清潔感を感じる所か最早恐ろしいぐらい真っ白な施設の廊下を、私は職員に連れられて身を縮こまらせながら歩いていた。
つい一昨日の事だ。
超能力検査で異常なほど高位な能力を幾つも身につけてるのが分かった夜、突然超能力界になければならない存在と言える【超能力委員会】から連絡が来た。
『なるべく近い日に、間宮人子に会えないか』と。
常時暇人と言っても過言ではない私は早速施設に足を運んでいるわけだが、酷く緊張していて先程から冷や汗が止まらない。
こんな得体の知れない施設で何をするのだろうか?
真っ白すぎるこの施設は本当になにか怪しい実験を、それこそ人体実験のようなことをしていそうで恐ろしい。
そんなことを考えながら暫く歩くと、一際大きい両開きのドアの前で職員が立ち止まった。
「こちらの部屋です。」
職員はそれだけ言うと、そっと扉の傍に立ち何も言わなくなる。
この部屋に入れということだろうか。
だが私は、一人で部屋に入るのが恐ろしくてドアノブを触ったり離したりしてしまう。
それを見かねたのか職員はちらりとこちらに視線を向け、小さく溜息をついてドアノブを回してくれた。
申し訳ないと思いながら恐る恐るドアを潜ると、そこは教室ほどの部屋だった。
壁も床も真っ白だが、所々に点滅する赤いラインが通っている。
そして、部屋の隅にはスピーカーがついていた。
一通り部屋を観察して、何をすればいいかわからないため座って落ち着こうと膝を折りかけた時だ。
『間宮人子様』
突然聞こえた声に思わず飛び上がる。
きょろきょろ辺りを見渡せば、その声がスピーカーから聞こえているのだと分かった。
『間宮人子様、ここは超能力検査用ルームです。学校、病院などで行う検査より正確に超能力を測定することが可能になります。』
機械的なその声は、淡々と私に告げる。
『間宮人子様は学校での検査の結果、非常に高位な能力を複数保持していることが分かりました。それは世界的に見てもとても稀有で、奇跡的なことです。ですので間宮人子様を超能力委員会で重要保護対象とすることが決定しました。そのため間宮人子様には護衛をつけさせていただくことになるのですが、なるべく間宮人子様の安全が確保されるよう、護衛を今回行う検査の結果と照らし合わせ、最も間宮人子様に適している護衛を選ばせていただくことになります。』
滔々と語られるその内容は思ったより重要で、焦った私の脳みそが正確に記憶できたかは怪しいが、つまり【私は世界的にみてとても稀有な人物なため、絶対に私の安全を確保しなければならない。そのために護衛をつけるから、その護衛選ぶためにもう一回検査を行う】ということだと思う。多分。
簡単に受け入れられることではないし、まず私がいつの間にかそんなに重要な人物になっていたことが信じられない。
世界的に見ても稀有で、奇跡的な人物が、私なのだ。
そんな眩暈がしそうな事実に背中がずしりと重くなった気がした。
だが、そうやって何時までも混乱してるわけにはいかない。
何とか己を奮い立たせ、深呼吸をして如何すれば検査できるのかスピーカーに向かって問うた。
即座にスピーカーから答えが返ってくる。
『部屋の真ん中に立ち、手を合わせ、手の中に力を溜めるようなイメージをしてください。目を瞑っていただけると、よりイメージしやすいかと思われます』
その言葉に従い、私は部屋の真ん中に立って合掌した。
目を瞑り、手の中に力を溜めるようなイメージをする。
すると、手を中心に風が巻き起こり始めた。
バチバチと電撃のようなの音が聞こえる。
涼しかった室温は段々と上がってきた。
次第に電撃のような音は大きくなり、室温も高くなる。
そして、一際大きい電撃のような音が鳴った瞬間、爆発音と共に、暴風が私を襲った。
あまりに強い風に体を支えきれず、勢いよく転倒する。
目を開けると、一面煙に覆われていて何も見えない。
息も出来ず咳き込んでいると、バタンとドアが開く音がした。
そこから煙が逃げているのだろう。
鮮明になってきた視界にホッと息をついた瞬間、両手を強く握り締められた。
「予想以上です、間宮人子様!」
白衣を着た研究員らしきその人は、キラキラと目を輝かせている。
「素晴らしい!素晴らしいです間宮人子様!貴方の力はこの検査用ルームが耐え切れず爆発してしまうほど強大なのです!」
若干引いてしまうぐらい研究員は興奮している。
私の様子に気付いたのか、研究員は少々赤面しながら一つ咳払いをして立ち上がった。
「お疲れ様でした、間宮人子様。申し訳ないのですが、間宮人子様の力に検査用ルームが耐え切れず、正確に測定することが出来なくなってしまったため、もう一度検査をしてもらうことになります。」
こちらです、と歩き始める研究員の後を追いながら、心の中で溜息をついた。
多分、検査用ルームが爆発してしまうくらいなのだから、私の力は恐ろしく強いものなのだろう。
その力が、これからの日常を非日常に変えてしまうことぐらいは容易に想像できてしまう。
私は密かにこれまでの平穏な日々に別れを告げ、これからの平穏とは言い難い日々に足を踏み入れた。
「そもそもこいつはなぜ今まで平穏に暮らせていたのか」などのことについては次回説明したいなーと思ってます。
多分次回は説明&新キャラ登場回です。