インフィニット・ストラトス ~ULTRA~   作:サイレント・レイ

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第8話 疑問だらけのウルトラマン擬き

――― IS学園 ―――

 

 

 ウルトラマン擬き……一部の人間から(オリジナル)ウルトラマンへの冒涜と言われる、文字通りにウルトラマンを模したISの登場に、此のアリーナにいる者達全員が反応しない訳がなかった。

 現にドラコはウルトラマン擬きに気後れしての後退をしていて、観客席では助かったと思っての歓声が起きていたが、男女に別れている観客席では決定的な違いがあった。

 

「おっしゃぁぁー!!!

此れで勝ったぞ!!!」

 

「行けぇぇぇー!!!

ウルトラマァァーン!!!」

 

「あんな異星人なんかヤっちまえ!!!」

 

 ご覧の通り、男性陣は純粋にウルトラマンとして歓声を上げていた。

 

「一夏くぅぅーん()、信じてたわよ!!!」

 

「早く私達を助けてぇぇぇー!!!」

 

「一夏君なら出来るわよ!!!」

 

 それに反して女性陣は、ウルトラマン擬きを纏っているのは織斑一夏だと、極限状態からの自己暗示でそう思っていて一夏の名を叫んでいた。

 

「……一夏、本当にお前がウルトラマンだったのか?」

 

 まぁウルトラマン擬きがいる場所に加えて、一夏が見当たらないので、普通に考えたら“織斑一夏=ウルトラマン擬き”と思わざるをえず、現に一夏の幼馴染である箒もまたそう思っていた。

 だが当のウルトラマン擬きはと言うと、ドラコに向かって前のめりに身構えたきり、硬直したっきりであった。

 更に箒はセシリアと共々ウルトラマン擬きをよく見ていたら、息の乱れでと思われる上半身を上下の小刻みに揺らしていた。

 箒は此れは疲労によるモノだと思っていたが、妙な違和感を感じだしていた。

 

「…きぃやあぁぁー!!!」

 

 だが、ドラコは過度の不安感から軽度の錯乱を起こした事から、ウルトラマン擬きに右手を爪を展開しながら振り上げて飛び掛かった。

 

「ああぁぁー!!」

 

 此の一撃はウルトラマン擬きに右手首を両手で掴まれた事で防がれたが、ウルトラマン擬きから軽めの呻き声が発された。

 更にドラコが左手でもう一撃を放ったが、ウルトラマン擬きは今度は右腕でなんとか弾いたが、よろめいて後ろに下がってしまった。

 ウルトラマン擬きは何歩か下がって姿勢を正したが、少しの間だけ下げてしまうも戻した視線の先からドラコが消えていた事に驚いていた。

 

「馬鹿!!!

飛んでるぞ!」

 

 ウルトラマン擬きは箒の怒鳴っての注意で慌てて視線を上げて周囲を見渡したら、ドラコは飛行で背後に回り込んでウルトラマン擬きの胸裏を蹴飛ばし、不意討ちを許したウルトラマン擬きは前に数歩よろめいた後に倒れてそのまま滑っていった。

 

「やっぱり、おかしい…」

 

 ウルトラマン擬きはなんとか立ち上がってドラコの連続攻撃をいなしながら下がり続けていて、観客席の面々は気付いていなかったが、箒とセシリアはウルトラマン擬きへの疑問を深めていた。

 不味い事に、ウルトラマン擬きに攻撃し続けるドラコもまた2人と同じ様に疑問を深め、同時に冷静さを取り戻し始めていた。

 だからドラコはわざと隙だらけの突きを繰り出し、ウルトラマン擬きが狙い通りにいなすと、隙だらけの左足目掛けて足払いを仕掛け、無防備にやられたウルトラマン擬きは見事に左から倒れた。

 ドラコは仰向けに倒れたウルトラマン擬きに追撃しようとしたが、今回はウルトラマン擬きが少しパニクりながらもカウンターに近い形でドラコの腹部を蹴り上げやれる結果となった。

 

「あ、しまった!!!」

 

 だがウルトラマン擬きの蹴りで真上に吹き飛ばされたドラコはそのままアリーナのシールドを突き破ってしまい、そのまま逃げてしまった。

 勿論、ウルトラマンは直ぐに自分のミスに気付きながら慌てて飛び起きると、ドラコの後を追い掛けて飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの馬鹿、糞宇宙人を逃がしたのか!!?

そら見た事か!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・学棟群 ―――

 

 

「何、あの爆発!!?」

 

「アリーナの方からだよ!!!」

 

 此の時のIS学園の状況はと言うと、整備科は授業中で全員が各々の教室にいたのだが、普通科は休憩中だったので、学園内の広範囲に広がっていたのだが、アリーナから不自然な爆発音が響いたので、全員がアリーナの方へ振り向いていた。

 

「アリーナから何か出てきたよ!!」

 

「此方に向かってる!!」

 

 その内の1年棟の4組ではアリーナから飛び出してきた人型に気付いて全員が窓に詰め寄って凝視していたが、向かって来ているのがISを纏った蜥蜴人間(ツルク星人ドラコ)だったので一斉に悲鳴が上がって、次々に逃げ出していた。

 当のドラコはと言うと、どうやら食欲を優先にしていたらしく、逃げ遅れる処か、逃げようともせずに机に座ったまま顔を青くしている更識簪を狙いを定め、彼女に向かいながら口を大きく開けて(ヨダレ)を大量に流していた。

 

「…畜生!!!」

 

 だがドラコが4組の教室に突入する前にウルトラマン擬きがからくも追い付いて、ドラコの背中に飛び付いた。

 そのままウルトラマン擬きとドラコは4組の教室に頭から窓を突き破って突入したが、ウルトラマン擬きがなんとか軌道を変えたので、2人は簪を直ぐ背部から避けて、机と椅子を幾つか蹴散らしながら滑っていって両足を垂直に立てた後に停止した。

 

「…え………ウルトラマン?」

 

 簪は一瞬の内に現実離れをした出来事を理解出来ずにウルトラマン擬きの所に向かおうとしたが、その直後にドラコが奇声を上げながら立ち上がって簪に飛び掛かろうとした。

 

「早く逃げろ!!!」

 

 だが、直ぐにウルトラマン擬きも立ち上がってドラコの首元を掴んで壁に押し付ける事で阻止しようとした。

 

「邪魔、するなぁぁー!!!」

 

 だが、簪がドラコで足がスクんだ為に逃げ出そうとしなかっただけでなく、ドラコは直ぐにウルトラマン擬きを振り払って簪に飛び掛かろうとしたが、ウルトラマン擬きは偶々近くにあった机の足を掴むと大振りでドラコの頭に机を叩き付けた。

 此の一撃で机が木端微塵になるも、ドラコはふらついた隙を突いて、ウルトラマン擬きはドラコの脇下を掴んでの前屈みでまた壁に押し付けた。

 ドラコもまた振り払おうとしていたが、偶然の形であったが、脇が絞まらない事で上手く力が込められない為、そのままの組み合いの押し合いとなった。

 

「……早く!!!」

 

 だがウルトラマン擬きは逃げないでいる簪に苛立って思わず怒鳴ったが、当の簪は軽く悲鳴を上げたのみで硬直したままであった。

 ウルトラマン擬きにとって質が悪かったのは、他の4組の者達や他の組の者達は教室外から覗くだけで、誰も簪を連れ出そうとする気配がなかった。

 

「そこを動くな!!!」

 

「じっとしてなさい!!!」

 

 そんな時に騒ぎに気付いた教員達が、場所と状況的にISを纏っていないが、代わりに鉄兜(ヘルメット)と防弾チョッキを着けた状態で4組に駆け込み、ウルトラマン擬きとドラコに小銃を突き付けた。

 ウルトラマン擬きは教員達の登場に驚いてそちらに振り向いて隙を見せてしまったら、ドラコは右の膝蹴りでウルトラマン擬きの顎を跳ね上げ、直ぐに怯んだウルトラマン擬きを振り払って教員達目掛けて突進、驚きながら自分目掛けて飛んでくる教員達の銃弾を意に止めずに、教員の1人を右手の爪で袈裟斬りで真っ二つにした。

 ドラコはそのまま教員達を跳ね飛ばして視線に入った女子生徒に飛び掛かろうとしたが、ウルトラマンが飛び掛かりながら右手に持ってた椅子を頭に叩き付けながら前に立ち塞がった。

 ウルトラマン擬きは壊れた右手の椅子を捨てて、左手の椅子を叩き付けようとしたが、ドラコの右手の爪の突きで椅子を壊されていまい、そのままドラコの右肩のショルダータックルを腹部に受けてしまった。

 ウルトラマン擬きは不安定な姿勢で被弾した為、ドラコにいいように押されて、女子生徒達が逃げ回る廊下を突っ切っていて、右手で押すドラコの顔へ左フックで数度殴ったが、突き当たりの壁に激突して突き破り、そのままドラコに押さえ込まれながら背中から歩道に墜落した。

 ドラコは腹部を押さえながら背中の激痛に悶絶しているウルトラマン擬きを確認しながら立ち上がってトドメの一撃として顔目掛けて右手の爪を突き刺そうとしたが、ウルトラマン擬きは偶然に近い形で右に転がって爪で此の一撃を避け、そのままカウンターとして右ストレートでドラコの顔を殴り、怯んだドラコの腹部を蹴って引き剥がした後に立ち上がった。

 

「……とに、もう!!!」

 

 ドラコは少し怒りながら左手から展開した爪を抜いてウルトラマン擬きに投げようとしたが、此の間にウルトラマン擬きはドラコ目掛けて突進し、エルボーも含んだ右のショルダータックルをドラコの腹部に叩き込み、軽く吹き飛んだドラコを追撃して左のアッパーを顎に叩き込んだ。

 ウルトラマン擬きは更に右ストレートを叩き付けようとしたが、此れはドラコに受け止められてしまい、逆にドラコの左ストレートを顔面に被弾して後ろに吹き飛んで、その先の外灯に胸裏から激突して“く”の字に曲げながら尻餅を着いた。

 

「お・死・にぃぃぃー!!!」

 

 ドラコはウルトラマン擬きが踞った事から此処で決めようとして、爪を各々に展開した両手を振り上げながらウルトラマン擬き目掛けて急降下をしたが、ウルトラマン擬きはクラウチングスタートの要領で急に飛び上がって、ドラコの両手を押さえながら胸元に頭突きをしてそのまま上昇………頂点に達したらドラコと組み合ったまま落下していって、IS学園の食堂の天井を突き破って2人揃って墜落した。

 当然、食堂にいた女子生徒達はウルトラマン擬きとドラコが墜落した直後から悲鳴を上げながら逃げ出していき、後の食堂には墜落でのだけでなく天井や窓一帯の壁が崩壊した事で生じた砂煙が充満した。

 

「…いい加減にしなさいよ、アンタ!!!」

 

 逃げて物陰に潜んでいる女子生徒達に加えて、文字通りに張り付いてきた箒と共に食堂近くに降り立ったセシリアが見詰める中で砂煙が晴れた後、俯せに倒れていたウルトラマン擬きが呻き声を上げながらゆっくり立ち上がると、瓦礫に埋もれていたドラコが、瓦礫を吹き飛ばしながら立ち上がってウルトラマン擬きに怒鳴った。

 

「しつこいにも程があるわよ!!!」

 

「お前が逃げ回っているからだろ!!!」

 

「そんなに言うなら、逃げるのを止めてあげるわ!!!」

 

「……へぇ?」

 

「もう逃げる必要が無いって分かったしね」

 

 ドラコの一方的な怒鳴りにウルトラマン擬きも身構えながら怒鳴り返したが、ドラコの返しにキョトンとした。

 

「最初っから妙だったのよね。

今の今まで私達の存在を巧妙に隠してきたから、私もこっそり食べていたってわけ!

なのに貴方ときたら、変に後手後手だった上にド派手に追い掛け回してきたのだから、おかしいと思ってたのよ。

まぁ何かの作戦ってのも考えたけど、全て分かっちゃったの!」

 

「…何が言いたい?」

 

「坊や、貴方は此れ等の手に素人な上に、今回が初陣って処でしょう?」

 

「っ!?」

 

「私、こう見えて人を見る目は確かなの♪

あ~…変に錯乱して損だったわ~…」

 

 ウインクしながらのドラコの指摘に、ウルトラマン擬きが図星であった為に見て分かる程にギョッとした。




 感想または御意見、或いは両方でもいいので宜しくお願いします。

 本編にはあまり関係ないけど、“ハイスクール・フリート ルパン三世暗殺指令”を考える為に“トワイライト・ジェミニの秘密”を見た事でドラコが故・野沢那智の声で喋ってる風に感じてるんだよねぇ~…
 だけど、あの人は既に亡くなっているので、他の人をお薦めしても気にしませんよ。

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