やはり俺のE組生活はまちがっている。   作:狂笑

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第五話

「ヌルフフフ、一回目の暗殺で私の触手を5本も破壊した生徒は君が初めてですね。これはなかなか期待できそうですねぇ」

 

目と目の間に空いた穴を修復しながら殺せんせーは言う

 

「そりゃどーも」

暗殺しようとした相手から激励?されても反応に困るだけなのだが……

だが、成果は出た。

殺せんせーは不意打ちに弱い。また反応が遅れる。

だから不意打ちで触手を破壊した時、逃げ出すまで少々の間があった。

それが無ければ、俺の戦果はもっと小さなものになっていたに違いない。

だが、今回の様な真正面からの不意打ちはしばらくは使えないだろう。

しばらくの間、確実に警戒される。

なら次はどうするか……。

背面は……気付かれずにどこまで接近できるかがカギになるな。

頭上は……厳しいな。ならその逆、地中からなら出来るか?

他には……教室自体にカラクリを仕掛けてみても面白そうだな。時間がかかるけど。

 

 

まあいい。タイムリミットまでにはまだ時間はあるし、ここは暗殺教室だ。

暗殺に失敗しても俺が殺される可能性はない。

どうせだ。考えつくものすべて実行してみよう。手の内を完全には晒さない程度で。

そして、殺せんせーには何が効果的かを研究し、情報収集をし、そして――

――絶対に殺す。

 

 

そう決意して俺はギュッと両手を握り締める。

ニュチャッ

……ん?

何か変な音が右手から聞こえた。

おそるおそる右手を開いてみると、そこには黄色い粘液が。

恐らく、右手代わりの触手を強く握り締めたときに付着したものだろう。

……気持ち悪いな、これ。

手を洗おうと思って教室を出る。

その寸前、さっきまで自分がいたところの近くの床を見ると、右手代わりの触手の成れ果てが、船に水揚げされた魚のようにピクピクと撥ねていた。

これも回収しておくか。何かに使えるかもしれないし。

 

 

 

   ×     ×     ×

 

 

 

俺の暗殺劇が幕を閉じ、通常(と言う名の異常)のホームルームが行われた。

生徒全員で乱射することによって濃密な弾幕を作り出し、殺せんせーがそれを全てかわしながら出席確認するという無茶苦茶なものだった。

俺は殺せんせーの回避パターンを見ながら計算し、予測して撃ったのだが、服の端に当てるだけで精一杯だった。

 

 

 

   ×     ×     ×

 

 

 

ホームルームが終わり、殺せんせーが一旦退室をすると同時に俺と俺の机はクラスの奴らに包囲された。

しかも誰しもが口を閉じたままだ。

無言の圧力とは違うものの、似ているものを感じる。

あれ、俺なんかやらかしたか?ここに来てやったことと言えば暗殺だけなんだが……。

てことは暗殺のことか。おそらくは、その方法のこと。

なら何故無言になるんだ?

その想いが通じたからかどうかは分からないが、このクラスで喋ったことのある二人――速水と、少し遅れて神崎が話しかけて来た。

 

「八幡、さっきのアレ、どうやったの?」

「え、えと、殺せんせーの触手、何を使って破壊したのですか?」

やっぱりか。

みんな暗器の類を使ったことがないだろうから、詳しく説明したほうがいいな。

 

「さっきのは踢腿飛針(てきたいひしん)の改良版だ」

 

おおすげえ、クラスのほとんどがシンクロしたぞ。

 

「テキスタイル美人?」

……約一名、ゆるふわ系っぽい女子は間違えたようだが。

どんな聞き間違いだよ。

 

「踢腿飛針って何」

クラスの疑問を、速水が代表するかのように聞く。

 

「踢腿飛針てのは暗器の一種……つまり隠し武器の一種で足の先に仕込んだ針のことだ。敵を蹴りつけるときに針で刺す。また前蹴りの時に針が飛び出すようになっている。威力はそこまででもないため、針の先に毒を塗るのが対人使用時のセオリーだ。俺は対先生弾を針に加工して使った。だが蹴るという動作は大きめの予備動作が必要だ。だからバネの力を利用して親指の動きだけで針が飛び出るよう改良した。その結果がさっきのあれだ」

 

本当は火薬を使うつもりだったが、やめた。

模型を使って実験してみたところ、針は勢いよく飛び出たものの、模型の足まで吹っ飛んでしまったからだ。

実を言うと袖箭や内矢にも加工したが、今回は使用していないので言う必要なないだろう。

取りあえず、これで納得いただけたらしく、ほとんどの生徒が自分の席へと戻っていった。

 

「八幡、今日一緒に帰ってもいい?話したいことあるから」

まだ自分の席に戻っていなかった速水が声をかけてくる。

「ああ、別に構わんが」

「……よかったぁ」

小さな声でそう言って速水は自分の席に戻っていく。

 

その後、隣の席に座っている赤髪の男子生徒がこえをかけてくる。

「比企谷君、だっけ?君、随分強いんだね」

「そう見えるか?」

「ああ。俺、結構喧嘩とかしてきたからね。ある程度は分かるよ。まだ名乗って無かったね。俺は赤羽業。よろしく」

「おう、よろしく」

 

 

 

この後受けた殺せんせーの授業は、伯父さん(理事長・浅野學峯のこと)の授業と同等以上に分かりやすかった。

だがしかし停学期間中の不摂生な生活による睡眠不足が祟り――4時限目の数学の最中に寝てしまった。

そして夢で、5年前の出来事が回想された――。

 




比企谷八幡は暗殺者である。
それはなぜか。
暗殺・諜報一家の比企谷家に生まれたからである。
だが、それはあくまでも切っ掛け。
今、八幡は己の意思で暗殺者であり続けている。
その、最大の理由は――

次回、やはり俺のE組生活はまちがっている。
第六話~過去の時間~

あの日引いた引き金の感触と、命の消えゆく感覚は、今も忘れない。
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