ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜【完結】 作:名前はまだ無い♪
二人がギャリーに抱きしめられて少し、落ち着いた穂乃果とイヴはギャリーから離れソファに座る。ギャリーは二人に気を配りつつ、壁際にある本棚を調べていた。
「……?」
「どうしたの? お姉ちゃん」
突然ソファに座っていた穂乃果が辺りを見渡す。穂乃果に寄りかかっていたイヴはいきなりキョロキョロと辺りを見ている穂乃果を見て首を傾げる。穂乃果はシッ! と唇に人差し指を当てるとイヴを抱き寄せる。
「ギャリーさん、何か聞こえない?」
「え……?」
穂乃果が壁際にいるギャリーに言うと、ギャリーも耳を澄ます。
するとどこからか何かを叩くようなドォン、ドォンと音が辺りに響く。その音はイヴにも聞こえたようで、穂乃果の服を不安そうに掴む。三人は部屋の真ん中に集まり、穂乃果とギャリーは背中を合わせて立つ。
「ねぇギャリーさん」
「何、穂乃果?」
「気のせいかな? そこの壁から音が聞こえるんだけど」
「奇遇ね。アタシもあそこから聞こえるわ」
穂乃果とギャリーは同じ方向の壁を見ながら呑気に言い合う。次の瞬間、ギャリーは扉に駆け寄ると、ノブをガチャガチャと捻る。
「開かない……! 鍵なんて閉めてなかったのに!」
「ギャリーさん!!」
穂乃果が亀裂の入った壁を見て焦った声でギャリーを呼ぶ。ギャリーも慌てた様子で穂乃果の傍に立つ。
ドォン!!
ギャリーが穂乃果の元へ辿り着くのと同時に『よにん』の横の壁に大きな穴が開く。そこからゆっくりと『赤い服の女』が入ってくる。
「ギャリーさん、どうしよう」
「そうね……扉は開く様子ないし、一か八かあそこの穴から出ましょう!」
ギャリーは迫ってくる絵画越しに、その絵画が開けた穴を見る。その穴は人が通れる程の大きさだった。穂乃果はギャリーに頷き返すとイヴを抱え、ギャリーとタイミングを合わせて左右にそれぞれ走り出す。絵画は突然二手に分かれて走りだした二人に戸惑い、襲い掛かるタイミングを逃していた。
「イヴちゃん先行って!」
「うん!」
ギャリーより先に辿り着いた穂乃果がイヴを放し、穴を潜らせる。イヴが潜っている間に穂乃果は部屋を振り返り、ギャリーを見る。ギャリーも近くまで来ており、
手を振って穂乃果に穴を潜るように伝える。穂乃果はそれに従い穴を潜ると、先に潜っていたイヴと合流しギャリーを待つ。
「お待たせ! 早く逃げましょ!」
ギャリーは穴から転がるように出るとすぐに立ち上がり、二人の手を取って走り出す。
三人が出た場所は入ってきた扉の反対側の壁だった。その周りには多くの動く絵画。
「ギャリー! あそこの扉!」
ギャリーに手を引かれながら走っていたイヴは、不自然に開いている扉を指し示す。ギャリーと穂乃果は目配せし合うと、逃げ先をその扉に変更し駆け込む。イヴ、穂乃果、ギャリーの順で扉を潜り、ギャリーは扉を勢いよく閉め離れる。
扉から少し離れた所で追手が来てない事を確認した三人は足を止めて肩で息をする。
「はぁ……はぁ……こ、ここまで来れば大丈夫でしょ」
「うん……やっぱり作品は自分で扉を開けられないみたい」
「どういうこと?」
穂乃果の確信めいた発言にギャリーが問い質そうとすると、突然バタリとイヴが倒れる。
「イヴ!」
「イヴちゃん!」
倒れたイヴに駆け寄り、様子を見る。イヴは息を荒げて気を失っていた。
ふと気が付くとイヴは小さな部屋に立っていた。
「お姉ちゃん? ギャリー?」
この世界に来て一緒に行動を共にしていた二人の名前を呼ぶも、返事は返って来ない。イヴがどうするか悩んでいると、不意にダンダンダン! と何かをたたくような音が聞こえ。
怖くなったイヴは目の前の扉を潜る。一つ、二つ、三つ。徐々に大きくなる音から少しでも遠ざかる為、イヴは扉を開けて進む。そして四つ目の扉を開けた時、目の前には『赤い服の女』『無個性』『マネキンの首』の三つの作品がイヴに迫ってきていた。
「うそ……やだ、来ないで……」
イヴは後退る。しかしすぐ後ろには扉があり、それ以上下がることはできない。扉から出ようにも、固く閉ざされて開く気配がない。
「開いて。開いてよ!」
イヴはガチャガチャとノブを捻る。その後ろからじりじりと近付く作品達。
《イヴちゃん!》
《イヴ!》
あと一歩でイヴに届く距離になった時、背中の扉が開き二本の腕がイヴに向かって伸ばされる。イヴは伸ばされたその手を無意識に握っていた。次の瞬間、イヴはその手に引かれて扉の向こうへと引っ張られる。
そこでイヴは目を覚ました。
時間は戻り、イヴが倒れた直後。
倒れて意識を失ったイヴはギャリーが背負い通路を進む。
「ねぇこの部屋で少し休めるんじゃない?」
通路を進んだ先にある扉を少し開け、中を覗き込んだ穂乃果がギャリーに提案する。二人が部屋に入ると、中は本棚が四つと小さなテーブルが一つ、そして『無題』と題された絵画が壁に掛けられていた。
ギャリーは空いているスペースにイヴを下してコートをかけると、本棚から本を取り出してパラパラめくっている穂乃果の元へと向かう。
「それで穂乃果。さっき言ってたのはどういう意味?」
「そのままの意味だよ。これまで私達はいろんな作品に追われてたけど、そのどれ一つとして扉を開けてくる作品が無かったんだよ。あって窓ガラスを割って入ってくる程度」
穂乃果は本を閉じてしまいながらギャリーに説明すると、ギャリーも確かに、と今までの作品達の行動を思い出して頷く。
「そしてさっきの部屋、あそこで扉にぶつかってきた作品があった時は、開けられるんじゃないかなって思ったけど、そうはならなかった。だから作品は扉を開けることが出来ないんじゃないかなって思ったの」
「……穂乃果って意外と頭の回転が速いのね」
「意外は余計だよ~!」
ギャリーが意外そうに言うと穂乃果は頬を膨らませながら返す。その時、気を失っているイヴが呻き声を上げた。二人は慌ててイヴに近寄ると、イヴは汗を掻いて魘されていた。
「イヴちゃん!」
「イヴ!」
穂乃果とギャリーはイヴの両手を握りしめる。少しして、魘されていたイヴは落ち着きを取り戻してゆっくりと目を開ける。
「良かった。目が覚めたんだ」
「気分はどう? 大丈夫?」
穂乃果とギャリーが心配そうに尋ねると、イヴは二人にギュッと抱き着き、体を震わせて答える。
「……怖い夢を見た……」
「そう……かわいそうに。まぁ無理もないわね。こんな目に遭ってるんだもの」
ギャリーが頭を撫でながら言うと、イヴはフルフルと頭を横に振る。
「でも、お姉ちゃんとギャリーの声が聞こえて……それで……」
「大丈夫。もう、大丈夫だから」
なおも話し続けようとするイヴを穂乃果は宥める。怖い思い出は思い出さなくていい、そういった意味を込めて穂乃果はイヴを抱きしめる。
それからギャリーの提案でもう少し休むことにした三人。
「ギャリー。これ、ありがとう」
「あら、もう大丈夫?」
ギャリーの質問にイヴは頷いて答えると、ギャリーは指をパチンと鳴らした後コートのポケットから黄色の飴玉を二つ取り出す。
「はいイヴ、穂乃果。これあげるわ」
「え、いいの?」
「もちろん」
穂乃果が聞き返すと、ギャリーは笑顔で頷き返す。二人はお礼を言ってそれを受け取る。
「イヴってさ、もしかしていいところのお嬢さんなんじゃない? ほら、着てる服も、上質な生地じゃない」
「そうかな?」
イヴを真ん中に右に穂乃果、左にギャリーと並んで座って休んでいると、ギャリーがイヴに聞く。イヴは自分の服を見るも、あまり考えたことがないのか首をかしげる。そんなギャリーを見て穂乃果がふと疑問に思った事をギャリーに聞く。
「そう言えばさ、ギャリーはなんでその話し方なの?」
「どうしてって聞かれても、気がついたらこんな話し方になっていたのよね。でも、堅苦しいよりもいいじゃない?」
「だね~」
「うん」
ギャリーの言葉に穂乃果とイヴは笑顔で頷く。それから三人は休憩しながら各々の事を話す。
「へぇ~。じゃあギャリーは大学で先生してるんだ」
「そうよ。主に美術関係教えてるのよ」
そして少し話して部屋から出る。目の前の階段を下り、下の階に着くと薄暗い廊下が伸びていた。
「これ、なに?」
「ミルクパズルだね。お兄ちゃんがこの前やってたよ?」
「お兄ちゃんって若葉君、だっけ?」
「うん!」
壁に掛けられてる作品『ミルクパズル』を見て足を止める。イヴは穂乃果の裾をクイッと引っ張って聞く。
「ミルクパズルって何?」
「ミルクパズルはね、普通のパズルと違って絵が何もないパズルでね、その分難しいんだよ」
「私もやった事あるけど、諦めたわ」
ギャリーも挑戦した時の事を思い出し、うんうんと頷いている。
「まぁ私は普通に絵のある方が良いけどね。今度イヴもやってみる?」
「う~ん、どうしようかな……」
ギャリーとイヴが話してる中、穂乃果は『ミルクパズル』の下に鎖で繋がれた一冊の本を手に取る。タイトルには『日誌』と書かれていた。穂乃果はページを捲っていく。
『ヒトの想いが こもった物には 魂が宿ると 言われている それならば 作品でも 同じことが できるのでは と 私は常に 考えている そして 今日も私は 自分の魂を 分けるつもりで 作品作りに 没頭している』
「なにこれ? せめてこの世界からの脱出方法くらい書いときなさいよ」
穂乃果が読んでる横からギャリーが覗き込んで苦情を漏らすも、穂乃果とイヴは苦笑いを浮かべる。
それから少し進むと突き当りに扉を見つける。
「入りたい……んだけど」
「なんか問題があるね」
「うん」
ドアノブの下に液晶とキーボードが設けられていた。液晶には一つの絵画が映されていた。
「この絵何だったかしら」
「う~ん、どこかで見たことある気がするんだけど……」
「……う~ん」
三人は液晶に映されている巨大なチョウチンアンコウの絵を見て、タイトルを思う出そうと頭を回転させる。そしてイヴと穂乃果の二人は同時に正解に辿り着いた。
「「深海の世!!」」
「深海の世?」
「うん! この世界に来る時に潜った大きな絵画のタイトルだよ。イヴちゃん!」
「うん」
イヴは頷くと、キーボードで「深海の世」と打ち込む。
カシャン
イヴがエンターキーを押すと同時に扉が開く音が廊下に響く。三人はハイタッチすると部屋の中に入る。
「あれ?」
三人が中に入ると、正面の壁に一つの絵画が飾られているだけで机はおろか、本棚すら置かれてなかった。
「この部屋、何にもないね」
「そうね。扉もないしもしかしたら行き止まり?」
イヴ、ギャリーと穂乃果の二手に分かれて部屋の中に隠し扉の類がないかを隅々まで探す。その時突然部屋の電気が消え、視界が真っ暗になる。
「ちょ、停電!?」
いきなり明かりがなくなった事で驚くギャリー。それから離れて探索をしていた穂乃果の安否を確認する。
「穂乃果大丈夫!?」
「私は大丈夫! そっちは?」
「私もイヴも大丈夫よ。それにしてもこう暗いと何も見えやしないわね」
ギャリーは明るさのない部屋をキョロキョロと見渡すと、何かを思いついたのか、コートのポケットに手を入れるとライターを取り出すし、火を点ける。また穂乃果も同様にポケットから携帯を取り出し、ライトを点ける。それを頼りに三人が集まると、部屋の明かりが点く。
三人が集まると部屋の明かりが点いた。三人はあまりの眩しさに目を瞑る。そして目を開けた。
「なに……これ……」
「一体、いつの間に……」
『たすけて』
『やめて』
『こわい』
『しにたくない』
『いやだ』
『だしてくれ』
床や壁を埋め尽くすようにそんな文字が書かれていた。三人はそれ以上その部屋にいたくなくなり、廊下に出て壁に寄りかかる。
「さっきの部屋なんだったの」
「さぁ? でも分かってる事は、この部屋に入っても先に進む事は出来ないってことね」
「うん」
三人は廊下に座ったまま、次の行動をどうするかを話し合う。
「取り敢えず戻ってみる? 何かやり残してる事とかあるかもしれないし」
「そうね。一度戻って……あら? あれ何かしら」
ギャリーは元来た廊下を見ると、赤い足跡が真っ直ぐ伸びていた。三人は立ち上がり、足跡を辿っていく。
「こんなところに扉なんてあったっけ?」
「う~ん、この廊下薄暗いしさっき通る時見逃してたかもしれないわね」
ギャリーの言葉に穂乃果はう~んと首を傾げるも、二人が特に気にしている様子もないので、首を振ってその気持ちを払う。
そして穂乃果が扉を開けて先に進むと、突然体に衝撃が訪れる。
「うわっ!」
「きゃっ!」
突然の衝撃に穂乃果と相手の少女は倒れかけるも、穂乃果はギャリーに、少女は後ろに立っていたもう一人の人物に支えられて倒れるのを免れた。
「穂乃果!?」
「……ってお兄ちゃん!?」
穂乃果は少女を支えた少年を見て、また少年も穂乃果を見て驚きの声を上げる。
そこにいたのは穂乃果に似ている少年、若葉だった。
そう言えばサンシャイン始まりましたね!
♪♪♪
壁ドン
派生形として股ドン、床ドン、足ドン、フルボッコだドン、もう一回遊べるドンがある。
イヴの悪夢
伸ばされた手は一体……はい、穂乃果とギャリーの手です。
鋭い穂乃果
アニメでも閃いてたはず!閃きはあったよね?
飴玉
黄色いから多分レモン味
ギャリーの経歴
オリジナルです。実際なんで美術館にいたんでしょうね。
ライター
非喫煙者なのになんで持ってるのか……
穂乃果の携帯
携帯があるなら外部と連絡取れんじゃん!
世の中そんなに甘くないです。
少年と少女
少女は次回に持ち越すとして、ようやっと若葉君再登場!
感想
くれると嬉しいです。
それではまた次回。