ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】   作:名前はまだ無い♪

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約4か月ぶりの投稿


よにん

 イヴ、ギャリ―、穂乃果の三人が通路を進むと、ここに来てから何度も目にしている灰色の扉に行きあたる。慣れた手つきでギャリ―が扉を開ける。しかしその先の通路は今までの通路と違っていた。

 

「な、によこれ」

「……少し気持ち悪いね」

「うん……」

 

 三人が扉の向こうに見た光景、通路の両端に所狭しと置かれていたマネキンの首だった。三人が恐る恐る通路を通り次の部屋に進む。

 

「この部屋は今までと違って複雑ね」

「あ、でもこの道みたいな先は広い部屋になってるよ」

「でもここ、あの絵がたくさんあるよ?」

 

 部屋の手前の複雑な造りの場所から、穂乃果と一緒に顔を覗かせたイヴが壁にかかっている複数の赤、青、黄、緑の服の女性の絵を指して言う。二人の後ろからギャリ―も覗き込む。

 

「あれら全部が動いたら逃げるの大変よね」

 

 ギャリ―は自身の薔薇を盗った『青い服の女』を思い出し、冷や汗を掻く。穂乃果とイヴも『赤い服の女』の事を思い出し、目を合わせる。

 

「なら動かない内に早くこの部屋抜けちゃおう!」

「そうね。ほらイヴも行きましょう」

 

 ギャリーがイヴの手を引いて部屋に踏み出す。

 そこで三人は改めて部屋全体を見ることが出来た。部屋の奥の壁には先ほど覗き込んで見えた以上の数の服の女の絵画。さらに赤、青、黄と三色の服を着た『無個性』達まで複数設置されていた。

 

「ねえ、これ全部動かない、よね?」

 

 穂乃果は隣で立ち尽くしているギャリーを見上げながら聞く。ギャリーはその質問に対して首を横に振る。

 

「動かない事を願ってこの部屋を調べましょ」

 

 それから三人は部屋を見て回った。結果鍵の掛かった扉が五つ。それと多くの服の女の絵画の中に紛れ込んでいる一つの異様な絵画。それだけだった。部屋を歩いている最中、絵画や無個性が動き出すなどのことはなかった。

 異様な絵画のタイトルは『吊るされた男』。三人はその絵画の前に立ち、ジッと見つめる。

 

「これ、美術館にあったわね」

「そうなの? 私は覚えてないけど」

 

 ギャリーの言葉に穂乃果は首を捻って思い出そうとするも、あまり真剣に見て回っていなかったせいか、思い出すことが出来なかった。

 

「ねぇ、何か服に書いてあるよ?」

「え? あら本当ね。ちょっと見えにくいけど、数字みたい。え~っと」

 

 イヴに言われ、ギャリーが『吊るされた男』を注視すると、男性の服に四桁の数字が描かれている事が分かった。

 

「2659ね。そう言えば開かない扉の中にダイヤル式のが一つあったわね」

「じゃあ少し戻ろっか」

「うん!」

 

 そして三人は来た道を戻り、ダイヤル式の扉まで戻る。

 

「あ、ダイヤル式と言えばさ。こっちの扉もそうだったよね」

「そうね。でもそっちは二桁よ?」

「ふっふ~ん。実はさっき通った時にこんな物を拾ったんだ」

 

 穂乃果はギャリーとイヴに扉の前で拾った物、一枚の紙を見せる。

 

「何々? 〈この部屋の女性の絵の数は?〉って今度は数えに行かないといけないわけ?」

「大丈夫! ちゃんと数を数えたから!」

 

 そう言って穂乃果は二つのダイヤルを回し、女性の絵画の数と同じ数字で止める。途端にカシャン。という音とともに鍵が開く。

 

「お姉ちゃんすごい!」

「エッヘン」

「穂乃果。凄いのはいいけど、今度からこういった物を拾ったら必ず話す事。こういった場所だし、何が原因で不思議な事が起きても不思議じゃないんだから。ね?」

「う、うん。分かった」

 

 ギャリーが心配そうに言うと、穂乃果も心配をさせたくないのか頷く。それを見てギャリーは嬉しそうに微笑み返すと、もう一つの扉に向き直る。

 

「じゃあ次はこっちの扉を開けましょうか。えっと2659だったわよね」

 

 ギャリーがダイヤルを回して2659に合わせるも、今度は鍵が開く音が聞こえなかった。

 

「あら? 数字違ったかしら」

「ううん。穂乃果も2659って覚えてたから、合ってると思うよ」

「なにが違うのかな」

 

 穂乃果はポケットに入っていた紙に四桁の数字を書く。その数字を見てギャリーは自分が覚えていた数字が合っていた事を再確認する。

 

「やっぱり間違ってないわよね」

「うん穂乃果とギャリーさんが間違ってるとも思えないし……」

「……あ」

 

 穂乃果とギャリーが揃って頭を捻っていると、穂乃果の正面に座っていたイヴが声を上げる。二人は不思議そう突然声を上げたイヴを見る。

 

「これ、上と下逆にして見るんじゃない?」

「上下逆に?」

「あ! そう言われてみればあの絵って男の人が逆さになってた!」

「……なるほどね。人が逆だったから来ていた服、それに描かれてた数字も逆って事ね」

 

 ギャリーの言葉にイヴが頷くと、扉に近付きダイヤルを6295に合わせる。すると、先程と同じように鍵の開く音が聞こえた。

 

「やったわね! イヴ!」

「イヴちゃん凄いよ!」

 

 鍵が開いた事でギャリーと穂乃果がイヴを褒める。二人に褒められ、穂乃果に頭を撫でられたイヴは嬉しそうに笑うと二人に質問をする。

 

「それでどっちの部屋から行くの?」

「あ、そっか。二つの部屋が開いてるんだよね。今」

「三人で纏まって探しても良いけど、時間がもったいないわよね……分かったわ。こうしましょう」

 

 そう言ってギャリーは手を叩くと、とある事を提案する。

 

「穂乃果とイヴの二人と私とで二手に分かれましょ」

「でも、そんな事したらギャリーが」

「大丈夫よ。何かあっても隣の部屋だし、大声を出せば声は届くわ。それじゃあ穂乃果。イヴを頼んだわよ」

 

 穂乃果は少し躊躇いがちにだが、頷く。穂乃果が頷いたのを確認すると、ギャリーはまたあとで会いましょ、と言い目の前の部屋に入って行く。穂乃果は扉が閉まるとイヴの手を引き、隣の部屋に入る。

 二人が入った部屋には一つの本棚がポツリと置かれているだけだった。二人は恐る恐る本棚に近付き、一冊ずつ本を手に持ちページを捲る。一冊、二冊、三冊と手に持って調べるも、どの本のページも真っ白だった。

 

「う~ん、何も書かれてないね」

「うん」

 

 そして二人は四冊目に手を伸ばす。表紙を捲ると一枚の紙が床に落ちた。イヴはしゃがみその紙を見るも、読めない字が多いのか、首を傾げる。穂乃果はイヴから紙を受け取り、それを読み始める。

 

『作品にはお手をふれぬよう お願いいたします 万が一 備品や作品に何らかの損害を 与えた場合は あなた  をも   賠 させ  ます』

 

 紙に書かれた文章はところどころ滲んでいて、古い物なのか穂乃果が読み終わるとボロボロと崩れだした。穂乃果は突然崩れ始めた紙に驚き、思わず手を放してしまう。穂乃果の手から離れ、ゆっくりと床に落ちた紙は一気に崩れ、消えてしまった。

 

「い、今のなんだったんだろう?」

「お姉ちゃん。この本、何か書いてあるよ!」

 

 穂乃果が崩れ消えた紙のあった場所を見て考えていると、イヴが最後の一冊を持って駆け寄ってくる。

 

『楽しい毎日』

 

 本の一ページ目にはそう書かれていた。穂乃果はその場に膝をついて高さをイヴに合わせると、本のページを捲っていく。

 

『美術館は ちょっと不思議な遊園地 おかしなものが たくさんあるのよ

 ここで遊んでいると あっという間に 一日が 終わってしまうの

 とっても 素敵でしょう? だからあなたも ここにいれば?

 大丈夫 みんながいるから』

 

 本はそれで終わっていた。内容がイマイチ理解できてない二人は、顔を合わせて首を傾げるだけだった。

 

 一方、隣の部屋で一人探索をしているギャリー。部屋には花瓶の描かれたキャンパスと椅子、そして部屋の奥に花瓶の乗った机が置いてある。

 

「椅子に座って一休み。といきたい所だけど、何かがいる気がするのよね。まぁ幽霊とかが出て来てもおかしくないけどね」

 

 ギャリーは何かの気配がする椅子に注意を払いながら、部屋の探索をしつつ独り言を呟く。そして目についたのは花瓶の置かれた机と近くの床にある窪みだった。

 

「この机……動かせる?」

 

 机に手を置いたギャリーは、それが動く事に気付く。それから少し移動させ、近くにあった窪みに嵌める。窪みにちょうど嵌った机は、椅子とキャンパスと一直線に並んでいた。

 

「これで何か変わるのかしら?」

 

 椅子の後ろから一直線に並んだ物を見ながら、ギャリーが顎に手を当てジーッと見詰めていると、外から何かが割れる音が聞こえると同時に、キャンパスから何かが落ちる。

 ギャリーは落ちたモノを確認せずに拾い、慌てて外に出る。隣の部屋からは同じように穂乃果とイヴが出てくる。

 

「今すごい音がしたけど、何の音!?」

「分からない。けど嫌な予感がするわ」

「ねぇ、あれ……!」

 

 穂乃果とギャリーが現状の確認をしていると、イヴが二人の服を引っ張って部屋の奥を指す。その先には壁にかかっていた絵画や『無個性』が動いていた。

 

「どうしよう。全部が動いてるわけじゃないけどさすがに全部避けるの大変そうだよ?」

「別に全部避ける必要はなさそうよ?」

 

 ギャリーが拾ったモノを確認すると、それはどこかの鍵だった。そしてこの部屋で鍵のかかっている扉は残り二つ。その内の一つがすぐ近くにある。三人は周りを警戒しながらその扉に近付き、鍵を差し込み扉を開け中に入る。部屋の中は何もなく、奥の壁に鏡が一つだけあった。

 

「鏡、よね?」

「うん。でも良かった~。鏡しかないからゆっくりできるね」

 

 穂乃果は鏡の前に移動すると、乱れた髪を整え始める。それからイヴを呼び、鏡の前に立たせて髪を整え始める。そんな二人を見てギャリーも微笑みながら二人の隣に立つ。

 

「……!?」

 

 ギャリーが二人の隣に立つと、背後に何かの気配を感じ振り返る。

 

「……ね、ねぇ二人とも。少し聞きたいんだけれど」

「どうしたの?」

「変なギャリー」

 

 振り返った体勢で固まってるギャリーを見て笑いながら穂乃果とイヴも振り返り、固まる。三人の視線の先には道中で見かけたマネキンの首が一つ、扉を塞ぐかのように置かれていた。

 

「アタシ達が入って来た時って、あれなかったわよね?」

「うん。穂乃果入って来て真っ直ぐここに来たけど、何もなかったよ」

 

 穂乃果は隣に立ってるイヴを自身の体で隠しながらマネキンの首を見る。ギャリーと穂乃果がマネキンの首と睨み合って暫く、何も起こらない為二人は危険がないと判断し、もう一度鏡を振り返る。

 

「キ……!」

「ギャリーさん!」

 

 鏡に映ったギャリーの肩に、先程扉の前にいたマネキンの首が乗っかっていた。その不可思議な出来事にギャリーは思わず飛び退き、バランスを崩してしまう。幸い隣に立っていた穂乃果が手を掴んだのでしりもちを付くことはなかった。

 

「な、なによ! ビックリさせないで頂戴!」

 

 ギャリーはそう声を張るや否や、穂乃果の手を振り解き、足を振り上げる。ギャリーの行動を見てこれから何をするのか分かった穂乃果とイヴは、咄嗟にギャリーに飛び付く。

 

「ちょ、何するのよ二人とも!」

「だ、ダメなの! これ蹴ったらダメ!」

「そうだよギャリーさん! 蹴ったら大変なことになっちゃう!」

 

 二人の必死な様子にギャリーは疑念を抱き、足をそっと下す。ギャリーが落ち着いたと分かると二人はギャリーから離れ、先程別行動した際に見つけたメモの内容を話す。ギャリーはそれを聞いた後、二人にお礼を言う。

 そして三人はそれ以上その部屋に留まる気になれず、部屋から出る。

 

「ねぇ、アタシの気のせいじゃなかったらなんだけど、なんか増えてない?」

「うん。増えてるね」

 

 部屋を出た三人の視界には、部屋に入る前より数を増している動く作品達だった。

 

「っ! お姉ちゃん危ない!」

 

 穂乃果は突然イヴに手を引っ張られよろける。次の瞬間、穂乃果がいた場所に『赤い服の女』が飛び掛かる。穂乃果とギャリーはそれを見ると慌てて走り出す。

 

「どこに……逃げれば……良いのよ!」

「ハァ、ハァ……まだ行ってない扉! あそこに賭けてみない?」

 

 ギャリーが半ば叫ぶように言うと、イヴの手を引いて走っている穂乃果が提案する。ギャリーは何かを考えていたが、頭を振ると穂乃果の提案に乗る。

 

「じゃあ穂乃果が引き付けておくから、ギャリーさんはイヴちゃんと先に行ってて!」

「引き付けておくってあれだけの数を!?」

 

 ギャリーの言葉に振り返ると、そこには『赤い服の女』の他に『緑の服の女』青い服を着た『無個性』など追手が徐々に増えていた。

 

「あー……ごめん。これは無理っぽい」

「でしょうね。だから入る時は三人一緒よ」

「そう、だよ!」

 

 イヴも少し苦しそうに頷く。そして三人は走り回り、件の扉に辿り着く。三人は扉の前で止まるとイヴが勢いよくノブを捻る。

 

「開いたよ!」

「イヴちゃん入って!」

「穂乃果も早く入りなさい!」

 

 イヴ、穂乃果、ギャリーの順に開いた扉を潜る。ギャリーが飛び込むように入ると、先に入っていた穂乃果が扉を閉める。穂乃果が閉めると同時に追って来ていた作品のいくつかが閉められた扉にぶつかり、その衝撃が扉越しに穂乃果に伝わる。

 

「お姉ちゃん大丈夫!?」

「う、うん大丈夫だよ」

 

 衝撃で一、二歩程よろけた穂乃果にイヴが駆け寄る。穂乃果は衝撃に驚きながらも、イヴの頭を撫でる。しかし疲れているのか、撫でる手は少し荒かった。

 

「ハァ、ハァ……この部屋は安全そうだし、穂乃果とイヴはそこのソファで休むと良いわ」

 

 ギャリーが部屋を見渡してそう言う。穂乃果とイヴも部屋を見ると、部屋の真ん中に白いソファがあり、壁際には本棚がいくつか並べられていた。

 

「え……嘘……」

「なん、で……」

 

 部屋を見渡していた二人の視線は、壁際の本棚の合間に掛かっている一つの絵を見ていた。

 

「二人ともどうしたの?」

「お父さん……お母さん……」

「お兄ちゃん……雪穂……なんで……」

 

 震える声で描かれている人物の名前を呼ぶ二人。そこに描かれていたのは赤い服を来た女性とスーツを着た男性、イヴの両親と、私服を着た穂乃果にそっくりな少年と中学校の制服に身を包んでいる少女、若葉と雪穂だった。

 

「へぇ~こっちがイヴのご両親でそっちが穂乃果の兄妹なのね。確かによく似てるわね。特にお兄さんは。さすが双子の兄妹って感じね」

 

 ギャリーは二人のもとに近寄りながら感想を言うと、絵のタイトルを見る。

 

『よにん』

 

 イヴは近くに来たギャリーの服をギュッと握る。穂乃果も焦点の合ってない目で床をジッと見ている。

 

「ねぇギャリー……お父さんとお母さん、それにお姉ちゃんのお兄ちゃん達、大丈夫だよね?」

 

 目に涙を貯め見上げながらギャリーに聞くイヴ。ギャリーはにっこり笑うとしゃがんで目線をイヴに合わせると頷く。

 

「大丈夫。きっとどこかにいるわ。だから安心して」

 

 それから穂乃果にも声をかける。

 

「穂乃果も大丈夫よ。あなたも言ってたじゃない。「お兄ちゃんは大概の事が出来る」って。だから大丈夫よ」

 

 そう言ってギャリーは二人を抱きしめる。抱きしめられた二人は不安をなくすかのように、安心感を得ようとする為に、ギャリーをギュッと抱き返した。

 

 

 

 




月一更新? ハハッ知らない子ですね←

♪♪♪
マネキンの首
スケキヨ? いいえマネキンです。

『緑の服の女』『黄の服の女』
腕力凄そう(二回目)

『吊るされた男』
足首を紐で縛られて上下逆で吊るされてるけど、人って頭に血が行き過ぎると危ないんじゃ……?

『楽しい毎日』
毎日が楽しいとか、なにそれうらやま

『よにん』
亜里沙ちゃんェ……

不安になる穂乃果とイヴ
彼女達はまだ「少女」なんです。そしてギャリー姉さんカッコいい。


あの子は一体いつになったら出せるのか……



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