ひじょうにおひさしぶりです。
永らく、永らく、お待たせいたしました!
第三話の投稿です!
西暦2013年、冬。
ドイツ海軍所属、戦艦ビスマルク。
〝あれ〟から一ヶ月以上たったが彼女は未だに困惑していた。
いや、彼女だけではない。
ここに居る全員が困惑していた。
ただでさえ気がついたら北海の冷たい海の上を何故か“人間”となって他の大勢の同胞達と共に漂っていただけでも意味が分からないというのに、突然奇妙な形をした巡洋艦に乗せられ擬装を没収されドイツに着いたと思ったら今度は銃を突き付けられ無理やりバスに乗せられ研究所のような施設に隔離された。
しかもその施設でビスマルク達は着ていた服までも剥ぎ取られ病院服を着せられ同胞達と共に幾つかのグループに分けられた。
広い無菌室の様な一面真っ白な部屋に三十人ほどが押し込められ、その部屋は全ての壁に長方形の窓ガラスがついていて昼夜を問わず白衣を着た研究者達や銃を持ちガスマスクを着けた兵士達がこちらを監視し別室にあるトイレですら全面ガラス張りで研究者や兵士が常に監視していた。
「……許せん」
ビスマルクは拳を握りしめた。
周りを見れば同じく人間となった娘達が不安そうに地べたに座っている。
その顔はどれも疲労困憊だ。
原因は分かりきっている。毎日のようにおこなわれる人体実験と監視のせいだ。
この部屋に居るのはビスマルク以外、殆ど駆逐艦の外見的に幼そうな娘ばかり。
ビスマルクは見るに耐えられなかった。
何とかしなければならない。
ビスマルクは必然的にそう思っていた。
何故なら自分はドイツ第三帝国が誇る超弩級戦艦ビスマルクなのだから……。
すると、その時、扉が開いた。
数名の兵士が入ってきてタンカに乗せられた少女を床に下ろす……。
兵士達はその少女乱暴に床へ下ろすと部屋を後にした。
ビスマルクは兵士が居なくなったのを見計らって少女の元へとすぐに駆け寄った。
「アドミラル・ヒッパー!!大丈夫か!?」
「だ、大丈夫、です……」
彼女はアドミラル・ヒッパー、重巡洋艦の少女だ。
ビスマルク達が押し込められたこの部屋の中ではビスマルクの戦艦についで位の高い艦種の少女でもある。
「……何をされた?」
「いつものヤツですよ……武装を持たせずに外洋まで出されました」
「そうか……」
アドミラル・ヒッパーは自分がされた人体実験の内容を語り始めた。
今、人間達はビスマルク達の正体を知ろうとやっけになっている。
最初は事情聴取、ビスマルク達が覚えている内容をできるだけ喋らせ次は人体検査、ビスマルク達の人体構造を調べた。
そして今は……ビスマルク達の能力調査。
一部の擬装をビスマルク達に装着し外洋に出て性能を調べる……。
アドミラル・ヒッパーは今回その実験に使われたのだ。
「あと少しで深海悽艦に沈められるところでしたよ。アハハハッ……」
「同じ、ドイツの同胞だというのに人間達は何を考えているんだ……私達は深海悽艦と戦う為に居るのにやらされるのは実験ばかり……」
アドミラル・ヒッパーは苦笑いを浮かべた。
だが、無理をしているのは明確だった。
それを見たビスマルクは眉間にシワを寄せる。
「ビスマルクさん……実は他のグループでは轟沈した娘達が何人も居るみたいです。聞いたところによると単艦で深海悽艦の艦隊に突っ込ませる実験をしてるみたいです。それと……」
アドミラルヒッパーは苦笑いをやめて真面目な様子で言った。
しかし、ビスマルクは轟沈艦が出ていることにはあまり、驚かなかった。
この劣悪な環境では当然だと考えたのだ。
「それと?」
「人間達は私達の事を何て呼んでいるかが分かりました」
「……人間達は何と?」
「〝艦娘〟です」
「艦娘……それが我々の正体――」
西暦2082年、月面要塞。
「ジーク・ハイル!!」
広い部屋の中にナチス式敬礼をした艦娘の少女の声が響いた。
部屋は真っ暗で辛うじて少女の10メートルほど先に置いてある電気スタンドのオレンジ色の明かりが大きい執務用の机を照らしその持ち主をうっすらと照らす。
「……来なさい」
机の持ち主は老えた声で不機嫌そうに少女を呼んだ。
上空から見るとハーケンクロイツの形をした巨大な月面要塞の最上階には月面旗艦の専用部屋がある。
司令室と作戦室それに月面旗艦の私室を備えたこの部屋はまさにナチス第四帝国の中心だ。
「旗艦閣下、本日はお誕生日おめでとうございます!」
少女は緊張したようすで誕生日を祝う言葉を言った。
「世辞はよい。用件を言いたまえ……」
「はっ!」
少女が緊張するのは無理はなかった。
何せ少女の前にいるこの老女はナチス第四帝国の最高司令官である月面旗艦、戦艦〝ビスマルク〟なのだから……。
その全貌は部屋が暗いため全てを確かめることはできない。
「先程、月面親衛艦隊旗艦、プリンツオイゲンが帰還ました!」
「……それで?まさかそんな事を言うためだけに私のところに来たんじゃないだろうな?」
「い、いえ……実はプリンツオイゲンから緊急の用件があるらしく……月面旗艦閣下にはぜひ、第十三番メインドックに来ていただきたく思います!」
「……良かろう。車の準備をしろ」
「はっ!」
少女はナチス式敬礼をして部屋から出ていった。
プリンツオイゲンめ……何を考えている?。
これで何もなかったらヤツを月面親衛艦隊旗艦から解任して月面要塞地下の豚養殖場に送ってやる……。
ビスマルクは明らかに機嫌を悪くして、そんな事を考えながら机に置いておいた制帽を被り、立ち上がってコートかけからコートを取って羽織った。
ビスマルクとプリンツオイゲンは仲が悪い。
プリンツオイゲンは次期月面旗艦を目指しているのだ。
プリンツオイゲンはアドミラルヒッパーの三番艦だが第一世代、つまり地球から月に脱出した地球出身の艦娘ではない。
プリンツオイゲンは月面で建造された第二世代、別名、月面世代ともいう世代の艦娘だ。
月面で建造されたことにより第二世代の艦娘は第一世代とは遥かに違う存在になっている。
あの小娘が……。
あんな小娘に月面旗艦の座をくれるくらいなら第四帝国は私が壊してやる……。
アドミラルヒッパー……お前が居れば……。
ビスマルクは金で装飾された元帥棒を握りしめ引き出しからアーモンドのお菓子の入った箱を取りだし制服のポケットに入れて車へと向かった――。
電は今、何が起きているのか理解できなかった。
電は謎の武装勢力に襲われたあと、バイクに乗せられ謎の月面要塞の内部にある巨大な工場。どちらかと言えば巨大なドッグの様な場所に連れてこられていた。
電が居るのはそのドックのいっかく、広場の様な場所に居た。
周囲にはオカルト番組に出てきそうなUFOが沢山置かれている。
最初、電は宇宙人に捕らえられたのでは?と思っていたが、それはすぐに否定された。
何故かというと、根拠は三つある。
一つ目はこのドックだ。このドックはどう見ても地球にあるような工場や施設、特に電の目には第二次世界大戦中から、その前にあったような古い型式の施設に見えた。
二つ目はUFOに書かれているマークだ。明らかにドイツ軍の認識マークが書かれている。
三つ目は、これが一番大きな根拠だがここで働いているのは間違いなくドイツの艦娘達だ。
ガスマスクをしてシュタールヘルムを被る者も居るし日本では見たことのない娘達もいるが直観で艦娘だと分かる。
ただ、全員に共通しているのは、あの悪名高きナチスの腕章をしていることだ。
と、その時、遠くから車のエンジン音が聞こえた。
だんだん近づいてくるその音に慌てるように電の周りに居た艦娘達が自分の作業を止めて全員が整列した。
『国歌斉唱!総員整列!』
突然、あちこちに設置されているスピーカーから放送が鳴り始めた。
そして音楽が流れ始める。
どうやらドイツの行進曲、〝ラインの守り〟の替え歌のような曲で、それに対して整列する艦娘達は電から見ると何だか第二次大戦中の様で嫌な雰囲気を感じた。
電達、艦娘は基本的に同じ艦娘同士なら様々な言語を理解できる。
この行進曲は古いものの様だがドイツの艦娘が歌っているらしくその内容を電は大まかに理解することができた。
内容はこうだ。
〝轟く咆哮 燦燗の大空
王国へ ドイツへ
いつの日か帰らん〟
〝祖国の叫び 艦娘の叫び
我らを 招かん
鋼鉄の誓いにて
母なる大地 解放せん〟
〝前途は洋洋 嵐は晴れて
ドナウ エルベ ライン
鉤十字は はためく〟
一体、この人達は何者なのだろう?
なんで……如月ちゃんが、死ななきゃならなかったのです……?。
電の中に興味と疑問がグルグルと巡る。
すると、目の前にあったトンネルから三台の古いデザインの車が一列になって出てきた。
ベンツだ。
三台のベンツは一列で広場に停車すると前と後ろの二台のベンツの扉が開きドイツの艦娘の制服を着た数名の歳をとった女性が現れた。
明らかに高級将校クラスの女性達だ。
彼女達の一人が真ん中に止まったベンツに寄ると後部座席の扉を開けた。
そして、一人の制帽を被った老女が現れる……。
「「ハイル・ヒトラー!!」」
老女が現れた瞬間、整列していた艦娘達が一斉に右手を上げて上げてナチス式敬礼をした。
「あれ?……どこかで見たような気がするのです……」
電はその老女を見た瞬間呟いた。
こんな人は知らない……。
だが電はその老女に何処か見覚えがあるような気がしてならなかった。
その老女の髪型は白髪のショートヘア、服装はドイツ軍のコートを着ていたためよく分からなかったが、その老けた顔たちには見覚えがあるような気がした。
「プリンツオイゲンくん……これはどういう事かね?事と場合によっては……」
老女が不機嫌そうな顔で電を連行してきたプリンツオイゲンの側による。
プリンツオイゲンは宇宙服をかねていると思われるガスマスクを外して外してその顔を露にした。
その表情は電の知るプリンツオイゲンの優しそうな表情ではなく固く怖い印象の顔だった。
「やっぱり、プリンツオイゲンさんなのです……」
プリンツオイゲンの顔を見た電は無性に悲しくなってきた。
同じ艦娘なのにどうしてこんなことを……そんな感情が溢れてくる。
「月面旗艦閣下!地球からのスパイが浸入したのです!」
「スパイだと……?」
月面旗艦と呼ばれる老女は眉間にシワを寄せた。
「奴らはヘリウム3の採掘場付近に着陸し、偵察活動を行っていたのです!」
「それは確かに大変だな……」
「それを発見した我々は奴等の宇宙船を破壊し、スパイの一人を処刑。もう一人の指揮官と思われるスパイを捕虜にいたしました!」
「どれ、見せてみよ」
「はっ!ただいま!」
プリンツオイゲンはそう言うと電を引っ張り出し地面に叩きつけ電が動けないように地面に押し付けた。
「〝私〟が捕らえたのです月面旗艦閣下」
「……うむ」
偉そうにプリンツオイゲンが言うと月面旗艦はまた顔を嫌そうに歪めた。
重巡洋艦プリンツオイゲン。
アドミラルヒッパー級重巡洋艦三番艦の艦娘だ。
月面要塞の建造ドッグで三十年前に建造された。
第一世代の地球出身艦娘とは違い真の月面艦娘であるプリンツオイゲン達は擬装が必要とする燃料はヘリウム3。
燃料問題は永久に解決しまさに次世代の艦娘だ。
今は月面旗艦の座を狙って現月面旗艦と対立している。
「ヘルメットを取れ」
月面旗艦の命令でプリンツオイゲンが電のヘルメットに手をかけた。
そしてヘルメットからプシューと空気が抜ける音がしてヘルメットが外れた……。
電の顔がついに露になる……。
「はわわわわ……」
電はもうダメだ、おしまいだと、覚悟した。
しかし、電の姿を見て息を飲んだのはプリンツオイゲンや月面旗艦の面々だった。
「な、なんだ……これは……」
「か、艦娘……だと」
その場に居たドイツ艦娘からどよめきの声が上がる。
それも、当然だった。
プリンツオイゲンや月面旗艦を含めて第四帝国の艦娘達は艦娘は自分達、支配民族の国家、ドイツやイタリアにしか居ないと思っていたのだ。
しかし、現実はどうだ。
人間かと思っていた宇宙飛行士の正体は艦娘だった。
しかも、劣等人種である黄色人種の艦娘がいる。
自分達の固定概念が一気に壊れた瞬間だった……。
『帰ってきたヒトラー』が日本でも公開されるそうですが
早く見たくてしょうがありません。
原作は超面白いですからね。非常に楽しみにしています。
アイアンスカイ2も早くみたいですね。