同調率99%の少女 - 鎮守府Aの物語   作:lumis

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 様々な出来事があった夏休みも終わり、幸(神通)は久々に登校した。隣には親友の和子がいる。今までと同じ組合せで登校風景。しかし、彼女の一部が一学期とは全く違った。幸に登校途中の(男子)学生の視線が集まる。


二学期デビュー

 カラリとした暑さが依然として続く9月のある日の朝、那珂こと那美恵たちの高校では二学期開始の日だった。具体的には始業式が終わった次の日である。

 登校中の生徒達の目は、校門をくぐろうとする一人の女子生徒に釘付けになっていた。

 その少女の隣にはショートヘアの別の少女もいたが彼女に視線は一切集まっていない。が、それを気にする彼女ではない。むしろ彼女的には隣の少女に視線が集まることこそ願い、その視線の意味が羨望のものであることを期待しているのだ。

 

「う、うぅ……恥ずかしいよ……和子ちゃぁん。」

「せっかくそこまでイメチェンしたんだからしっかりして。さっちゃんが魅力的だから皆見てるんですから。」

 

 その日一緒に登校してきた幸と和子の様子は、一学期のものとは明らかに異なる点があった。

 それは、幸の髪型である。

 夏休み中、プライベートで和子と何度か会っていた幸は自身に施された新しい髪型をお披露目していた。友人の変身っぷりを見た和子は、さも自分のことのように喜び、友人としてフォローしてあげねばと決意する。練習して幸の髪型を完璧にマスターした和子は始業式の日の朝、幸と合流した後に駅のトイレでヘアセットをしてあげた。

 おかげで幸としては登校途中から顔から火が出そうになるくらい恥ずかしくてたまらなかった。艦娘としてなら、あるいは誰も知り合いがいない場所でなら大分慣れたが、学校という多少なりとも顔見知りがいる環境ではこの日が初めてなのだ。

 

「おーい、毛内さ~ん! おはよう!」

 二人に駆け寄ってきたのは和子と同じく生徒会書記の三戸だ。軽快に駆け寄ってきて軽く声を掛けた三戸は、和子の隣を見て一瞬驚いた。

「おぉ!? 誰かと思ったら神先さんじゃん。髪型変えたんだ。へぇ~いいじゃんいいじゃんすげーじゃん!」

 三戸の順応の高さに逆に驚かされた和子は返す。

「おはようございます、三戸君。ていうかよくさっちゃんだって気づきましたね。」

「アハハ。そりゃ~なんつうのかな。オーラ? 俺だってもう他人じゃないんだし、ねぇ?」

「ハァ……あまりさっちゃんに馴れ馴れしくしないでくださいね。三戸君の軽さが伝染っちゃいます。」

「うわぁ~朝から毒舌だなぁ毛内さんは。俺馴れ馴れしくないよねぇ、神先さん?」

「へっ?」

 二人の掛け合いを視線は別方向に、意識は明後日の方向に向けてボゥっと感じ取っていた幸は急に意識を戻されて間抜けな一声しか出せなかった。

 

 三戸が加わったことで幸のニューヘアスタイルの視線の注目はひとまず途切れた。それを見計らって三戸が尋ねる。

「神先さんのその髪型マジでいいね。一学期とは全然違って見えるよ。それもあれ? 艦娘になったからイメチェンしたの?」

「村雨さんたちが考えてセットしてくれたんですって。さっちゃん、順調に世界が広がってるようで何よりです。」

「でも随分思い切ったね。二学期デビューって場合によっては悪目立ちするかもしれないのに。」

 三戸がそう指摘すると、幸は左右の横髪にそっと触れつつ彼の軽さとは真逆に不安を漏らす。

「う……やっぱり、そうですよ……ね。やっぱり髪型戻したい。」

「ダメ!艦娘になってせっかく色々変わってきたんですし、普段も変えて新しい自分を出していかないと。」

「……和子ちゃん怖い~。」

 妙にエンジンがかかった和子は、幸の不安不満なぞどこ吹く風で引き続き講釈を述べる。

 和子の強い勧めと三戸のノリノリの甘い囁きで結局幸は髪型を戻すタイミングを逃し、神通プライベートスタイルとして一日中過ごす羽目になった。

 

 

--

 

 和子と幸が教室に入り席につくと、幸の変化はすでに伝わっていたのか和子と仲が良い女子生徒が近づいて囲んできた。幸は今まで目立たずにいたため、自身にとって友人とは言い難い女子たちだ。そのためやりとりは完全に和子に任せるつもりだ。

 

「ねぇねぇ神先さん!何その髪型!すっごく可愛いよ!どーしたのどーしたの!?イメチェン? 一学期の根暗さとは違いすぎぃ~!」

「キャハハ!根暗って本人の目の前で失礼~! でもホント似合ってるよ。そうやって顔出したほうがいいじゃん。てか神先さん、そうやって普通にしてたらちょーイケてる。」

「誰に教わってやったの? え?仲間の艦娘に? なんかわからないけどセンスいい友達いたんだ。あ~でもここはなんか中学生っぽいセンスねぇ。この雑誌に載ってるこういうふうにしたほうがいいかも。あたし達もアドバイスしてあげるよ?」

「和子っちは知ってたの?」

「うん。前々からさっちゃんには艦娘になったらイメチェンしたらって提案してたんですよ。友人としてはさっちゃんがやる気になってくれて嬉しいのなんのって。」

 幸をネタに和子と女子生徒数人がぺちゃくちゃと喋り続ける。幸としては正直鬱陶しくて仕方がなかった。

 

 早く静かにさせてくれ。

 始業のチャイムまでに読みたい本あるのに……。

 

 そうした思いは虚しく叶わず、女子生徒たちと仲が良い男子まで集まってきた。

いつのまにか、クラスの半分近くが幸と和子の席に群がっていた。完全に幸が望まない空間と雰囲気で占められていた。

「やべぇ。神先ってちょー可愛い。全然気づかなかった。」

「あんだけ可愛いと絶対モテるよな。今のうちに唾つけとく?」

「しかも大人しいしな。やっべ。ムラムラしてきた。」

「馬鹿かお前~。学校で興奮してんじゃねーよw」

 男子のくだらない評価と言い合いも耳に入ってきたが、幸は努めて無視を決め込んだ。

 

 二学期デビューを果たした生徒には反感を持ったり揶揄する者が出てくるケースも少なくないが、幸いにも幸はクラスでは全員に好印象を持たれる形となった。

 お洒落とは程遠い風貌をしていたがためにあまりに変わりすぎ、そして実は相当な美少女だったという事実。なにより見た目が変わったことで今まで通りの大人しく控えめすぎる性格が引き立て材料になり、(多くの男子の)ツボにハマったからにほかならない。それに対する女子たちの評価は、存在感がなさすぎてよくわからぬクラスメートという評価のスタート地点がほぼゼロなのが幸いし、パッとしなかった娘が(明らかに他人の手によるものとバレバレだが)頑張ってここまで己を変えたのだという、オシャレを気にする年頃の自分達ならばウンウンと頷いて理解してしまう涙ぐましい努力と想像し、ある種同情を集めたのも比重を占めていた。

 稀な境遇だった。

 

 あるクラスに今まで見たことない可愛い子がいるという噂は他クラスや別学年にも伝わったが、これもまた幸にとっては幸運にも、悪目立ちすることなく済んだ。同じクラスの女子が幸を適切にガードしたことと、幸が生徒会長である那美恵と同じ艦娘部の部員で艦娘だという事実がまことしやかに広まった影響がひとえに大きい。

 そんな我らの権威の庇護下なぞ気にするものかとひと目見ようという者達が少なからず居て、勝手にファンクラブが作られたのは影の周知の事実だった。

 とはいえ、幸にとってはどうでもいい、直接関わらぬ話である。

 

 

--

 

 その日、二学期デビューを果たしたのは幸だけではなかった。同高校の艦娘部にとっても、ある意味二学期デビューだった。

 

その日の放課後、生徒会室を部室として間借りさせてもらっていた那美恵と幸、艦娘部二人は、生徒会顧問の教師と一緒に入ってきた艦娘部顧問の阿賀奈からある報告を聞いた。

 

「みんなほんっとーにご苦労様でした!先生もホントは行きたかったんだけどなぁ~~~! 館山に行って何か色々楽しいことしたかったな~~!」

「楽しいって……けっこー大変だったんですよぉ。流留ちゃん入院しちゃったし。」

 そう言って那美恵が手振りで示した空間に流留の姿がないことに阿賀奈は気づいて尋ねる。

「そ、そういえばそうね。内田さんの容態は大丈夫なの? 先生とっても不安よ。」

 

 阿賀奈の不安をしっかり感じ取った那美恵は、若干雰囲気暗くして8月末の状況を報告し始めた。

 

 

--

 

 館山での任務と祭りのイベントが終わり、検見川浜にある鎮守府に戻ってきた那珂たちを待っていたのは、たった数日離れただけなのに懐かしい空気だった。

 ただ一人、川内だけは鎮守府に戻って即、取り巻く雰囲気が違った。

 鎮守府に戻ってきた時はすでに19時を過ぎており、帰りたい面々もいたが那珂の提案でほぼ全員が入渠(風呂)をすることになった。そして待機室に戻ってきた一行の前には、提督と話をするため入渠しなかった五月雨が現れ、川内に向かって話しだした。

「川内さん。提督がですね、入渠が終わったらすぐ来てくれって。」

 川内はまだ乾ききっていない髪をタオルで拭きつつ返事をする。

「え~なんだろ? お風呂入った直後に行くのはさすがのあたしも恥ずかしいんだけどな。」

「よかったらあたしもついていこっか?」

「……私も、行きます。」

「おぉ、那珂さんと神通が来てくれるなら安心。一緒にいこ!」

 

 なかば川内に手を引っ張られる形でついていった那珂と神通。執務室に入ると、二人がついてくることはおおよそ想像がついていたのか、いる前提の口調で提督は説明をしてきた。

「お、三人共来たな。大事な事伝えるからよく聞いてくれ。」

「ん、なになに?川内ちゃんに何かあったの?」

「いやさ、川内は今回の任務中の出撃で、大怪我したっていうじゃないか。」

 提督の不安が混じった台詞を聞いた瞬間、那珂たち三人も途端に影を落とした。

「もうわかってると思うけど川内、さっさと病院行って来い。」

「うーやっぱそうだよね。行かないとダメ……だよね?」

 川内が面倒くさそうに言うと、提督が口をつぐんでコクンと頷いた。

 

「館山基地の医療班からもらってる診断書はそのまま正式な紹介状になってるから、うちの近くの海浜病院に行ってそれ見せれば特殊外来扱いですぐに見てもらえる。今日診てもらうなら今電話して話しておく。明日でもいいが、それ以降はダメだぞ。」

「なんで?」と川内。

「うおーい川内ちゃん。それくらいわかろうよ。だって来週の火曜日から、うちの学校二学期だよ?」

 那珂のツッコミに川内は本気のリアクションでギョッとする。

「うわ!そうでしたっけ!?あ~やっば。今行きます!今すぐ!さっさと直してあとちょっとの夏休み楽しまなくちゃ!」

 川内の台詞に彼女以外は苦笑する。

「それじゃあ決まりだな。親御さんにも連絡するからその心づもりで。あとそちらの高校には明日俺の方から伝えておく。」

「うん、わかった。」

「後で待機室行くから、準備だけしておいてくれ。」

 

 提督の台詞の後、那珂は川内を見、提督に視線を戻してそうっと言った。

「ねね、よかったらあたし付き添うよ?同じ学校の人間がいたほうが何かといいでしょ?」

「あぁそうだな。五月雨は……もうちょっと残って雑務を片付けてもらいたいし、妙高さんは……ご自宅の家事があるからこれ以上引き止められないからな。うん、ついてきてくれるか、那珂?」

「おっけぃ。」

「あ~よかった! 那珂さん来てくれるなら安心だわ。」

「あの……あの! わ、私も。」

 仲間はずれになったような寂しさを覚えた神通が細々とした声で喋ると、言わんとすることがわかっていたのか、皆まで言わせずに提督が補完した。

「わかってるよ神通。君も現場にいた当事者だもんな。ついてきてくれ。」

 

 提督の配慮に心温まった神通は頬を赤らめてコクンと力強く頷いた。

 

 そして川内を取り囲んだ那珂・提督・神通と4人メンバーは海浜病院に行った。その後診察を受けた川内に待っていたのは、外科以外の科でも検査を要する本格的な診察で、その日だけでは終わらず翌日も診察と検査を受けることになった。

 その日には川内の両親が鎮守府に姿を見せ、提督が事情を説明し川内本人と揃って再び海浜病院に向かった。

 

 結果、川内こと内田流留は4日ほどの検査入院が確定した。つまるところ本人が望んでいた残りの夏休み・始業式・二学期一日目はすべてパーとなってしまった。

 

 

--

 

「ふーん、ふーん。そうだったのね。化物と戦うだけでも怖そうなのに、パンチとかキックとかでやり込められて内田さんかわいそう。」

「先生先生、キックは喰らわなかったそうですってば。」

 一通り説明し終えた那珂は阿賀奈の感想を苦笑しながら聞いてそしてツッコミをせわしなく入れた。

 

 個々人からおおよその話を聞いていた三千花たちは、那珂からさらにプラスの情報を聞かされ、阿賀奈と大して変わらない驚きと感心を示していた。

「うわぁ……内田さんそんな目にあってたんだ。他人事みたいで悪いけど、可哀想ね。」

 三千花に続いて三戸が感想を口にする。

「でも怪我してもさ、じんつ……神先さんのために戦おうとしたなんて、まさにヒーローだよ。話聞いただけでもかっこいいって思うもん。できれば映像でみたいなぁ~三人の活躍とか。」

 

 三戸が希望を混ぜて言うと、那美恵が申し訳なさそうに反応する。

「三戸くんの気持ちわかるけど、ゴメンね。あの時はまさに緊急だったから多分神奈川第一の人たちであっても撮影とかしてなかったと思う。」

「あぁいや! 別に本気で見たかったとかそういうつもりじゃないっすから!会長からの話だけでも十分すぎるくらいですよ。」

 

「あ、映像っていえば……提督さんから、観艦式の動画もらっていたんだったわ。」

 阿賀奈が思い出したように言った。

「えぇ~!?ホントですか先生!?」と那美恵。

「えぇ。昨日の放課後に提督さんからメールで共有されててね、そのときに残ってた他の先生方と校長先生と一緒に先に見させてもらったのよ!」

「アハハ……。見るなら見るって事前に言ってくださればよかったのにぃ~。」

 那美恵は驚きと照れがないまぜになって複雑な表情を浮かべて苦々しく微笑みながら言う。その理由は、生徒である自分らには観艦式の動画配布の話なぞ知らされていなかった事というある種ドッキリにも近い境遇のためであった。

 

 

--

 

 那美恵が二人の教師のやり取りを傍から見ていた幸は、二三歩引いた立場でただ眺めていた。どうせ自分に関係ない事だからという心境だったが、その心持ちは直後に打ち砕かれた。

 

「そうそう。神先さんの活躍もしっかり見ましたからね~。」

「……えっ!?」

 阿賀奈の突然の言葉の矛先転換に、幸にしては珍しいくらいの声量で驚きの一声をあげた。

「あれ?さっちゃんもその観艦式というのに参加したんですか?」

 和子の問いかけに幸は全力で頭を横に振って否定する。その証言を追認したのは那美恵だ。

「うぅん。観艦式に出たのはあたしと五月雨ちゃんだけ。他は神奈川第一の人たちだけだし。先生なにを見たんですか?どーいうこと?」

 阿賀奈は頬に手を当てて虚空を見上げ、思い出すような仕草で言った。

「観艦式というよりかは、何か別の海の上ね~神先さん写ってたのは。アクアラインが見えたシーンもあったわ。どこかの港でボーっと呆けてる姿とかだったかしら。」

 

 あまりに的確なシーンの指摘に幸は青ざめながら思い出した。視線をすぐに那美恵に向け、フォローを求める弱々しい表情を作った。那美恵はそれに気づいてそうっと確認する。

「あ~、もしかして五十鈴ちゃんと二人でいたときのこと?」

 コクコクと連続で幸は頷いた。

 

「先生。さっちゃんのは観艦式じゃないですよ。」

 那美恵は省いていた経緯を話す。すると、阿賀奈達は合点がいったというリアクションを取り、感想を改めて言い合った。

「そうだったのね。やっと色々繋がったわ。それにしてもほんっと~に良い経験したのね。やっぱ先生も一緒に行きたかったよぅ……。黒崎先生が羨ましいわ~。」

「あ、アハハ。今度機会があったときは先生一緒に来てくださいよ。」

「そうね!今度お話があったらまず先生に伝えてよ!そ~して、黒崎先生と石井先生と揃ってあなた達についていくの。わ~~今から楽しみぃ~!」

 阿賀奈が妄想モードに突入していると、生徒会顧問の先生が言った。

「四ツ原先生、想像張り巡らすのも構いませんが、部活の顧問ならこの後生徒に言い渡すことがあるでしょう。」

「え? な、なんでしたっけ……?」

 急に現実に引き戻された阿賀奈はおそるおそる尋ねる。

「ハァ……。部活なら、レポートなりで結果報告を学校に提出させないといけないでしょう。」

「ふぇ? あ……そ、そーですね! そうそう光主さん、神先さん! 夏休み中の艦娘部の活動として、ちゃーんとレポートにまとめなさい! そうでないと先生も立場上困っちゃうわ。」

 

 生徒会顧問の教師に暗に提案され、阿賀奈は慌てて取り繕い那美恵達に指示を出した。那美恵たちは素で忘れていたため、素直に顧問たる阿賀奈に従うことにした。

「は~い。わかりました。」

「承知、しました。」

 那美恵と幸は顔を見合わせ、話し合い始める。

「それじゃあさっちゃん、分担して取り掛かろ。」

「はい。あの、でも……内田さんは?」

「ながるちゃんは入院中だし考えなくていいや。とりあえず二人でやりはじめよう。どのくらいで出来そ?必要なら村雨ちゃんたちにも手伝ってもらうけど。」

 那美恵がレポート作成にかかる工数を尋ねると、幸はしばらくうつむいた後答えた。

 

 そんな生徒たちのその様子を見ていた阿賀奈と生徒会顧問の教師の二人も何かを話し始める。そして那美恵たちに告げた。

「それじゃあレポートが出来てからにしましょっか!」

「へ?何をですかぁ?」

 阿賀奈の言葉に奈美恵が呆けた口調で尋ねると、衝撃の内容が発せられた。

 

「全校生徒に動画を見てもらうんですよ~。せっかくのお国のために活躍してる艦娘部の映像なんですもの。これで先生も鼻高々よ~!」

「ち、ちょっと待ってください。さすがにそこまでするのはどうかとぉ~~……。」

「あら? 光主さんにしては珍しく弱気ね。大丈夫よ。校長先生も教頭先生も動画の公開に乗り気でしたよ。そもそも校長先生が最初に提案なさったんですけどね。」

 追い打ちをかけるように生徒会顧問の先生も言う。

 

 心構えも準備もできていないのに自分らの行動が晒される。

 那美恵と幸は館山当時よりも急激に緊張感を覚えた。生徒会長で人前に晒されるのに慣れている那美恵でさえそうなのだ。まったく慣れていない幸の緊張感は、那美恵の数倍以上だった。

 幸は、こんなときいない流留が羨ましい、と心のなかで愚痴るのだった。

 

 

 かくして那美恵率いる艦娘部は、動画と完成したレポートを翌週早々に全校に公開することになった。


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