂乃果達と向き合う。
「あと少しって事は、ギャリーさんが私かイヴちゃんを肩車すれば届くんじゃない?」
「もし肩車するとしたらイヴね。穂乃果じゃ色々危ないし、何より天井にぶつかりかねないわ」
ギャリーが天井を見上げて言う。
確かにギャリーの言う通り、今三人がいる部屋の天井はあまり高くなく、ギャリーが穂乃果を肩車をすると天井にぶつかりそうなのだ。
「それじゃあイヴ。肩車するけど、バランスには気を付けてね」
「うん」
それからギャリーに肩車されたイヴが木の上にあった物を取ると、ギャリーはイヴを下す。
「それでイヴちゃん。何があったの?」
「これ!」
イヴが手の中の物を嬉しそうに二人に見せる。その手の中に握られていたのは綺麗に輝く指輪だった。
「これって」
「部屋の最初に見かけた新婦の指輪じゃない?」
「うん! 早く返しに行こっ!」
イヴは約束を守る事が出来る事が嬉しいようで、テンション高く二人の手を引くと来た道を戻り始める。手を引かれてる二人は顔を見合わせると、笑っているイヴを見て笑顔を浮かべる。
「花嫁さん! 指輪見つけたよ!」
新郎新婦の所まで戻って来たイヴは、真っ先に花嫁の前に行き指輪を見せる。指輪を見た花嫁は嬉しそうに顔を綻ばせる。
「じゃあイヴちゃん。その指輪を嵌めようか」
「うん!」
イヴの身長では指の上まで届かなかったので、穂乃果が抱き上げて『悲しき花嫁の左手』の薬指に指輪を嵌める。
パチパチパチパチ
指輪が薬指の根元に落ちると同時に、新郎新婦の絵画が拍手を送ると、新婦が持っていたブーケをイヴに渡す。
「私が貰っても良いの?」
イヴが新婦に聞くと、頷き返される。イヴは嬉しそうにブーケを持つとその場にいる全員に笑いかける。
そして二人の絵画に拍手で見送られ、穂乃果達は先の通路に進んで行った。
ギャリー
通称ワカメ頭。オネエ言葉で話すが性別は男。石像を一人で動かせる事からそれなりに腕力はあると思われる。
呼び方
穂乃果は「イヴちゃん」「ギャリーさん」
イヴは「お姉ちゃん」「ギャリー」
ギャリーは「穂乃果」「イヴ」
『悲しき花嫁の右手』『悲しき花嫁の左手』
作品のタイトルと実物は左右が逆になっている。でもまぁ、そこの描写はしてない。
『嘆きの花婿』『嘆きの花嫁』
指輪を渡した後は『幸福の花婿』『幸福の花嫁』と題名が変わった。ゲルテナの世界での数少ない良心的イベント
床の目玉から二人を守るギャリー
イヴはスカートだから助かったが、穂乃果はショートパンツだから意味はなかった。
目玉と話すイヴ
こんなやりとりがあってもおかしくはない。
『ワイングラスのソファ』
ワイングラスを斜めにカットされて、中に赤いクッションが入れられている
『憂鬱』
なにあやら難しい顔をしている石像
『パズル』
様々な色の骸骨で形作られた
『感情』
見方によっては人の形にも見える不思議な木
穂乃果を肩車すると色々危ない
ギャリー、成人男性。穂乃果、現役女子高生。言いたい事は分かるよね?
テンション上げるイヴ
可愛い