インフィニット・ストラトス ~ULTRA~   作:サイレント・レイ

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第6話 セシリアvsツルク星人

――― IS学園・アリーナ ―――

 

 

「……ですが、その人間もウルトラマンがいなくても、十分な強さを付けましたよ」

 

「それじゃあ、見せてもらおうじゃないの」

 

 ドラコに事実上の宣戦布告をしたセシリアはブルー・ティアーズを展開して身構えると、ドラコが間違って伸びてる一夏と、その一夏を抱えている箒の2人に向かわない様に、2人の前にゆっくり移動した。

 勿論、セシリアに合わせてドラコも身構えたが、ドラコから何処か余裕が感じ取れるのに反して、セシリアはまだ戦ってもいないのに早くも息を乱して冷や汗を流していた。

 そして箒だけでなく、観客席に閉じ込められている生徒達も妙な緊張感でほぼ硬直して5人の動きを凝視していた。

 

「…っ!?」

 

 だがドラコのプレッシャーにやられかけたセシリアは、ドラコの背後に幼少期に両親を奪ったネロンガの幻を見てしまって、小さかったと言え、思わず悲鳴を出してしまった。

 

(…大丈夫です。

ウルトラマンがいなくたってやれます。

自分でそう言ったじゃないですか!)

 

 だが内心不安なセシリアはブルー・ティアーズの腕部に覆われている自分の右腕に一瞬目線を落として、自分に言い聞かせていた。

 

「……ふぅ…」

 

「…?」

 

 不意にドラコが自分から目線を反らして溜め息を吐き、それを見たセシリアが一瞬気を抜いた直後…

 

「……うりゃ!!」

 

…その隙を突こうと、ドラコは右手から爪を展開しながらセシリアに突進した!

 

「ひゃ!?」

 

 だがセシリアの左肩を狙った此の一撃は、そのセシリアが驚きと変な声を出しながらも、殆ど無意識の内に動きでスターライトMkⅢで防がれた為に空振りに終わった。

 

「まだまだ!」

 

 当然と言えば当然だが、ドラコの攻撃が此れで終わる訳がなく、左手からも爪を展開して第二撃を行い………此れもセシリアに防がれてしまったが、此れを切っ掛けにドラコの連続攻撃が始まり、セシリアは必死に防ぐか避け続けていた。

 

「何をやってる、セシリア!!

避けてるだけじゃ、殺られるぞ!」

 

 セシリアは自分を見失いかけていたが、箒の叫びで正気に戻った。

 そしてドラコの隙を突いて、サマーソルトキックを狙おうとしたが、視線からドラコが蹴り技を警戒しているのを察して、カウンター気味にスターライトMkⅢで払ってドラコを退け反らせ…

 

「インターセプト!!!」

 

…更にブルー・ティアーズ唯一の近接武器である短剣インターセプトを展開するや、それでの突きでドラコを引かせると、一夏戦では使わなかった両脇のミサイルビットからミサイル2発を放った。

 

「…うげ!」

 

 ミサイルその物はドラコに2発揃って切られた為、直撃せず近距離での爆発で終わったが……傷らしきモノが全く出来ていないドラコが噎せていたが、セシリアは此の間に上空に避難していた。

 更にビット5機全てを展開させて遠距離(アウトレンジ)からの一斉射撃を開始した。

 

「……ふっ」

 

「ちぃ!!」

 

 ドラコに避け続けられていると言え、上空に逃れた影響でセシリアに僅かに余裕が生まれていた。

 

「ダンスがお好きな様ですね?

だったらもっと舞って下さ……!?」

 

 自分への鼓舞を兼ねて軽口を吐いたセシリアだが、ドラコの動きに何か違和感を感じた。

 だが、ドラコがおふざけともパフォーマンスとも思える妙に激しい動きを始め、そしてドラコがセシリアの方に振り向いてニッと笑って少し屈むと…

 

「ひっ!?」

 

「……良い運動が出来たわ!!」

 

…飛び上がった……否、飛翔したドラコがセシリアの目の前に一瞬の間に近付いた。

 そして驚き怯えたセシリアの隙を突いて、ドラコがミサイルビットの砲身を握って潰すと、そのまま後退して左側のミサイルビットの砲身が根元から千切れ、右側のは本体ごと持ってかれてしまった。

 

「……くっ!!」

 

 ミサイルビットが2機とも破壊された事は兎も角とし、右手の砲身を露骨に捨てて左手のミサイルビットをねじ曲げているドラコが空中に浮いている通り、異星人の一部には飛行能力を持っている事を忘れて油断し、なにより勝利を幻想した自分に歯軋りしていた。

 

「…あ、そうそう。

セシリアさん、ビットは展開しない方がいいわよ」

 

「……っ!?」

 

 ドラコの忠告にセシリアは無意識の内にビットを動かそうとしたが…

 

「一号機を右90度・上下角プラス45度に展開して私の右肩を狙おうとしたわね」

 

…ドラコに攻撃を防がれるだけでなく、ビットの動きを言い当てられてしまった。

 

「…今度は五号機を私の真後ろから後頭部を狙おうとしたわね。

あ、私に言われて、二号機、三号機、六号機を右からプラス0度、120度、240度、3機揃って上下角マイナス60度から私の胴体……と言うより中心点を一斉射撃で狙おうとしたわね」

 

 更にビットの動きを言い当てられてしまい、間違いなくドラコはセシリアのビット五機(四号機は一夏に破壊)全ての動作を完全に読んでいた。

 

(読まれた!?

何か、癖が……視線とか体の動きに癖があるの!?)

 

 観客席の生徒達もそうだが、先程の一斉射撃の事もあって驚き戸惑っているセシリアは体の至る所に視線を落としていた。

 

「答えを教えてあげるわ!」

 

 ドラコは突然左手の爪を引き抜くと、その爪をセシリアに見せつけてニヤつくと、爪を右に投げた。

 

「…ふん!」

 

 そして爪が垂直に近い角度で曲がりながら加速して、硬直していたセシリアを……外れて彼女の近くに展開していたビット一機を破壊した。

 だがドラコは更に右手の爪も引き抜いて投げ、今度は迎撃しようとスターライトMkⅢを身構えだが、その爪がジグザグに有り得ない軌道で飛んできて驚いてしまった間にビットをまた1機破壊されてしまった。

 

「……まさか…」

 

「…そうよ!」

 

「…っ!?」

 

 破壊されてしまったビットがあった空間を顔を青くして見つめていたセシリアが何かを察した直後、またドラコが目の前にいた。

 

「私達ツルク星人は生まれながらに、『ツルクラッガー』と言う生まれながらのビット兵器を持っているの。

だからね、私達はビット兵器の類いの動きが手に取る様に分かるの!」

 

 なんとも驚きの能力を持ち合わせている事だが、最初は驚いたセシリアはドラコの両手に爪が無くなっている事から、直ぐに左の回し蹴りでドラコを下がらせるとインターセプトで斬りかかろうとしたが…

 

「爪が無いから勝てると思った?

それも残念!!」

 

…不敵に笑ったドラコが右手から新しい爪が生えて、逆にインターセプトを折ってしまった!

 更にドラコは左手からも爪を生やし、此れをセシリアはスターライトMkⅢを身構えて、防ぎはしたがスターライトMkⅢの銃身に切り傷が出来た事にギョッとした。

 

「貴女の推測は正解よ。

私達の爪は栄養分の蓄えがあれば瞬時に新しいのを生やせる上に、生え変わる度により強固且つ鋭利になっていくの!」

 

「…鮫の歯と同じ、だと言うのですね」

 

「ついでに言うと、栄養分ならお腹が出ちゃう位蓄えてるわよ」

 

「…くっ!」

 

 元から分かってはいたが、近距離(クロスレンジ)での戦闘は圧倒的に不利だと改めて判断したセシリアは、右の回し蹴りでドラコを牽制して出来た隙を突いて後ろに飛び退いて距離を取ろうとした。

 当然ドラコはセシリアを追撃し、それ等を後退しながら避けたり防いだりしているセシリアの動きが悪くなり始めていて、セシリアが疲労が貯まるだけでなく心が折れ始めている事が誰の目からでも察する事が出来た。

 

「セシリアさん、頑張ってぇー!!」

 

「遠距離戦なら勝機があります!!」

 

「科特隊だって装備が劣った状態で宇宙人を撃退したんです!!

ISなら十分勝てますよ!!」

 

 セシリアとドラコが一旦止まって間を作ったが、にやけているドラコに反してセシリアは汗だくで息を激しく乱している光景から、誰もが否応なくセシリア敗北の可能性が大きくなっている事を察したが、観客席の女子達が不安を拭い去ろうと必死にセシリアを応援していた。

 

「…“言うは易し”って、此処まで腹立たしい事だったなんて知りませんでしたわ」

 

 たが女子達が思っている以上にセシリアはドラコの脅威を感じていて、現にISを纏った状態で生身の異星人に圧倒されている此の現状がなによりであった。

 それでも自分を応援する女子達の4人の“科特隊”の単語はセシリアに僅かな希望を与え、なんとか自分を奮い立たせて身構えたが、突然ドラコが笑い出した。

 

「…素晴らしい……実に素晴らしいですよ、セシリアさん!

流石は世界最新鋭の第三世代機が与えられた代表候補生、見事にその機体を操っています!

ブルーティアーズも私達ツルク星人から見ても素晴らしい物ですよ!」

 

「え、ええ、それは、どうも」

 

 ドラコが拍手をしながら機体共々セシリアを褒め称えた事に、疲労で思考力が低下していた当のセシリアは只驚き戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…だから、私がセシリア・オルコットとなって、その機体を纏ったら、もっと素晴らしい事になると思いませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 だからこそ、此のドラコの発言を理解出来なかったセシリアは暫く硬直した後、何か嫌な予感を感じていていた。

 そんなセシリアにドラコが凶悪な笑みを向けながら右手首のブレスレットみたいな腕輪のボタンを押すと、何処からかロザリオみたいな物を取り出し、セシリアに見せ付けるかの様に前方に突きだした。

 

「……まさか…」

 

「ええ、貴女の思っている通りよ」

 

 セシリア達女子生徒が見慣れている発光をドラコがし……それが収まるとドラコは緑色のISを纏っていた。

 

「きょ、教師用のラファール!?」

 

 ドラコが纏っているのISが、世界的ベストセラー機であるラファールの系統であり、教師達が纏っている機体である事は直ぐに分かったが、背後のイコライザーに銃器か刃物を持った色違いの腕が大多数引っ付いていて、見慣れているラファールとは思えない……異星人が纏うに相応しい不気味さを感じさせていた。

 機体その物は鈴木先生のを奪った物で、イコライザーの腕は殺された(捕食された)生徒達の物々であり、それ等をドラコが改造したのは間違いなかった。

 

「どう、私のラファール・アシュラは…」

 

「……何故…」

 

 否、それよりも問題なのは…

 

「…何故貴方がISを纏えるのですか!?」

 

…セシリアの悲鳴に近い叫び通り、人間(・・)の女性にしか纏えない筈のISを異星人であるドラコが纏っている事であった。

 だが、ドラコがIS学園に入り込んでいる事から答えを察する事が出来たが、顔を青くするセシリアはなんとか否定したがっていた。

 

「なに、こんな代物、擬態能力を使えば簡単に起動出来たわよ。

只、起動後にちょぉぉーと、プログラムを書き換えたけどね」

 

 そんなセシリアの期待を否定したドラコの返事に、セシリアは一歩下がってしまった。

 だが思い起こせば、ウルトラマンがいた当時の世界最先端の科学技術が集っていた科特隊もケムリア、ザラブ星人(コイツだけは少し微妙だが)、ゼットン星人に本部や支部への侵入を簡単に許していた。

 特にウルトラマン最後の対戦相手である宇宙恐竜ゼットンを使役したゼットン星人のは致命的で、結果的に科特隊の支部の殆どが壊滅させられて後日の解散に繋がった。

 

「異星人の擬態能力は、簡単に侵入するだけでなく、ISをも騙して纏える程だと言うのですか!?」

 

 ISを含めて自分達地球はウルトラマンがいた当時より遥かに強大化した、誰もがそう思っていたが、現実は異星人達との差は縮まらずに差が開いたままであった。

 現にISを纏っているドラコの存在自体が強烈な絶望感を感じさせた。

 そして何かが砕けたセシリアが自覚できる程に畏縮して、ドラコが凶悪な笑みを浮かべた。

 

「…何時から地球最強が宇宙最強だと錯覚していたの、劣等種族!!!」

 




 感想・御意見お待ちしています。

 今回の投稿に合わせて“ウルトラ図鑑 星人”を投稿します。

セシリア
「異星人にISって、鬼に金棒じゃなくてミニガン(ターミネーター2で、シュワちゃんがパトカーを片っ端に破壊したアレ)持たせた様な状況じゃないですか!」

 いやぁ~…“ウルトラマンxIS”は殆ど怪獣との戦いだけど、此の作品は基本的に異星人戦がメインだからこう言う絶望が書けんのよねぇ~…


「だからこその、タイプU(ウルトラマン型のIS)か…」

 で、こんな時に少しネタ晴らし、“原作ULTRAMAN”の最近の展開で、箒は紅椿を“原作IS”とは違う形で受領、もしくは紅椿を受領しないか、紅椿の代わりに別の機体を受領する予定です。

 まぁこんなんですが、次回とびきりの恐怖を味わうセシリアと“何してる”感全開の一夏の前に、ウルトラマン型ISがいよいよ登場(の予定)!
 と、言う訳で……剣一、スタンバイ!!!

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