呼ばるる異名は黄金騎士   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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いつもどおりの出来

そしてたぶんあと牙狼サイドはしばらく出ないと思う(恐らく

それとお待たせして申し訳ないです

楽しんでいただけるかは、わかりませんが、どうぞ

※予告は後ほど



冒険 adventure

翌日

少し早めにレイがリンクスタートしてルーポに来てみるとまだリーファもキリトも来ていなかった

ちらりと時間を見てみると約束までは数十分余裕がある

 

<ちょっと早く来すぎたみたいね>

「みたいだな。マスター、水もらってもいいかい?」

「あいよ」

 

ガダルにそう言うと彼は適当なコップに水をついでカウンターに置いた

それを一気に喉へ流し込んでいると誰かが実体化するような音がする

ちらりと視線を向けるとそこには妖精剣士リーファがログインしていた

 

「よっす。早いな」

「レイさんほどじゃないですよ。ちょっと準備済ませてきますね」

 

笑顔でそう言うといったんリーファはルーポから飛び出した

ちらりと窓から外の景色を見てみると、とても綺麗な朝焼けが映し出されている

決まった時間にログインしかできないプレイヤーへの配慮なのかアルブヘイムでは十六時間で一日が経過する

現実と一致するときもあれば、ずれる時もある

メニューウィンドウの時間のところには現実の時間とゲーム内の時間両方が記載されている

プレイ当初はわけわからなかったが今となってはもう慣れている

すると実体化する人物が一人

キリトである

同じタイミングでリーファも買い物を済ませてきたのか、ちょうど扉を開けて戻ってきたところだった

 

キリトは何回か目を瞬きしてから、リーファとレイの方へと視線を向ける

 

「やぁ。早いな二人共」

「ううん、私はさっき来たとこ、レイさんは私より前に来てたけど…」

「時間的には二人とそう変わりないぜ。ちょっと早かっただけだ」

「なんだ、じゃあみんな同じくらいの時間ってわけね」

<ところでキリト。あなた、なにか買いたいものとかない?>

 

シルヴァが会話に割り込み、そう問いかけた

キリトはあぁ、と相槌を打って背負ってる剣を指差し

 

「やっぱり、剣、かな。こいつじゃ少し頼りなくて」

「おっけー、じゃあ早速武器屋行こうか」

「そだ、金あるか? ユルドって単位だ。ないなら貸すぜ?」

 

レイに言われてキリトはウィンドウを開いて確認する

少ししてうん、と頷きながら

 

「問題ない、と思う」

「わかった。武器買うとき足りなかったら言ってくれよ?」

「あぁ、ありがとう。…ほら、行くぞ、ユイ」

 

不意に胸ポケを確認するとそこからひょこいとユイが顔を出した

あくびをしており、見るからに眠そうである

 

そこからはリーファがメインとなって案内をしていた

と言ってもあまり悩んで決めてはなかった

防具は属性強化されているものだけで、時間がかかったのは彼が剣を選ぶのを悩みまくったおかげである

手にした武器を試しに振るたんびにもっと重いのと言ってくるのだ

最終的に彼が選んだのは片手剣、ではなく大剣というジャンルに位置する武器である

このALOでの与ダメージ量が決まるのは武器自体の威力、そしてそれらが振られる速度、となっている

しかしそれだけじゃ速度に補正がかかっているシルフやケットシーが優位になってしまうので、筋肉タイプのキャラは威力に勝る武器…大剣などが扱いやすくなっているのだ

シルフなどでもスキルを上げればアックスなどの重量武器を装備できないことはないのだが、隠しパラの筋力が足りず、結局使いこなすことはできないのである

 

<振れるの? そんな重そうな剣>

「うん、問題ないよ」

 

キリトの外見はどう見てもスピードタイプなのだが

まぁ本人が触れると言っているなら納得するしかないのだが

背中に吊った剣だが、鞘の先が地面に擦れる寸前だ

 

「けど、とりあえずこれで準備万端だね! これからしばらくヨロシクね! 二人共手を出して!」

 

バッとリーファが手を前につき出す

そうするとキリトが照れくさそうに、レイは苦笑いをしながら自分の手を重ねる

そしてポケットから飛び出たユイが手をぺちぺちと叩いてきて

 

「目指しましょう! 世界樹!」

 

◇◇◇

 

でかい剣を背負って肩にピクシーを乗っけて歩くキリトを連れ歩くこと数分、目の前に翡翠に輝いている塔が現れた

シルフ領のシンボル、風の塔である

しかし隣のキリトは先日自分が張り付いた塔を見て嫌そうな顔をする

 

「ブレーキの練習でもしておくか?」

「…いや、今後は安全運転することにしたんだ」

 

憮然とした表情で彼が答えた

トラウマになっているのだろう

 

「ところで、なんで塔に? なんか用事があるのか?」

「長距離を飛ぶときにてっぺんから出発するの。高度が稼げるから」

「あぁ…なるほど…」

 

頷くキリトの背をリーファが押しながらレイがそれを追っかけて歩き出す

 

「さ、いこ! 夜までには抜けておきたいからね」

「俺は地理わからないからなぁ。案内よろしく」

「うん! それじゃ行きましょうレイさん!」

「おうともよ」

 

リーファがトンと己の胸を叩いたあと、ふと思いついて視線を奥の方へと移した

そこにはシルフ領主館のシルエットが朝焼けに浮かんでいる

 

「そういや、今日はサクヤいないっぽいな。まぁ、少し街を離れるってことを言ってはおきたかったが…、まぁ後で言えばいいか」

「…そんなんでいいんですか?」

「大丈夫。付き合い長いから」

 

そう言って笑うレイ

本人がそう言うならそれでいいだろうと判断したリーファは気を取り直して風の塔正面内部に進んでいく

そろそろ行き交う人が増えてくる時間帯だ

キリトの腕を引っ張りつつ、殿にレイが追っかけてくる中ちょうど降りてきたエレベーターの右側に駆け込もうとしたとき、不意に傍らに何人かプレイヤーが現れその行く手を塞ぐ

ぶつかる寸前でリーファはなんとかブレーキに成功したようだ

 

「ちょっと、危ないじゃない!」

 

反射的に文句を言いながら目の前に立っている男を見る

よく見るとそれはリーファのよく知る男だ

名前はシグルド

ここ最近リーファが行動を共にしているパーティの前衛である

シグルドはシルフ最強の名をいつもリーファと争う剛の者だ

同時に主従派閥に関わることを忌避しているリーファと違い政治的にも実力者なのだ

現在のシルフ領主、サクヤの側近としても名を馳せている、超がつくほどのアクティブプレイヤーである

恐るべきプレイ時間に比例し、スキル数値とレア装備は一般プレイヤーの及ぶところではない

リーファの真ん前に立っているシグルドは不機嫌そうに口元を歪めている

 

「―――こ、こんにちわ、シグルド」

 

笑いながらリーファは挨拶する

シグルドは答える心境ではないのか、切り出した

 

「パーティから抜ける気か。リーファ」

「う、うん。まぁね。貯金もだいぶできたし、少しのんびりしようかなって」

「勝手だな。他のメンバーに迷惑がかかると思わないのか」

「はぁ!? 勝手!?」

 

これにはリーファもイラッときた

最初にパーティに勧誘してきたのはシグルドだ

そしてその時にちゃんと参加する条件として提示したのはパーティに参加するときは都合つくときだけ、抜けたくなったらいつでも抜けれる、という二つ

早い話束縛はゴメンだという旨を伝えていたのだが…

 

「お前は俺のパーティの一員として名が通っている。そのお前が理由なく抜けては俺の顔に泥を塗ることになるぞ」

「…」

 

あまりにふてぶてしい言葉にリーファは言葉を失っていた

横のレイも同様、はっきり言って何を言っているかわからない

要は自分のしょうもないプライドのためにリーファを抜けさせたくないだけなのだ

助け舟を出すか、と思ったその時だ

 

「仲間はアイテムじゃないぜ」

 

口を挟んだのはキリトだ

 

「…なに?」

「仲間はアンタの大事なアイテムと同じように、ロックできないって言ったんだ」

「き、―――さま!」

 

怒りに表情を染め、シグルドが剣の柄に手をかける

 

「屑漁りが図に乗るな! 貴様も所詮、そこのスプリガンと同じように領地を追放された〝レネゲイド〟だろうが! リーファ、なぜこんなやつとつるんでいる!?」

「! おい、俺はいいけどこいつは―――!」

「そうよ! 失礼なこと言わないで! 彼は私の―――私の新しいパートナーよ!」

 

今にも抜刀しそうな勢いでまくし立てるシグルドにレイと共に反論したのはリーファである

その言葉にシグルドは「なっ!?」と驚愕に顔を染めて

 

「…お前、領地を捨てる気なのか」

 

冷静にそう言われ、リーファはハッとした

アルブヘイムのプレイヤーは大きく分けて二種類

一つは選択した種族へお金の一部を上納し、その種族の発展を促すグループ

もう一つが領地を出て、中立拠点を本拠地として異種族同士でパーティを組み、ゲーム攻略を行うグループだ

リーファはシルフへの帰属意識は薄いが、スイルベーンが気に入ってること、あとは惰性でこの領地にとどまっていた

だが、さっきシグルドに言われたことで、解き放たれたいという欲求が湧き上がってきたのだ

 

「…えぇ、そうよ。私、ここを出る」

 

そして呟くその言葉

シグルドは食いしばった歯を僅かにむき出し、いきなり剣を抜き放った

キリトを睨みつけ

 

「…泥棒の真似事とは調子に乗りすぎたな。のこのこ他種族の領地に入ってくるからには、斬られても文句はないだろうな…!」

「お前こそいいのかよ。こんなギャラリーの多い場所で、無抵抗の相手斬ってさ」

 

レイの言葉で気づいたが、自分たちの周りにはトラブルの気配に惹かれたようにいつの間にか見物人のプレイヤーが集まっていた

もしもこれが正当なデュエルだったり相手が明らかなスパイならともかく、この場で攻撃権を持たない観光客同然のキリトをシグルドが一方的になぶるのは見栄えのいい行動とは言えないだろう

シグルドはしばらくキリトを睨んでいたが

 

「…せいぜい外では気をつけることだな」

 

キリトにそんな捨て台詞

そして今度はリーファに向かって

 

「後悔するぞ。俺を裏切ったことを」

「留まって後悔するよりはマシだわ」

「っていうか、何様なんだアンタ」

<自己中心的ね。そんなんじゃ誰も貴方についていかないわよ?>

 

リーファにそう反論され、おまけにレイとシルヴァにもはっきりと拒絶される

シグルドは一層表情を怒りに染めたが、場所が場所のためそれらを自制し、その場を翻して塔の出口へと歩き出した

彼にくっついていた取り巻き二人はリーファに何か言いたそうだったが、やがて諦めたようにシグルドを追いかけた

リーファは大きくため息を吐いて

 

「…なんか、変なことに巻き込んでごめんね…」

「いや、俺も火に油注ぐような真似しちゃったし…」

<それはそうと、いいの? 勢いとは言え、領地を出る、なぁんて言っちゃって>

「あー…」

 

どういったものか迷った彼女はキリトとレイの背中を押して人垣を通り抜け。降りてきたエレベーターに乗り、そのまま屋上のボタンを押す

すると半透明のガラスでできたチューブが緑色に輝き、勢いよく上方向へと動いていく

時間にして数十秒、といったところでエレベーターが止まった

扉が開くと朝日とともに心地いい風が流れてくる

シルフ領はアルブヘイムの南西に位置している

西側は草原が続いたあとに海岸となっていて、その先は大海原となっている

東は深い森が連なり―――その稜線の先に一番高くそびえる世界樹が見える

 

「おお…すごい眺めだな。おまけに空も近い、手が届きそうだ」

 

先に降りたリーファに続いたキリトがそんな言葉を漏らす

 

「…この空見てると、小さく思えるよね。いろいろなことが、さ」

「なんだ、薮から棒に」

 

レイがそんな言葉を投げかけ、キリトが訝しげな視線を向ける

リーファはそれらの視線に笑顔を浮かべて

 

「いいきっかけになったわ。いつかは出てこうって思ってたけど、怖くて、なかなか決心つかなかったんだけど…」

「そっか。…けど、なんか喧嘩別れみたいになっちゃったけど…」

「ま、どっちみちあの状況じゃあ穏便には無理だったから、仕方ないか?」

 

キリトとレイは口々にそう言う

そんな言葉を耳にしながら、リーファはボソリと呟いた

 

「なんであんなふうに縛ったりするのかな…。せっかく、翅があるのに、な」

「フクザツですね、人間は」

 

それに応えたのは、キリトの肩に乗っているピクシーだった

きららんと飛び立つと反対側の肩に乗り、腕を組んで首をかしげる

 

「人を求める心を、あんなふうにややこしく表現できる心理を理解できません」

<あら。なかなか面白いこというのね、ユイちゃん>

「他者の心を求める衝動が人間の基本的行動原理だと私は理解してます、だからそれは私のベースメントでもあるのですが、私なら…」

 

ユイは不意にキリトの頬に手を添えるとかがみ込み、音を高くキスをする

 

「これです。とってもシンプルで、明確です」

<あらら。ユイちゃんは大胆ね? ますます興味が沸いてきたわ>

「あぁ、本当にAIかってくらい精巧だな、そのピクシー」

 

その横でリーファは呆気に取られてるように目を丸くしている

レイとシルヴァの言葉を聞きながらキリトは苦笑いしながらユイの頭を撫でながら

 

「こいつは特にヘンなのさ」

 

そう言うと優しくユイをつまみ上げるとゆっくりと胸ポケットに放り込む

 

「それにしても…人の心、か…」

 

そんな中、リーファはさっきユイが言っていた言葉を繰り返していた

背伸びをしながら、何かを考えるようにアルブヘイムの空を見上げる

やがてしばらく考えた後にリーファは「まさかね」と何やら自己完結したように呟く

 

「いようし、じゃあそろそろ行こうぜ。二人共」

 

レイの言葉でキリトもリーファも互いに笑顔を浮かべて頷く

アルブヘイムの天気は快晴、気分も晴れやか、絶好のフライト日和だ

そんなわけでさぁ、飛ぼうとした時だ

 

「リーファちゃんっ!」

 

エレベーターから飛び出してきた人に呼び止められ、飛ぼうとしてたアクションをストップさせる

 

「…レコン」

「ひどいよ、一声かけてから出発してもいいじゃない」

「はは、ごめん、忘れてた」

 

がっくしと肩を落としたレコン

相も変わらずあしらわれているみたいだ

やがておほん、と調子を整えた彼はいつになく真剣な表情で聞いてくる

 

「リーファちゃん、パーティ抜けたんだって?」

「ん。勢い半分だけどね。アンタはどうする?」

「…この剣はリーファちゃんだけに捧げてるから、当然僕も行くよ…って言いたいところだけど、少し気になることがあるから僕は残るよ」

 

…言葉の前半に変な文字列が混ざっていた気がするが、触れないことにする

とはいえ彼にしては珍しくマジなトーンではあったし、何か考えがあるようだ

 

「…レイさんは知ってると思いますけど、キリトさん。彼女、トラブルに突っ込んでくクセがあるんで気をつけてくださいね」

「あ、あぁ。わかった」

「あとキリトさん。言っときますけど彼女は僕のげぶぅ!?」

 

セリフの途中でリーファの見事なボディブローが決まった

 

「余計なこと言わんでいい! しばらくは中立域にいるから、なんかあったらメールでお願いね! それとちゃんと随意飛行の練習しとくように! サラマンダーの領地にも迂闊に近づかないこと! じゃね!」

「う、うん! リーファちゃんも元気でね! すぐに追いかけるから!」

 

涙をにじませて叫ぶレコンを尻目に北東を見据え翅を動かして滑空を開始する

その隣にキリトとレイがついてきて、キリトが笑みをこぼしながら言った

 

「リアルでも友達、なんだっけ」

「…まぁ、ね」

「…ふぅん」

「なにそのふぅんって」

「いや、いいなって思ってさ」

 

キリトに続け、ユイが胸ポケットから顔を出し続ける

 

「あの人、リーファさんが好きなんですね。リーファさんはどうなんですか?」

「し、知らないわよ!」

 

リーファは照れを隠すように速度を上げる

そんな二人を眺めつつ、レイはふと呟いた

 

「…あの様子だけ見ると、姉と弟みたいだな」

<あら、奇遇ねゼロ。私もそう思ったわ>

 

◇◇◇

 

ここではない、別の場所で

時間は多少、遡り―――

 

「すごいすごい! お兄さんすごーい!」

 

相手のプレイヤーが何やら変な姿に変身した矢先、ギンガもその身に鎧を纏って一撃を叩き込んだあとのこと

あくまで幻覚でしかないのか、思いのほか脆かった

あるいは、それ以上に牙狼が凄まじい、ということなのだろうか

とりあえずまた襲われては困るので、きっちり相手の体力はゼロにさせていただいたのだが

 

「ねぇねぇ! お兄さんの戦い方すごくかっこいいね! ボクにもできるかな!?」

 

元気よくこちらに言葉を投げかけてくるロングの髪の女の子

その笑顔は、見ているこちらも思わず釣られて笑ってしまいそうになるくらいだ

 

「困っているわよ。そちらの方」

 

青い髪の女性…ウンディーネ、だろうか…の人が口をはさみ、ロングの子がしゅん、とする

喜怒哀楽がはっきりしててサバサバしている性格、なのだろうか

 

「あ、そうだった…。それと、助けてくれてありがとう。ボクたちだけじゃ、きっと勝てなかったよ」

「気にするな。困ってる人をスルーできない性分なんでね。とりあえずどっか近くの拠点か何処かに…」

 

 

「ギンガー!」

 

 

不意に耳に聞こえる、聞き慣れた声

それは空から聞こえたものだ

ウンディーネの女性とロングの女の子と一緒に上空を見てみると誰かが飛んでくる姿が見えた

目を細めてみると―――それはサチだ

服装も見慣れた鎧姿なところを見ると、彼女は普通に引き継げたのだろうか

こちらを見つけると手を大きく振って存在をアピールする

 

「やっと見つけたよー! ギンガー!」

 

しかしこちらに声を掛けるのに夢中になっているせいなのか、彼女自身の羽が点滅していることには気がついていない

…そういえばこのゲームって滑空するのに制限時間があるのではなかったか?

時間が近づくにつれ、点滅が早くなるとかなんとか

そして、その嫌な予感は的中し―――

 

「―――れっ?」

 

無慈悲にも、けっこうな高さにいたサチは真っ逆さまに落ちてきた

幸い、ギンガは彼女の予測落下地点に近いところにいる

…受け止められればいいのだけど

とかなんとか言ってる場合ではない、なるようにしかならない覚悟で彼女の落下地点へと全力で駆けていき、ギリギリのタイミングで受け止めることができた

ゲームだからこそなし得た技だ(っていうかこんなのゲームじゃないとできない)

 

「…怪我はないか」

「う、うん…、あ、ありがとう…ギンガ」

 

ギンガが下で彼女の体を抱きしめている形となっている

そしてその光景は先ほどの二人にばっちり見られている訳で

視線に耐え切れなくなったサチは素早い動きで立ち上がった

 

「おにーさんやっぱりすごいね! なんだか映画を見てるみたいだったよ!」

 

ウンディーネの女性と頷きながら、ロングの女の子がはしゃぐ

サチは改めて彼女たちを視界に捉えながら、ギンガに向かって問いかける

 

「えっと…この人たちは?」

「あーっと…」

 

説明中

 

「襲われたところをギンガが助けたんだ。…それにしても、ホントにPKしてくるんだ…なんだか実感わかないな…」

「まぁ、これはSAOじゃないからな。死んでも問題ない、って思えるだけいい方なんだけど」

 

だから少しだけ、このゲームは気が楽だ

死んでも、現実の自分は死なないのだから

 

「さて。それじゃあ改めて近くの都市に行こう。そこで君の仲間たちと合流しよう。道中襲われてもいいように同行するよ。いいか? サチ」

「うん。構わないよ」

「いいの!? ありがとうおにーさん! おねーさんも! 行こう! シウネー!」

「えぇ。わかったわ。その前にちゃんと自己紹介しないと」

 

シウネーと呼ばれた女性に指摘され、ロングの女の子は「そうだった!」と思い出したようにこちらに向き直る

そして、太陽のような眩い笑顔のあと、彼女は名を言った

 

「ボクはユウキ! おにーさんたちは?」

「あぁ。俺はギンガ。そして彼女は―――」

「サチ。よろしくね、ユウキさん」

 

軽く握手を交わし、ユウキがこちらの顔を覗き込む

 

「ギンガさん! ぶしつけで申し訳ないけど…お願いがあるんだ」

「お願い?」

「うん。ボク、やっぱりギンガさんの剣術、素直にカッコイイって思ったんだ。だから―――その戦い方、教えて欲しいんだ―――」

 

そうして、彼、彼女らは邂逅する

ユウキという名の女の子の話は、遠い先の話―――




〝何か〟を自覚するきっかけなんていくらでもある
もう会えないと思ってたやつとまた会えたり、危ないところを助けてもらったり、とかな
もっとも、それがなんなのか、流石に俺は知らねぇがな

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