木曾とそんな泊地   作:たんぺい

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第三話:木曾とリンガに集う者たち

木曾が身構えた先には、リンガ司令部がある本館がそびえ立っている。

その中からは確かに深海棲艦の気配が強く存在していた。

 

それも、一山いくらな雑魚では無くて。

明らかに最上級、大本営最強の木曾ですら1対1では太刀打ち出来ぬ、

通称「姫」、あるいは「鬼」とも呼ばれている存在だと直感と経験が木曾に告げていた。

 

 

瞬時に戦闘体勢に入った木曾であったが、同時にここから先のプランを頭の中で建てている。

 

とりあえず海に逃げて撤退、その後大本営に連絡を取り次げつつ、やって来た海軍本隊に合流と言うのが、木曾が決めた行動の大まかな流れである。

 

もちろん、勢い勇んで偵察に向かって、ソレは卑怯とも言えるプランだ。

明らかに自分一人の手に余る相手が敵だ、と言うのは予想が付いていたとしてもだ。

 

 

しかし、この場に居たのが木曾一人だったとしたら、彼女は迷い無く虎穴に飛び込み情報と言う虎児を狙ったろう。

だが、彼女の隣には飛鷹と言う、言うなれば枷が居た。

 

下手に飛鷹を巻き込んで、失策し大破…最悪、轟沈させたとしたら木曾一人の責任で済まされない。

 

「姫」や「鬼」クラスの手加減の無さは、木曾が一番よく知っている。

あまり戦い慣れしてるとも思えない飛鷹が、果たしてその化け物に通用はしないだろうと木曾は考えた。

ならば、任務放棄と言う形としても自分以上に飛鷹は守らればならぬと言うのが木曾の判断であった。

 

 

何としても飛鷹を守るためならば、とにかく自分たちの逃げ道と、出来れば飛鷹の受け入れ先の確保は最優先される。

 

木曾の紹介ならば、逃げ出した艦娘だろうがNoと突き出す鎮守府や泊地は、まあ無いだろう。

 

 

それはそれとして、任務放棄すれば木曾の戦績や特殊過ぎた事情と言った立場を考えたら、

海軍での除隊・武装解体といった最上級の罰則は無いだろうが左遷は免れない。

最悪、長期の営巣送りも普通にあり得るだろう。

 

しかし、味方を必ず生かすといった木曾のあり方は、自分の保身より優先される木曾なりのプライドでもあった。

 

その事を伝える為に、木曾は飛鷹に向かって叫ぶ。

 

 

「さて…飛鷹、自分の艤装を展開しとけ!そして先に海に走れ!」

「え…?な、何よ?!訓練か何かなの?」

 

しかし、なんともこの異常事態を把握していないような、間抜けな飛鷹の対応は、

さすがに木曾を怒らせてしまった。

 

 

「ちッ……鈍いなぁ!深海棲艦が住み着いてるぞ、この司令部は!とっとと逃げる準備を…」

「え…あ、あ……」

 

木曾の口から放たれた深海、と言う単語に一瞬目を白黒させる飛鷹。

その後、少し考えるような表情を見せて顎に手を乗せる。

そんな飛鷹を見て、木曾は更にせっつくように言う。

 

「呆けてる場合か馬鹿!救援を頼んでとっとと合流だ!急げ!」

「深海…あ、ほっぽちゃんとれっちゃんの事か!」

「…はい?」

 

しかし、考えるような態度から一転、飛鷹は両手をポンと叩くと、得心致るやといった表情になり頬を緩ませた。

しかも、その態度には明らかに飛鷹は「件の深海棲艦と仲のよい友達」といった反応である。

 

これには、流石の木曾も唖然とするしかなく目を丸くした。

 

 

「ほっぽちゃん、それにれっちゃん?お前さんは一体…」

「艤装を解いてよ木曾、大丈夫だからさ」

「お、おう…」

 

飛鷹に言われるがままに、重武装を解いてしまう木曾。

そんな木曾を、どこかおかしな表情で見つめながら、飛鷹は木曾に告げた。

 

 

「改めてだけど…木曾、大本営にも有り得ない平和なリンガ泊地へようこそね」

 

なんだそりゃ?と木曾は訝しみつつ、飛鷹の台詞に、はぁ…と気のない返事を返したのであった。

 

 

そしてそのまま、木曾が飛鷹に言われるがままに連れられて来たのは提督の執務室であった。

 

確かに深海の障気はここから漂っている。

それも強大なそれは…確かに執務室の扉の先に2つ感じられる。

それが「ほっぽちゃんとれっちゃん」なる何か何だろう。

 

「何か…扉を開けるのを、躊躇うなこりゃ」

 

なんというか、猛獣の飼育員ってきっとこんな感じ何だろうな。

そんな事を一瞬思いながら、ドアの前で固まる木曾。

恐怖心なのか、それとも緊張感からなのかは木曾自身にもわからないが。

 

「何を馬鹿な事いってるの?大丈夫だってば」

「おう…失礼します、大本営から参りました木曾です!」

 

しかし、飛鷹にせっつかれ、おっかなびっくりな態度でノックし執務室の扉を開ける木曾。    

その扉の先には…

 

 

「い、いらっしゃいませ…本土からわざわざご足労なされて大変でしたでしょう、お席でくつろいで下さい…」

 

そう言って木曾に頭を下げる、応対に出向いた明るい藤色と白の装束を纏った、

まるで新人のOLのようにも見えるおかっぱの女の子と

 

 

「木曾さんようこそ、我がリンガ泊地へ!」

 

そう言って、爽やかに挨拶する、白ずくめの軍服を纏った短髪の優男と

 

 

「ほっぽ様、ちゃんと挨拶するデス」

「ン、ヨロシクナ!」

 

病的なまでな白ずくめの肌を隠すような黒いフードをかぶった短髪で長い尾を持った女と、

同じように病的に白い姿を、逆に隠さずに白ずくめで丈のあってない様な服を来た少女が居た。

 

 

「ああ俺もよろしく…って、ちょっと待てよ……レ級と北方棲姫かよぉぉぉぉぉぉ!」

 

木曾の絶叫が執務室から木霊する。

 

そう、レ級こと「戦艦レ級」と「北方棲姫」。

それらは、木曾ならずとも名も姿も知っている…最強最悪クラスの深海棲艦の一角である。

 

そんなものが何故こんな海外泊地に居るのか。

しかも、何で司令部に陣取って居るのか。

 

 

「あー、羽黒に提督さん、ほっぽちゃんたちと遊んでたの?」

「ああ、何時ものごとくな!」

「飛鷹さんひどいですよ!私はちゃんと仕事してます!」

「遊んでたのは、提督さんだけデス」

「ン、カタグルマ、タカカッタゾ」

もっと言えば何でみんなめちゃくちゃ仲が良さそうなのかと、

木曾は理解の範疇を超えた事態に、全く付いていく事ができなかったのであった。

 

 

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