インフィニット・ストラトス ~ULTRA~ 作:サイレント・レイ
――― アリーナ ―――
遂に織斑一夏とセシリア・オルコットによる一組のクラス代表を賭けた決闘を迎える事となり、その決闘の場となるアリーナでは世界で先んじて完成した第三世代機であるブルー・ティアーズを纏ったセシリアが上空で対戦相手の一夏を待っていた。
「おお、アレがブルー・ティアーズか!」
「典型的な遠距離射撃型だな」
そしてアリーナの屋根付きの観覧席では一組だけでなく、よく共同授業を行う関係でA組の面々も男女別々の場所でいた。
因みに本日は此の決闘の影響で女子達が早々と引き上げると言う珍しい幸運で朝食にありつけた為に男子達の誰もが機嫌良くブルー・ティアーズの分析をしていた。
「…それにしても織斑は遅いよな?」
「ああ、そうだな。
織斑は巌流島でも狙っているのか?」
「イヤ、どうも専用機の到着が遅れているらしいぞ」
元々自分達が女子達から嫌がらせを散々受けている様に、当然普通科男1人でいる一夏もそうであろうと思って男子達の殆どは一夏の応援をしようとしていた。
だが悲しい事に一夏本人は迷惑がっていたが、実際は普通科全学年から好意を向けられたハーレム状態であった。
勿論、そんな事は男子達が知る訳がなかったが、知られていたら多分「リア充爆発しろ」と言わんばかりに大半がセシリアに回っていたも思う。
でそんな危険性を孕んだ男性応援団がいる事など知る訳が無い一夏はと言うと納品が遅れている事もあって、剣道の練習しかさせずに肝心のISの練習を一切やらなかった箒に文句を言っていた。
「…なぁ剣一、織斑はウルトラマン擬きで来ると思うか?」
「そんなの俺が知る訳ないだろ」
「味気無い事を言わないでよ、剣一ちゃ~ん」
更に一夏登場が遅れている事から男子達(と女子の一部)は噂のウルトラマン擬きが出てくるのではとの期待感が変に高まっていた。
「…あ、出てくるぞ!」
此の為、男子の1人がカタパルトの作動したのに気付いて全員が注目し……ピットから勢い良く飛び出してきた一夏がウルトラマンの影も形も無い専用機白式を纏っていた事に一斉に溜め息を吐いていた。
「逃げずに出てきた事は褒めてさしあげますわ…」
決闘開始前にセシリアの降伏勧告を一夏が突っぱねていたが、此の間に女子はセシリアと一夏のどちらが勝つかと意見交換を…中には賭けをしている者達がいた。
「…おい、武蔵、織斑のISってまさかと思うんだけどアレって初期状態じゃないか?」
「ああ、ヤバいぞ。
あのIS、
だが男子達は剣一と武蔵の会話に見られる通りに白式が
「確かISの最適化は大体30分掛かる…て事は20分前後はあの状態って事だ」
剣一がスマートフォンの時計で一夏が纏ったであろう大体の時間から予測を立ててゾッとしていた。
勿論、最適化の最中でも交戦して勝つ者もいた事はいたがそれ等はあくまで玄人の話であり、RPGゲームで言えばレベルが一桁であろうド素人の一夏にはほぼ無理な話であった。
只、幸いな事にセシリアを含めた女子達(情けない事に整備科の女子達まで…)が此の事に気付いていないらしく、出来れば此のまま口論を続けて時間を稼いでもらいたかったのだが…
「…それじゃ始めるか!!」
…よりにもよって自分の危険性を自覚していない一夏の方から決闘の開始を要請してしまい、男子達が「馬鹿(野郎)!!!」と悲鳴を交えて一夏に叫んでいた。
だがそんな事などお構い無しに開始のブザーが鳴り響き…早速セシリアが後方に飛び退いて距離を取るもビーム蘿ライフル・スターライトMkⅢを連射して先制攻撃を仕掛けていた。
迎え撃つ一夏も近接用の武器…彼の姉である織斑千冬の得物であった雪片の系統たる雪片弐型を何とか取り出して回避行動を取りながらセシリアへ切り込もうとしていた。
「ああー! 下手くそ!!」
「そら見た事か!」
だが一夏の動きは素人が見ても大きすぎる上にセシリアに読まれていて悉く被弾してはシールドエネルギーを無駄に消耗していて男子達の罵声が飛び交っていた。
「……どうやら織斑のは近距離高機動…いや、格闘型みたいだな」
「不味いな、此のままだと近付けずに蜂の巣になるぞ」
中学以前の試合勘が戻ってきた一夏は徐々に動きが良くなっていて、避けれなくても雪片で防ぎ始めていた。
だが相性が悪いのとセシリアが未だに無傷である事には変わりなかった。
「さあ、もっと踊って下さいませ!」
更に不味い事に此処にきてセシリアはブルー・ティアーズの背部の一部が分離して一夏の周囲に展開してビーム攻撃を開始した。
「
「ああ、アレがブルー・ティアーズの切り札なんだ!」
セシリア本人が一夏へ攻撃しながら説明していたが、男子達はブルー・ティアーズの機体名にもなったスラスターにも転用可能な遠隔無線誘導型のビーム兵器に「おお~!」と歓声が上がっていた。
しかも某アニメでも有名な兵器を連想させた事もあって男子の中で試合そっちのけで興奮していた。
「…なぁ、さっきからセシリアに積極性が無いと思わないか?」
だがビットを展開した割には何処か守勢のセシリアに飛鳥が疑問を感じていた。
「そりゃ、織斑がウルトラマン擬きの装着者かもしれないから警戒しているんじゃない?」
剣一の推測通り、やはりセシリアも一夏が無駄に下手な動きをしていた事もあって変な警戒心を持っていた。
「それにどうもブルー・ティアーズは決定力が欠けているみたいだしな」
「ああ、ビットを展開してからセシリアの動きが止まりがちになっている。
あの兵器は運用するには集中しなくちゃいけないんだ」
大悟と武蔵がブルー・ティアーズ(とビット)の弱点を話し合っていて、もしかしたら此の戦いが長期戦になるかもしれないと思う者達が出始めていたが…
(……両腰の榴砲が一切動いていない…?
それにビットが一夏の上方にしか展開していない…)
…ブルー・ティアーズのミサイル発射機を榴砲と勘違いしていたが、剣一は何となくセシリアが何かを狙っているのではないかと思っていた。
「…見ろ!!!」
剣一が考えていたが、誰かが叫びに気付いて振り向くとセシリアのビットに一夏が方位されて…
「…此れで終わりです!!」
…スターライトMkⅢとビット全機によるセシリアの一斉射が 放たれた!
此れで誰もが勝負が着いたと思われたが、何時まで経っても試合終了を報せるアナウンスが鳴らず誰もが首を傾げていたが…
「……ふぅ…」
「…一次移行!?
貴方、今まで初期状態で戦っていたのですか!?」
…直撃直前に最適化が終わって一次移行した白式の姿にセシリアや女子達が驚き、男子達は最適化が間に合った事に安堵の息を吐くか「おおー!!!」と歓声の声を上げていた。
「良し、此れで勝負は振り出しに戻ったぞ!」
一夏も「千冬の名と名誉を守れる」と言っている様に自信を得た事に加えて真の姿となった白式と雪片弐型が変形してエネルギー刃を展開し、先述の千冬のIS暮桜のと同じ対象のあらゆるエネルギーを消滅させる
此の為に男子達だけでなく女子の何人かが歓声を上げながら一夏を応援していたが、此の事で調子に乗った一夏が悪しき事を招いてしまう左手を開閉する悪い癖をやっていたが、誰も此れに気付いておらず、気付いても意味が分からずにいた。
それに一夏から何とか距離を取ろうと飛び回っているセシリアが自分達の近くを過ぎた時に彼女が諦めていない事を剣一が察した。
(…そう言えば最初っからセシリアは織斑の上半身しか狙っていない)
更にセシリアの行為から何かのピースが次々に繋がって完成しようとしていた。
「…行くぞ!!!」
だがその前にセシリアがエネルギー切れを起こしたビットを戻した隙に一夏が
勿論、セシリアもスターライトMkⅢを身構えたがそれを一夏は破壊は出来なかったが雪片で払い、その結果セシリアが無防備な状態となった。
「エネルギーは充分だ!!」
「角度と間合いドンピシャ!!!」
「行けぇぇぇー!!!」
後は振り上げた一夏の右手の雪片がセシリアを切り捨てるだけの状態に誰もが最大限の高まって叫んでいたが…
「止せ、罠だ!!!」
「け、剣一!?」
「お前、何言って…」
…剣一が立ち上がって叫んだ直後、一夏の眼前のセシリアが消えて斬撃は虚しく空を切った。
「え、消え……っ!?」
消えたセシリアと空振りの一夏が驚き茫然とした直後、顎に何かが接触したと思ったら頭上を向いた。
そして重力に任せて顔を下ろした視線の先に上下逆さで後ろを向いたセシリアが入った。
一夏本人はセシリアが何をして自分に何が起こったかを分からないでいたが、硬直している観客席の面々は分かっていた。
「……サマーソルトキック…」
ビット内部での箒の呟き通り、セシリアは一夏の斬撃を後ろに反って避けるとその勢いを利用して彼の顎を蹴り上げたのだ。
「…有り得ないはなかったさ。
現にボクシングでもジャブを掻い潜って懐にきた相手をアッパーでぶち抜く戦法があるからな」
額を押さえている剣一は、此の為にセシリアは敢えて両腰のミサイルの未使用でビットを下方に展開させずに一夏の上半身を狙い続けたのも、全ては足への注意を反らす為にだと今更ながら気付いた。
しかも此れには一夏の芯である剣道は基本的に下半身は使わない事(此れは他の格闘技にも言えるが、剣道は場合は更に袴で基本的に足が見えない)も更に悪化させ、現に頭を縦に揺らされて失神した一夏は、そのまま
『…試合終了!! 勝者、セシリア!』
「…後半はかなり押しはしたが、終わってみたらビットを1つ失うもセシリア本体は無傷の完全勝利か」
「こりゃ~最適化がもっと早く行われていても負けていたかもな」
男卑女尊の世の中を具現化した様なセシリアの勝利にピットから下りて一夏に駆け寄っている箒以外の女子達は歓声を上げ…中には一夏や男子を罵っている者がいたのに反して男子達は失望感が滲み出ていた。
「…だが何であの人は何であんな顔をしてるんだ?」
だが剣一の言う通り、箒が必死に呼び掛けている一夏の近くに下り立ったセシリアは勝ったにも関わらず何故か悲しそうにしていた。
「……お前の勝ちだ」
「いえ、一夏さんの一次移行がもっと早かったら私も負けていたかもしれません…」
ISを解除したセシリアの表情に箒も疑問を感じている様だった。
(……彼は…彼は、ウルトラマンじゃない…)
現在男子達が忘れている一夏がウルトラマン擬きの装着者であるかの疑問に手を合わせた事に加えて幼少期のウルトラマン擬きから間違いではないかと思っていた。
でそのセシリアが引き上げようと思った時に背後から拍手が聞こえて振り向くと、そこに背広姿の女性がいた。
「…素晴らしい…実に素晴らしい勝利でしたよ、セシリアさん。
流石はイギリス代表候補生である事はありましたね」
観客席の面々は身なりから教師だとは分かったが、箒の様に“誰だ?”と思ってざわついていた。
「…貴女は……確か、3年一組の…鈴木、先生?」
幾らなんでも普通は1年生が3年生の教師と関わりは持たないのだが、セシリアの場合は入学試験の時に彼女と実地試験で戦って勝っていた事から彼女を知っていた。
だがその時と“口調が違う”なと思うと同時に、彼女の全てに何かの疑問が溢れ始めていた。
そして何よりアリーナの管制室にいる摩耶が担当の生徒達共々行方不明になっていた彼女にギョッとしていたが、当の本人は只々笑みを浮かべるだけであった…
感想・御意見御待ちしています。
一夏
「~~…!!!」
(“最後のセシリアのって、待ちガイルだ!!、待ちガイルだろ!!、待ちガイルだろ、オイ!!”と顎負傷で喋れないのでプラカードに書いてる、以降は省略)
はい、“ストリートファイター”…特にIIをやっていた人なら、どんなにえげつない戦法か分かってくれますよね?
何せ一部のゲームセンターでは禁止令が出ていた噂がありますから。
一夏
「~~…!!?」
(確か最初は避けてスターライトMkⅢの銃尻で腹部を殴って直ぐに零距離射撃で吹き飛ばすんじゃなかったか?)
偶々ガイルの動画を見て“あっ此れの方が効果的だ”と思って替えました。
実際アニメ見直した後にサマーソルトキックはいけると判断…と言うより何故セシリアは使わないんだと思いましたしね。
一夏
「~~…!!!」
(鈴は双天牙月でシャルはガン=カタで警戒されるし、ラウラはAICで必用無いからな。
確かにセシリアにサマーソルトキックは鬼に金棒だよな)
それに本作ではセシリアは幼少期(プロローグ)でネロンガに襲われた影響でオリジナルでの敗因と思われる慢心が消えていますので、尚更です。
一夏
「~~…!!!」
(それにしても波動拳一つ出すのにも苦労するストリートファイター最弱王なのに、よく書けたな)
その事だけは言わないで…
…さ、さぁ、いよいよ次回は異星人が本格的に出てセシリアに危機が迫ります。
そしてその直後に剣一のデビュー戦です。