堕落の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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第4話

 

夜が明け、日が昇りきった12時過ぎにルシウスは目を覚ました。

 

どうやら黒歌は目が覚めているようで、腕の中には頬をほんのりと赤く染めた黒歌が目を瞑り、胸に頬ずりをしている。

 

ルシウスはその様子に口元を緩めた。

 

黒歌とともに眠るときは大抵がこのように黒歌が甘えているか、ルシウスが黒歌を抱きしめて寝ている。

 

今回は黒姉の方だったな、なんて思う。

 

互いに過去に傷を負った身。

 

頻度はそれほどではないが、夢に見ることはある。

 

ルシウスであれば両親が殺された時のこと、兄妹の動かぬ身体を抱えた時のこと。

 

黒歌であれば悪魔になってからの悪夢のような日々のこと。

 

そんな夢を見るたびにふと感じる温もりは、悪夢を取り去ってくれるルシウスとっても黒歌にとっても大切なものだ。

 

もっとも、甘えるのが悪夢を見た時とは限らないが。

 

頬ずりをしている黒歌を離すことなく、しばらくそのまま動かずにいたが、黒歌は頬ずりをしながらひくひくと鼻を動かし始めた。

 

それにもしかしたらと、だとしたら少しからかってみようかな、といたずら心が芽生え、抱きしめる力を強めてみる。

 

「にゃぁぁ……」

 

突然強まった抱きしめる腕の力に、黒歌は声を漏らす。

 

その反応にやっぱりと、クスリと笑うと、黒歌の髪を撫でた。

 

サラサラとしたとても触り心地のいい黒髪だった。

 

「……え?」

 

突然のなでなでに黒歌はルシウスの胸にうずめていた顔をゆっくりと上げる。

 

「おはよう、黒姉」

 

そこには微笑むルシウスがいて、黒歌は声を上げた。

 

黒歌が目を覚ましたのはルシウスの目を覚ました1時間前の11時のことだ。

 

世の中のお母様方が少々手の込んだ昼食を作るのなら、作り始める時間帯。

 

そう、つまりはルシウスが起きた12時にはすでき起きていたということになる。

 

目を覚ました黒歌を迎えたのは愛しいルシウスのハグだった。

 

ルシウスは黒歌が抱きついてきたと思っているが、その前にルシウスが黒歌に抱きついていたのだ。

 

黒歌としてはまたか、という思いながらもやはり嬉しいものは嬉しいと抱きしめ返した。

 

そこからダラダラと時間は過ぎ、気づけばルシウスは起きていて思いっきり甘えていたところを見られてしまった。

 

これまでも起きているルシウスに甘えたことはあった。

 

しかし、寝ていると思って甘えている時と起きていると思って甘えているのとはやはり、違いはあるのだ。

 

結果としてルシウスは起きていて、黒歌は頬を染めて「……あ、うぅ」と声を漏らすと、恥ずかしさのあまり、悲鳴をあげた。

 

 

 

「さて、僕はゼノヴィアたちに接触しようと思う。黒歌が集めた情報以外に何か知っていることがあるかもしれない」

 

「うぅ……」

 

「それに、もしかしたらアーシアの情報もあるかもしれないし」

 

「……」

 

「黒姉はどうする?って。おーい、僕の話聞いてる?」

 

「……え?なになに、なんか言った?」

 

ルシウスから話しかけられても気づかず、顔の前で手を振られてようやく黒歌は話しかけられていることに気づいた。

 

「これからどうするかを話してたんだけど、大丈夫?」

 

2人が起きてから1時間が過ぎ、ルシウスはこれからについて黒歌に話していた。

 

話すと言ってもルシウスの一方的にではあるが。

 

「だ、大丈夫大丈夫。気にしないでいいにゃん。それよりもう1回説明してもらってもいい?」

 

「うん。ええっと、僕はこれからゼノヴィアたちに会おうと考えてるんだけど、黒姉はどうするかって話。昨日まで大変だっただろうし、ここで休んでいてもいいけど」

 

「そうねぇ、もう少し休んだら妹の様子でも見に行こうかしら」

 

「そうだね。次見れるのが何時になるかわからないし、見ることが出るときに見たほうがいい」

 

「にゃん♪そうするわ」

 

ルシウスは席を立つとソファーに掛けてあった法着を肩に掛ける。

 

「じゃあ、僕は行くけど何かあったら連絡してね」

 

「は〜い。いってらっしゃい」

 

ルシウスが出て行くと、今のなんだか新婚さんみたいだったにゃん♪と顔を赤くして呟いた。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

ルシウスがゼノヴィアたちを探しにホテルを出た頃、同じくしてゼノヴィアたちを探すべく駒王町を散策する者たちがいた。

 

リアス・グレモリーの眷属にして『兵士(ポーン)』の駒を授かった兵藤一誠。

 

同じくリアス・グレモリーの眷属にして『戦車(ルーク)』の駒を授かった塔城小猫。

 

リアス・グレモリーの幼馴染であり、駒王学園の生徒会長をしているソーナ・シトリーーーー学園では支取蒼那と名乗っているーーーの眷属にして『兵士(ポーン)』の駒を授かった匙源士郎。

 

3人は先日告げられた聖剣を奪取された件で、ゼノヴィアたちに奪還作戦に協力をもちかけようと探していた。

 

「なぁ兵藤。こんな闇雲に歩いたところで見つけられるとは思えないんだが」

 

「確かにそうだけど、見つけないと木場にエクスカリバーの破壊をさせてやれねぇしなぁ」

 

彼らが探し始めて20分。

 

まだ探し始めて間もないとはいえ、見つかる気配がしない。

 

そもそも探している相手は極秘任務に選出されるほどの悪魔祓い。

 

人探しに置いて素人と言ってもいい3人に見つけられるなど、そうないことだった。

 

もし見つかるとしたら早々の馬鹿だけだろう。

 

さらに歩くこと数分。

 

「……見つけました」

 

「え?何処何処?」

 

「……あそこです」

 

小猫が指差す向こうには、

 

「えー、迷える子羊にお恵みを〜」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉ!」

 

路頭で祈りを捧げる白ローブを纏った馬鹿の娘2人がいた。

 

「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も取れないのよ?」

 

「ふん、もとはといえば、おまえが詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」

 

ゼノヴィアはイリナの後ろに立てかけてある絵画を指差した。

 

そこには何やら聖人らしき人物が描かれた下手な絵画があった。

 

「何を言うの!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!展示会の関係者もそんなこと言っていたわ!」

 

「じゃあ、誰かわかるのか?私には誰1人脳裏に浮かばない」

 

描かれているのは貧相な服装をした頭の上に輪っかのある男。背景に幼い赤ん坊のような天使がラッパを持って宙を舞っている。

 

「……たぶん、ペトロ……さま?」

 

「ふざけるな。聖ペトロがこんなわけないだろう!」

 

「いいえ、こんなのよ!私にはわかるもん!」

 

「ああ、ルシウスはどうして私を置いて行ってしまったんだ……。おかげで私はこんなアホと一緒にこんなところで……。主よ、これも試練ですか?」

 

「ちょっと、そんなこと言わないでよ!私だってルシウスくんについて行きたかったのに!ルシウスくん直属の部隊に配属された時、どれだけ嬉しかったか!」

 

「それは私も同じだ。はぁ、今ごろルシウスはどこにいるんだか……」

 

「きっとドイツかアメリカよ。前に別荘を建てたって聞いたし」

 

「別荘か。……いったいどうして年もさほど変わらないのにこれほどまでに差が開くんだ。私たちでは別荘なんで買える気がしないんだが……」

 

「それは神の使徒(ヘヴン・アポストロ)のメンバーだからでしょ」

 

「……私たちもいつかその地位まで行けるのだろうか?」

 

「さぁ?でも、追いつくって決めたでしょう?いつか隣に立ってみせるって」

 

「……そうだな。なら、早くこの件を終わらせて強くならないとな!」

 

ぐぅぅぅぅぅぅ……。

 

気合いを入れ直しても、腹の虫は鳴る。

 

2人はその場に崩れた。

 

それを見た一誠たちは呆れたような表情で互いを見合うと、2人に声をかけた。

 

一緒に食事でもどうかと。

 

 




書こう書こうと気が付けば前回の更新から早3ヶ月。時が経つのは早いものですね。

……ごめんなさい。カッコつけました。本当、お待たせしてすみません。
次回はなんとか早めに更新したいと思いますので、どうか……っ!


それと、今作『堕落の聖人』のリメイク前『八咫の聖人』について公開するかどうかご意見をいただきたいと思いますので、活動報告にてご意見お待ちしております。
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