「な、なんでここに?」
俺は目の前の速水に問い掛ける。
今日停学明けとか誰にも言っていないハズなんだが……
「この前八幡に連絡した時、そろそろ停学明けって言っていたから、そろそろかなって」
え、それで見事当てちゃうとか、色々と怖いよ?
というか、今日は素直だな。てっきり
「別に……なんとなく」
とか言うとおもったのだが……
速水は時たま、身近な人の前では素直になるからな。
「まあいいか……。ほら、いくぞ」
玄関前で言い合っても仕方ないので登校を促す。
久し振りの登校であるせいか、登校が面倒くさい。
まあ、アレだ。夏休み明けとか急激に学校に行きたくなくなるヤツだ。
しかも今は5月の初め。徐々に暑くなるのに制服は冬服のままの時期だ。
……これ学校ついた頃汗だくじゃね?
珍しく、俺と速水は一緒に登校している。
だが……
「なあ、」
「何?」
「近くね?」
「そう?」
いやいや、近いから。
今の俺と速水の距離は腕の太さ一本分の幅あるかないかだ。
ん、徐々に近づいてきてない?
いい匂いがするからわかるよ?しかも時々触れてるし。(腕が)
まあいいか。減る物でもないし。
山の近くの交差点に差し掛かる。
この辺の道は狭く、また市内の大道路をつなぐ道路への抜け道になっているため、普段の交通量はそこまででもないが、時間帯によっては大型トラックなどが法定速度違反で走っている。そのせいか、数年前には死亡事故も起きている。
前方を見ると、黒髪ロングのストレートで、黒ストを着用した少女が歩いている。
「なあ速水、あれって――」
クラスメートか?と聞こうとして、聞けなかった。
何故なら――
――猛スピードで、4tトラックが迫っていたからだ。
しかも此処から確認する限りだと、居眠り運転のようだ。
マズイ
「速水!ちょいと荷物持っててくれ!」
荷物と羽織っていたブレザーを投げ渡し、走り出す。
「え、ちょ、……重い」
我慢してくれ。
居眠り運転手は顔をハンドルへ突っ込んだのか、大音量のクラクションが鳴る。
そのせいか、前を歩いていた少女は固まってしまう。
死を覚悟した。そんな雰囲気が少女のほうから漂ってくる。
仕方ない、奥の手を使うか。
今までのトラウマを掘り起し、殺意を生産する。
その殺意を足へ集中させ、エネルギーを取り出す。
そのエネルギーを使用し、爆発的な加速を生み出す。
名付けて、殺意ブースト。(命名、比企谷真也)
詳しい理論はもう覚えていないが。
常人を超える加速を得てどうにか間に合った俺は少女を前で抱え、(所謂お姫様抱っこ)ほぼ垂直に4メートルジャンプする。
丁度俺達の下をトラックが通過する。
完全に通過する前にトラックのコンテナを蹴って対岸に着地する。
「大丈夫か?」
「は、はい!!」
う~ん、赤いけど大丈夫か?
「あ、ありがとうございました。私、神崎有希子と言います。あの、あまり見ない方ですけど……」
「俺は今日から停学明けになった比企谷八幡だ」
ん?今俺自然に名乗っていたよな。何故だ?
「比企谷君、ありがとう。今度何かお礼させてね」
そう言うと俺が助けた少女――神崎は微笑んだ。
「お、おう……」
ふぅ、俺だから良かったものの、他の男子だったら絶対惚れてるぞ。そして玉砕して地獄を見ることになるのがお決まりパターン。
「八幡、はい荷物」
いつの間にか速水がここまで来ていた。
気付かなかったぜ。いつの間にステルススキルを……
違いますね、俺の気配察知スキルが衰えたんですね。
「ああ、悪いな」
取りあえず、預けていた荷物を受け取る。
そういや、鞄の中に拳銃入れているの忘れてた。
そりゃ普通より重くなるはずだ、
あと、なんで不機嫌になっているの?
この後、E組の山を俺を先頭に登ったのだが、二人は不穏な気配を纏いながら話し合いみたいのをしていた。
ふと後ろを見たとき、二人の間に火花が散っているように見えたのだが……気のせいだよね?