ハリー・ポッターと病魔の逆さ磔   作:三代目盲打ちテイク

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最近サルビアちゃんが健康でとてもツマリませーん。
初期のゴハァ! とか言ってたサルビアちゃんって可愛いよねぇ。
病魔再発させてぐちゃぐちゃであがく姿なんてそそるじゃないか。
だって、彼女はそこでこそ一番輝いている。
ぼぉくは、その輝きを永劫愛していたいのさ。主と一緒でねぇ。
アハハハハハ――

君によく似た男の親友より愛をこめて♡




第38話 ドラゴン

 ロンが代表選手に選ばれた。発表によれば石神静摩、日本の魔法学校の代表ということにするらしいが、ホグワーツの生徒から二人選ばれたという事実は変わらない。

 その事実に、グリフィンドールは沸き立っている。それに対して思うところがあるのはハッフルパフだ。彼らは目立たない。

 

 ゆえに、この機会を最上のチャンスととらえていた。そこに割り込まれたと思われたのだ。だが、大っぴらに何かをするということはなかった。

 選ばれたのはあのロン・ウィーズリーだからだ。彼を知っている者はこう思おう、ハリー・ポッターの付属品だと。

 

 ハリー・ポッターには箒やクィディッチの才能がある。彼の友人ハーマイオニー・グレンジャーは誰もが認める秀才だし、サルビア・リラータに至っては学年、いやこの学校随一の天才だと言っても過言ではない。

 だが、ロン・ウィーズリーには何もない。だからこそ、セドリック・ディゴリーの敵ではないと思われたのだ。ゆえに、ハッフルパフは座すのみ。

 

 我らが英雄セドリック・ディゴリーの誕生を今か今かと待ちながら試練を待つのだ。

 

 そんな空気をロンは感じ取って不機嫌になっていた。

 

「仕方ないわよ。まだ14歳なんだから。当然でしょ」

 

 それに付き合わされているサルビアは内心で苦い顔をしていた。いや、というかこの塵屑うざいとぶっちゃけている。

 ハリーとハーマイオニーは用事があるらしくていない。

 

 だから、サルビアが付き合わされているのだ。

 

「でもさ」

「でもじゃないわ。それが嫌なら見返して見なさいよ。ここで不機嫌に愚痴を垂れているのがあなたのやることなのかしら。あなたはね、日本の魔法学校の名を背負っているのよ」

「…………」

 

 その自覚が足りない。お前は魔法学校の名誉を背負っているという自覚。

 それも当然だろう。彼はそういうことにはとんと縁がなかった人種なのだから。

 

「あなた、試練対策とかしているのかしら」

「え、でもまだ試練の内容は発表されていないし」

「はあ、それでも過去の記録はあるでしょう。そういうことを調べて、対策をするの当然よ」

 

 そのためにハリーとハーマイオニーは動いている。

 

「それであなた、これから代表選手の集まりがあるんじゃなかったっけ?」

「あ――」

 

 ロンは走った。

 この日は代表選手の杖を調べることになっていた。何とか時間通りに間に合って、部屋に入るとロン以外は全員集まっており、バグマンと記者――リータ・スキーターと名乗った――が並べられた椅子に座って話していた。

 リータ・スキーターは、ロンに気が付いて視線を向ける。それからバグマンと話を切り上げて、こちらにやってきた。

 

「ロン・ウィーズリー、少しだけお話の時間をいただいてもよろしいかしら? ほんのちょっとでいいのですけど。みなさんにもどうようのインタビューをさせていただきましたから」

「え、あ、はい」

 

 そう答えるや否や有無を言わさずにそそくさと部屋の入り口へ向かい、柱の影へ。そこでインタビューをするということなのだろう。

 ついていくと、

 

「自動速記羽ペンQQQを使っていいざんしょ? こちらのほうが速く取材ができるますし」

「自動、なに?」

「自動速記羽ペンQQQ、言動に合わせて素早くかつ精密に動く魔法の羽ペンざんす」

「はあ」

 

 そんなものがあるのか。課題のレポートとかで楽できるかもしれない。そんなことをロンは思った。

 

「それじゃまずは……どうして三校対抗試合、いえ、今は四校対試合ざんすね、に参加しようと決めたのかしら?」

「誰かが僕の名前を勝手にゴブレットに入れたんだ」

「なら、もともと参加しようという気はなかったと?」

「できることなら参加したかったよ」

 

 一千ガリオンである。その栄誉は誰だって欲しいに決まっている。

 

「ほうほうほう」

 

 それを聞いた彼女と羽ペンは意味深に素早く動いている。こちらからでは何が書いてあるか読めないので、わからないが、なんだか嫌な予感がした。

 チェスが得意であるからこういう相手との読み合いということはそれなりにできる。さっきうった手、それを基点にこの女は何か嫌な事をした。

 

 そんな気配がしたのだ。

 

「あの――」

「あらあら、そうなの。それじゃ、そんな貴方が試合に挑む心構えを聞かせてもらえるざんすか?」

「ええと、そりゃ優勝を狙いたいよ」

「なるほどなるほど」

 

 ――ああ、なんだろう。

 実に嫌な感じというか。言っていることと書いていることが一致していない気がする。気のせいかもしれないが。

 

「あの、メモを見せてもらっても?」

「ああ、大丈夫。きちんと書いてあるざんすから。それじゃあ、次の質問だけど――」

 

 みっちりと嫌な質問をされたあとは杖調べの儀式となる。

 

 杖調べの儀式は六人の審査員、ダンブルドア校長先生にカルカロフ校長、マダム・マクシーム、クラウチ、バグマン、石神静摩の前で、オリバンダーが行う。

 オリバンダーは部屋の中央に立ち、選手を一人ひとり呼んで杖を調べていく。フラーから始まりセドリック、ビクトール・クラム、そしてロン。

 

「本体はトネリコ、芯は一角獣のたてがみ。良く覚えておる。君のお兄さんが買って行った杖じゃ」

 

 チャーリーのおさがりである。

 

「ふむ、少しくたびれておるが、杖の状態は悪くはない。問題はないじゃろう」

 

 その後は選手と審査員の集合写真と、選手個別の写真を撮影して解散となる。その時、石神静摩がやってくる。

 

「おうおう、調子はどうじゃ、うちらの代表」

「えっと、まあまあ」

「おうおう、それは上々じゃ。ええか、その制服はのう。うちの魔法学校でも特別な制服じゃ。そいつはのォ。英雄が着ちょったもんと同じ制服よ。わかるかのォ。その制服に恥じない結果を期待しちょるけぇのォ!」

「えっ――」

「なぁに、気楽にやれ。この俺の代表じゃ。それなら、仏だろうと天魔だろうと、裏ァ、誰にもとれん。そんくらいの気概でのぞんでみィ」

 

 期待したり、気楽でいけって、言っていることが尽く変わる。ロンは思った。この男の言うことはあまり気にしないでいいんじゃないかと。

 

「おお、それとな。どれくらいかあとで呼びにいくけェの」

「はい?」

「楽しみにしちょれ」

 

 その宣言は数日後に実現することになる。

 

「ロン、今までの三大魔法学校対抗試合では、初戦は強力な魔法生物と戦って生き残るという課題が多かったそうよ」

「そうなの?」

「そうよ、ハリーと二人して色々調べたわ。どれもこれも危険な魔法生物との戦いだったわ」

 

 それを聞いて、本当に僕は大丈夫なのだろうかという不安がロンの心中で鎌首をもたげてきた。

 その矢先だ、いきなり眠っていると盛大にたたき起こされ、そのまま連れ出されたのだ。

 

「なんなんですか!」

「良いから来い。おっと、そこの坊主なんか便利そうじゃ。来い!」

「は? え?」

「おい、マントあるんなら持って来い。俺の勘がそういっちょる。お前さんのマントは使えるってのォ!」

 

 混乱のまま、石神静摩にハリーともどもロンは連れ出された。

 

「透明マントのこと知ってたのかな」

「さ、さあ」

 

 彼の後ろで透明マントを被ってハリーと二人で彼の後ろをついていく。

 

「今から見せるんは、お前の課題の相手じゃ」

「!」

 

 課題の相手。つまり、課題の内容について教えてくれるということか。

 

「ほれ、見てみぃ」

 

 彼の指先を追って、視線を前に。

 

「――――っ」

 

 思わず叫びだしそうになったのを必死に押しとどめた。

 そこにいたのは誰もが良く知る生物だったからだ。

 

『GRAAAAAAAA――――』

 

 咆哮をあげる魔法生物。トカゲのようであって、トカゲでなく、翼を持った偉大なる魔法生物の頂点。王者と言っても過言ではない。

 その者の名は――。

 

「ドラゴン――」

 

 ルーマニアのチャーリー兄さんがいた。つまりはそういうことだ。

 

 これと戦う。それが第一の試練。ここに来て、自分が何に足を突っ込んだのかと理解した。

 

「おうよ、ドラゴンよ。こいつと戦う。それが第一の試練よ。やるからには勝つ。お前さんは、日本の名を背負っちょるんじゃ。気張れ、漢みせてみぃ! かははははは」

 

 ドラゴンを前にして平静でいられる者などいはなしない。人間がドラゴンに勝てるはずがない。だからこそ、世界に残る伝説がある。

 竜殺しの逸話。マグルの世界では御伽噺であるが、魔法界では異なる。まさしく、正しくそれは伝説なのだ。

 

 魔法使いでは勝つことの出来ない圧倒的強者が牙をむく。その咆哮は聞いただけで失神しそうになる。失神しなければ、恐怖で呼吸困難に陥り気絶するのがオチ。

 そんなのと戦う?

 

 ――そいつら頭おかしいんじゃないか?

 

「ろ、ロン!」

 

 ロンは何も言えなかった。隣のハリーが連れ帰ってくれなければ一晩中あの場所にいたかもしれない。

 談話室に戻った二人をハーマイオニーとサルビアが迎える。

 

「ロンはどうしたの? 何があったの?」

「…………」

 

 黙りこくったロンに心配そうにハーマイオニーが訪ねる。

 答えたのはハリーだった。

 

「第一の課題の内容を教えてもらったんだ。ドラゴンだった」

「まあ!?」

「ふぅん」

 

 ハーマイオニーはなんてことでしょうと大いに驚いて、サルビアは対照的にまあ、そんなものかという風に納得した様子だった。

 

「なに、それであなた戦意喪失してるわけ?」

 

 何も言わないロンにサルビアがそう言う。

 

「仕方ないよ。僕だって、あんなのとは戦いたくないよ」

 

 ハリーもそう言う。ロンに抱いていた気持ちはすっかりどこかへ行った。あんなものと戦うロンが今は、不憫で仕方がない。

 だから、棄権したらと言おうとした。あんな危ないことする必要なんてない。そう言おうとして、

 

「駄目よ」

 

 サルビアの声が響いた。

 

「棄権なんて認められるわけないじゃない。良い、こいつはね。代表なのよ。ホグワーツじゃない。日本の魔法学校の。それがどういう意味か分かる? あなたはね既に背負っているのよ日本の魔法界をね。それとね、その制服はかつて日本の魔法界を救った大英雄が着ていたものよ。あなたはそれだけの期待と責任を背負っているという事なのに、まったく」

 

 呆れたようなサルビアの言葉。それはハリーにも理解できた。

 

 ロンはもう個人の事情で棄権もできないし、無様なこともできないという事だ。

 なぜならば、彼はもう日本の魔法学校の代表なのだ。ホグワーツ出身だからとか関係ない。そういうことになっている以上、最善を、それも優勝を目指して奮闘しなければならない。

 

 それがどれほどの重責なのだろうか。

 

「無理だよ、できっこないよ」

 

 ロンの言葉が四人以外誰もいない談話室に木霊する。

 

 重い、重すぎる。ただの平凡な魔法使いでしかないロン・ウィーズリーに日本の魔法学校の名誉なんて背負えるはずがない。

 重大すぎる責任。その重さも知らないで喜んでいた自分。重圧に今にも潰れてしまいそうだった。

 

 選択肢は三つ。

 

 ――勝利する。

 ――潔く敗北を認める。

 ――逃げ出す。

 

 いずれかを選べる。

 

「そう。なら良いわ。ハーマイオニーがうるさいからせっかく助けてあげようと思ったのだけれど、本人にその意思がないのなら、無価値よ」

「でも、サルビア」

「どれだけ私たちがやってもね。本人にその気がないのなら意味がないのよ。私は、こんな負け犬に何かを教えるつもりはないわ。でも、やる気があるのなら勝たせてあげるわ。あなたは勝ちたいんじゃないの? 見返してやりたんじゃないの? なら、やるべきことは一つよ」

「僕は……」

 

 勝ちたいのか。見返してやりたいのか。

 

「ロン、やるだけやってみようよ。ロンは凄いってところを、みんなに見せつけてやろうよ」

「そうよロン。あなただってやればできるんだから。やれるだけやってみましょうよ。ね、サルビアも何か言ってあげてよ」

「そうね……なら、勝ったらご褒美でもあげましょうか」

「ご褒美……わかった絶対に勝つよ!」

 

 男とは単純な生き物である。

 

「それじゃ、まずはドラゴンとはどういう生物からね」

 

 ハーマイオニーがもてる知識の全てをロンへと享受する。

 ドラゴンの武器とは何か。ブレスや爪、尾だ。そのどれも一撃喰らっただけで即死。

 

 つまり試合では如何にそれらを喰らわないかを考えなければいけない。盾の呪文はほとんど役に立たないだろう。

 だから回避だ。相手の動きを見て避ける。危ないところには近づかない。

 

「まあ、基本ね」

「ドラゴンの弱点は目よ。だから、結膜炎の呪いが有効なんだけど」

 

 まだ四年生でしかないロンたちには使えない。それにと、サルビアが否定する。

 

「それ、痛がって暴れるからむしろ危険よ」

「それもそうね」

「やるなら単純な魔法の組み合わせかしらね」

 

 ロンにでもできる魔法の組み合わせで、まずは相手の動きを封じる。

 

「どんな試練にせよ。ドラゴンと正面から戦うなんてナンセンスよ。魔法使いなら場を有利に運びなさい。あなたならわかるでしょ」

 

 使える呪文を最大限組み合わせて、勝つための道筋を作る。そうすれば、極論どんな相手にも負けることはない。

 ドラゴンなどと怯える必要はないとサルビアは言う。

 

「あんなの火を吐いておおきくて、爪が鋭いだけの飛べるトカゲよ」

「トカゲって」

 

 サルビアのあまりの言いようにハリーたちは絶句する。

 しかも、その程度には負ける気がいないという自負が感じられた。サルビアなら当然だろうと思うが。

 

「必要以上に怯えたら何もできないって話よ」

「そうね。あ、そうだわ! ロン、取り換えの呪文よ。それを使ってドラゴンの牙とか爪を全部マシュマロに変えてしまいましょ。そうすれば危なくないはずよ」

「そううまくいくかな」

 

 みんなでああだこうだいいながら対策を立てていく。

 その陰で、ロンは修業した。自分に使える呪文を精一杯できるように必死に。

 そして、試練の日がやってくる。

 




さあ、次回は第一の試練。
ロンの適性はチェスのみ。そんな中でどうするのか。
よくよく考えるとチェスが巧いってことは、筋道の組み立てが巧いってことだと私は思うわけです。
一手の意味を考えて、のちの手をゴールに向かって組み立てていくとか。
だから、ロンはその方向で行きます。勝てばご褒美だぞ。まあ、ご褒美はアレなんですが。

静摩さんが渡した制服は、英雄が着ていたものと同じもの。日本の魔法学校では特別な者しか着ることが許されないものです。
なぜかって、大人の事情というか。こちらの事情。
日本の魔法学校の制服って色変わるおかげでロンが着た時どんな色になるかわからないんですもん。
サルビアなら黒にできるんですけどね! 一発で闇の魔法使ったってバレますが。
そういうわけで戦真館の制服です。

ちなみになんかサルビアが凄い良いこと言ってますが、みなさん内心を想像してください。あのサルビアが本心からあんなこと言うはずがありません。騙されないでください。

さて、明日は7時からFGOのコラボイベント開始ですね。さあ、頑張るぞ。

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