堕落の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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お待たせしました。
リメイク前とは違った展開となります。


第2話

ーーー声が聞こえる。

 

最も愛しい人の声が。

 

キミはここにいるの?

 

夜空を見上げて愛しい彼女に問いかける。

 

されど、その問いに答える声はなく、ただ彼女の声が聞こえてくるのみ。

 

哀しみを堪える悲痛の声が。

 

一旦夜空を見上げるのをやめ、目を伏せる。

 

その哀しみから救ってあげたい。

 

かつて彼女が己にしてくれたように。

 

待っててね、アーシア。

 

もうすぐ逢える。

 

そんな気がするんだ。

 

そっと語りかけるように、彼女が見ているだろう夜空に向けて、もう一度語りかけた。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

アーシアは先ほどまで『魔女』と呼ばれ追放された過去に怯え震えていたが、ゼノヴィアの告げた悪魔払い(エクソシスト)の名前を聞いて、震えがとまっていた。

 

何かを思い出すかのように、その目にはいまが映っていなかった。

 

そしてその名前に反応した者たちの動きも同じくして止まった。

 

リアス・グレモリーが兵士(ポーン)、兵藤一誠はこれまで妹のように可愛がっていたアーシアの男のことかと警戒するように。

 

そして、グレモリー眷属の中でも裏社会のことを知っている者たちは『ルシウス・ランスロット』というその名の持つ恐怖に耐えるように。

 

ただ、リアスだけは反応が少しだけ違っていた。

 

「……『ルシウス・ランスロット』って、あの『ルシウス・ランスロット』かしら?」

 

「あのが何かは知らないが『聖人(ホ・ハギオス)』ルシウス・ランスロットのことを言っているのならその通りだ」

 

その答えにルシウスを知らない兵藤一誠―――イッセーを除き、リアスたちは息の呑んだ。

 

その様子にイッセーは疑問に感じリアスに聞いた。

 

「あの部長。そのルシウスって奴はそんなにすごい奴なんですか?」

 

「……すごいなんてものじゃないわ。天敵よ、私たち悪魔にとって」

 

「『聖人(ホ・ハギオス)』ルシウス・ランスロット。教会最強の悪魔払い(エクソシスト)機関、『特務機関イスカリオテ』のメンバーの一人で、現代の英雄ですわ」

 

イッセーの疑問に答えたリアスにそれを補正した朱乃はルシウスがいままで為してきたことを思い出し、顔を青くする。

 

しかしイッセーには疑問が増えただけだった。

 

(ルシウスって奴がすごい奴だということは分かったけど、その『特務機関イスカリオテ』っていうのは何なんだ。教会最強の悪魔払い(エクソシスト)の集まりらしいけど、人間なんだからあのライザーとかよりは強くないと思うけど)

 

『特務機関イスカリオテ』

 

別名『神の使徒(ヘヴン・アポストロ)

 

各教会から選出された十二人の悪魔払い(エクソシスト)によって構成される教会最高機関。

 

上級悪魔または上級堕天使の単独討滅によって入団資格を得ることができ、熾天使(セラフ)の承認をもってようやく入団でき、もしすでに席に余りがない場合、第十二席の悪魔払い(エクソシスト)を下す必要がある。

 

熾天使(セラフ)によって独自の行動権が与えられ、教皇すら状況によってはその権威に劣ることもある。

 

イッセーはその説明を小猫から聞いて、顔が引きつるのが分かった。

 

イッセーにとって上級悪魔といえばリアスとライザー。

 

どちらも自分よりも格上でライザーに勝てたのも自身が宿す神器(セイクリッド・ギア)、『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』に封印されているドラゴン、ドライグに対価を支払い神器(セイクリッド・ギア)の奥の手ともいうべき『禁手(バランス・ブレイカー)』となって、ようやく勝てたのだ。

 

そんな悪魔相手に勝てる人間が教会には十二人も存在する。

 

それもアーシアの想い人がその一人だと知ってしまってはイッセーが臆するのも無理はなかった。

 

「ルシウスは悪魔や堕天使といった人外の殺しの第一人者でね。彼が殺した人外はその数千にも及ぶと聞いているよ」

 

イッセーはリアスたちが青ざめるわけだと納得した。

 

さすがにすべてが上級悪魔クラスでないにしてもただの人間が千体以上も殺しているのだ。

 

怖いに決まっている。

 

「ルシウスくんは私たち悪魔払い(エクソシスト)の中でも特に優秀でね。確か十二歳だったかな?史上最年少で神の使徒(ヘヴン・アポストロ)のメンバー入りを果たした傑物なのよ!」

 

イリナが自分のことのようにうれしそうに語る。

 

目をきらきらと輝かせて語るその姿にイッセーは先ほど抱いた感情を忘れ、まだ見ぬルシウスに嫉妬を飛ばした。

 

「……それでルシウス・ランスロットがどうしてアーシアを追いかけて教会から抜けたのかしら?」

 

ようやく帰ってきたリアスが気になっていたことを問うた。

 

「ん?聞いてないのか。アーシア・アルジェントはルシウスと仲が良かったのだよ。教会中で噂になるほどに」

 

「教会中にファンクラブが出来るほど人気者だったから。でもルシウスくんは任務以外では人と関わるのをいつも避けてたし、なかなかお近づきになれなくてね。彼、人嫌いだから」

 

「だが、そんな人嫌いのルシウスにも例外となる人物がいたのさ」

 

「それがアーシアね」

 

リアスが確認を入れる。

 

「そうよ。もうすごかったんだから。いつもしかめっ面のルシウスくんがアーシアさんの噂を聞くだけで顔をほころばせて。休暇が取れる度にアーシアさんに会いに行ってたくらいなんだから」

 

「本部から離れた国外でも休暇が一日取れるだけで行こうとしたくらいだからな。止めるのに苦労した」

 

「アーシアさんも大変だったんじゃない?私たちでもルシウスくんの部下ってだけで嫉妬されてたから」

 

二人の言葉に自身の夢であるハーレムを形成しているルシウスに激しい嫉妬を覚えるイッセー。

 

しかもこれまでの話を聞くに相当なイケメンだろうと推測する。

 

イッセー自身はフツメンちょい上程度だと考えれば、ますますルシウスに嫉妬心が湧いてくる。

 

俺がイケメンだったらいま頃……!、と地団駄を踏んだ。

 

そんなイッセーをリアスたちは慣れたのか呆れたような目で見て、イリナとゼノヴィアは引いていた。

 

「……それだけべったりだったのだ。アーシア・アルジェントが追放されたと聞いてその翌日にはにルシウスも姿をくらませた」

 

「アーシアを追放したことであなたたち教会は強大は戦力を一つ失ったわけね」

 

「そうなのよ。教会内の空気も悪いし。おかげでルシウスくんの直属だった私たちがこんな任務に……。今度会ったらタダじゃおかないんだから!」

 

イリナは窓の外にルシウスを睨みつけるように視線をやった。

 

「……あ、あの!ル、ルシウスはいまどうしているのでしょうか?」

 

「わからない」

 

「え?」

 

「わからないのよ。教会本部はルシウスくんの行方を捜しているけど、その足取りすらつかめていないの」

 

「だからすまないがあなたに教えることはできない」

 

「いえ、ありがとうございます」

 

ルシウスのことを聞くことができなかったアーシアの表情は少しだけ曇っていた。

 

「さて、では我々は今度こそお暇させてもらう」

 

「じゃあね」

 

「---まてよ」

 

アーシアも確認もし、今度こそ去ろうという二人にイッセーが待ったをかけた。

 

「ん?何かな。これでも忙しい身でね。堕天使どもの巣をこれから探さねばならないんだ。用があるなら手短に頼むよ」

 

「……どうして、アーシアを追放したんだ?」

 

「聞いてないの?アーシアさんは悪魔を治療したから追放されたのよ。神の敵である悪魔を治療する『魔女』だって」

 

「でも、それは……!?」

 

「彼女の優しさ。知っているさ、何度もルシウスに聞かされたからな」

 

ゼノヴィアがため息まじりに言った。

 

「アーシア・アルジェントは敵だろうと味方だろうと怪我をしている人を放っておくことのできない」

 

「それがわかっているならなんでっ!?」

 

アーシアの優しさを知ってなお追放した教会にイッセーは怒り、二人にぶつけた。

 

「どうして誰も庇ってやらなかったんだ!!ルシウスって奴はどうしてアーシアの傍にいてやらなかったんだ!?ルシウスにとってアーシアは」

 

「ちがうっ!ルシウスくんはっ!ルシウスくんはアーシアさんのことを本当に想っていたわ」

 

「だったら……!」

 

「できなかったの」

 

「できなかった?」

 

興奮状態にあるイッセーを朱乃が落ち着かせ、かわりにリアスが話を促す。

 

「アーシア・アルジェントが『魔女』の容疑が掛けられていたころ、ルシウスは遠い僻地にてとあるはぐれ悪魔の討滅任務を受けていた」

 

「そのはぐれ悪魔とは?」

 

「SS級はぐれ悪魔『双頭』オルトロスよ」

 

「オルトロスですって!?」

 

「そうだ。残念ながら討滅には失敗したらしいがな」

 

「そう。でも、そういうことならアーシアの傍にいられなかったことも納得がいくわ」

 

リアスの言葉にイッセーは眼をむいた。

 

あの眷属を大切にするリアスが教会のアーシアに対する対応に少なからず反感を持っていたはずであったのに、ルシウスに関して何も思っていないようだったから。

 

そして、小さくつぶやいた言葉を聞いてしまったから。

 

まだ、貴方は追い続けているのね、仇を。

 

ルシウスのことを知っているようなその言葉を。

 

「……部長、どうして……」

 

「そうだ、アーシア・アルジェント。君に言わねばならないことがあった」

 

イッセーの声を遮るようにゼノヴィアが話しかける。

 

「私に、ですか?」

 

「宣戦布告だよ、女としてのね」

 

「えっ⁉︎ゼ、ゼノヴィアあなた本当にするの?」

 

「あぁ、本当に想っているからね。確かに出会ってからは彼女の方が長いかもしれないが、過ごしてきた時間は勝っていると思っているよ。なら、まだ諦めるのは早いと思ってね」

 

「うぅ〜ぅ。そ、それなら私だってっ!アーシアさん、私もあなたに宣戦布告しますっ!」

 

いきなり始まった宣戦布告にアーシアは困惑して、イッセーは察したのか嫉妬に身を焦がし、リアスや朱乃は面白そうに笑って、小猫は頬を赤らめ、復讐にたぎっていた祐斗は思わず笑ってしまった。

 

「「私はルシウスが好き。だからあなたには負けないっ!」」

 

ビシッ!と人差し指をアーシアに刺して布告した二人。

 

対してアーシア意味がわかると顔をわずかに赤らめるが、強い意志を宿して迎え撃った。

 

「負けません!」

 

その言葉を聞いて満足そうにゼノヴィアとイリナは笑うと「失礼した」と言って退出していった。

 

その直後旧校舎にはは一人の男の怨嗟の声が響き渡った。

 

 

 

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