問題児が幻想入りするそうですよ?   作:ふぐの刺身

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第四話

 旧地獄街道。

 江戸時代のような雰囲気の建物が立ち並び、それを照らす仄かな光が少し不気味な雰囲気を醸し出している。

 

「地底に街があるとは思わなかったな」

 

「元々、ここの地獄が使われていた時のものだな。んで、地獄のスリム化の後に鬼たちが住み着いて、またこうして賑わっているってことだ」

 

 二人は団子屋で買ったみたらし団子を頬張りつつ、旧地獄街道を歩く。地獄の主であるさとりがいなくなったことはこの辺りまで来ると騒ぎ立てることもないのか、いつも通りの日常を送っていた。

 十六夜と魔理沙の耳に、どこからか騒ぐでいる大声が聞こえてきた。

 

「ん?なんだ?」

 

 何やらこじんまりとした居酒屋に人が集まっている。その中心には、顔を朗らかに赤らめた、体操服のような服を着た女性がいた。赤いは少し酒の酔いが回っているせいであろう。

 

「星熊勇儀じゃねえか。何やってるんだ?」

 

「面白そうだ。行ってみようぜ」

 

 十六夜と魔理沙が近づいていくと、周りの酔っ払いの妖怪達が騒ぎ立てる。

 

「おお?次の挑戦者か?」

 

「若いねえ。恋仲かい?」

 

「はぁ?誰が恋仲だ!」

  

 妖怪のからかいに魔理沙はムキになって反応する。

 

「何やってんだ?」

 

「ちょっとした賭け事だよ。この星熊勇儀腕相撲で勝てたら、今日から一週間、この店での酒代はタダ。その上、この店にある一番良い酒をくれるってんだ」

 

「もちろん、この鬼と普通にやって勝てるわけがないからな。星熊勇儀には勝負ごとに度数の強い酒を飲んでやってもらうってわけさ。賭けに出るには一朱(≒1000円)必要だが、どうだにーちゃん、やってみるかい?」

 

 十六夜はヤハハと笑う。彼も怪力ならば並大抵の人間に負けない自信があった。

 

「魔理沙、お金かしてくれねえか?」

 

「はぁ?私?後で返すんだろうな?」

 

「もちろんだ」

 

「一応言っておくが、そいつは踏み込むだけで建物が崩壊するレベルの怪力の持ち主だぞ。用心しろよ」

 

 魔理沙は懐からその金額だけ出すと十六夜に渡した。

 

「次の相手はあんたか。その貧弱そうな腕、折れてしまわないかい?」

 

 星熊勇儀の挑発。十六夜は笑って答える。

 

「生憎、頑丈ってのがとりえでね」

 

 勇儀は一気に酒を煽ると、席に座った十六夜の腕と組みあった。店の店主が横に立つ。彼が審判をするのだろう。

 

「いざ、尋常に……始め!」

 

 両者の怪力が爆発する。

 

「くっ……!」

 

 星熊勇儀はその怪力に驚く。

 彼女の腕力は今朝十六夜が戦った伊吹萃香よりも強いが十六夜の腕力が強すぎた。 

 地殻変動にすら匹敵する腕力が、勇儀を押していく。

 

「おお!」

 

「これは凄い!」

 

「このにーちゃん、何者だ!?」

 

 ギャラリーも騒ぎ立てていく。魔理沙も改めて十六夜の実力に関心するのだった。

 

「かっ!やるな小僧!」

 

 勇儀側が持ち直した。相手の実力に酔いが醒めたのだろうか。もう一方の手で机の端を掴み、腰を落としている。

 じりじりと十六夜がが押されていくが、彼も負けていなかった。全力を勇儀のその腕にぶつける。

 数秒の硬直の末、星熊勇儀の腕が台についた。

 

「おおおおおおお!あの鬼に勝つ奴が現れたぞ!」

 

「はっはっは!こりゃあすごい!」

 

 勇儀は頭をかきながら快活に笑った。

 

「すげえじゃねえか坊主。見たところ人間みたいだが、」

 

「俺は紛れもなく人間だぞ。これで二回目だなこの台詞」

 

「まさか負けちまうとはよぉ。商売あがったりかもなこりゃあ」

 

 店主がからかうように言う。

 

「まさか、こいつ以外にゃ負けないよ」

 

「あ、にーちゃんうちで好きなだけ食っていきな。にーちゃんの彼女も特別に無料にしてやるぜ」

 

「だから私は彼女じゃないっつーの!」

 

 言いつつ、ちゃっかりごちそうになる気なのかこちらに近づいてくる。

 

「おやじ!俺にも一杯くれ」

 

「あいよ、お前らはちゃんと払えよ」

 

 ギャラリーたちは酒が飲めればなんでもいいのか、がやがやと酒を注文して行き、ちょっとした宴会のようなものが始まった。

 

「お前、恰好からして外来人のようだが、外の世界の人間はお前みたいな化け物なのか?」

 

「まさか。俺は少し変わった外来人だからな」

 

 それを聞いて勇儀はにやりと笑う。

 

「そうか。紫が連れて来たのか?」

 

「脇巫女や魔理沙の話を聞く限りそうっぽいな。境界を操る妖怪だっけ?」

 

 二人が会話している間にも周りの酔っ払いが十六夜に酒を勧める。妖怪が飲む酒ということもあり、どれも度数が強い物ばかりだが、本物の酒呑童子と一緒に飲んだこともある十六夜は周囲の飲む速度に着いて言っていた。ちなみに魔理沙は既にべろんべろんである。「おい!誰か女形の妖怪はいねーのか!?この嬢ちゃんを寝かせてやってくれ!」という声が聞こえる。

 

「いい飲みっぷりだなぁにーちゃん!飲め飲め!」

 

 と、宴会は更に加速して行く。

 

 

 

 

「おい魔理沙、帰るぞ」

 

「ふぇ?|ほうはへふのは≪もうかえるのか≫?」

 

 店の奥の部屋で眠っていた魔理沙をたたき起こす。それでもまだぼぉっとしているので魔理沙の首根っこを掴みずるずると引きずった。もう片方の手にはもらった酒がある。

 地霊殿を一足で飛び上がると、魔理沙を放置して適当にその辺の木を素手で殴り倒す。今朝約束した直すための木材である。このことから察するに博麗霊夢は自分で社を直すつもりのようだ。

 数本の幹を肩に担ぎ、その幹の先端に魔理沙をのっけて、十六夜は博麗の山を登った。

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