―――世界は絶望で出来ている。
それは、いままで生きてきて悟ったこの世の真理。
―――世界は絶望で満ちている。
それは、僕が僕としてこの世に生まれたときから知っていたはずの真実。
―――世界は希望を求めてる。
僕が手に入れたくて、手に入れたくて、どうしようもないくらいに求めているもの。
―――世界は幸せで溢れている。
かつて僕が失った、もう手にすることの出来ない暖かな感情。
―――世界は、
この世界に存在する限り僕が抱き続ける負の感情。
僕を構成する真っ黒な感情。
そんな感情を抱いても、最後に思うのは―――
僕の紅く染まった視界に映るのはハニーゴールドの髪をした聖母のようなあたたかい彼女の微笑み。
身体中に走る痛みがたったそれだけで消えうせ、安らぎをもたらしてくれる彼女の微笑み。
そして気づくのだ。
僕にもいつだって幸せが、彼女が近くにいてくれたことを。
それだけで僕は……。
―――この世界は、なんと儚く、美しいことか。
こんなにも満たされて、逝くことが出来る。
☆☆☆☆☆
僕がこの世界が絶望で出来ていると悟ったのはいつだっただろうか。
僕は神の名の下に神敵を滅する
三ヶ月ほど前までは。
名前もそこそこ知られていたと思う。
自分で言うものなんだけど、実力も教会内で一位二位を争うくらいもあったと思う。
だけど、僕ははぐれ
もう信じられなくなったから。
神も、天使も。
信徒たちも、みんな。
僕のお母さんとお父さんは僕と同じ
実力もあったと思う。
教会のみんなからの信頼もあった。
それに二人とも『
お母さんは『
お父さんは『
でも、死んだ。
それはもう、あっさりと。
お母さんとお父さんは僕と兄さん、
堕天使と呼ばれる天から落とされし天使によって。
悪魔と呼ばれる冥界の化け物によって。
堕天使は上級堕天使と呼ばれる個体数の少ない強者の一人で、悪魔はS級はぐれ悪魔と呼ばれる上級悪魔クラスの強者であったから、いくら強くても人間のお母さんもお父さんも殺されてしまうのは必然だったのかもしれない。
でも僕は違った。
僕だけはその必然に当てはまらなかった。
僕も堕天使たちと同じ強者だったから。
だからそのとき、僕の中に眠る何かが目を覚ました。
背中に大きな白い翼が一対現れ、僕に大きな力を与えてくれた。
身体の奥底から溢れ出す力に、血が熱くなり高揚するのが分かった。
―――さあ、目の前の
何かが僕にささやきかけてくる。
僕はその声に従い、堕天使に飛び掛った。
翼をもぎ、四肢をもいで殺した。
―――いい子ね、ルシウス。でも、ほら。まだ残ってるわ。一人残らず殺しなさい。大丈夫。あなたなら出来るわ。
身体から溢れんばかりに漲る聖のエネルギーを悪魔の頭をつかみぶち込んでやった。
悪魔はトマトが弾けたような赤い液体を撒き散らして消し飛んだ。
その後も声の言うとおりに殺した。
声の言うとおりに一人残らず殺した。
僕はお母さんとお父さんが勝てなかった堕天使を、悪魔を殺した。
僕が目覚めたのは
お母さんやお父さんとは比べ物にならないほどの強大な
それからだ、僕が二人を殺した神敵を殺すために
上級堕天使と上級悪魔を殺した僕は教会に迎え入れられ、
お母さんのお父さんは根っからの信者で昔から僕も兄さんもルシアも信者になるよう育てられてきたから、
むしろお母さんとお父さんと同じ
またそんな僕を兄さんとルシアはうらやましがり、いつか追いついてやるって、
僕はすぐに教会所属の
孤児院に入った兄さんとルシアにも
聖剣系の
だから。
だから殺された。
教会は人工的にエクスカリバーの使い手を作ろうとしていた。
だから聖剣系の
兄さんとルシアは選ばれたことにうれしがっていた。
もしこれで、成果を上げることが出来れば僕と一緒に
毎日毎日実験を繰り返して、任務を終えて二人に会いに行ったとき、綺麗な銀色だった髪はボロボロの白い髪に成り果てていた。
苦しい実験だろうに僕を悲しませないようにと、笑顔を見せてくれた。
ある日、いつものように任務を終えて二人に会いに行ってみると、そこには二人と同じで被験体であった子どもたちの死体が転がっていた。
その中には当然、兄さんとルシアの姿もあって。
人工エクスカリバー使いを造ることには成功した。
だから殺された。
いらなくなったから。
僕は一人になった。
思えばこのときには僕から信仰心はなくなっていたんだろう。
それからはただただなにも考えず、神の敵である堕天使と悪魔を殺す日々を過ごした。
そのうち
昇進したことによって任務の数は増え、休みも取れなくなっていった。
でも、ぼくはそれでよかった。
なにもしていないと家族のことを思い出して、心が壊れてしまいそうだったから。
そんな弱い僕にも任務以外で家族のことを思い出すこともなく、心が癒される時間があった。
任務がない日は必ず、ある少女の元に向かった。
その少女は『聖女』と呼ばれる幼くも美しい可愛い少女で、僕に出来た初めての友だち。
誰に対しても優しく、信者の憧れだった彼女に僕も憧れた。
彼女も僕と同じで信者はいても友だちがいなくて、僕と彼女は暇な日は一緒にすごした。
ある日は町に出て、軽い買い物をしたりご飯を食べた。
ある日は少し遠出して、景色を見て回った。
ある日は大事な
彼女との思い出が、僕の心に開いた穴をふさいでくれた。
僕が教会に属してから五年。
僕は十三歳で教会の誇る最強の
だからといって僕の生活はたいした変化を見せることはなく、殺し合いに少女との語らいに費やした。
そして、三ヶ月前。
僕にとって、唯一の存在。
家族を失った僕にとって、唯一残された大切な存在、『聖女』と呼ばれた少女が『魔女』として追放された。
悪魔の傷を癒したから、と。
心の優しい、神の怨敵である悪魔にさえ、慈悲の心を持った少女が。
そうだ、このときだ。
『聖女』が、アーシアが追放されたと、報告を受けたとき、僕は悟ったんだ。
僕から兄さんとルシアを奪った教会が僕の見方であるはずがないんだと。
この世に神なんていない。
神の最も愛されるべきアーシアが魔女などと蔑まれ追放する世界に神などいないんだと。
この世界に希望が存在するはずもない、絶望で出来た世界なんだと。
☆☆☆☆☆
駒王町。
教会の力があまり及んでいない極東に存在する町。
その町に白いローブを着た怪しげな二人が降り立った。
「この町だな?」
「うん。教会からここに逃げて隠れてるって」
「そうか」
怪しげな二人の会話から二人は教会の関係者であることが分かった。
また声からして女性だということも。
それもまだ成人になっていないくらいの若い女性。
「これからどうする?」
「んんー?えっとねー、ここには私の幼馴染がいるの。だから久々に会いに行きたいなぁ、って思ってて」
「ああそうか。イリナは日本生まれだったね」
「うん。元気にしてるかなー、イッセーくん。エッチな子だったからしんぱいなんだよね」
「羽目を外しすぎるなよ。私たちは任務でここにきているんだから」
白いローブの隙間からのぞく胸には十字架が下げられていて、イリナと呼んだ少女は布で包んだ何かを背負っている。
それはわかる者のはわかるもの。
悪魔の弱点とされ、教会の誇る兵器。
聖剣。
それも少女の背負っているのは数多の悪魔を屠ってきたエクスカリバーの一本。
そんな有名な聖剣を携え、悪魔の治めるこの地。
駒王町。
そこに二人の聖剣使いが降り立ち、
「ここだね。
最強のはぐれ
お久しぶりの方、お久しぶり。初めましての方、初めまして。
風流人改め赤嶺です。
あらすじでもさらっと触れましたが、なんの報告もなく小説を削除、それどころかアカウントまで削除してしまい申し訳ありませんでした。
もう更新するつもりはありませんでしたが、1000人以上の方にお気に入り登録してもらっていたのを思い出し、もう一度更新することにしました。
今回は途中の話はまだ考えてませんが、ラスボスとラストはしっかりと考えたので、まぁなんとかなると思います。
今日から少しずつ、更新していきますのでよろしくお願いします。
※質問があればなんでも答えますのでお寄せください。