僕は今ヤマトさんの家へ上がらせてもらっている。ヤマトさんがタケルくんを送ってここへ帰ってくるのにあと一時間程度はかかるだろう。
僕がこれから話す話に矛盾があると、以降信用されなくなってしまう可能性すらある。ちゃんとしたものを今のうちから考えておくか……。
僕の予想通り、構想を開始して1時間ぐらい経ったころ、ヤマトさんとガブモンは帰ってきた。
「お帰りなさい、ヤマトさん」
「あぁ、ただいま…、さて、冬。俺の質問には全部応えてもらうぜ」
……ヤマトさんが嫌な笑みを浮かべている。逃がす気は更々ないな、この人。まぁ、僕も逆の立場だったら洗いざらい喋ってもらおうとは思うけど。
「あ、そうだ。タケル君に電話しないと……」
ヤマトさんに断りを入れて自分の携帯に電話をかける。
するとワンコールしただけでタケル君が電話に出た……、さてはずっと待機してたな。
「もしもし、タケル君、聞こえてる?」
『うん、大丈夫!聞こえてるよ』
聞いた瞬間に分かるくらいに期待のこもった声だ。こっちも逃がす気はない……と。
「では、あらためまして。9番目の選ばれし子供の梓冬です。パートナーはさっきちょろっと見たと思いますがフォースモンです。以後、良しなに」
ここで、ヤマトさん達が自分のパートナーについて自己紹介をしてくれる。
そして、それが終わった途端に直ぐにヤマトさんが口を開く。
「なぁ、ずっと思っていたんだけど、なんで自分自身を8番目じゃなくて9番目って呼ぶんだ?」
『僕もそれが一番気になる!どうしてなの?』
この質問は最初に来るだろうなぁ~とは予測していた。
転生のことに関わるけど、誤魔化して説明はできる。
「それは敵さんの決めたことです。昨日、ピコデビモンとかいう蝙蝠に言われたことなんですよ。見つけたぞ、8人目ってね」
「ん、それじゃおかしくないか?それは向こう側もお前を9人目ではなく8人目って認識してるじゃないか!」
「そうじゃないんですよ。ですが、僕が選ばれし子どもとわかるような所持品は、真の所持者不明のデジヴァイスだけだったんです。どうやら奴さん達は8人目の紋章のコピーと思わしきものを所持しているらしく、8人目を探すというよりは8人目のデジヴァイスを探している……と言ったほうがいいですかね。そういえば、あのデジヴァイス今はどこに?」
「あぁ、太一……今朝ゴーグルかけてたやついたろ。あいつに渡しているよ。一応、俺らの中じゃあいつがリーダー格だからな」
へぇ~、原作と違えどちゃんと太一さんとこへ戻ったのか。
『うん?でもそれだと冬さんは選ばれし子供が全員で9人いることを最初から知ってたの?僕たちもデジタルワールドで随分経ってからわかったことなのに……』
「それもそうだな、冬、そこのところはどうなんだ?」
なるほどそういう質問も予測はできたな、ただこれは難しい。確かに原作でも8人いるっていうのは中盤になって判明したことだ。それをデジタルワールドにも行っていない僕がどうやって知ったか、か……
デジヴァイスを手にした時にデジヴァイスが出てきたパソコンに文字が映し出されていた……
でもいいけど、あの作り話をしておこう……この後の話の為に。
「お告げとでも言いましょうか。僕はフォースモンと会って以来、夢を見るようになりました。デジモン達が現実世界へ進出、お台場付近で暴れまわる。そしてこの夢の終わりは決まって一旦場面がフェードアウトし、気付けば僕がパソコンの前に立ちその画面を見ている、その画面には“9人の選ばれし子供が世界を救う。梓 冬、君が「運命」に選ばれし9番目だ”そこで毎度夢から覚めます」
「俄には信じられないな、それに、なんでお前このこと隠してたんだ?このことを言えば、すぐに問題は解決したんじゃないか?」
「ヤマトさんが今言ったじゃないですか。僕自身ですらこの話を他人から聞けばすぐに信じられないからですよ。普通に聞いたらただの妄言にしか思えない上に、証明する手段が一切ありません。僕の夢の中での事ですからね。できれば、話したくはなかったのですが……」
「……確かに。すまないな、変なこと聞いちまって。」
「いえ、それが当然の反応ですから、問題0ですよ。さて、この話は掘り下げてもあまり面白い話はないですよ?次に移りましょう」
目を伏せがちにしながら言い、それでこの質問に関することは聞くなという感じの雰囲気を出す。
それを察してくれたのか、ヤマトさんが次の質問に移ってくれた。
「分かった、ところで今お前のデジモンは?さっきから姿見ないんだけど……」
「それなら、今はデジヴァイスの中にいますよ。さっき完全体と戦ったのでエネルギー消耗が激しかったんでしょう」
「え、デジヴァイスの中にデジモンて入るの!?」
「少なくとも、自分の場合入れる事が出来ます。もし、ヤマトさん達のがそれをできないのなら、入手方法とか時期のせいではないでしょうか?皆さんはいつどうやってデジヴァイスを手に入れたんですか?」
「どうやってって……、俺達が夏キャンプに行った時に吹雪が来て―――」
『オーロラが見えて、そのオーロラから隕石みたいに落ちてきたんだよ』
「なるほど、僕の場合、3年前に父さんのパソコンをいじっていたら急に画面が光って、そこからデジヴァイスと紋章、それにフォースモンの進化前プテモンが現れました」
この話は02に出てくる一条寺賢のモノに似せたものだ。これならば、後にも大して影響は出ないだろう。
「……幼稚園の時からパソコンいじってるってどうなんだ。まあ、そんなことより、そうか、4年前の事件以外にもデジモンとの接点を持ってるやつが居たのか……。これじゃあ、8人目を4年前の事件の目撃者と決めつけるのはやめた方が良いかもな……」
この発言にはあえてつっこまない、下手をしてぼろを出すのもやだしな。
『じゃあ、僕からも質問!紋章を持っているって事は完全体にも進化できるの?』
「それはまだ無理だね、パタモンには最初会ったときに言ったけどね。現実世界じゃ、フォースモンが完全体になる必要が出てくる危険とは無縁だったしね」
『そうなんだ……』
完全体じゃないのにさっきヴァンデモンと互角に戦えていたのは?という質問も飛んできたが、これに関しては僕の想像を具現化したデジモンということなど言える筈がなく、ドラグモンは月の光を吸収して強くなるらしいという事だけは伝えておいた。
するとガブモンが恐る恐ると言った感じで手を上げてきた。
「オレからも質問良いかな?」
「僕がデジモン達と人間を差別する必要はないね。何かな、ガブモン。」
「昨日の夜に8匹目もしくは9匹目って名乗るデジモンが現れたって聞いたんだけど、それって冬の事なの?」
あぁ、この事か。別に隠し立てする必要はもうないしな、言っても良いな。てかさっき触れたし。
「芝浦の事かい?そうだね、昨日僕は確かにそこでレアモンを見たし、フォースモンに戦闘の指示を出したよ。夢で見た所に偶然行っていただけなんだけどね。」
「やっぱり、そうなんだ。じゃあ、ピコデビモンと会ったのもそこなんだよね」
「そうだね。ついでに言えば、デジヴァイスもそこで拾ったね」
『そう言えば、デジヴァイスの事を知ってたんだよね。じゃあ、なんで朝、僕達に正体をばらさなかったの?デジヴァイスの事を知っていればタケル達が選ばれし子供って分かったかもしれないのに』
「それもそうだ。おい、冬。そこんとこはどうなんだ?」
パタモンの言葉を受けて、ヤマトさんが確かにと言った感じで僕を問い詰めてきた。
う~ん、まぁ、これに関しては隠すのは簡単かな。
「簡単な事です。ヤマトさんの事はともかく、他にいた人達がデジモン関連の人だという明確な証拠が無かったので、何も言わずにデジモンの事を知っていると思ったヤマトさんにデジヴァイスを渡したんです。僕よりもうまく活用できると思ったので」
「なるほど、だけどだったらそのあとで俺に連絡すれば少なくとも俺には選ばれし子供って分からせられたじゃないのか?」
「すいません、そこまで気が回りませんでした。ちょっと、夢の件と現実に起きている事が一致してきたので今後についてどうしようと思っていたので……」
「まぁ、確かにそうだよな。さっきから変な質問ばかりで悪いな。」
「いえ、……他に聞くことは何かありますか?」
「俺からは聞きたい事は全部聞いたかな、正直冬の人柄自体は知ってるからパートナーとの出会いとか聞ければよかった程度だし……。タケルは?」
『僕もお兄ちゃんと同じ感じかな』
とりあえず、もう質問はないらしい。
「……いや、もう一つあった。冬、お前が言う8人目について何か知ってる事はないか?」
……これかぁ~、どうしよう。デジヴァイスはもう向こうに渡っているから言う必要はないし、……言わなくていいか。
「……心当たりはありませんね、今日は皆さんと別れた後は女の子とデジモン一匹に遭遇したくらいですし。まぁ、そのデジモンは僕達で退けましたが」
まあ、嘘は付いていない。実名は伏せたけど。
「分かった、これで正真正銘質問タイムは終了だ。お前からは何か聞く事はあるか?」
「そうですね……、色々デジタルワールドでの事を聞きたい気持ちはあるんですけど、正直もう眠い感じですね。また、明日……今度は皆さんと一緒のときに色々聞きたいと思います」
「それもそうだな、じゃあ、今日はいったん解散と行こう。明日は逃げんなよ、冬」
『じゃあ、僕も電話切るね。また明日、お兄ちゃん、冬さん。』
そう言って向こうで電話を切った音が聞こえた。さて、僕も帰るとするか。
「あ、そう言えば、冬。パンプモンとゴツモンは?」
「あの二人なら、今僕の部屋でぬいぐるみの振りしてもらってますよ」
これを正直に言うとめんどくさいからな、隠しておくか。
「そうか、それじゃおやすみ、冬。」
「おやすみなさい、ヤマトさん。じゃあ、ちょっとベランダ失礼しますね」
僕はそう言ってベランダの方を向く。
「別にいいけど、何するつもりなんだ?」
まぁまぁと言ってべランドの窓を開け、隣の僕の家の手すりに掴まる。
「……ちょっと待て、冬。まさかとは思うがこの高い所からお前ん家に飛び移るつもりか?」
僕はその言葉にニッと笑って告げた。
「そのまさかです!」
手すりの内から身を投げ、その勢いのままに片足を僕の家の手すりに掛け、そのままよじ登る。そんでもって呆れた顔をしてるヤマトさんに向かってグッと親指を立てる。
それを見たヤマトさんは―――
「若干寿命縮んだかも……」
―――と言って家へ引っ込んでしまった。
僕もそのまま行きに開けっぱだった自分の部屋の窓を開け自室へ戻った。