インフィニット・ストラトス ~ULTRA~ 作:サイレント・レイ
――― IS学園 ―――
雀の鳴き声しか聞こえない早朝時…
「……ふっ チョロいわね…」
…警備システムに教員用の身分証を翳し、更に右手と両目をセンサーに着けると何の問題なく学園に入れた事にとある女性がほくそ笑んでいた。
「…全く最先端技術が集まっているのにこうも簡単に入れるなんてね。
まっ地球の技術力なんかこんな物か」
自分の右手首のブレスレットを見詰めながらIS学園の警備システムを小馬鹿にしていた女性は学園の辺りを見渡して何かを物色していた。
「…うむ、学園自体は悪くないわね………ん!?」
暫くすると向かいの方から女子生徒が歩いてきているのに気付いて唇を舐めた。
「…そこの貴女、こんな時間に何をしているの?」
「あ、はい! 今日私が園芸の当番なので此れから花壇の水やりに行くのです」
此の女子生徒は女性を教師と疑い無く思って普通に答えてきた。
「そう、貴女偉いわね」
そんな女子生徒に女性は笑ったが、当の女子生徒はそれが誉められての事からだと思っていた。
「私も手伝ってあげるから何所の花壇に行くのか連れてってくれない?」
「いえ、そんな」
「遠慮しないの。
頑張っている生徒を助けるのも教師の努めなのよ」
最初は遠慮していた女子生徒だったが、自分の首に手を回した女性から何かを期待したのか笑顔で了承した。
「さあ、行きましょ」
「はい!!」
此の後、2人が人気の無い茂みに入って暫く経った後、そこから小さな悲鳴が上がり更に経過した後に女性が満面の笑みで出てきて学園の何所かに去っていった。
――― 同・道場 ―――
所変わって主である剣道部が前日に練習試合に行っていた事から休養日となった為に無人の道場にて織斑一夏が幼なじみの篠ノ乃箒とクラス代表を賭けたセシリアとの試合に備えての練習が行われていた。
「…何をやっているんだ!!」
だが先程から醜態を晒し続けている為に時折箒の雷が落ちていた。
「ほ、箒、もうちょっと手加減してくれても…」
「何を言っているんだ!
こんなものまだ練習の内にも入らんぞ!」
元々全国大会での優勝経験もある自分と同等の実力を持っている筈なのにだらけた中学時代を送った一夏(本人曰く帰宅部皆勤者)の無惨な現状…しかもそんなにも関わらずにセシリアに挑戦状を叩き付けた事もあって箒はかなり苛立っていた。
「……全くこんなので…ウルトラマンだとは…」
ましてや箒がぼやいた通り、一夏にはウルトラマン擬きの装着者との噂がある以上は尚更であった。
「箒、どうした?」
「なんでもない!!」
まぁ、それより小学校以来に再会した思い人に出会えた事に照れて素直に喜べない自分の不器用な性格への苛立ちが何よりの理由であったのだが、それが一夏への八つ当たりになりかけている子供じみた行為に生ってなっている事を箒は内心悔やんではいた。
只、そんな箒の心情を察しれない一夏には彼女の頭に鬼の角が生えている様に見えていた。
「…あ、そうだ! 此の学園って女子校なのに何で昨日他校の男子が来ていたんだ?
折角何か話そうと思ったのにアイツ等直ぐ連れていかれたし、あの後何所に行ったのか全然分からなかったしな」
「……お前、本当に何も知らないんだな…」
命の危機を感じた一夏は気を反らす為に昨日見た剣一達の事を聞いたが、入学前に予習すべき教材を何所ぞの山羊(x2)みたいに読まずに捨てると言う暴挙を仕出かした彼の無知に改めて箒は呆れていた。
只、取り敢えず箒を止める事に成功して一夏は彼女に気付かれない様に内心ホッとしていた。
「…いいか、彼等は私達ISを扱う事を学んでいる私達と違って、ISの整備技術を学びにやって来た交流生達だ」
「何でそんな面倒臭い事をやってるんだよ?」
「……整備科は毎年定員割れを起こしている程人気が無い上、その入学者の殆どが私達普通科に転学していて質までが低いんだ。
だから他校の男子生徒を交流生として入れて形だけでも保っているのだ」
一夏に説明しながら箒はまともに整備科を運用出来ていない学園に苦々しく思っていた。
まあだからこそ彼等の存在があるからこそ男子禁制のIS学園に男子トイレ等の男子用施設が少数ながら存在していたのだから強制入学した一夏の為に新設をせずにすんでいた。
「…あ、そうだ。 箒、アイツ等の宿舎が何所にあるのかが知ってるんだったら俺に教えてくれないか?
此れからアイツ等の世話になるかもしれないんだから仲良くしないと」
元々逆紅一点(黒一点?)で肩身の狭い思いをしている一夏は同世代の男子が他にもいる事が分かり、是非とも彼等に近づきたいと思っていた。
「…残念だがお前はアイツ等には会えないぞ」
だがそれを箒が否定した。
「何でだよ?」
「卒業後の就職問題にに繋がるから厳正平等の名の下に整備科と直接交流が出来るのは二年生からで私達一年生は基本会えないんだ。
それに授業時間も休みが重ならないように私達が授業の時にアイツ等が休みと言う風にしているんだ」
一夏が文句を言っていたが、不正が無いよう不出来な生徒を振り落とす為の制度だったのだが実は此がエライ事になっている事を知っている箒は唾が悪そうな表情をした。
――― 同・整備科室 ―――
一夏が箒にしごかれて普通科の生徒達が朝食を取っていた頃、剣一達交流生達を含めた整備科の生徒達は早々と一時間目の授業に入っていた。
「ぁぁあ~…」
「大丈夫か剣一?」
A組での朝礼が終わって直ぐに大欠伸をした剣一に学友の大悟が気にかけてくれていた。
「…悪い、大丈夫だ」
「…頼むぞ、お前まで潰れたら俺達はアウトなんだ」
だがよく見たら大悟処か、交流生の男子達の目の下に隈が浮かんでおり…中には気持ち窶れている者達までがいた。
「…それでは説明した通りに従い、各班は整備作業に入って下さい」
担任に全員が「はい!」と一斉に返事をして普通科一年が使う予定のISの練習機である打鉄の準備を兼ねた初級整備の授業が始まった。
「…て、ちょっ!!?」
「御免あそばせ」
で開始早々脚立や電動工具を取りに行こうとした剣一達男子達だったが、それ等全てを女子生徒達に自分達の含めて全て持っていかれてしまった。
更に不味い事に此の間に整備用のコンピューターまでもを押さえられていた。
「待てよ、俺等のは!?」
「あら、貴方達にはそれ等の工具があるじゃないですか?」
「スパナとドライバーだけでやれってのかよ!?」
「力が有り余ってるのでしょ?
だったら此れ等はいらない筈よね?」
「…っ!?」
「よせ!!」
「止めろ!!」
早速行われた女子達の嫌がらせに当然ながら男子の一部がキレて殴りかかろうとしたが、そんな者達を剣一達が止めた。
「放せよ!
お前等は悔しくないのかよ!?」
「やったら西の奴等みたいになるぞ!」
勿論悔しい事は分かるのだが、厄介な事に女子達に下手に手を上げると彼女達の後ろ楯である普通科の上級生達…専用機持ちや国家代表者達がその日の内に仕返しに来る最悪の場合があり、彼等とは他校の交流生達の何人かが既に実際そうなって病院送りにされていた。
此の為に男子の何人かは教師に抗議の目線を送ったが、残念ながら此処数日間で分かった事だが最低でも代表候補生等の実力者がズラリといる普通科の教師と違って整備科の教師にはそんな力が無く、現に教師は申し訳なさそうに顔するだけであった。
「…腰抜け」
「…っ!?」
「剣一!」
変えようもない地獄の現状に彼等が我慢して引き下がったが、それに面白くない女子達の一人がわざと聞こえるように呟いた独り言に剣一が反応しようとしたが直前大悟が諌めた。
だが此の事に女子の中でも嫌がらせを行い笑っている者達に不快感を示している者達がいる通り、整備科内や普通科の生徒達にもおかしいと思う者が少なからずいて生徒会を動かして改善を行おうとした事が過去に幾つかあった。
だが良心派は小数故に孤立そして虐めの対象になる、普通科も改善を行おうとする中心人物のISにわざと整備不良を…最悪の場合墜落事故にも繋がりかねない細工が行われ続けた為に悉く水泡と化していた。
更に普通科(と教師陣)には整備に精通している者がいない…現生徒会長の更識楯無等いる事はいるがそれ等は極小数、いたとしても代表候補生等実力者ではない事から歴代生徒会長処か教師達や理事会(此れは余りやる気が無い)でさえ頭を抱える問題となっていた。
更に実力は兎も角、人間性が悪い事を企業に知られている事からの雇用率の悪さからの上位争い(普段科への転入)の悪化する悪循環もあって怪物の園と化している整備科に彼等交流生達は自分達の生徒を駄目にされてもIS学園に抗議出来ない彼等の母校も含めて泣き寝入りするしかなかった。
「……やるか…」
とは言え、このまま投げ出せば自分達を選び選って送り出した母校の名誉に関わるし、何より自分の性分ではない以上は実力を見せるしかなかった。
「……何やってんの!?」
「そんな事言われても分からないのよ!」
で実際の処、元々機械系は女性より男性の方が幼少期から興味を持つ事から基本強い為からか、女子達が悪戦苦闘している中で男子達は道具が無い事からの遅れがあったが比較的順調に進んでいた。
「飛鳥、悪い背中借りるぞ」
「おお!」
「…どうだ、剣一?」
「……悪いが電測器取ってくれ」
「ああ、武蔵頼む!」
「分かった!」
特に剣一達の組は最も早く進めていて、それに他の男子組は負けん気を起こしていたが女子達は取り分けて優秀な剣一に歯軋りをしていた。
「……OKです!
良く出来ました!」
そして一番乗りで教師から合格を言い渡されて剣一が親友達とハイタッチをしていたが…
「早田さん、此れ等を買ってきてくれませんか?」
「……っ!?
此れ等、昨日買ってきた筈じゃ!?」
…喜んだのも束の間、その教師にメモを手渡されて買い出しが言い渡された。
整備科はその性質上、普段は学園が購入管理していても時々部品が足りなくなる時があり、その場合教師が生徒を選んで欠席免除を行って買い出しに行かせる事があるのだが、やはり此れも外出と経費の手続きが面倒なのもあって上位成績者の男子への女子達の嫌がらせの1つになりかけていた。
勿論、此れは女子にも要請するが基本的に女子達は拒絶したり無理矢理推す等をして結局男子が行く事になる為、近年では男子から最初に要請する様になっていた。
「…そうなんだけど、それが一組の山田先生から近々試合が行われるからイギリス製のを大至急手配して欲しいって言われたの」
「それってあの織斑一夏とセシリア・オルコットの決闘のですか?」
教師は頷いたが、部品を隠したり捨てたりする、酷い時は関東を対角線で横切る等ほぼ一日がかりで遠出をして捜索(学園は入手先をちゃんと伝えるがそれを女子がぼかす)しないと手に入らない稀少品を求める、要望品のと規格が違うのとわざと間違えて伝えて交通費も含めて自腹買いをさせる等の嫌がらせが頻発していたが、今回はそれ等が無い(と思いたい……剣一に女子が笑っているが…)から要望品が手に入れやすい物である事もあって今回は比較的気楽になれた。
「…分かりました」
「外出許可は取ってあるから早く行ってね」
とは言え、溜め息を吐いてしまうも言われた通り直ぐ行こうとした剣一に大悟が呼び止めた。
「…剣一、悪いがいつ物をな」
「分かってるよ」
大悟達処か、他校の男子達が見つめている中、剣一は了承して出ていき…暫く廊下を走って進むと誰もいないのを確認して携帯を取り出して不在通話があったのでそこに電話をかけた。
「…剣一です。 xxさん、どうかしました?」
『授業中にすまないね。
悪いが2人共出れなくてね、迎えを用意させたから直ぐ向かってくれ』
感想・御意見お待ちしています。
剣一
「幾ら何でも此れはあんまりだぁぁー!!!
矢的猛(エイティ)の初期だって此処まで過酷じゃないぞ!!!」
…だからこそ、剣一が交流生として入れたのが此れからきています。
剣一
「てか楯無は何やってんだよ!!?」
何もやってないし、やる気が無いと思うよ。
他の人達は違うと思いますが、本作では自分がそう思っている楯無像から本来の職務に不真面目で生徒会長権限を私用で乱用する歴代最悪生徒会長としています。
只、楯無がそれだけの存在ではないし、勿論後々には整備科の革命に近い改善は行います。
もしかしたら本作では簪の打鉄弐型は一夏の要望で剣一とその仲間達の協力で作られる事になるかもしれませんが、簪をどうするかは完全に未定ですがね…
只、ウルトラマンは全ての人間達を守り寄り添う存在であり、特に平成セブンで“人間は過ちを起こすが、それを正して許し求める存在”と書かれているので此の作品を“インフィニット・ストラトス”のアンチ作品にはしません。
最も因果応報はありますがね…
とは言え、交流生ですが日本一過酷な環境下のIS学園男子生徒である剣一の受難はまだまだ続きます。
剣一
「早く改善してぇぇー!!!」