問題児が幻想入りするそうですよ?   作:ふぐの刺身

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第三話

 互いの初撃。

 拳がぶつかり合う。

 正面からの力勝負に、敗れたのは萃香の方だった。彼女の小さいながらも莫大なパワーを秘めた体は後ろに大きく後ずさった。

 

「うぉっと!?」

 

 鬼の少女はすぐさま距離を取り、構えた。

 

「お前、人間だと思っていたが、どうやら違うようだな」

 

 驚いた言いの萃香に、十六夜はヤハハと笑って答える。

 

「残念ながら俺は正真正銘の人間だぜ。お前こそ、人間じゃないだろう?」

 

 ちなみに先ほどの彼の力は本気ではない。もし相手の耐久力が普通の人間並みだったとしても、死なないレベルーーあくまでも死なないレベルだがーーに保険として抑えてあった。しかしそうだとしても萃香側も傷一つないのを見て、十六夜は言った。

 

「もちろんだ。私は鬼だからな」

 

「鬼か。そいつは面白そうだ」

 

「ああ、そして鬼の本領は、力だけじゃないぞ!」 

 

 そう叫ぶや否や、萃香から顔大くらいの大きさの火の玉が発射する。

 

「しゃらくせえ!」

 

 十六夜はそれを力技でかき消した。消え去る火の玉だが、しかしその向こうに萃香はいない。

 

(フェイクか……!!)

 

「こっちだ!」

 

 彼女は既に十六夜の横に移動していた。今度は青黒い球が向かってくる。

 その球は十六夜の目の前まで来ると、爆発した。

 

「っと!」

 

 十六夜は防御態勢を取りながら大きく後ろに跳躍。逆に萃香は前に跳びその距離を一気に詰める。

 

「鬼符『ミッシングパワー』!」

 

 萃香の体が猛スピードで巨大化し始める。巨大化による腕力強化と、巨大化する勢いを拳に乗せて、思いっきり十六夜にふるった。

 ガツンッ!!

 彼もそれに反応した。今度は手加減なしだ。鬼の腕力と妖力によって多大なエネルギーを持った拳と、地殻変動に匹敵する拳がぶつかり合う。

 十六夜が上。萃香が下。彼らの位置的な要因もあったのか、二度目の力勝負でも勝利したのは十六夜だった。

 

「ぐぅっ!」

 

 萃香は巨大化するのをやめ、元の大きさに戻した。

 

「なんて出鱈目な力だ……。お前、本当に人間か?」

 

「よく疑われるけどな、もう一度言おう。俺は人間だぜ」

 

 十六夜は軽く服の煤を払うと、腰を落とす。

 

「--次は、こっちから行かせてもらうぞ!」

 

 強く踏み込む。その踏み込みだけで、その足元が崩れた。

 常人なら知覚すらできない速さだったが、鬼の少女は対応した。

 

(ーー真正面からの勝負は下策か。なら!)

 

 萃香は辛うじて防御態勢を取り、ダメージを後ろに流すことで軽減する。そして十六夜が拳を振り切ったその瞬間、彼に最も隙が生まれる瞬間に、鬼は動いた。

 

「酔夢「施餓鬼縛りの術」!」

 

 萃香の手から現れた鎖は十六夜の腕に巻き付いた。これは相手の力を奪っていく絡め手。彼の腕力なら引きちることもできるかもしれないが、その間は力を奪うことができる。

 いくら化け物めいた身体能力を有していても、その力の根源を奪われては発揮できないだろう、という考えだ。

 彼女の考えは正しい。--ただし、十六夜以外ならの話だが。

 鎖は、彼の力の根源を漏えいさせることはなく、彼に巻き付いた瞬間砕け散った。

 

「え!?」

 

 萃香は驚きの声を上げる。十六夜はそれを聞いて鎖に何かあると察したのか、こう言った。

 

「悪いが俺の体は、そういうのは効かない体質でな!」

 

 くるりと体を回転させて、回し蹴りを萃香に叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

 萃香の体が後ろにぶっ飛ばされる。流石に直撃は、鬼といえどダメージはとても大きい。

 

(並の物理攻撃もダメ、特殊攻撃もダメとなると……。……ならば、大きな出力の物理攻撃しかない!)

 

「鬼火「超高密度燐禍術」」

 

 地面を叩き、大量の溶岩弾を噴出させる。それを一気に十六夜の方に飛ばした。

 

「--はっ!」

 

 流石の十六夜も、全ては捌ききれなかったのか幾つかまともに喰らう。避けられたマグマの塊が彼の後ろで着弾した。

 溶岩弾を幾つかモロに受けた十六夜だが、その体には大きな傷は見られなかった。

 それを見て、萃香は大笑いした。

 

「あははは!ここまでやってもダメか!なら、私の負けでいいぞ!」

 

「なんだよ、本気出してもいいだぞ?」

 

「私がこれ以上力を出したら、ここら一帯が壊滅しかねないからな。--それに、お前もまだ切り札を残しておるように見えるぞ?また、機会があったら目一杯ぶつかろう」

 

 互いに、拳を交える中で互いの力量を少しは見抜いていたのだろう。そんな会話を交わした。

 雨降って、地固まる。の言葉にように、喧嘩によってできた友情のようなものが生まれた二人の間。そしてそこに割って入るものがいた。

 

「……何が「これ以上やったらここら一帯が壊滅しかねない」よ。既に神社が壊滅してるわ!」

 

 楽園の素敵な巫女、博麗霊夢だった。目には涙を浮かべており、その後ろにはそれを気遣う魔理沙の姿も見られる。

 

「ん?」

 

 そう言われて、十六夜と萃香は周りを見る。

 十六夜の踏み込みで地面は大きく崩れ、博麗神社は傾いていた。更に萃香の溶岩弾により、社そのものが破壊されている。燃えていないのは、霊夢と魔理沙が消火活動したからだろうか。

 

「あんたらそこで正座しなさい!」

 

 博麗の山に、霊夢の叫び響き渡った。

 

ーーー

 

 散々説教喰らった十六夜は、魔理沙と共に博麗の山を降りていた。

 彼は観光の帰りに神社を直すための木材を持って帰る約束になっている。

 

「私のスピードに着いて来られる時点で普通の人間じゃないとは思っていが、まさか萃香と互角以上にやり合えるクラスだったとはな」

 

「まあな。これでも元の世界では苦戦も多かったんだが」

 

「箱庭、だっけか?すげえ世界だな。今度聞かせてくれよ」

 

「いいぜ。その前に、俺からもいいか?」

 

「ん?なんだぜ?」

 

 最初は十六夜に良い思いを抱いていなかった魔理沙だが、十六夜の強さを目の当たりにして見る目を変えたらしかった。最も、今でもセクハラされたらぶん殴ってやる心構えではいるが。

 

「さっきの角ロリが、」

 

「角ロリ?」

 

「が、『龍』がなんたらって言ってたんだが、何かあったのか?」

 

「ああ、龍異変のことか?お前が来る少し前の話なんだがな。昔からいると言われていた『龍』が、遂に現れたんだ。まあ、その龍はすぐに姿を消したがんだけどな」

 

「龍か」

 

 十六夜が龍と言われて思い出すのは、やはり最強種の一角である龍の純血種だろうか。そして、その龍と戦ったアンダーウッドのことを想起する。

 

「しかも今まで言われてた普通の龍じゃない。真っ赤な龍だ。龍は幻想郷じゃ全てを創造する神様だって言われてるからな。何か起こるんじゃないかと騒いでるんだよ」

 

 ま、私は別に心配してないけどな。と魔理沙は笑う。

 

「ふうん。龍ね。是非お目にかかりたいもんだ」

 

「それでさ、今日はどこに行くんだ?冥界、天界、地獄まで、何でもあるぜ」

 

「よりどりみどりだな。ここから一番近いのは?」

 

「地底の旧地獄だな。山を降りてすぐ近くにあるぞ」

 

「なら今日はそこにしよう」

 

「分かったぜ。じゃあこっちだ」

 

 魔理沙は二手に分かれる山道の右側のを選ぶ。

 二人の健脚で十数分、すぐに地底の入り口である縦穴に着いた。来た人間を飲み込むようにぽっかり大穴が開いている。

 その下をのぞき込んでいる十六夜に、魔理沙が言った。

 

「この穴、足場がないから降りるには自由落下か、空中を飛ぶしかないんだが、どうする?私の箒に乗せてやろうか?」

 

 十六夜は拳大くらいの石を拾ってくると、その穴へと放り込んだ。少しして音が反響して来る。

 

「いや、これくらいの深さなら落ちても大丈夫だ」

 

 帰って来る音の時間から計算したのだろう。十六夜が言った。

 

「……だろうな。じゃ、勝手に行かせてもらうぜ」

 

 出鱈目加減に呆れたように魔理沙は言うと、箒に跨って地底へと進み始めた。

 十六夜も足を踏み出して落下する。

 数秒後、まず十六夜が地底へ到着。難なく足から着地する。その際の音が縦穴内にこだまし、そのすぐ後に魔理沙が降りてきて十六夜の横に立った。

 地底ということもあってほの暗い。魔理沙は魔法で明かりを作った。

「旧地獄と言うだけあって、血の池地獄や灼熱地獄、何でも揃ってるぞ。私もここの地理には詳しくないからな。ここの主人にガイドでも頼むか」

 物凄いふてぶてしいことを言う魔理沙。十六夜も反対せず、その主人が住んでいる館ーー地霊殿へ向かうことになった。

 これと言って何事もなく地霊殿へ到着した。魔理沙としては途中で妖怪と一戦二戦交えるかと思っていたが、なんだか拍子抜けである。

 そこに丁度、地霊殿から八咫烏が慌てたように出てきた。

 

「あ、おーい!霊烏路ー!」

 

 魔理沙がその八咫烏ーー霊烏路空に向かって声を掛けた。

 

「んー?あ、この前の人間じゃないか。何しに来たの?」

 

「ちょっと旧地獄を観光させてもらおうと思ってな。サトリはいるか?」

 

「残念。私たちは忙しいんだ。というか、その隣の人間は誰だい?服装からして外来人かい?」

 

「ああ、こいつは逆廻十六夜、少し特殊だけど外来人だ。そしてあっちが霊烏路空、核融合が使える八咫烏だ」

 

 後半は十六夜に向かって、空の紹介をする。

 

「核融合?そいつは凄いな。妖怪や神様の世界も科学に目を向けてるのか?」

 

 第三種永久機関が核融合をほめる。本人は無自覚だが、中々の皮肉である。

 

「いや、あいつだけだ。正確に言うとあいつに核融合の力を与えた神様が別にいるわけなんだが」

 

「面白い神様だな。今度会ってみたい」

 

「やっぱりその男外来人か。だったら早く帰った方がいい。ここんとこみんな殺気立ってるから、殺されても知らないよ」

 

「そうだった、その話だ。なんでお前達は忙しいんだ?」

 

 少し、空は考えるように頭を抱える。そして数秒後、思い出したように手を打った。

 

「サトリ様がいなくなったんだよ」

 

「忘れてただろ絶対……」

 

 鳥頭である。

 

「まあいいか。サトリがいなんなら勝手に観光させてもうらうぞ」

 

「別にいいけど、死んでも知らないよ」

 

「よし、言質は取った。行くぞ、十六夜?」

 

 魔理沙が十六夜の方を見ると、真面目な顔で何かを考えているようだった。

 

「どうしたんだ?」

 

「……いや、何でもない。そうだな、行くぞ」

 

 ハテナマークを頭に浮かべる魔理沙と、さっきまでの真面目な顔はどこへやら、な気楽そうな十六夜は、とりあえず血の池地獄を見に行くことにした。

 




地殻変動が具体的にどれくらいの威力なのか分からないから戦闘描写が難しいと思う今日の頃。
ちなみに萃香は力の強い鬼だし十六夜も防御をしなくてはならない攻撃をするだろうと言う感じで書きました
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