マクセル・ストーリー 作:納屋
村長との商談を終えたマクセルは、リンゴ泥棒に気付いた。
リンゴ泥棒を追っていると、やがて大樹エデンの元にたどり着く。
泥棒をを捕まえたと思ったら、光とともに泥棒は消えてしまっていた。
代わりに、マルクスには精霊を見ることができるようになっていた。
「一体、これはなんなんだ…」
マクセルは精霊に触れようとしても、精霊は思念体なので実体はなく、触れることはできない。
しかしマクセルは無知であるため、精霊に関しては何も知らなかった。
ただ、この国には目には見えない精霊がたくさん存在しているということだけを知っていた。
「と、とりあえず戻る…か…。馬車もそのままにできないしな…」
ふわふわと浮き、飛んでいる無数と言えるほどの精霊に怯えるマクセルは、村長の家へと戻った。
村長の家の前まで戻り、馬車が無事なことを確認してマクセルは安堵した。荷台の物が盗まれていないか確認したとき、大事な物が無いことに気づく。それはとても大事な書類だった。
「嘘だろ……また盗まれたのか……?」
「あの書類は、リンゴ泥棒が一緒に持っていったぞ」
マクセルが振り向くと、そこには耳が尖り、体の各部位の先端部が緑色に染まっている男がが立っていた。
マクセルは飛び上がるほど驚き、腰を抜かしてその場に転んだ。
「だだだだ、だだだれ」
「落ち着いて! ……というかお前、俺のことが見えるのか?」
「どど、どう、ど……」
「はあ……しばらく待つか」
しばらくしてマクセルが落ち着きを取り戻すと、男はマクセルの手を引いて立ち上がらせ、荷台に座らせた。そして落ち着いた口調で話しかけた。
「まあ、驚くのも当然だよな。こんな身なりだし、自己紹介まだだし」
「取り乱してすみません……僕はマクセルです。もしかして、あなたは精霊……?」
「よく分かったな。俺はシルム。風の一族の精霊で、今は村長に仕えてる身だ」
「そうなんですね……あれ、でも僕を立たせてくれた時に腕を掴んでましたよね? 精霊は掴めなかったんですが……」
「ああ、そうか……」
シルムは頭を掻き、小難しいような顔をした。
「精霊にもいろいろ種類があってな…俺は君とそんなに背丈が変わらないだろう」
「確かにそうですね」
マクセルは立ち上がり、シルムの背丈と比べる。やや、シルムの方が高いようだった。
「俺たちみたいな精霊は、妖精と呼ばれるんだ。"あやかし"の力を使って、人と変わらない背丈になったり、人間の暮らしを支えてるんだ」
「じゃあ、大樹の周りにふわふわって飛んでたのは……」
「あれは本当の精霊ってところだな。自然の活力を得て、大樹に生命力を与えてる」
マクセルは感心し、知識を一つ得た感動で瞳が輝いていた。
「……じゃ、いろいろ精霊について知れたところで話を本題に戻すぞ」
シルムは一つ咳払いをして、話し始める。
「君の探してた大事な書類だが、リンゴ泥棒が一緒に持っていったようだぞ」
「そんな……! あれはとても大事な……」
「……知ってるよ、全部。俺はずっと村長の後ろにいたから」
「知ってるんですね……」
落ち込むマクセルの肩を、シルムは叩いて元気を出させた。
マクセルは泥棒の男は大樹の根本まで行ったあと、光とともに消えたということをシルムに伝えた。
「そうだったんだな。まあ安心しろ。風の一族には、風を読んで人を追跡できる力がある。ちょっと待ってろ……」
そう言うとシルムは目を瞑り、両手を胸の前で合わせた。
数十秒後、シルムは目を開いた。
「どうやら奴はウェンドットの方に行ったのちに、そこから北のほうに行ったようだ。今すぐ追えば間に合うだろう」
「わかりました。シルムさん、ありがとうございます」
「礼には及ばんよ。犯人を捕まえられたらいいな」
マクセルは元気よく返事をして、荷台から飛び降りて馬車の運転席に座った。
シルムに別れの挨拶を告げた後、マクセルは馬に鞭を打ち、馬を走らせた。
シルムは馬車が見えなくなるまで見送った後、顔の近くまで持ってきた人差し指を立てて、風を操り始めた。
「あいつら、また動き始めたようだ……みんな用心してくれ」
シルムは誰かに話しかけるような口調で呟き、手を下ろした。風の行方を目で追い、空を見上げた。
強い日差しを浴びせていた太陽が、陰りを見せていた。
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